研究紹介
Manufacturing Technology
ソフトマターの3次元構造観察と
マイクロレオロジー測定法
折原 宏
教授
Hiroshi Orihara
工学博士
非平衡複雑流体における構造形成と粘弾性の関係
ソフトマターは、文字どおり柔らかいため外場によりその構造が容易に変化すると同時に、その物理的性質も劇的に変化します。これを利用したソフトマターの機能性材料への応用を目指し、3次元構造と物理的性質を調べるための手法の開発を行なっています。
研究の内容
2種類の互いに相溶しない高分子を混合したある種のブレンドでは、電場を印加すると見かけの粘度が可逆的に増大することが知られています(電気粘性効果)。一般に2種類の高分子を混合すると一方の高分子がドロップレットになって他方の高分子中に分散します。せん断流下では図1(a)に示すようにドロップレット構造をしていますが、これに電場を印加すると(b)のネットワーク構造へと変化し、これに伴って粘度が増大します。この構造とレオロジーの関係は今回開発したシステムにより初めて明らかになりました。このシステムを用いて、生体物質のアクチン溶液においてはせん断流による相分離を明瞭に観察することにも成功しました。図2に示すように、せん断を印加すると上下の位置に速度勾配の大きな領域が現れ、せん断速度が大きくなると、これらの領域が広がります。
社会実装への可能性
- ・流動下におけるソフトマターの3次元構造観察とレオロジー測定
- ・エマルジョンおよびサスペンジョンの電気粘性効果の発現機構
- ・生体物質の流れ場測定とマイクロレオロジー
産業界や自治体等へのアピールポイント
開発したシステムにより外場下(せん断流、電場下)においてミクロンスケールでのソフトマターの構造観察(流れ場測定)とレオロジー測定が同時に可能であるので、例えば電気粘性流体の評価ができます。さらに、流動下におけるマイクロレオロジー測定も可能であるので、シアシニングを示すような非ニュートン流体の評価にも適しています。