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海洋バイオマスからのバイオ燃料生産
海洋微生物触媒を活用した海藻からの燃料生産
再生可能なエネルギーの開発に向けて、海洋バイオマス由来のバイオ燃料生産が期待されています。我々はマリンビブリオを核として、その生産性や基質利用能を向上させる技術基盤の理解を目指しています。
研究の内容
地球温暖化や資源・エネルギーの枯渇を代表とする地球環境問題への取り組みとして、海藻糖質を基質としたエネルギー生産が挙げられます。これまでに、海洋無脊椎動物から見出したマリンビブリオを活用し、高い塩分濃度条件下でも、褐藻糖質(マンニトールやアルギン酸)や、さらには海藻粉末から直接エタノールや水素の生産を可能とする技術を開発しました。遺伝子構造や遺伝子発現解析、およびマリンビブリオの代謝改変によって、バイオ燃料生産性の向上や基質利用可能性の拡大を進めています。
澤辺 智雄 教授 Sawabe Tomoo -
稲わら等農業未利用残渣のエネルギーサプライチェーン
稲わらなどの農業未利用残渣を利用形態に応じた燃料に変換し供給するシステム構築
燃料利用するのが困難であった稲わらなどの農業残渣を、保管・運搬・エネルギー利用に適した形態へ変換する“半炭化技術”の開発を行いました。燃焼時のクリンカ軽減およびPMの排出抑制に寄与します。
研究の内容
・稲わらペレット製造技術(木質と稲わら混合ペレット含む)
・半炭化(トレファクション)による燃料品質の向上と利用用途拡大(発熱量UP、微粉化可能、火力発電所及び木質バイオマス発電所での混焼)
・サプライチェーン設計とコスト最適化石井 一英 教授 Kazuei Ishii博士(工学) -
バイオマス由来の環境にやさしい海洋生物付着防止化合物
フジツボなどに対する有害な海洋生物付着阻害剤が海洋環境汚染の原因となっており、安全な代替品開発が求められている。私たちは、バイオマス由来の化合物を合成することで強力かつ低毒性化合物の創出に成功している。更なる最適化も可能である。
研究の内容
人類の海洋利用(船舶や発電所の冷却管など)は不可欠であるが、フジツボなどの付着生物によって船舶の燃費悪化や詰まりなどの機能低下を引き起こされる。機能低下を防止するために、有機スズ化合物が使用されてきたが毒性のため使用が禁止され、代替品の開発が望まれている。私たちは、ウミウシなどの海洋生物が他の生物の付着から防御するために用いる化合物に着目している。化合物の合成の結果、付着防止に重要な官能基(付着防止ユニット)を見出した。この官能基を安価な海洋生物由来のバイオマスに短工程で導入し、合成品の付着阻害試験(タテジマフジツボのキプリス幼生)を行ったところ、非常に強い付着阻害活性と極めて弱い毒性を併せ持つことを見出した。現在、類似化合物の合成や更なる機能を付与する研究を展開している。
梅澤 大樹 准教授 Taiki Umezawa博士(理学) -
社会技術システムとしてのバイオマス利活用に関する研究
地域循環によるバイオエネルギー普及を目指して
循環計画システム研究室では、生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材や稲わら等のバイオマスを地域内で利用し、地域分散型のバイオエネルギーを創り出すための、技術と社会の仕組み作り(社会技術システム)に関する研究をしています。
研究の内容
本研究室では、バイオマス(生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材、稲わらなど)から燃焼やメタン発酵によって回収されたエネルギーを、地域内に存在するエネルギー需要者(公共施設や介護・福祉施設、ビニールハウス等の農業施設、食品工場等)と結びつけることにより、環境と地域振興(経済)の両方に貢献できるシステム提案(実験やフィールド調査に基づく計画、モデリング、評価)を行っています。さらに、民間企業の協力を得て、寄附分野循環・エネルギー技術システム分野(古市徹客員教授、藤山淳史特任助教、http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/mces/)とも連携し、エコで安全なエネルギーに関する研究を行っています。
石井 一英 教授 Kazuei Ishii博士(工学) -
成長のツボを押す新しい植物生育促進技術
排水を活用する次世代バイオマス生産と植物工場への共生細菌の利用可能性
北海道大学植物園のウキクサ亜科植物から全く新しい成長促進細菌P23を発見した。P23は植物の表面スイッチを押すことでその生育を促進する。ウキクサは排水を肥料として生育する高付加価値バイオマスであり、P23との共生によってその生産速度が約2倍
研究の内容
水生植物ウキクサは排水中の窒素やリンを吸収して生育することが可能かつ、リグニンやセルロースをほとんど含まないソフトバイオマスである。そのタンパク質含量は大豆に匹敵する約30%であり、生育環境によってデンプン蓄積量も50%に達する。前者の特徴は家畜飼料としてそのまま利用可能であり、後者はバイオ燃料生産および化成品前駆体HMFを生産するための原料として有用である。このような、次世代バイオマスの生産収率を向上するために、私たちは表層細菌の共生作用による植物生育促進技術開発を行っている。その適用範囲は、ウキクサの栽培以外に野菜・穀類の水耕栽培(植物工場)が想定される。これは遺伝子組換えを伴わない、自然の摂理に従った古くて新しいバイオ技術である。
森川 正章 教授 Masaaki Morikawa博士(工学)