Arctic Research
大規模火災後の生態系復元機構の解明と応用
露﨑 史朗
教授
Shiro Tsuyuzaki
理学博士
地球温暖化の緩和に向けて
北アメリカ北極域では地球温暖化に伴う火災の大規模化が起きている。そのため火災後の生態系回復様式も変化し、新たな切り口での生態系復元機構の解明が急務である。更に、本研究で得た知見を応用し様々な大規模撹乱後の生態系復元手法の開発も必要である。
研究の内容
アラスカのタイガ・ツンドラ帯は、落雷に伴う火災多発地域であるため、火災に順応した生態系回復が見られる。これまでは、強度が低く泥炭を含めた有機物層の全焼には至らない林冠火災が主であった。特に、北向き斜面ではクロトウヒが優占し、林冠火災直後からクロトウヒの散布種子による速やかな森林再生ができた。
しかし、気候変動に伴い火災は強度・頻度ともに増加傾向にある。2004年のアラスカ森林火災は、総焼失面積が四国を上回り、有機物層も焼き尽くされた。そのため、大規模火災後の生態系回復は、林冠火災後とは大きく異なる。特に、種子発芽・成長に有機物層の存在は不可欠であり、有機物蓄積には、母材となるミズゴケの定着促進手法開発が肝要であることが明らかとなった。加えて、ツンドラ帯での火災が生態系に与える影響についても研究を行った。
社会実装への可能性
- ・撹乱強度・規模を特定することで、様々な大規模撹乱跡地における生態系復元にも応用可能
- ・緑化や減災を含めた適切な生態系保全・復元計画の策定
産業界や自治体等へのアピールポイント
火災といっても、その強度・規模・頻度等は多様であり、そのため植物の火災に対する応答も多様である。これらの特性を見極めることで、緑化・減災防災等をも考慮した火災を始めとする様々な大規模撹乱後の生態系復元への応用も可能となる。顔写真は、火災直後の調査で煤だらけとなった姿。
2022/6/24更新, 2019/1/17公開