北海道大学 研究シーズ集

北極域:7件

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  • 大規模火災後の生態系復元機構の解明と応用

    地球温暖化の緩和に向けて

    北アメリカ北極域では地球温暖化に伴う火災の大規模化が起きている。そのため火災後の生態系回復様式も変化し、新たな切り口での生態系復元機構の解明が急務である。更に、本研究で得た知見を応用し様々な大規模撹乱後の生態系復元手法の開発も必要である。

    • 2004年にアラスカで発生したクロトウヒ林大規模火災後の景観(2005年撮影)。従来の火災では、全焼は稀であったが、本火災では有機物層までが焼き尽くされた。そのため、生態系回復様式が変化し、早急な遷移機構の解明と保全・復元手法の開発が課題となる。

    • 森林火災がおよぼす主要な生態系機能の変化。短期的には、火災時の直接CO2放出、長期的には光合成低下に伴うCO2吸収の減少と永久凍土層の融解に伴うメタン放出という、地球温暖化への正のフィードバック効果がある。

    研究の内容

    アラスカのタイガ・ツンドラ帯は、落雷に伴う火災多発地域であるため、火災に順応した生態系回復が見られる。これまでは、強度が低く泥炭を含めた有機物層の全焼には至らない林冠火災が主であった。特に、北向き斜面ではクロトウヒが優占し、林冠火災直後からクロトウヒの散布種子による速やかな森林再生ができた。
    しかし、気候変動に伴い火災は強度・頻度ともに増加傾向にある。2004年のアラスカ森林火災は、総焼失面積が四国を上回り、有機物層も焼き尽くされた。そのため、大規模火災後の生態系回復は、林冠火災後とは大きく異なる。特に、種子発芽・成長に有機物層の存在は不可欠であり、有機物蓄積には、母材となるミズゴケの定着促進手法開発が肝要であることが明らかとなった。加えて、ツンドラ帯での火災が生態系に与える影響についても研究を行った。

  • 気候変動下における北極海洋システムの回復力と適応力

    環北極海全域の海洋生態系の統合的理解

    日本、米国、ノルウェーで進行中の環北極海域(北極海および隣接する周辺の亜寒帯海域)の既存研究課題の個別研究成果を発表する国際ワークショップを開催し、共通点や差異を整理しながら各海域における成果の統合的な理解を目指している。

    • 植物プランクトンの大型サイズの占有率分布。赤いところほど珪藻などの大型の植物プランクトンが占める。(a)2006年8月 (b)2007年8月

    研究の内容

    本研究では、環北極海域(北極海および隣接する周辺の亜寒帯海域)における共通点や差異を整理しながら太平洋−北極海−大西洋における環境変化と海洋生態系の応答について統合的に理解することを目的とする。国際共同研究プログラムIMBER (海洋生物地球化学と生態系の統合研究)の地域研究プログラムESSAS (Ecosystem Studies of Sub-Arctic and Arctic Seas:亜寒帯域および極海における海洋生態系研究)を母体にそこに参画している日本、米国、ノルウェーの科学運営委員を中心に研究を推進する。具体的には、2015年から2018年の間に、各国で進行している既存の研究成果を発表する国際ワークショップを3回開催し、環北極海全域の海洋生態系の統合的理解を図る。

    齊藤 誠一 特任教授 センター長 Sei-Ichi Saitoh
    水産学博士
  • 北極域永久凍土生態系の炭素収支

    フィールドとラボのコラボで人と社会を含む系の仕組みを知る

    日本の北に位置する東シベリア。ロシア北極域に広がる永久凍土生態系の植生と水・炭素収支の解明に取り組んでいます。タイガ林やツンドラの自然生態系の仕組みを解明するとともに、そこに暮らす人々の生活や経済活動も含めた北極域の系の解明を目指しています

    • ロシア東シベリア北極圏での生態系炭素収支観測

    • 東シベリア北極圏での春の積雪観測

    • 樹木年輪の炭素安定同位体比を利用したタイガ林の環境診断。温暖化に伴う樹木の生長量の低下に加えて、異常気象も生態系や人々の暮らしに影響を及ぼしている。

    研究の内容

    北極域に広がるタイガ林は大気CO2の吸収という重要な役割を担っていますが、近年の温暖化はその機能を低下させる可能性があることが明らかになってきました。また、東シベリア北極圏の河川低地に広がるタイガ−ツンドラ境界では、微地形と土壌水分が植生や温室効果ガスの吸収・放出を支配しています。このような生態系の仕組みがフィールドワークとラボでのサンプルの分析から少しづつわかってきました。一方、人々の暮らしや社会に目を向けると、そこは気温が夏期は30度を上回り、冬期は-50度を下回る日もめずらしくない極寒の世界で、ヤクーツクは他に例を見ない永久凍土上に30万人が暮らす大都市です。また、北極圏では道路もなく孤立した村落に人々が暮らしています。人・社会を含む脆弱な北極域の系の解明を目指しています。

    杉本 敦子 教授 Atsuko Sugimoto
    理学博士
  • グリーンランドにおける氷河氷床・海洋相互作用

    温暖化するグリーンランドの沿岸環境

    北極域に位置するグリーンランドでは、氷河氷床の質量が近年急速に減少しています。わたしたちは、氷河氷床と海洋が接するグリーンランド沿岸の環境変化に着目して、現地調査や人工衛星データを用いた研究を行っています。

    • 氷に覆われた北極域の島グリーンランド

    • 氷河上での観測風景

    • 年々後退する氷河の末端部

    研究の内容

    グリーンランドは日本国土の約6倍の面積を持ち、その80%が氷河氷床で覆われています。このグリーンランドの氷が、地球温暖化の影響を受けて急速に減少しています。特に氷床から海洋へ流れ込む氷河で顕著な変化が起きており、温暖化する海洋の影響を示唆しています。また融け水が海に流入して海水準が上昇する他、海洋循環や生態系の変化が予想されますが、その詳細は明らかになっていません。このような背景を受けて、氷河氷床と海洋の相互作用、その結果生じるグリーンランド沿岸環境の変化解明に取り組んでいます。特に北西部のカナック地域に焦点をあて、現地観測や人工衛星データ解析を実施しています。最終的には、環境変化が漁業や交通に与える影響を明らかにして、地元住民に成果をフィードバックすることを目指します。

    杉山 慎 教授 Shin Sugiyama
    博士(地球環境科学)
  • シベリア先住民と野生動物の共生策を探る

    “利用しつつ守る”順応的鳥獣管理システムの実践研究

    地域社会と野生動物の軋轢(農業被害や外来種問題など)を軽減するため、住民参加・住民主体の調査・対策を企画・実施し、ボトムアップ型の政策支援を行っています。近年はシベリア先住民の暮らしを守る野生動物保護区の設定にも携わっています。

    • 調査対象の野生ツンドラトナカイ(サハ共和国にて)

    • 先住民との軋轢が増加するホッキョクグマ(同上、IBPC提供)

    • 調査データを地元の子供たちの環境学習に活用(同上)

    研究の内容

    ◇野生トナカイなどの実態調査と保護区の設定
     ”日本に最も近い北極”である、ロシア連邦サハ共和国の北極域において、先住民が利用する野生動物(トナカイ、ジャコウウシ、オオカミなど)に衛星発信機を装着し、温暖化の影響や季節移動の実態を明らかにしてきました。またその情報を元に、先住民団体、地方行政府、狩猟団体などと協働し、伝統的生活に資する保護区や猟区を設定して評価を行っています。
    ◇渡り鳥の生息実態調査と国際保護区の評価
    シベリアは、日本をはじめ北極域・北方圏を利用する渡り鳥の重要な繁殖地ですが、やはり温暖化により生息環境が変化しつつあります。そこでこれまで個別に行われていた各国の調査をネットワークし、温暖化の影響と生息地保護区の評価を総合的に行うための調査・研究・実践を行っています。

  • 北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング

    永久凍土融解に伴う地表沈降の検出

    人工衛星「だいち」に搭載の合成開口レーダー(SAR)で得られるデータから、地表変形の画像を検出できる。従来は地震や火山活動に伴う地表の変位が主なターゲットだったが、地震火山とは無縁の北極圏の永久凍土地帯でも局所的な地盤変動が検出され始めた。

    • (左)対象地域のGoogle Earth画像。(右)2008年7月16日と2009年7月19日の「だいち」データに基づくInSAR画像。白丸で囲まれた領域の中で紫色に見えるところが、衛星から遠ざかる方向に変形している。この間に起きたと地盤変動と考えられる。

    研究の内容

    地震や火山活動の研究では、地表のわずかな動きを捉えて、地球内部を推定することがあります。この「動き」は地殻変動とよばれ、いまでもその高精度・高品質化にむけた努力が続いています。近年は衛星SARの位相データを使うInterferometric SAR(SAR干渉法)によって、遠隔地や海外の地殻変動も検出できるようになりました。北極圏では、いわゆる地殻変動は皆無ですが、下の図が示すように西シベリアでも明らかな「地盤変動」が検出されています。これは北極圏に多く見られる「サーモカルスト」とよばれる地形の周囲に見られることから、永久凍土の融解に伴う地表の沈降を捉えているものと考えられます。従来ほとんど手付かずだったサーモカルスト地形の形成過程の研究が緒に就いたところで、温暖化の影響の評価は今後の重要な課題です。

    古屋 正人 教授 Masato Furuya
    博士(理学)
  • 光るプランクトン

    カイアシ類のGFPとルシフェラーゼ

    海洋生物の中には生物発光をする様々な生き物が居ます。プランクトンの中で最優占するカイアシ類から、蛍光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)と分泌型ルシフェラーゼ(発光酵素)を同定しました。

    • 北極海では近年の海氷衰退により、もともと北極海にあった群集(左図の群集B)が、太平洋産種を含む亜寒帯性の群集(群集A)に代わりつつある様子が、1991/92年と2007/08年の比較で分かります。動物プランクトン相に優占するカイアシ類には、生物発光能力を持つ種も多く、右の写真はGFP(右上図)とルシフェラーゼ(右中図)を持つ種です(右下図はカイアシ類の明視野写真)。

    研究の内容

    動物プランクトンは、海洋生態系において基礎生産を高次生物に受け渡す、エネルギー転送者としての役割を持っています。北極海に優占する動物プランクトンはカイアシ類で、大半の種が1年以内の世代時間を持ち、かつホルマリン固定にて、半永久的な試料保存が可能なため、該当海域における生物生産の経年変動を評価するのに適した分類群です。またカイアシ類のうち、いくつかの種は生物発光能力があります。これは、暗い海の中で、捕食されそうになった時に発光し、捕食者への目くらましに使用すると考えられています。カイアシ類から、蛍光タンパク質(GFP)とルシフェラーゼ(発光酵素)を同定しました。

    山口 篤 准教授 Atsushi Yamaguchi
    博士(水産学)