北海道大学 研究シーズ集

English

ナノテク・材料:30件

1頁の掲載件数 20 50 改頁しない 分野別アイコン凡例
  • ライフサイエンス
  • 情報通信
  • ナノテク・材料
  • ものづくり技術
  • 人文・社会科学
  • エネルギー
  • 環境
  • 観光・まちづくり
  • 北極域
  • 社会基盤
  • 共用機器
  • 含フッ素芳香族カルボン酸類の合成

    二酸化炭素から電気を用いて有用カルボン酸を作る

    有機電解法により、数個のフッ素原子を有する容易に入手可能な芳香族化合物と二酸化炭素から、新規含フッ素ビルディングブロックとして有望な種々の含フッ素芳香族カルボン酸を位置選択的に収率よく合成することに成功した。

    研究の内容

    有機化合物へのフッ素原子の導入は医農薬や機能性材料等の分野において非常に重要である。含フッ素有機化合物の合成法として、含フッ素ビルディングブロックを用いる方法があるが、ビルディングブロックとして用いることが可能な含フッ素有機化合物はまだまだ高価でかつ限られており、その開発研究のニーズは高い。今回本研究では、容易に入手可能な含フッ素芳香族化合物と二酸化炭素から有機電解法を用いて種々の官能基を有する含フッ素芳香族カルボン酸を収率よく合成することに成功した。今回合成した含フッ素芳香族カルボン酸類には従来法では合成が困難な新規化合物も種々含まれており、有望な新規含フッ素ビルディングブロックとして医農薬や高機能性物質合成に利用されることが期待できる。

    仙北 久典 准教授 Hisanori Senboku
    博士(工学)
  • ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産

    バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
      ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する

    我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。

    • NFBCおよびNFCにおける偏光顕微鏡像、TEM観察像 偏光顕微鏡像(a,b)、TEM観察像(c,d) NFBC(a,c)、NFC(b,d)

    • 200L容大型ジャーファーメンターを用いた通気攪拌培養における培養経過の一例

    研究の内容

    バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。

    田島 健次 准教授 Kenji Tajima
    博士(工学)
  • 低消費電力型トンネルトランジスタ

    新しい半導体界面で次世代省エネ素子実現へ

    本研究では、髪の毛の数千分の1の大きさの非常に小さなナノワイヤで形成される、新しい半導体固相界面をスイッチ素子に応用することで、これまでにない低消費電力型FET・トンネルFETを提案・実現しました。

    • III-V/Si固相界面による縦型トンネルHEMT素子の開発
      (a)選択成長技術によるシリコン基板上のIII-Vナノワイヤアレイ、(b)変調ドープ型コアマルチシェルナノワイヤの模式図と作製結果の断面TEM像、(c) Si/InGaAsナノワイヤ界面のTEM像、(d) 歪マッピング、(e) 縦型トンネルHEMT素子構造

    研究の内容

    スマートフォンやパソコンの頭脳となるマイクロプロセッサ・半導体集積回路は、基本素子となる電界効果トランジスタ(FET)を小さくし、現在では、およそ20-30億個のFETを敷き詰めることで、高性能化を実現しています。高性能化の一方で、このFETの消費電力の急増が深刻な問題となっています。これは、FETのスイッチング性能(サブスレッショルド係数)に物理的な限界(60 mV/桁)があるためです。今後、抜本的な省エネルギー化を実現するためには、FETの物理限界を突破できる新しいスイッチ素子とその実用化が必要です。本研究では、これまでにない低消費電力型トンネルFETを提案・実現しました。

  • 超撥水・超撥油アルミニウム

    ウェットプロセスによる簡便な防汚表面の作製

    アルミニウム板やメッシュを化学エッチング/陽極酸化することによりマイクロ/ナノ階層ポーラス構造を構築し,さらにフルオロアルキル単分子膜で表面をコーティングすることにより,油を始めとするほぼあらゆる液体に対して濡れない表面を得ることに成功した

    研究の内容

    水や油に濡れない超撥水・超撥油表面は,防汚性,セルフクリーニング性を示す表面として期待されている。本研究は,実用金属材料であるアルミニウムに対して,簡便なウェットプロセスの組み合わせにより,水のみならずオクタンなどの表面張力が20 mN m-1と低い液体をもはじく超撥油表面を実現した。アルミニウム箔への適用も可能であり,様々な場所に防汚表面として利用することもできる。
    さらに,アルミニウムメッシュを用いてその濡れ性を制御することで,油と水を分離するフィルターとしても利用可能である。 

  • 柔粘性強誘電結晶

    分極方向を自在に制御できる有機強誘電体の開発

    柔軟に変形する柔粘性結晶を利用して強誘電体を開発しました。この材料は溶液加工が容易で、加圧で伸展します。これまでの有機強誘電体とは異なり、3次元的な分極処理が可能なため、微結晶粉末のディスクや薄膜でも単結晶のような大きな分極を示します。

    • 強誘電体多結晶の分極処理の概念図。黒線に囲まれた領域が結晶粒子、赤い矢印が各粒子の分極を表す。

    • 加圧された柔粘性強誘電結晶の電子顕微鏡図。単結晶の右半分のみを加圧。

    研究の内容

    強誘電体は不揮発性メモリ、圧電素子、センサーなど、その多様な機能を活かした様々な応用例を持つ重要な電子材料です。これまで実用化されてきた強誘電体のほとんどは、チタバリとよばれるチタン酸バリウムなどの無機酸化物です。しかし、溶液法での加工が難しく、有用な物質の多くが有毒な鉛を含むという問題があります。近年盛んに開発されている有機強誘電結晶は分極方向を3次元的に変更する分極処理が不可能で、多結晶材料では活用出来ません。私たちが最近開発した柔粘性強誘電結晶は分極方向をほぼ自由に変更できるため、ディスクや薄膜中の多結晶の分極方向を揃えて単結晶に近い分極状態に出来ます。また、高温での加圧で伸びて拡がります。つまり、この柔粘性強誘電結晶は、無機酸化物、有機結晶、ポリマーという従来の材料の長所を兼ね備えた強誘電体といえます。

    原田 潤 准教授 Jun Harada
    博士(理学)
  • 太陽光をレーザー光へ変換する新しい結晶材料

    高効率太陽光励起レーザーの実現を目指した
    新規Cr,Nd共ドープ結晶

    開発したCr,Nd:CaYAlO4結晶は、可視域で幅広い吸収帯域を示すとともに、大きい吸収断面積を有する。クロムにより吸収されたエネルギーはネオジムに移動することから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

    • 図1 Cr,Nd:CaYAlO4単結晶

    • 図2 Cr,Nd:CaYAlO4の吸収スペクトル

    • 図3 Cr,Nd:CaYAlO4の蛍光スペクトル

    研究の内容

    クロム(Cr)とネオジム(Nd)を添加したCaYAlO4単結晶を、浮遊帯溶融法と呼ばれる手法を用いて作製した。作製条件を適切に制御することにより、良質な赤色透明の結晶が得られた(図1)。この結晶は、紫外領域から可視領域にわたる非常に幅広い吸収域をもち、太陽光のエネルギーが最大となる波長でも十分な吸収を示す(図2)。また、従来材料であるCr、Nd:YAGと比較すると70倍以上の大きい値を示すことが明らかとなった。このような特性は既存の材料にはない、今回開発した結晶に特有のものである。さらに、クロムの吸収帯での励起によりネオジムが発光することが、その蛍光特性から実証された(図3)ことから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

    樋口 幹雄 特任准教授 Mikio Higuchi
    博士(工学)
  • ナトリウムアミドを用いた低温窒化法

    アンモニアガスボンベを使用しない窒化物・酸窒化物合成

    ナトリウムアミド融液を用いることで、高濃度・高活性な窒素源との反応を引き起こし、酸化物などを低温(300℃以下)で窒化物・酸窒化物に変換する手法。毒ガスであるアンモニアガスボンベを準備することなく窒化物・酸窒化物を合成可能です。

    研究の内容

    300℃以下の低温で酸化物を窒化する新規手法です。従来の窒化手法では、毒ガスであるアンモニアガスボンベやアンモニアガスの回収設備の設置等が必要であり、またアンモニアガスの使用率も低いためアンモニアを大量に使用します。本手法では、ナトリウムアミドをフラックスとして用いることで、毒性のあるアンモニアの使用量を最小限に抑えられ、低温で酸窒化物及び窒化物のナノ結晶が得られます。また、ナトリウムアミドは固体窒素源であり、アンモニア液体ボンベの設置が不要です。また、塩化物とナトリウムアミドを混合することで、瞬間的な昇温反応によって酸窒化物を合成する手法を発見しています。

  • 顕微インデンテーション

    微少領域の硬さ/変形の「見える」化

    押し込み硬さ試験中の圧痕形状変化および周辺の表面変化を「その場(In-situ)」観察できます。動画撮影による高い時間分解能の情報と硬さ試験を組み合わせた高度データの“ハイスループット”収集によって、材料開発や事故原因解明に貢献できます。

    • 図 NiTi超弾性合金における負荷-除荷観察結果

    研究の内容

    硬さ試験は局所的な負荷によって生じた変形から物質・材料の強度を明らかにする手法であり、高い簡便性・再現性から広く用いられています。この手法の簡便性を生かしつつ高度な応力応答情報の取得を目指して、硬さ試験のIn-situ試験化(顕微インデンテーション)を行いました。
    押し込み試験中に透明圧子を通して圧痕内部並びに周辺の試料表面を観察するには光学的条件の最適化が必要ですが、透明圧子の屈折率に近い屈折率を有する液体を圧子周辺に導入することで広範囲の表面観察を可能としました。

  • 環状ポリエチレングリコールを用いたナノ粒子安定化

    高分子の「かたち」に依存した新奇安定化法

    本研究は環状ポリエチレングリコールを用いた金属ナノ粒子の新奇分散安定化手法の開発です。これまでに当研究グループは、環状高分子から成る分子集合体が優れた安定性を有することを見出しました。この現象を応用してナノ粒子の高分散安定化を行うものです。

    • 金ナノ粒子(AuNPs)の安定性評価。環状PEGを用いた場合、分散安定性が良く表面プラズモンの波長が保持されるが(522 nm)、一般の直鎖状PEGの場合、AuNPsの凝集により長波長へ変化する(547 nm)。また、透過型電子顕微鏡像からも環状PEGを用いた場合のAuNPsの分散および直鎖状PEGを用いた場合の凝集が確認できる。

    研究の内容

    現在、多数のナノ粒子系医薬品の研究が行われていますが、ドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアも含めそれらの多くは、生体適合性を有するポリエチレングリコール(PEG)で表面を覆われたナノ粒子になります。これに関して、私たちは環状PEGで修飾した金ナノ粒子(AuNPs)が高塩濃度に対して高い分散安定性を示すことを見出しました。すなわち、分子量4000の環状PEGで修飾されたAuNPは、生理条件よりも高濃度である180 mMのNaCl溶液で1週間以上分散安定性を保持したのに対し、同分子量の直鎖状PEGを用いた場合、僅か45 mMのNaClで3時間内に凝集・沈殿しました。この環状PEGを用いた新奇手法は、造影剤や磁性ナノ粒子を含む種々のナノ粒子系医薬品に応用可能です。

  • 局在プラズモンを用いた人工光合成システム

    光ナノアンテナを用いた可視・近赤外光による水からの
    水素・アンモニアの光合成システム

    高効率な人工光合成を実現するために、金属ナノ構造による光ナノアンテナを用いて可視〜近赤外に至る幅広い波長の太陽光エネルギー変換を可能にし、水の光分解に基づく水素発生、さらに最近エネルギーキャリアとして注目されるアンモニアの光合成に成功した。

    • 図は左から、光アンテナ構造の共鳴スペクトルと光電変換効率のアクションスペクトル、光アンテナ構造を用いて光を水分解する人工光合成システム、および水素・酸素発生量の光照射時間依存性

    研究の内容

    高効率な人工光合成を実現するためには、従来の人工光合成では未利用の可視〜近赤外波長域の太陽光エネルギーを活用し、化学物質に変換するシステムの構築が不可避である。我々は金属ナノ構造の形状や配置を変化させることにより様々な波長の光を効果的に捕集できる光ナノアンテナの設計・作製に成功するとともに、酸化物半導体基板に光ナノアンテナを搭載し、可視〜近赤外に至る幅広い波長域の太陽光により水を光分解して水素と酸素を化学量論的に発生させることに成功した。また、同様の系を用いて空気中の窒素を光還元してアンモニアの光合成にも成功した。アンモニアは次世代のエネルギーキャリアとしても注目を浴びているが、合成には高温・高圧条件が必要であり環境に対する負荷も大きい。本系は太陽光を利用した常温・常圧のアンモニア合成法としても期待される。