北海道大学 研究シーズ集

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Life Sciences

耐水性が高く透明な酸化グラフェン/抗菌・抗ウイルスコーティング

宮治 裕史 教授 Hirofumi Miyaji
博士(歯学)

ナノカーボン材料の酸化グラフェンと,抗菌・抗ウイルス剤を複合化した,新しいコーティング法を開発しました。耐水性が高く,透明で基材の色に影響を与えないことから,水周り衛生に向けた新しいアプローチとして期待できます。

研究の内容

微生物は水の存在する湿潤環境を好むことから,手洗い設備等の抗菌・抗ウイルス性が強く求められています。しかし,これまで水周り環境に,簡便かつ長期的に安定して抗菌・抗ウイルス効果を得ることは出来ませんでした。酸化グラフェンは,厚さ約1nmのシート構造を持つナノカーボン材料で,多数の酸素官能基を有することから様々な分子やポリマーと強く相互作用します。この性質を利用して,基材の表面に酸化グラフェン超薄膜を強固に付着させ,さらに抗菌・抗ウイルス剤を結合させる新しいコーティング技術を開発しました。酸化グラフェン膜は透明で基材の色味を損なうことも無く,基材との結合も強いことから水で洗っても脱落しません。また水中で1か月間保管した場合でも,酸化グラフェン膜は剥離脱落することなく基材の表面に残存していることを確認しました。

  • 酸化グラフェン抗菌・抗ウイルスコーティングの方法

  • 酸化グラフェン(GO)と抗菌・抗ウイルス剤(界面活性剤:CSAA)複合膜の耐水性と抗菌特性のメカニズム

社会実装への可能性

  • ・手洗い設備やシンク等,特に医療現場の水周り環境への応用
  • ・接触感染の低減のため,抗菌・抗ウイルス剤を長期間作用させるのが難しいドアノブ,つり革などの基材への適用
  • ・歯科治療などの医療応用(本法を歯の表面に応用したところ,歯周病菌の抑制効果が確認されました)

産業界や自治体等へのアピールポイント

近年の清潔志向の高まりにより,日常のさまざまな場面で抗菌・抗ウイルス性が求められています。本法は簡便かつ効果的(長期安定)であることから,公衆衛生の向上に期待できます。また本法の社会実装実現のため,事業化を共に進める企業を探しています。

関連情報

2021/10/14 北海道大学病院プレスリリース「水で洗っても落ちない抗菌・抗ウイルス酸化グラフェン複合膜を開発~種々の菌,新型コロナウイルスを不活性化,水周り衛生に効果~」
 
2022/10/19 北海道大学病院プレスリリース「酸化グラフェンによる抗菌・抗ウイルス剤の基材定着メカニズムを解明~抗菌・抗ウイルス分野での応用を加速~」
 
異分野融合歯科臨床開発チーム
 
 

本研究に関連する知的財産

特願2021-036701,「抗菌・抗ウイルス性複合体」
2022/11/8更新, 2018/4/3公開