- 1. 貧困をなくそう
- 2. 飢餓をゼロに
- 3. すべての人に健康と福祉を
- 4. 質の高い教育をみんなに
- 5. ジェンダー平等を実現しよう
- 6. 安全な水とトイレを世界中に
- 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 8. 働きがいも経済成長も
- 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10. 人や国の不平等をなくそう
- 11. 住み続けられるまちづくりを
- 12. つくる責任、つかう責任
- 13. 気候変動に具体的な対策を
- 14. 海の豊かさを守ろう
- 15. 陸の豊かさも守ろう
- 16. 平和と公正をすべての人に
- 17. パートナーシップで目標を達成しよう
15. 陸の豊かさも守ろう:18件
- 1. 貧困をなくそう
- 2. 飢餓をゼロに
- 3. すべての人に健康と福祉を
- 4. 質の高い教育をみんなに
- 5. ジェンダー平等を実現しよう
- 6. 安全な水とトイレを世界中に
- 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 8. 働きがいも経済成長も
- 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10. 人や国の不平等をなくそう
- 11. 住み続けられるまちづくりを
- 12. つくる責任、つかう責任
- 13. 気候変動に具体的な対策を
- 14. 海の豊かさを守ろう
- 15. 陸の豊かさも守ろう
- 16. 平和と公正をすべての人に
- 17. パートナーシップで目標を達成しよう
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NEW 環境ー植物ー土壌
植物を通して環境と土壌を考える
土壌からの養分(必須のみならず不要、有害元素も含めて)移動には植物and/or微生物の生物的な作用が重要です。また、環境変動は植物を通して土壌にも影響を与えています。この相互作用の解析を通して新たな栽培技術の創出を目指しています。
研究の内容
スライド1はルーピンというマメ科飼料作物の根が土壌に対してどのように働きかけを行っているのかを解析した内容です。ルーピンはクラスター根という特殊な根を発達させて、有機酸などの化合物を土壌に放出し、これらが土壌に作用して様々な元素の可溶化に貢献していると考えられています。そのメカニズムを植物の代謝応答、土壌鉱物の変化、そして介在している微生物機能の解析を通して複合的に明らかにすることを目指しています。
スライド2は福島県内で取り組んでいる植物による放射性セシウム吸収制御の試験風景です。作物種によって土壌からの放射性セシウムの吸収能には違いがあることが知られてはいるものの、そのメカニズムは明確にはなっていません。これを明らかにすることで、対策技術に結びつけることを目指しています。信濃 卓郎 教授 Shinano Takuro農学研究院 基盤研究部門 生物機能化学分野 -
NEW 低酸素水耕システムや過湿ポット栽培を利用した作物耐湿性の簡易サーベイ法
短期間、幼植物を特別な環境で育てることで、耐湿性に優れた優良な育種母本や品種を探します
一般的に湿害は作物収量や商品価値を著しく損なわせ、特に耐湿性の弱い品目を水はけの悪い畑で栽培するとその被害は甚大となります。本研究では簡易な栽培装置を用いて、短期間で作物の耐湿性サーベイが可能な手法を考案しました。
研究の内容
作物苗をポット栽培し、生育途中の5-10日間に、根域過湿条件になるようビニルで細工し、作物のバイオマス変化を追います。これにより、湿害が起き得る過湿期間や、湿害が起きやすい生育段階の割り出し、同品目内の耐湿性の品種間差をサーベイできます。
ブロッコリーや加工用トマトで有効な手法でした。
また、幼植物体を短期間、水耕溶液中に窒素をローディングして酸素分圧が低い状態とした水耕栽培システムで育成し、溶存酸素量が豊富な対照区と比べて根系のデザイン(長さ・太さ・分岐数など)やバイオマス量がどのように変化しているのかを調査します。これにより、根域低酸素耐性を有する品種を簡易にサーベイする試みです。ダイズの場合、従来言われている「耐湿性」とこの「根域低酸素耐性」には密接な関係性が示唆されます。実山 豊 講師 Jitsuyama Yutaka -
NEW 道産ダケカンバ製硬式野球バットの打撃性能評価
道総研林産試験場(旭川)の試作した道産ダケカンバ硬式バットの品質を広くアピールし消費市場を獲得するために、工学的な数値評価を確立して材質の異なるバットの性能を差別化し、従来材料と合わせてカンバ材バットを消費者の選択肢として提供する。
研究の内容
(解決すべき課題) かつて野球バットの木材は、道産アオダモがシェアの大半を占めていたが、現在は資源が枯渇し、北米産メイプルの輸入に依存した結果、国内バット製造業が衰退傾向に陥った。
(方法) 国産材バットの普及を目指し、ダケカンバ製バットの用具としての機能を工学的に数値化して外材のパーチ、メイプル、アッシュなどと差別化する。選手のバット素材の選択肢を拡げ、選択のための判断基準を提供し、市場を活性化する。
(意義) バットの消費で安定した流通量を確保し、アオダモ等、その他の樹種と合わせて計画的な植林と伐採サイクルを確立し、林業と地元製材・加工業の持続可能な活性化を図る。森林再生により二酸化炭素吸収と炭素固定を増進し、我が国のpostコロナ社会の優先課題であるグリーン成長戦略に役立ちたい。加藤 博之 准教授 Kato Hiroyuki -
NEW 発光性希土類錯体を用いた農林水産事業の支援
波長変換フィルムで農作物成長を促進
農作物成長促進に効果的な強発光性の希土類錯体(発光効率:世界トップ)を開発。その発光体を透明シートに塗った光波長変換フィルム(紫外光→可視光)の作製に成功。
研究の内容
紫外光を効率よく吸収し、赤色領域の強発光する希土類錯体を開発しました。この分子を塗り込んだ光波長変換フィルムは太陽光の赤色部分(600nm付近)を増強することができます。
この希土類錯体は可視光領域は光吸収がなく、農作物の光合成の鍵となるクロロフィル分子(赤色光を吸収)へ光を効果的に当てることができます。
● 太陽光の可視光領域をさえぎることがないため、農作物育成に応用した場合、日照時間を増やす効果があります。(特に冬期は効果的)
● 光変換の波長は赤色光の他に、「緑色光」「白色(波長混合)」「近赤外光」 に変換も可能です。 紫外線カットによる遮熱効果も期待できます。
● 発光色が温度によって変化するフィルムも作ることができます。LEDと組み合わせることもできます。長谷川 靖哉 教授 Yasuchika Hasegawa工学研究院 応用化学部門 機能材料化学分野 -
NEW 植物の繊維構造・特異な形態が生み出す構造・材料力学的機能評価とプラントミメティック構造材の創製
「植物の智恵」から学ぶ新しいデザインとものづくり
竹を始めとする維管束植物や、様々な植物の構造形態の力学的合理性をサイエンスの視点で実証するとともに、その構造形態を模倣することにより、既存の材料性能を凌駕する新しい構造材のデザインを目指しています。
研究の内容
◆構造・材料力学理論と有限要素解析により、理論的なアプローチで植物の形態を捉えます。
◆例えば、次ページの写真に示す竹は節と断面内維管束分布が特徴的ですが、これらには自身の体を最小材料で効率的に支える秘密があることが本研究室の研究で明らかとされています。このことは、繊維量を減らし機能を高めるCFRP材料の設計に応用できる「竹が教えてくれる智恵」であるといえます。※本研究により、文部科学省より「科学技術への顕著な貢献2019(ナイスステップな研究者)」に選定されています。
◆さらに、断面形状が非円形の植物など、特徴的な形状には力学的な利点が潜んでいます。
このような進化の過程で植物が生存戦略の一環として獲得してきた形状の合理性を暴き、付加価値を有するものづくりに生かすデザイン研究を行っています。佐藤 太裕 教授 Satou Motohiro -
環境DNAを用いた海洋生物多様性の把握
環境DNAから,魚類などの海洋生物の生息を把握し,生物多様性情報を得る
研究の内容
水や底泥中に含まれる環境DNAを調べることで,そこに生息する生物を把握することができる。河川,沿岸域から外洋に至る様々な環境でDNAを取得し,生物の分布や量を推定する。それにより生物多様性情報を得ることができる。得られた情報は,COP15で採択された30by30による海洋保護区の選定に用いたり,OECMの認定に役立てたりすることができる。
笠井 亮秀 教授 Akihide Kasai博士(農学) -
撹乱地の生態系復元
自然・人為により撹乱を受けた生態系をファシリテーションすることでエコフレンドリーな復元を図る
ファシリテーションとは、ある植物の定着が他種の侵入定着を促進する現象を指す。噴火・火災・津波・採掘等の大撹乱により壊滅的被害を被った生態系において、そのようなファシリテータを検出し導入することで迅速かつエコフレンドリーな生態系復元を図る。
研究の内容
大規模撹乱後の生態系復元は急務であることが多いが、撹乱後の劣悪な環境では、なかなか目的とする植物の定着が進まないことが多かった。ファシリテータとは、その種が定着することで他種の定着を促進する効果のある植物種のことを指す。各撹乱地において、ファシリテータを検出し、それらの種を導入することで目的とする種の侵入定着が促進できれば、生態系復元は安価かつ迅速化でき、人為も軽微となるため、エコフレンドリーな生態系復元技術となる。
これまで、サロベツ湿原泥炭採掘跡地ではミカヅキグサが、渡島駒ヶ岳ではミネヤナギが、ファシリテータとして機能していることを明らかとしており、さらに、ファシリテータ導入手法として、微地形改変が有効であることを明らかとしている。露崎 史朗 教授 Shiro Tsuyuzaki理学博士 -
大規模火災後の生態系復元機構の解明と応用
地球温暖化の緩和に向けて
北アメリカ北極域では地球温暖化に伴う火災の大規模化が起きている。そのため火災後の生態系回復様式も変化し、新たな切り口での生態系復元機構の解明が急務である。更に、本研究で得た知見を応用し様々な大規模撹乱後の生態系復元手法の開発も必要である。
研究の内容
アラスカのタイガ・ツンドラ帯は、落雷に伴う火災多発地域であるため、火災に順応した生態系回復が見られる。これまでは、強度が低く泥炭を含めた有機物層の全焼には至らない林冠火災が主であった。特に、北向き斜面ではクロトウヒが優占し、林冠火災直後からクロトウヒの散布種子による速やかな森林再生ができた。
しかし、気候変動に伴い火災は強度・頻度ともに増加傾向にある。2004年のアラスカ森林火災は、総焼失面積が四国を上回り、有機物層も焼き尽くされた。そのため、大規模火災後の生態系回復は、林冠火災後とは大きく異なる。特に、種子発芽・成長に有機物層の存在は不可欠であり、有機物蓄積には、母材となるミズゴケの定着促進手法開発が肝要であることが明らかとなった。加えて、ツンドラ帯での火災が生態系に与える影響についても研究を行った。露崎 史朗 教授 Shiro Tsuyuzaki理学博士 -
ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産
バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。
研究の内容
バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。
田島 健次 准教授 Kenji Tajima博士(工学) -
ポータブルな液体クロマトグラフ
電池で駆動する超軽量・超コンパクトな化学分析装置
独自テクノロジーにより液体クロマトグラフの主要要素であるポンプ、カラム、および検出器を小型化し、B5サイズ・2 kgというコンパクトで軽量かつポータブルな液体クロマトグラフを実現。これにより分析結果をその場で迅速に得ることが可能になります。
研究の内容
我々が開発した液体クロマトグラフのポンプは電気浸透現象を原理とし、乾電池で長時間駆動します。機械的駆動部がないため極めて小型・軽量で脈流が発生しないという特徴があります。カラムと検出器(電気化学・UV)は微細加工技術を用いて名刺ほどの一枚の小さな基板上に搭載しています。カラムには従来の充填剤を使用しており、これまで使用してきた分析条件をそのまま適用できます。電気化学検出器は独自開発のくし形電極を採用しており、小型とはいえ従来機に匹敵する感度をもっています。現在、化学分析の主要な装置として使用されている液体クロマトグラフは大型で大重量であるため実験室の特定の場所での使用に限定されていましたが、我々が開発した装置はどこでも簡単に使用することができます。溶媒使用量も従来の1/100~1/1000に低減されます。
石田 晃彦 助教 Akihiko Ishida博士(工学) -
センサレスで実装可能な非線形補償器
PID制御系に容易に追加可能な非線形補償器
現在、産業界ではPID制御が主力の制御手法として用いられていますが、PID制御則には摩擦や重力項といった非線形項の影響により制御精度が劣化するという問題があります。我々は、PID制御器に対し容易に追加できる非線形補償器を提案しています。
研究の内容
ディジタル加速度制御(DAC)はモデル化困難な非線形項やモデリング誤差が存在する系に対してロバストな制御則です。DACは非常に効果的な制御器ですが、加速度目標値に対して制御を行うため単体では位置制御ができません。そこで、一般的なPID制御系と組み合わせたPID-DAC併合制御系によりロバストな位置・加速度制御が実現できます。さらにPID制御器などに「センサレス」で「容易」に追加することができる新しい非線形補償器として、制御対象の加速度目標値を0とした「PID-DA0制御系」、加加速度目標値を0とした「PID-DJ0制御系」という2つの制御器を提案しています。双方とも既存のPID制御器に簡単に追加でき、さらには追加のセンサも必要ないことからセンサレスでシステムの性能を向上できるという大きなメリットを持ちます。
江丸 貴紀 准教授 Takanori Emaru博士(工学) -
人類遺跡を文化資源・地域資源として活用する
わたしのマチにも「縄文エコミュージアム」を
遺跡を調査して、「エコミュージアム」の「サテライト」として〈整備保存〉することによって、その土地で暮らす人たちの地域資源として、また人類共有の文化資源として、日常的・持続的に活用するための実践と仕組み作りに取り組んでいます。
研究の内容
遺跡を開発工事のやっかいものとするのではなく、その土地で生活する人たちの地域資源として、また人類共有の文化資源として、価値転換します。そのために遺跡の一部を計画発掘して、「エコミュージアム」の「サテライト」として〈整備保存〉します。エコミュージアムとは、いわば屋根や壁を必要としない博物館です。サテライトとは野外にある展示対象です。その土地の人たちと共に、遺跡を「歴史遺産」へと整備保存しながら、その中で暮らすことに誇りを持ち、ホストとしてエコミュージアム活動に参画・参加します。遺跡の計画発掘は、地元の方々や教育委員会との連携の下に、大学の教育プログラムの一環である「考古学実習」として実施します。大学教育の一端を地域で実践することに意義を見出し、同時にそのこと自体がエコミュージアム活動の実践になります。
小杉 康 教授 Yasushi Kosugi文学修士 -
成長のツボを押す新しい植物生育促進技術
排水を活用する次世代バイオマス生産と植物工場への共生細菌の利用可能性
北海道大学植物園のウキクサ亜科植物から全く新しい成長促進細菌P23を発見した。P23は植物の表面スイッチを押すことでその生育を促進する。ウキクサは排水を肥料として生育する高付加価値バイオマスであり、P23との共生によってその生産速度が約2倍
研究の内容
水生植物ウキクサは排水中の窒素やリンを吸収して生育することが可能かつ、リグニンやセルロースをほとんど含まないソフトバイオマスである。そのタンパク質含量は大豆に匹敵する約30%であり、生育環境によってデンプン蓄積量も50%に達する。前者の特徴は家畜飼料としてそのまま利用可能であり、後者はバイオ燃料生産および化成品前駆体HMFを生産するための原料として有用である。このような、次世代バイオマスの生産収率を向上するために、私たちは表層細菌の共生作用による植物生育促進技術開発を行っている。その適用範囲は、ウキクサの栽培以外に野菜・穀類の水耕栽培(植物工場)が想定される。これは遺伝子組換えを伴わない、自然の摂理に従った古くて新しいバイオ技術である。
森川 正章 教授 Masaaki Morikawa博士(工学) -
風景から故郷(くに)づくりへ
住民参加で地域の価値を創造する
風景計画の視点から、地域の環境を人々の認識や社会的な意味と結びつけて保全・活用する方法を研究しています。近年は、「健康」や「葬送」といった、社会とともに変容する価値観や空間的ニーズをどのように風景化できるかを実践的に研究しています。
研究の内容
地域資源を住民参加で守り育てるためには、人々の視点から地域を見る「風景」のアプローチが大変有効です。人々や社会の風景認識の研究を発展させ、場所への愛着を地域資源マネジメントに活かす実証的な研究を行っています。
健康保養地(クアオルト)の環境整備:
ドイツでは、温泉や海、気候などの自然環境を利用した療養・保養地を国が認定し、医療保険が適応されます。日本でも、地域住民の健康増進とヘルスツーリズムを両立させる健康保養地(クアオルト)の取り組みが始まっています。
樹木葬墓地による森林活用:
森林資源の活用として、ドイツを参考とした森林型の樹木葬墓地を日本で展開する実践研究を行っています。多死社会に対応する地域マネジメントとして、国土の7割を占める森林の新たな管理手法として、樹木葬墓地づくりを各地で進めています。上田 裕文 准教授 Hirofumi UedaPh.D. -
グリーンランドにおける氷河氷床・海洋相互作用
温暖化するグリーンランドの沿岸環境
北極域に位置するグリーンランドでは、氷河氷床の質量が近年急速に減少しています。わたしたちは、氷河氷床と海洋が接するグリーンランド沿岸の環境変化に着目して、現地調査や人工衛星データを用いた研究を行っています。
研究の内容
グリーンランドは日本国土の約6倍の面積を持ち、その80%が氷河氷床で覆われています。このグリーンランドの氷が、地球温暖化の影響を受けて急速に減少しています。特に氷床から海洋へ流れ込む氷河で顕著な変化が起きており、温暖化する海洋の影響を示唆しています。また融け水が海に流入して海水準が上昇する他、海洋循環や生態系の変化が予想されますが、その詳細は明らかになっていません。このような背景を受けて、氷河氷床と海洋の相互作用、その結果生じるグリーンランド沿岸環境の変化解明に取り組んでいます。特に北西部のカナック地域に焦点をあて、現地観測や人工衛星データ解析を実施しています。最終的には、環境変化が漁業や交通に与える影響を明らかにして、地元住民に成果をフィードバックすることを目指します。
杉山 慎 教授 Shin Sugiyama博士(地球環境科学) -
シベリア先住民と野生動物の共生策を探る
“利用しつつ守る”順応的鳥獣管理システムの実践研究
地域社会と野生動物の軋轢(農業被害や外来種問題など)を軽減するため、住民参加・住民主体の調査・対策を企画・実施し、ボトムアップ型の政策支援を行っています。近年はシベリア先住民の暮らしを守る野生動物保護区の設定にも携わっています。
研究の内容
◇野生トナカイなどの実態調査と保護区の設定
”日本に最も近い北極”である、ロシア連邦サハ共和国の北極域において、先住民が利用する野生動物(トナカイ、ジャコウウシ、オオカミなど)に衛星発信機を装着し、温暖化の影響や季節移動の実態を明らかにしてきました。またその情報を元に、先住民団体、地方行政府、狩猟団体などと協働し、伝統的生活に資する保護区や猟区を設定して評価を行っています。
◇渡り鳥の生息実態調査と国際保護区の評価
シベリアは、日本をはじめ北極域・北方圏を利用する渡り鳥の重要な繁殖地ですが、やはり温暖化により生息環境が変化しつつあります。そこでこれまで個別に行われていた各国の調査をネットワークし、温暖化の影響と生息地保護区の評価を総合的に行うための調査・研究・実践を行っています。立澤 史郎 助教 Shirow Tatsuzawa博士(理学) -
北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング
永久凍土融解に伴う地表沈降の検出
人工衛星「だいち」に搭載の合成開口レーダー(SAR)で得られるデータから、地表変形の画像を検出できる。従来は地震や火山活動に伴う地表の変位が主なターゲットだったが、地震火山とは無縁の北極圏の永久凍土地帯でも局所的な地盤変動が検出され始めた。
研究の内容
地震や火山活動の研究では、地表のわずかな動きを捉えて、地球内部を推定することがあります。この「動き」は地殻変動とよばれ、いまでもその高精度・高品質化にむけた努力が続いています。近年は衛星SARの位相データを使うInterferometric SAR(SAR干渉法)によって、遠隔地や海外の地殻変動も検出できるようになりました。北極圏では、いわゆる地殻変動は皆無ですが、下の図が示すように西シベリアでも明らかな「地盤変動」が検出されています。これは北極圏に多く見られる「サーモカルスト」とよばれる地形の周囲に見られることから、永久凍土の融解に伴う地表の沈降を捉えているものと考えられます。従来ほとんど手付かずだったサーモカルスト地形の形成過程の研究が緒に就いたところで、温暖化の影響の評価は今後の重要な課題です。
古屋 正人 教授 Masato Furuya博士(理学) -
リン酸カルシウムを用いた新しい地盤注入材
自然界の生物の歯や骨の主な成分であるリン酸カルシウム化合物で地盤を固める画期的な低環境負荷型注入材
地盤注入材(グラウト)の新たなセメント物質としてリン酸カルシウム化合物(以下CPC)に着目し、CPCの析出とCPCによる砂の固化に関する最適条件を検討した結果、ケミカルグラウトとバイオグラウトという2種類の新しい利用可能性が明らかになった。
研究の内容
環境負荷が小さい新たなグラウトを開発するために、自然界の生物によって生成される鉱物(バイオミネラル)の中でも歯や骨の主な成分であるCPCに着目し、CPCが析出する最適条件の検討およびCPCで固化させた砂供試体の一軸圧縮試験を実施した。その結果、CPC析出試験ではpHが弱酸性から中性付近に上昇することに伴い、析出体積の増加傾向が認められた。また、CPCで固化させた砂供試体の一軸圧縮強さは約90 kPaまで達し、砂質地盤が液状化しない一軸圧縮強さの目安である50~100 kPaを満足した。供試体片の電子顕微鏡観察からは、ウィスカー状のCPC結晶が確認された(図-1)。以上より、自己硬化性を利用したケミカルグラウトと析出体積のpH依存性を利用したバイオグラウトという、2つの新しいグラウトとしての利用可能性が示された。
川﨑 了 教授 Satoru Kawasaki博士(工学)