北海道大学 研究シーズ集

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ナノテク・材料:30件

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  • 銀系化合物を用いる水素の活性化と接触合成反応

    高活性水素イオンの生成触媒の開発とCO2メタネーション反応への利用

    Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)は、当研究室が発見した銀系化合物から生成する高活性水素イオンで、一部を低温燃焼させることで熱を供給し、余剰GDRは例えばCH4合成に利用することで、反応が効率化できる。

    • 図1 GDR*生成触媒のイメージ図
      *GDR, Gin De Ride(銀-Derived Hydride)

    • 図2 GDR生成触媒を混合したニッケルアルミナ触媒の二酸化炭素メタネーション活性の例(上は反応器出口ガス濃度、下は熱電対温度)

    研究の内容

     水素の自然発火温度は525℃前後と高く、低温で燃焼させるためには、高活性水素を製造可能な触媒の利用が不可欠である。これまでパラジウムや白金系触媒が用いられているが、供給面や価格面などの不安を抱えている。
     当研究室では、従来の触媒に比べ供給面や価格面で有利な触媒の研究に取り組み、その結果、高活性な水素イオンを生成可能な銀系化合物を発見した。本触媒は、水素を供給すると高い活性を持つ水素イオン“Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)”を与えるため、まず低温で水素と酸素を同時供給することにより生成GDRを燃焼させ、次いで発生熱と余剰GDRを利用すれば各種合成反応を効率的に行うことが出来る。
     現在、CO2メタネーション用の触媒との複合化により、低温で反応が進行することを見出している。

  • 光干渉リソグラフィによる微細パターン創成

    空間位相制御によるマスクレスでの自由微細パターン創成

    光干渉リソグラフィに空間位相制御を導入して,マスクレスで自由パターンを転写創成する手法を開発。これまでに,従来の2ビーム干渉では実現困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しており,現在パターン転写およびその精度向上に取り組んでいます。

    • 図1

    • 図2

    • 図3

    • 図4

    研究の内容

    半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構において位置検出センサとして用いられるリニアスケールでは,マイクロメートル級のピッチを有する回折スケール格子が位置検出の「目盛り」として用いられています。また近年,微細パターンを有する機能性表面に対する需要が様々な分野で高まっています。
    本研究では,空間位相変調したレーザ光の重畳で自在生成する干渉縞の転写で,マスクレス自由パターン創成を狙っています。これまでに,従来の2ビーム干渉では原理的に創成が困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しています。

  • 超精密光学式角度センサ

    0.001 arc-second超の高分解能を実現し,回折スケール格子ピッチ評価に援用

    超精密位置決めステージなど,精密移動体の微小角度変位を検出する光学式角度センサを開発しています。レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を達成しています。

    • 図1

    • 図2

    • 図3

    • 図4

    研究の内容

    半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構においては,ステージ移動中の微小回転運動誤差の影響が無視できません。
    本研究では,これら精密移動体の微小角度変位を高い分解能で検出する,高精度光学式角度センサの開発に取り組んでいます。低ノイズ信号処理回路の開発および光学系の最適化設計により,レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を,帯域1 kHzレベルで達成しています。また,この角度センサ技術をもとに,回折スケール格子全長に渡り,位置検出の「目盛り」の揺らぎをピコメートル級分解能で校正する手法を開発中です。位置決め技術の更なる高精度化を狙います。

  • 1粒子解析技術に基づいたセンサー

    エクソソームのスペクトル計測によるがんの識別方法

    ・長さが5 μm以下の微粒子(例えばエクソソームなど)の1粒子解析方法、または、微粒子を利用したセンサーのためのスペクトルデータの生産方法を提供する
    ・微粒子を高感度にスペクトル計測できる基板および計測装置を提供する

    • 【計測基板】

    • 【がんの識別】

    研究の内容

    本研究では、長さが5μm以下の生体微粒子などの測定が可能となる特徴を持ち、エクソソームの他、微粒子状の小さな細菌やウイルスなどが測定対象となります。また微粒子を利用したセンサーのためのスペクトルデータの生産方法を提供することが可能となります。
    例えばエクソソームを測定することで、がんの検出や識別などに活用することが期待されます。
    エクソソームとは細胞から分泌される体液(尿、唾液、血液など)に存在している微粒子で、近年は疾患のバイオマーカーとして注目されています。エクソソームの特徴として以下の特徴があります。
    ・表面分子組成が親細胞に依存している
    ・正常細胞はがん細胞から出てきたエクソソームを取り込むことでがん化する
    ・表面のタンパク質などの違いで、どこの細胞に入るか(がんの転移先)が決まる

  • 高速超親水および滑落性制御型超撥水・超撥油表面の構築

    水が油が、よく濡れる、すぐ滑り落ちる、よくくっつく

    高速で水が濡れ広がる超親水や、水・油をとてもよく弾くけれども表面に吸着していたり、簡単に滑り落ちたりと、滑落性を簡単に制御できる超撥水・超撥油表面を創り出す方法についてご紹介します。

    • 超親水・超撥水・超撥油表面

    • 滑落性が制御できる超撥水表面

    研究の内容

    アノード酸化(陽極酸化)は、金属の表面にさまざまなナノ構造をもつ酸化物を形成する手法です。新規な電解質化学種を用いたアノード酸化により、sub-10 nm(10 nm以下)の直径をもつナノファイバー酸化物を大量に形成する手法を開発しました。ナノファイバーの生成密度は、1 cm2あたり1010本(100億本)オーダーと極めて高密度です。このような高密度ナノファイバーを形成した金属表面が、1秒以下の高速の超親水性や滑落性制御型の超撥水性・超撥油性を発現することを見いだしました。微細パターニング技術を用いて濡れ性の異なる表面を混在させることもできます。

  • 光触媒結晶性酸化チタン薄膜の超高速成膜

    高温熱処理不要な超高速電解成膜技術

    結晶性酸化チタンは光触媒として実用的に重要な酸化物です。一般に高温での熱処理を必要とする結晶性二酸化チタン薄膜を,水溶液中の電解成膜法を用いてわずか数秒以内に各種金属基板上に製膜する技術を開発しました。

    • 成膜した酸化チタン膜の断面TEM写真とUV照射による超親水化を示す写真

    研究の内容

    Al,Zn,Fe,Cuなどの実用金属基板上にTiF62-を含む水溶液からわずか数秒の電解により酸化チタン薄膜を得ることに成功しました。得られた酸化チタン薄膜はアナターゼ結晶性であり,熱処理することなく,光触媒活性を示します。表面の有機物をUV照射で分解し,超親水化するなどの優れた特性を確認しています。この酸化チタン膜には基板元素がドープされることから可視光応答性などの新たな機能発現も期待できます。透明導電膜などへの成膜も可能です。

  • EUVプラズマの診断や制御のための計測技術

    EUVプラズマの電子密度や電子温度をレーザーを用いて詳細に計測および制御する技術。

    • EUV光源のプラズマ構造を計測可能なシステム
      開発。EUV光出力を、プラズマの電子状態から初めて説明可能とした。密度の中空様構造の発見。

    • EUV光源のプラズマ構造を計測するためのシステム
      原理。光(レーザー)を用いた散乱計測である。

    • EUV光源からの光出力を、発光の根源である電子状態まで遡って説明可能とした。

    • 電子状態はプラズマ応用の基礎であるが、測定が困難であり、電子状態まで立ち返った現象理解や改良はなかなか行われない。EUV光源以外にも、電子計測に基づいた様々なプラズマ応用の研究を展開している。

    研究の内容

    EUVプラズマ及び軟X線プラズマは、容易に大光量を達成でき、半導体露光や材料診断に用いられている。一方でその最適化(波長選択性や高効率化)のためには、プラズマの電子状態(電子密度や電子温度)の制御が必要であるが、その計測は従来技術では達成されておらず、電子状態はなかばブラックボックスであった。本技術の特徴は、独自の分光システムを用いたレーザー散乱計測(トムソン散乱法)により、EUVプラズマの詳細な電子密度・温度の計測を可能とした点である。これにより、プラズマが光を発するメカニズムの根源である電子状態を把握した光源開発を可能としている。

    富田 健太郎 准教授 Kentaro Tomita
    博士(工学)
  • 色と導電性の変化で情報表示・記憶する半導体素子

    窓ガラスや鏡がメモリーに?

    「電子カーテン」として注目を浴びているエレクトロクロミック材料を、薄膜トランジスタに組み込み、無色透明⇔黒色の色変化と、絶縁体⇔金属の導電性変化を利用する新しい情報表示・記憶装置を開発しました。窓ガラスや鏡に情報を表示・記憶できます。

    • ゲート-ソース間に電圧印加することで、無色透明絶縁体⇔濃青色金属を
      可逆的に変化させることができます。

    研究の内容

    IoT普及に伴い、パソコンだけでなく、様々な機器がインターネットに接続されたことにより、収集・保存しなければならない情報量が増加し続けています。現在の情報記憶素子は半導体の電気抵抗変化のみを利用していますが、本研究では、電気抵抗変化に加えて、色変化を情報表示・記憶に利用できる素子を開発しました。ガラスやプラスティックなどの基板上に、アモルファスWO3薄膜(膜厚100 nm)/ナノ多孔質ガラス薄膜(300 nm)/多結晶NiO薄膜(50 nm)の積層膜と、透明電極ITO薄膜(20 nm)からなるソース、ドレイン、ゲート電極を備えた、三端子の全固体薄膜トランジスタ構造を作製し、ゲート-ソース間に数ボルトの正電圧を印加するとWO3薄膜が濃青色に変化すると同時に金属になり、負電圧を印加すると無色透明な絶縁体に戻ります。

    太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta
    博士(工学)
  • 革新的なアルマイトの創製と機能発現

    表面が変われば、全てが変わる

    アルミニウムの耐食性不働態皮膜として極めて有名な「アルマイト」を革新し、アルミニウムに優れた特性や新しい機能を発現する研究をご紹介します。

    研究の内容

    「アルマイト」とはアルミニウム表面に形成された人工的な不働態皮膜のことであり、およそ100年前に日本で開発されました。私たちの身の回りにはたくさんのアルマイト製品がありますが、私たちの研究グループではアルミニウム表面にアルマイトを形成するための化学物質や形成手法(陽極酸化)を一から見直し、優れた特性や革新的な機能を発現する新しいアルマイト形成法の開発に挑んでいます。具体的には、とても規則的なナノ構造をもつアルマイト、ビッカース硬度Hv = 600以上の硬いアルマイト、酸・塩基性環境や塩化物環境においても高い耐食性をもつアルマイト、ルミネッセンスや構造色を生じて美しく光るアルマイトなどです。

  • 高純度ナトリウムの製造

    電解精製でナトリウム資源の循環を

    大型の二次電池で主に産業用として用いられているナトリウムー硫黄二次電池があります。本研究ではこの電池の使用済みの状態のものから、電池内部に含まれる金属ナトリウムを回収して、これを電解精製し高純度ナトリウムを製造するプロセスを開発しています。

    • 図1 ナトリウム電解精製槽の模型

    • 図2 電極上に析出する粒上の液体ナトリウム

    研究の内容

    本研究は、不純物を含む金属ナトリウムを電解精製によって高純度化するプロセスの開発です。原料となる金属ナトリウムは、使用済みナトリウムー硫黄電池の中から回収したものになります。これを図1の電解槽模型の左上(陽極)に設置し、電流を流す事でナトリウムイオンが電解液に溶解し、ナトリウムのみが右上の高純度ナトリウム(陰極)側に順次析出します。このプロセスは200℃以下で操業が可能になります。この電解で得られた高純度ナトリウムは電池の原料や他の用途としても使うことができる純度です。ナトリウム資源を海外に依存している本邦であるからこそ、この技術が今後広く応用できると考えています。  

  • プラズモンを用いた最先端ナノ光リソグラフィー

    シングルナノメートルの加工分解能を有する
    光リソグラフィー技術

    プラズモン共鳴による光電場の局在を用いれば、微小な領域に光電場を自在に局在化できます。本技術では、プラズモンの高次の共鳴モードの散乱光を利用して数nmの分解能の光リソグラフィー技術を発明しました。

    • プラズモンリソグラフィーにより形成されたフォトレジストナノパターン

    研究の内容

    従来の光リソグラフィーの分解能は波長で決まりますが、本技術はフォトマスクの金属ナノ構造の加工分解能によって決定されます。フォマスクである金属ナノ構造に赤外光を照射することによりシングルナノメートルの分解能でパターンを転写できる技術です。本技術の特徴として、赤外光を照射するだけでマスクパターンの形状をそのまま転写可能であること、近接場光ではなく伝播光を使用しているため高アスペクト比の加工が期待されること、そしてライン&スペースだけではなく、三角形、ナノギャップ、チェインなどあらゆる形状のパターンの作製が可能であることなどが挙げられます。比較的大面積にナノパターンの転写が必要なフォトニック結晶、プラズモン太陽電池、光学素子表面のモスアイ構造形成技術などへも応用が期待されます。

  • 均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応

    シスアルケンとアミン類の選択的合成

    医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。

    研究の内容

    酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。

  • 金属材料の組織予測シミュレーション技術の開発

    凝固から固相変態まで

    構造材料や機能材料の製造プロセスでは、凝固、熱処理、塑性加工において様々な材料組織が形成し、その材料組織の特徴が材料の特性を決めています。凝固から固相変態までの一連の材料組織変化を予測するシミュレーション法の開発を行っています。

    研究の内容

    金属材料の凝固、結晶粒成長、拡散固相変態など、製造プロセスで生じる一連の相変態における材料組織の時間変化を予測する手法の開発と応用を行っています。特に、組織形成シミュレーション手法であるフェーズフィールド・モデルの開発に従事し、拡散相変態を世界最高精度で計算するモデルの開発に成功しています。また、実験的アプローチ、分子動力学法による原子論的アプローチ、さらにはデータ同化、機械学習といった情報科学のアプローチを組み合わせて、種々の合金系における材料組織制御に取り組んでいます。超大規模計算によって組織形成の新しい学理を開拓し、実プロセスの最適化につながる成果を得ています。

  • 電子スピン制御の物性定数を解明

    次世代電子デバイスの研究・開発を加速

    さまざまな半導体物性の中でこれまで未解明であった「スピン軌道相互作用」を、InGaAs半導体をベースにしたn型量子井戸構造に対して、ゲート電圧依存性を含めて定量的に明らかにしました。この成果は、次世代スピンデバイス開発のシーズとなります。

    • 図1 スピン回転の模式図。(a)スピンが回転していない、(b)ある向きにスピンが回転する状態、(c)(b)と反対向きにスピンが回転する状態を示している。

    • 図2 電界効果型トランジスタ

    • 図3 本研究に用いた希釈冷凍機

    • 図4 本研究で明らかにしたスピン軌道相互作用係数のゲート電圧依存性。
      (a)-(c)は図1のスピン回転の様子に対応している。

    研究の内容

    既存の半導体デバイスは、電子の「電荷」により動作します。一方で、電子は、「電荷」と共に「スピン」という小さな磁石としての性質を有しています。固体中電子のスピンは状況に応じて、ある向きに揃ったり(図1a)、特定の軸に対して回転したりします(図1bc)。次世代電子デバイスを実現するには、このような電子の「スピン」を半導体デバイス中で如何に制御するかが鍵となります。今回の研究では、インジウム、ガリウム、砒素をベースとした電界効果トランジスタ(図2)を利用し、希釈冷凍機(図3)を用いて実現する極低温(絶対温度20mK)環境で、電気的な測定を行うことにより、電子スピンの制御に必要な「スピン軌道相互作用係数」をはじめて厳密に決定しました(図4)。

  • 新規なスピントロニクス・デバイスの探索および低次元電子ガスのエネルギースペクトラムの理論研究

    省電力デバイスを目指して

    トポロジカル絶縁体やスカーミオンと呼ばれるトポロジーが現象を支配している物質や構造を物性理論を使って研究している。同時に、その過程でこれらのトポロジカル絶縁体やスカーミオンを利用した新規なスピンデバイスの提案と実現を目指して研究しています。

    • 図1:トポロジカル絶縁体のバンド構造

    • 図2: 図1の電子密度の等高線図

    • 図3:Neel-typeのスカーミオンの構造の計算結果

    研究の内容

    現在主流のCMOS素子を性能面と電力面で超えるスピンデバイスを提案し、その性能を物性理論で解析する研究をしています。この研究によって、CMOSデバイスを超える性能を持ちながら、省電力なデバイスを創生することが主な研究目的です。普段は、新規なスピンデバイスの性能を計算するために、場の量子論や相対論を用いてスピン伝導率などを計算しています。現在、研究している対象はトポロジカル絶縁体とスカーミオンですが、トポロジカル絶縁体はバルクでは絶縁体であるが、表面のみ自発的にスピン流が流れる物質であるので、上手くデバイスに応用できれば、トポロジカル絶縁体自体は無散逸なので超省電力のデバイスの作製が可能になります。またスカーミオンは磁性体に発生する特異な渦であり、これも電流駆動することでスイッチの役割を果たすことが期待されます。

    近藤 憲治 准教授 Kenji Kondo
    博士(工学)
  • 氷結晶表面の分子レベル光学直接観察

    高さ方向には原子分解能を有する光学顕微鏡の開発とそれを用いた氷結晶表面のその場観察

    株式会社オリンパスエンジニアリングと共同で、高さ方向には原子分解能を有する光学顕微鏡を開発した。現在それを用いて、氷結晶が成長・昇華・融解する機構を、分子レベルで明らかにしようとしている。

    • 過飽和水蒸気から成長する氷結晶(雪と同じ).結晶上の丸い島は,水1分子高さのステップを示す.

    研究の内容

    平らな面で囲まれた結晶は、材料の種類によらず層状に成長する。そのため、結晶が成長するメカニズムやカイネティクスを明らかにするためには、その成長端(一般に「単位ステップ」と呼ばれる) がどのような挙動を示すのかを直接観察する必要がある。しかし、氷結晶の場合には、原子間力顕微鏡や電子顕微鏡等、通常固体表面を分子レベルで観察する際に用いられる顕微鏡を適用することができない。この困難を克服するべく、平らな結晶表面上の原子・分子高さのステップを、非接触・非破壊で直接観察できる光学顕微鏡を開発した。現在これを用いて、氷結晶の成長機構や、ゼロ度以下で氷結晶表面が融ける現象(表面融解と呼ばれる)を、分子レベルで明らかにする研究に取り組んでいる。氷結晶以外にも、結晶表面上を原子・分子高さレベルで調べる研究を広く展開している。

    佐﨑 元 教授 Gen Sazaki
    博士(工学)
  • ソノプラズマ発生装置

    音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法

    超音波によって水中に駆動される音響キャビテーションが崩壊するとき、気泡の内部は高温・高圧状態となり、プラズマ化する(ソノプラズマ)。音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法を見出し、プラズマ応用技術としての展開を図る。

    • 音響キャビテーションを光散乱で観察した様子。(a)の通常の場合では音響キャビテーションは観察されないが、(b)のようにパンチングメタル板を挿入すると定在化した音響キャビテーションが高確率に発生する。

    • 塩化金酸水溶液からの金ナノ粒子の生成をパンチングメタル板の挿入により高速化した例

    研究の内容

    液体中で生成されるプラズマは、ナノテクノロジー、環境工学、および医療工学の観点から高い関心を集めているが、プラズマの発生に高電圧を必要とすることが障害となる場合がある。一方、超音波工学の分野では、音響キャビテーションが崩壊する瞬間に気泡の内部がプラズマ化することが知られていた。我々は、超音波が印加された液中にパンチングメタル板を挿入するという極めて簡単な方法により、位置の固定が困難な音響キャビテーションを定在化させ、高効率に発生させることに成功した。高電圧を用いない液中プラズマ生成法としてユニークであるとの評価を受けている。現在は、本方式のメカニズムを解明し、大型装置を設計するための指針を得ることに注力しているが、今後は、新しいプラズマ応用技術としての様々な展開を図りたいと考えている。

  • ポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子による
    高活性触媒の創製

    高分子担体を反応場とする金属錯体触媒の設計と効率的合成プロセスの開発

    高分子担持金属触媒の創製に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子を開発しました。高分子トポロジーの効果により、金属錯体の不均化や金属凝集による触媒の不活性化を抑制することができます。第一遷移系列金属触媒の配位子として特に有効です。

    研究の内容

    不均一系(不溶性)金属触媒は、反応混合物からの分離が容易で再利用性に優れた環境負荷の少ない有機合成手法ですが、対応する均一系(可溶性)触媒と比較して、触媒活性が低下することが問題です。私たちは、高分子鎖のトポロジー制御に基づき、高活性なモノキレート型単核遷移金属錯体の発生に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzを開発しました。塩化アリールのアミノ化カップリングやエステル-アゾールカップリング等のNi触媒反応などの効率を著しく向上させ、既存触媒では適用困難であった基質に対しても有効です。本触媒は、ろ過による分離や再利用も可能なことから、産業利用が期待されます。

  • 耐高温材料の微細加工による赤外メタマテリアル

    中~遠赤外線を操る材料・デバイスの開発

    中~遠赤外線の波長以下のパターンを持つヒーターや回折格子を作るとこれら電磁波を制御するデバイスを作れることが期待されます。我々は金属炭化物や酸化物の薄膜・積層・微細構造の作製法の開発と素子特性を研究しています。

    • 耐熱材料合成用高周波加熱炉
      (常用2700℃、短時間3000℃)

    • 耐熱材料の微細加工の例

    研究の内容

    電磁波の波長以下のスケールで微細加工された物質は電磁波の反射・透過を制御する働きがあります(メタマテリアルと呼ばれる)。3μm~1000μmの波長をもつ中~遠赤外線は熱の輻射にかかわる電磁波であるとともに、分子振動を励起させることができるため、分子の検出に使うことができます。熱にかかわる材料なので、耐熱性を持たせることにより他では実現できない応用が可能になります。我々は金属炭化物や酸化物などの様々な物性を持つ耐熱性材料に対するプロセス技術を研究するとともに、これら材料の赤外域での基礎物性を測定し、メタマテリアル設計につなげます。中~遠赤外線に対するメタマテリアルの作製により、分子検出用の狭線幅の中赤外発光素子や、輻射熱を制御する材料の作製を目指しています。

  • 電気化学応答性有機色素

    エレクトロクロミズムから多重応答へ(蛍光、旋光性)

    色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本として、蛍光、旋光性(円二色性)などの多重応答が可能な物質群を提供します。本技術では還元種の分解過程が抑制される工夫が施され、また酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性を持ちます。

    研究の内容

    エレクトロクロミズム系は、外部からの電位の変化に対応して色調が変化する化合物の総称です。発色・消色の可逆的な表示が可能な材料として、スマートウインドウなどの調光材料や電子ペーパーなどでの表示機能という観点からも注目されています。色調以外に、蛍光、旋光性(円二色性)なども変化する物質では、用途に応じたテーラーメードな応答が可能となります。
    本技術では、色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本とした、多重応答が可能な物質群を提供します。カチオン性色素の還元種は一般に反応活性で、応答の繰返性は低くなりますが、本技術ではカチオン部位を2つ組み込むことで、還元種の分解過程が抑制されています。また、酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性は、高密度記録材料への応用を可能とするものです。

  • 含フッ素芳香族カルボン酸類の合成

    二酸化炭素から電気を用いて有用カルボン酸を作る

    有機電解法により、数個のフッ素原子を有する容易に入手可能な芳香族化合物と二酸化炭素から、新規含フッ素ビルディングブロックとして有望な種々の含フッ素芳香族カルボン酸を位置選択的に収率よく合成することに成功した。

    研究の内容

    有機化合物へのフッ素原子の導入は医農薬や機能性材料等の分野において非常に重要である。含フッ素有機化合物の合成法として、含フッ素ビルディングブロックを用いる方法があるが、ビルディングブロックとして用いることが可能な含フッ素有機化合物はまだまだ高価でかつ限られており、その開発研究のニーズは高い。今回本研究では、容易に入手可能な含フッ素芳香族化合物と二酸化炭素から有機電解法を用いて種々の官能基を有する含フッ素芳香族カルボン酸を収率よく合成することに成功した。今回合成した含フッ素芳香族カルボン酸類には従来法では合成が困難な新規化合物も種々含まれており、有望な新規含フッ素ビルディングブロックとして医農薬や高機能性物質合成に利用されることが期待できる。

    仙北 久典 准教授 Hisanori Senboku
    博士(工学)
  • ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産

    バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
      ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する

    我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。

    • NFBCおよびNFCにおける偏光顕微鏡像、TEM観察像 偏光顕微鏡像(a,b)、TEM観察像(c,d) NFBC(a,c)、NFC(b,d)

    • 200L容大型ジャーファーメンターを用いた通気攪拌培養における培養経過の一例

    研究の内容

    バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。

    田島 健次 准教授 Kenji Tajima
    博士(工学)
  • 低消費電力型トンネルトランジスタ

    新しい半導体界面で次世代省エネ素子実現へ

    本研究では、髪の毛の数千分の1の大きさの非常に小さなナノワイヤで形成される、新しい半導体固相界面をスイッチ素子に応用することで、これまでにない低消費電力型FET・トンネルFETを提案・実現しました。

    • III-V/Si固相界面による縦型トンネルHEMT素子の開発
      (a)選択成長技術によるシリコン基板上のIII-Vナノワイヤアレイ、(b)変調ドープ型コアマルチシェルナノワイヤの模式図と作製結果の断面TEM像、(c) Si/InGaAsナノワイヤ界面のTEM像、(d) 歪マッピング、(e) 縦型トンネルHEMT素子構造

    研究の内容

    スマートフォンやパソコンの頭脳となるマイクロプロセッサ・半導体集積回路は、基本素子となる電界効果トランジスタ(FET)を小さくし、現在では、およそ20-30億個のFETを敷き詰めることで、高性能化を実現しています。高性能化の一方で、このFETの消費電力の急増が深刻な問題となっています。これは、FETのスイッチング性能(サブスレッショルド係数)に物理的な限界(60 mV/桁)があるためです。今後、抜本的な省エネルギー化を実現するためには、FETの物理限界を突破できる新しいスイッチ素子とその実用化が必要です。本研究では、これまでにない低消費電力型トンネルFETを提案・実現しました。

  • 超撥水・超撥油アルミニウム

    ウェットプロセスによる簡便な防汚表面の作製

    アルミニウム板やメッシュを化学エッチング/陽極酸化することによりマイクロ/ナノ階層ポーラス構造を構築し,さらにフルオロアルキル単分子膜で表面をコーティングすることにより,油を始めとするほぼあらゆる液体に対して濡れない表面を得ることに成功した

    研究の内容

    水や油に濡れない超撥水・超撥油表面は,防汚性,セルフクリーニング性を示す表面として期待されている。本研究は,実用金属材料であるアルミニウムに対して,簡便なウェットプロセスの組み合わせにより,水のみならずオクタンなどの表面張力が20 mN m-1と低い液体をもはじく超撥油表面を実現した。アルミニウム箔への適用も可能であり,様々な場所に防汚表面として利用することもできる。
    さらに,アルミニウムメッシュを用いてその濡れ性を制御することで,油と水を分離するフィルターとしても利用可能である。 

  • 柔粘性強誘電結晶

    分極方向を自在に制御できる有機強誘電体の開発

    柔軟に変形する柔粘性結晶を利用して強誘電体を開発しました。この材料は溶液加工が容易で、加圧で伸展します。これまでの有機強誘電体とは異なり、3次元的な分極処理が可能なため、微結晶粉末のディスクや薄膜でも単結晶のような大きな分極を示します。

    • 強誘電体多結晶の分極処理の概念図。黒線に囲まれた領域が結晶粒子、赤い矢印が各粒子の分極を表す。

    • 加圧された柔粘性強誘電結晶の電子顕微鏡図。単結晶の右半分のみを加圧。

    研究の内容

    強誘電体は不揮発性メモリ、圧電素子、センサーなど、その多様な機能を活かした様々な応用例を持つ重要な電子材料です。これまで実用化されてきた強誘電体のほとんどは、チタバリとよばれるチタン酸バリウムなどの無機酸化物です。しかし、溶液法での加工が難しく、有用な物質の多くが有毒な鉛を含むという問題があります。近年盛んに開発されている有機強誘電結晶は分極方向を3次元的に変更する分極処理が不可能で、多結晶材料では活用出来ません。私たちが最近開発した柔粘性強誘電結晶は分極方向をほぼ自由に変更できるため、ディスクや薄膜中の多結晶の分極方向を揃えて単結晶に近い分極状態に出来ます。また、高温での加圧で伸びて拡がります。つまり、この柔粘性強誘電結晶は、無機酸化物、有機結晶、ポリマーという従来の材料の長所を兼ね備えた強誘電体といえます。

    原田 潤 准教授 Jun Harada
    博士(理学)
  • 太陽光をレーザー光へ変換する新しい結晶材料

    高効率太陽光励起レーザーの実現を目指した
    新規Cr,Nd共ドープ結晶

    開発したCr,Nd:CaYAlO4結晶は、可視域で幅広い吸収帯域を示すとともに、大きい吸収断面積を有する。クロムにより吸収されたエネルギーはネオジムに移動することから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

    • 図1 Cr,Nd:CaYAlO4単結晶

    • 図2 Cr,Nd:CaYAlO4の吸収スペクトル

    • 図3 Cr,Nd:CaYAlO4の蛍光スペクトル

    研究の内容

    クロム(Cr)とネオジム(Nd)を添加したCaYAlO4単結晶を、浮遊帯溶融法と呼ばれる手法を用いて作製した。作製条件を適切に制御することにより、良質な赤色透明の結晶が得られた(図1)。この結晶は、紫外領域から可視領域にわたる非常に幅広い吸収域をもち、太陽光のエネルギーが最大となる波長でも十分な吸収を示す(図2)。また、従来材料であるCr、Nd:YAGと比較すると70倍以上の大きい値を示すことが明らかとなった。このような特性は既存の材料にはない、今回開発した結晶に特有のものである。さらに、クロムの吸収帯での励起によりネオジムが発光することが、その蛍光特性から実証された(図3)ことから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

    樋口 幹雄 特任准教授 Mikio Higuchi
    博士(工学)
  • ナトリウムアミドを用いた低温窒化法

    アンモニアガスボンベを使用しない窒化物・酸窒化物合成

    ナトリウムアミド融液を用いることで、高濃度・高活性な窒素源との反応を引き起こし、酸化物などを低温(300℃以下)で窒化物・酸窒化物に変換する手法。毒ガスであるアンモニアガスボンベを準備することなく窒化物・酸窒化物を合成可能です。

    研究の内容

    300℃以下の低温で酸化物を窒化する新規手法です。従来の窒化手法では、毒ガスであるアンモニアガスボンベやアンモニアガスの回収設備の設置等が必要であり、またアンモニアガスの使用率も低いためアンモニアを大量に使用します。本手法では、ナトリウムアミドをフラックスとして用いることで、毒性のあるアンモニアの使用量を最小限に抑えられ、低温で酸窒化物及び窒化物のナノ結晶が得られます。また、ナトリウムアミドは固体窒素源であり、アンモニア液体ボンベの設置が不要です。また、塩化物とナトリウムアミドを混合することで、瞬間的な昇温反応によって酸窒化物を合成する手法を発見しています。

  • 顕微インデンテーション

    微少領域の硬さ/変形の「見える」化

    押し込み硬さ試験中の圧痕形状変化および周辺の表面変化を「その場(In-situ)」観察できます。動画撮影による高い時間分解能の情報と硬さ試験を組み合わせた高度データの“ハイスループット”収集によって、材料開発や事故原因解明に貢献できます。

    • 図 NiTi超弾性合金における負荷-除荷観察結果

    研究の内容

    硬さ試験は局所的な負荷によって生じた変形から物質・材料の強度を明らかにする手法であり、高い簡便性・再現性から広く用いられています。この手法の簡便性を生かしつつ高度な応力応答情報の取得を目指して、硬さ試験のIn-situ試験化(顕微インデンテーション)を行いました。
    押し込み試験中に透明圧子を通して圧痕内部並びに周辺の試料表面を観察するには光学的条件の最適化が必要ですが、透明圧子の屈折率に近い屈折率を有する液体を圧子周辺に導入することで広範囲の表面観察を可能としました。

  • 環状ポリエチレングリコールを用いたナノ粒子安定化

    高分子の「かたち」に依存した新奇安定化法

    本研究は環状ポリエチレングリコールを用いた金属ナノ粒子の新奇分散安定化手法の開発です。これまでに当研究グループは、環状高分子から成る分子集合体が優れた安定性を有することを見出しました。この現象を応用してナノ粒子の高分散安定化を行うものです。

    • 金ナノ粒子(AuNPs)の安定性評価。環状PEGを用いた場合、分散安定性が良く表面プラズモンの波長が保持されるが(522 nm)、一般の直鎖状PEGの場合、AuNPsの凝集により長波長へ変化する(547 nm)。また、透過型電子顕微鏡像からも環状PEGを用いた場合のAuNPsの分散および直鎖状PEGを用いた場合の凝集が確認できる。

    研究の内容

    現在、多数のナノ粒子系医薬品の研究が行われていますが、ドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアも含めそれらの多くは、生体適合性を有するポリエチレングリコール(PEG)で表面を覆われたナノ粒子になります。これに関して、私たちは環状PEGで修飾した金ナノ粒子(AuNPs)が高塩濃度に対して高い分散安定性を示すことを見出しました。すなわち、分子量4000の環状PEGで修飾されたAuNPは、生理条件よりも高濃度である180 mMのNaCl溶液で1週間以上分散安定性を保持したのに対し、同分子量の直鎖状PEGを用いた場合、僅か45 mMのNaClで3時間内に凝集・沈殿しました。この環状PEGを用いた新奇手法は、造影剤や磁性ナノ粒子を含む種々のナノ粒子系医薬品に応用可能です。

  • 局在プラズモンを用いた人工光合成システム

    光ナノアンテナを用いた可視・近赤外光による水からの
    水素・アンモニアの光合成システム

    高効率な人工光合成を実現するために、金属ナノ構造による光ナノアンテナを用いて可視〜近赤外に至る幅広い波長の太陽光エネルギー変換を可能にし、水の光分解に基づく水素発生、さらに最近エネルギーキャリアとして注目されるアンモニアの光合成に成功した。

    • 図は左から、光アンテナ構造の共鳴スペクトルと光電変換効率のアクションスペクトル、光アンテナ構造を用いて光を水分解する人工光合成システム、および水素・酸素発生量の光照射時間依存性

    研究の内容

    高効率な人工光合成を実現するためには、従来の人工光合成では未利用の可視〜近赤外波長域の太陽光エネルギーを活用し、化学物質に変換するシステムの構築が不可避である。我々は金属ナノ構造の形状や配置を変化させることにより様々な波長の光を効果的に捕集できる光ナノアンテナの設計・作製に成功するとともに、酸化物半導体基板に光ナノアンテナを搭載し、可視〜近赤外に至る幅広い波長域の太陽光により水を光分解して水素と酸素を化学量論的に発生させることに成功した。また、同様の系を用いて空気中の窒素を光還元してアンモニアの光合成にも成功した。アンモニアは次世代のエネルギーキャリアとしても注目を浴びているが、合成には高温・高圧条件が必要であり環境に対する負荷も大きい。本系は太陽光を利用した常温・常圧のアンモニア合成法としても期待される。