北海道大学 研究シーズ集

Life Sciences

発生工学を利用した魚類の品種改良の研究

山羽 悦郎 教授 水圏ステーション長 Etsuro Yamaha
博士(水産学)

植物での育種方法を魚でも使うために

植物は個々の細胞が個体となる能力をもつので、細胞の変革で新しい品種を作出できる。一方、動物では、受精卵のみがこの能力を持つので品種の改良をすることが難しい。当研究室では、始原生殖細胞と生殖系列キメラを利用して魚類の品種改良を可能としている。

研究の内容

始原生殖細胞(PGCs)は、個体発生の初期に出現し生殖腺の原基へ移動した後、卵あるいは精子に分化する、次の世代を生み出せる唯一の細胞集団です。PGCsを分離し、そのまま、或いは細胞工学的な操作を加えた後、宿主へ移植して、その個体内での生殖細胞形成を利用して配偶子が誘導できる。このスキームを用い、1)借り腹生産、2)受精を伴わない染色体構成の変革、3)核細胞質雑種の作成、4)ジーンターゲッティング、5)トランスジェニック個体の誘起など、一般水産学への応用のみならず、魚類の生理学的特性を遺伝学的に解析して行く実験系を確立することできると考えられます。例えば、半数体の個体は致死性ですが、半数体PGCを宿主へ移植することで、半数体由来の配偶子を誘起できます。これは、植物における花粉培養を動物で行ったことに相当します。

社会実装への可能性

  • ・F1品種の育成
  • ・遠縁雑種からの新品種の合成
  • ・核細胞質雑種と細胞質因子の探索
  • ・有用形質のin vivo選抜
  • ・天然資源からの有用遺伝子探索

産業界や自治体等へのアピールポイント

これまで、漁業権や水資源を有さなければ、一般の企業が魚の養殖に参入することは困難であった。しかし、本研究が発展することで、「有用種苗生産」と、種苗育成による「販売物生産」を切り離すことが可能となる。このような作物生産の分業形態を養殖へ持ち込むことで、中小企業でも「種苗会社」を設立して「有用種苗」を開発できるようになる。

本研究に関連する知的財産

PCT/JP2011/052772 「生殖系列キメラを介して致死的魚類半数体に由来する生殖細胞から遺伝的に同一な配偶子を得る方法」
(日本:特許第5843153号  米国:特許第8,921,643号)
2018/4/3公開