北海道大学 研究シーズ集

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あ行の研究者:40件

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  • プラズモンを用いた最先端ナノ光リソグラフィー

    シングルナノメートルの加工分解能を有する
    光リソグラフィー技術

    プラズモン共鳴による光電場の局在を用いれば、微小な領域に光電場を自在に局在化できます。本技術では、プラズモンの高次の共鳴モードの散乱光を利用して数nmの分解能の光リソグラフィー技術を発明しました。

    • プラズモンリソグラフィーにより形成されたフォトレジストナノパターン

    研究の内容

    従来の光リソグラフィーの分解能は波長で決まりますが、本技術はフォトマスクの金属ナノ構造の加工分解能によって決定されます。フォマスクである金属ナノ構造に赤外光を照射することによりシングルナノメートルの分解能でパターンを転写できる技術です。本技術の特徴として、赤外光を照射するだけでマスクパターンの形状をそのまま転写可能であること、近接場光ではなく伝播光を使用しているため高アスペクト比の加工が期待されること、そしてライン&スペースだけではなく、三角形、ナノギャップ、チェインなどあらゆる形状のパターンの作製が可能であることなどが挙げられます。比較的大面積にナノパターンの転写が必要なフォトニック結晶、プラズモン太陽電池、光学素子表面のモスアイ構造形成技術などへも応用が期待されます。

  • 一倍体性が動物個体発生に及ぼす影響の理解

    産業利用可能な一倍体制御技術の確立を目指して

    ゲノムを1セットしか持たない一倍体状態が動物個体発生に重篤な障害をもたらす仕組みを解明し、遺伝子工学や品種改良に利用可能な一倍体個体作成技術の確立を目指す。

    研究の内容

    動物細胞の体をつくる細胞は、母方父方2セットのゲノムを持つ「二倍体」です。一方、通常そのままでは増殖を行わない未受精卵を賦活化し、個体発生を誘導すると(単為発生)、母方のゲノムしか持たない「一倍体」胚となります。そこから一倍体個体が得られれば、遺伝子工学や純系作成に大変有用ですが、脊椎動物一般において一倍体胚は「半数性症候群」と呼ばれる初期発生異常により死滅するため、一倍体個体技術の利用は実現していません。私たちは、ヒト培養細胞およびマウス初期胚をモデルに、分子細胞生物学の技術を駆使して、一倍体状態が、発生過程に及ぼす影響を細胞レベルで明らかにすることを目指しています。その成果をもとに、「半数性症候群」を解消する細胞操作法を確立し、安定な形質を持ち生存が可能な一倍体個体の作成を可能にすることを目指しています。

  • コミュニティ型ワークスペースにおける協同と価値創出

    コワーキングの展開過程

    近年、組織や地域社会において、職種や所属等が必ずしも同一でない個人が交流し状況に応じて協同する働き方、およびその際に共有する仕事場が注目を集めています。本研究は、このような場における協同と価値創出の過程を明らかにしようとしています。

    • 働く場に関する概念の理論的位置づけ

    • コワーキングスペースの様子

    • コワーキングスペースの様子

    研究の内容

    本研究の目的は、コミュニティ型ワークスペースにおける協同とそれにもとづく価値創出の過程を解明することです。コミュニティ型ワークスペースとは、「個人がコミュニケーションを通じて他者と情報や知恵を共有し、状況に応じて協同しながら価値を創出していくための開放的なワークスペース」を意味します。このような場の代表例として「コワーキングスペース(coworking space)」が挙げられ、近年、欧米をはじめ世界中で浸透しつつあります。背景には、組織や地域社会で依然として支配的な「閉鎖的な場における画一性の高いメンバー間の交流・協同」を問い直し、個の自律と連帯の両立を図る動きがあります。本研究により、未だほとんど明らかにされていない当該ワークスペースの設計や運営、組織的・社会的活用に資する知見の提示を期待できます。

    宇田 忠司 准教授 Tadashi Uda
    博士(経営学)
    大学院経済学研究院 現代経済経営部門 経営分析分野
  • バイオマス由来の環境にやさしい海洋生物付着防止化合物

    フジツボなどに対する有害な海洋生物付着阻害剤が海洋環境汚染の原因となっており、安全な代替品開発が求められている。私たちは、バイオマス由来の化合物を合成することで強力かつ低毒性化合物の創出に成功している。更なる最適化も可能である。

    研究の内容

    人類の海洋利用(船舶や発電所の冷却管など)は不可欠であるが、フジツボなどの付着生物によって船舶の燃費悪化や詰まりなどの機能低下を引き起こされる。機能低下を防止するために、有機スズ化合物が使用されてきたが毒性のため使用が禁止され、代替品の開発が望まれている。私たちは、ウミウシなどの海洋生物が他の生物の付着から防御するために用いる化合物に着目している。化合物の合成の結果、付着防止に重要な官能基(付着防止ユニット)を見出した。この官能基を安価な海洋生物由来のバイオマスに短工程で導入し、合成品の付着阻害試験(タテジマフジツボのキプリス幼生)を行ったところ、非常に強い付着阻害活性と極めて弱い毒性を併せ持つことを見出した。現在、類似化合物の合成や更なる機能を付与する研究を展開している。

  • 木材成分リグニンを電子デバイス材料へ

    リグニンの成形と機能性材料への変換

    リグニンはセルロースに次ぐ賦存量がありますが、燃焼してエネルギーに使うしか、現在は有効利用がありません。このリグニンを繊維やフィルムに成形して、これらを電気二重層キャパシタ(EDLC)の電極やセパレータとして利用する研究を進めています。

    • リグニンのエレクトロスピニング繊維から調製した電極用活性炭素繊維

    • リグニンを原料とする電極の積層化(高容量、高出力)

    • セパレータとして利用するリグニンのポリエステルフィルム
      (折り紙ができるほど柔軟)

    研究の内容

    EDLCは、Liイオン電池などの二次電池に代わる次世代蓄電池として注目されている電子デバイスであります。EDLCの中で、電極やセパレータと呼ばれる部材は、高分子物質から作られているので、この高分子を木質バイオマスの主要成分であるリグニンで代替するための研究を、我々は進めています。リグニンをエレクトロスピニングにより微細繊維に成形し、これを活性炭素繊維に変換することで、電極材料に要求される大きな表面積を達成しました。これにより、高いエネルギー密度とパワー密度を発現する電極の作製に至りました。また、リグニンを柔軟性に富むポリエステルフィルムに変換することで、従来のセパレータと同等の性能を発現する材料も調製できました。現在は、更なる高性能化に取り組んでいます。

  • センサレスで実装可能な非線形補償器

    PID制御系に容易に追加可能な非線形補償器

    現在、産業界ではPID制御が主力の制御手法として用いられていますが、PID制御則には摩擦や重力項といった非線形項の影響により制御精度が劣化するという問題があります。我々は、PID制御器に対し容易に追加できる非線形補償器を提案しています。

    研究の内容

    ディジタル加速度制御(DAC)はモデル化困難な非線形項やモデリング誤差が存在する系に対してロバストな制御則です。DACは非常に効果的な制御器ですが、加速度目標値に対して制御を行うため単体では位置制御ができません。そこで、一般的なPID制御系と組み合わせたPID-DAC併合制御系によりロバストな位置・加速度制御が実現できます。さらにPID制御器などに「センサレス」で「容易」に追加することができる新しい非線形補償器として、制御対象の加速度目標値を0とした「PID-DA0制御系」、加加速度目標値を0とした「PID-DJ0制御系」という2つの制御器を提案しています。双方とも既存のPID制御器に簡単に追加でき、さらには追加のセンサも必要ないことからセンサレスでシステムの性能を向上できるという大きなメリットを持ちます。

  • 遺伝子情報の機械学習による分類

    細胞の受容体と化合物の結合予測

    細胞の表面の様々な受容体は恒常性の維持や環境応答に重要な役割を果たしていますが、結合しうる化合物を明らかにするのは難しいとされています。機械学習によって結合化合物の候補を絞る方法を提案しています。

    • 各種の匂い物質に対する受容の機械学習による分類。

    • 立体構造モデリングによる検証。

    研究の内容

    ヒトゲノムが解読され、遺伝子の多くが解明されつつありますが、恒常性維持や環境応答に重要な役割を果たす受容体は、多くが膜タンパク質であり発現量も少ないことなどから、構造や機能の解明がなかなか進んでいません。一方、受容体の多くはその機能的な側面から、これからの創薬の主要ターゲットと期待されており、個人差を生み出す要因であると考えられます。受容体に結合しうる化合物を効率よく絞り込むため、機械学習技術を応用しています。

  • 均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応

    シスアルケンとアミン類の選択的合成

    医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。

    研究の内容

    酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。

  • 高温・空気中で安定した性能を示す実用的な熱電変換材料

    再現性良く実用レベルの高性能を示す酸化物熱電材料

    Ba1/3CoO2が、空気中・600℃においてZT ~0.55を示すことを発見しました。高温・空気中で再現性良く高性能を示す実用的な熱電変換材料がついに実現したと言えます。

    • Ba1/3CoO2の結晶構造(左)と熱電変換性能指数ZTの温度依存性(右)

    • 層状コバルト酸化物AxCoO2(Ax = Na3/4、 Ca1/3、 Sr1/3、 Ba1/3)の熱安定性。(左)作製直後のAxCoO2薄膜の室温における電気抵抗率。Ba1/3CoO2の抵抗率は、約0.85 mΩ cm。(右)空気中・室温から650℃まで、50℃刻みで昇温し、各温度で30分間加熱した後、室温で計測したAxCoO2薄膜の電気抵抗率の加熱温度依存性。Ba1/3CoO2薄膜の室温における電気抵抗率は空気中・600℃加熱後も変化しなかった。

    • 層状コバルト酸化物AxCoO2(Ax = Na3/4、 Ca1/3、 Sr1/3、 Ba1/3)の空気中における熱電特性の温度依存性。Ba1/3CoO2薄膜の出力因子は温度上昇に対して増加し、600℃では約1.2 mW m−1K−2であった。一方、熱伝導率は温度上昇に対して減少し、600℃では約1.9 W m−1 K−1であった。その結果、性能指数ZTは温度上昇に対して増加し、600℃では約0.55に達した。

    • Ba1/3CoO2薄膜の空気中、600℃における熱電能。(上)環境温度、(下)熱電能。Ba1/3CoO2薄膜の熱電能は、約2日間経過後においても130~140 μV K−1で安定している。

    研究の内容

    【背景】熱電変換は、廃熱を再資源化する技術として注目されています。いくつかの酸化物が実用材料PbTeの性能指数ZTを超える熱電材料になると提案されましたが、再現性がなく、実用化されることはありませんでした。当研究グループは、Ba1/3CoO2が室温においてZT ~0.11を示すことを発見しましたが、その高温特性は未解明のままでした。
    【アプローチ】Ba1/3CoO2エピタキシャル薄膜を作製し、安定な加熱温度範囲を調べ、その温度範囲内における熱電特性を計測しました。
    【結果】
    ・Ba1/3CoO2が空気中・600℃においてZT = 0.55を示すことを発見。
    ・実用化された非酸化物熱電変換材料の性能に匹敵する高いZT
    ・高温・空気中で再現性良く安定した高性能を発揮。

    太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta
    博士(工学)
  • 安定で実用的な酸化物熱電変換材料

    層状コバルト酸化物のナトリウムイオンを原子量が重いバリウムイオンに置き換えた結果、電気的な特性は変化せず、熱伝導率だけが減少した。室温で熱電変換性能指数ZTが0.11に達することを発見した。

    • 見出し:層状コバルト酸化物の結晶構造(左)と熱電変換性能指数ZT(室温)のAイオン依存性(右)

    • 図1 (左)層状コバルト酸化物AxCoO2の結晶構造。(右)AxCoO2の層に沿った方向の熱伝導の模式図。「ばね」がたくさん入っているマットレスの上に赤ちゃんを乗せてもマットレスの「ばね」は影響を受けないのに対し,例えば大きな力士が乗れば「ばね」は縮んで動かなくなります。

    • 図2 Axを置換したAxCoO2薄膜の層に平行な方向の熱電特性(室温)。 [(熱電能)2×(導電率)]で表される出力因子はAxに依らずほぼ一定なのに対し,熱伝導率はAx原子量の増加に伴って単調に減少する傾向を示しました。Baはアルカリ金属とアルカリ土類金属の中から選ぶことができる最も重い元素です。この低熱伝導率化だけが熱電変換性能指数の変化にそのままに反映され,Ba置換したBa1/3CoO2では酸化物の室温の熱電変換性能指数としては最大の0.11に達することがわかりました。

    研究の内容

    熱電変換は、廃熱を再資源化する技術として注目されています。熱電材料として、金属カルコゲン化物が知られていますが、熱的・化学的安定性や、毒性の問題があります。層状コバルト酸化物は高温・空気中においても安定ですが、熱伝導率が高く、変換性能が低いという問題がありました。研究グループは,層状コバルト酸化物AxCoO2の熱伝導率を下げるために,図1に示す戦略を考えました。図2に,室温において計測したAx置換AxCoO2薄膜の層に平行な方向の熱電特性をまとめて示します。熱伝導率はAx原子量の増加に伴って単調に減少する傾向を示しました。Ba1/3CoO2の室温の熱電変換性能指数は0.11です。性能指数ZTは高温になるほど上昇します。さらに熱電変換性能を増強することで、安定で実用的な熱電変換材料が実現すると期待されます。

    太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta
    博士(工学)
  • 色と導電性の変化で情報表示・記憶する半導体素子

    窓ガラスや鏡がメモリーに?

    「電子カーテン」として注目を浴びているエレクトロクロミック材料を、薄膜トランジスタに組み込み、無色透明⇔黒色の色変化と、絶縁体⇔金属の導電性変化を利用する新しい情報表示・記憶装置を開発しました。窓ガラスや鏡に情報を表示・記憶できます。

    • ゲート-ソース間に電圧印加することで、無色透明絶縁体⇔濃青色金属を
      可逆的に変化させることができます。

    研究の内容

    IoT普及に伴い、パソコンだけでなく、様々な機器がインターネットに接続されたことにより、収集・保存しなければならない情報量が増加し続けています。現在の情報記憶素子は半導体の電気抵抗変化のみを利用していますが、本研究では、電気抵抗変化に加えて、色変化を情報表示・記憶に利用できる素子を開発しました。ガラスやプラスティックなどの基板上に、アモルファスWO3薄膜(膜厚100 nm)/ナノ多孔質ガラス薄膜(300 nm)/多結晶NiO薄膜(50 nm)の積層膜と、透明電極ITO薄膜(20 nm)からなるソース、ドレイン、ゲート電極を備えた、三端子の全固体薄膜トランジスタ構造を作製し、ゲート-ソース間に数ボルトの正電圧を印加するとWO3薄膜が濃青色に変化すると同時に金属になり、負電圧を印加すると無色透明な絶縁体に戻ります。

    太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta
    博士(工学)
  • 社会的意思決定のプロセス・デザイン

    合意形成の社会心理学的アプローチ

    国や自治体の計画づくりなど社会全体としての決定が必要な場面では、多様な意見を包括的に含めていく必要がある。また、その計画が多くの人に共有され、一人ひとりの行動に結びついてはじめて意味をなす。これらを実現するためのプロセス・デザインが鍵となる

    • プロセス・デザインのイメージ

    • 一部の熱心な人の取り組みだけではなく、多くの無関心者を取り込んだ決定プロセスを経ることが鍵

    研究の内容

    公共的意思決定が求められる場面(計画策定など)で、理念を描いただけでは“絵に描いた餅”になりかねない。一方、具体化しようとするほど、異なる価値感が対立することがある。これらの問題を乗り越えるために対話が必要であるが、その“場”の設計が肝要である。その鍵となるのが「共通目標の共有化」である。つまり、異なる価値を乗り越える新たな価値の創造と、それが抽象理念ではなくそこに関わる人びとが実現可能だと確信できる社会像を描き、実践していく必要がある。本研究室では、これら一連の営みをプロセス・デザインとして設計する。具体的には、合意形成のための市民参加の技法、計画を実行に移すための行動変容アプローチを用いることで、より実効性ある公共的意思決定の支援を行う。

    大沼 進 教授 社会科学実験研究センター長 Susumu Ohnuma
    博士(心理学)
  • 金属材料の組織予測シミュレーション技術の開発

    凝固から固相変態まで

    構造材料や機能材料の製造プロセスでは、凝固、熱処理、塑性加工において様々な材料組織が形成し、その材料組織の特徴が材料の特性を決めています。凝固から固相変態までの一連の材料組織変化を予測するシミュレーション法の開発を行っています。

    研究の内容

    金属材料の凝固、結晶粒成長、拡散固相変態など、製造プロセスで生じる一連の相変態における材料組織の時間変化を予測する手法の開発と応用を行っています。特に、組織形成シミュレーション手法であるフェーズフィールド・モデルの開発に従事し、拡散相変態を世界最高精度で計算するモデルの開発に成功しています。また、実験的アプローチ、分子動力学法による原子論的アプローチ、さらにはデータ同化、機械学習といった情報科学のアプローチを組み合わせて、種々の合金系における材料組織制御に取り組んでいます。超大規模計算によって組織形成の新しい学理を開拓し、実プロセスの最適化につながる成果を得ています。

  • 分子標的治療薬の感受性試験

    蛍光バイオイメージングを用いて個々の細胞における薬剤反応性を可視化する技術

    蛍光バイオイメージングはシングルセルレベルでの細胞の振る舞いを可視化する技術です。本法ではイメージング技術を応用し、薬剤に対する反応性と耐性の有無を可視化、将来の患者の薬剤応答性を予測することを実現しました。

    • BCR-ABL活性を測定する蛍光バイオセンサーPickles

    • Picklesによるシングルセルレベルでの薬効評価

    • 本技術による薬効評価判定例。青は本検査で感受性と判定された症例、赤は抵抗性と判定された症例の経過。太線はそれぞれの平均を示す。

    研究の内容

    本診断技術では、蛍光タンパク質とフェルスター共鳴エネルギー移動(Förster resonance energy transfer, FRET)の原理を用いた蛍光バイオセンサーを用います。このバイオセンサーによりシングルセルレベルでの薬剤反応性を可視化することで、極少数の薬剤耐性細胞が検出可能となりました。結果として、従来技術では成しえなかった投与後の臨床経過との高い一致率と将来の薬剤応答性の予測を達成しました。本技術は世界初の蛍光タンパク質の臨床応用例であるとともに、効果が約束された治療法選択による安全性担保、患者の経済的負担軽減、医療費抑制による医療経済的効果などにつながると期待されます。現在のところ慢性骨髄性白血病という血液のがんをモデルにプロジェクトを進めていますが、原理的には多くのがんに応用可能です。

  • 光複素振幅計測技術

    光の空間位相情報を検出可能にする「見えないものを見るための技術」

    本技術は、2台のセンサと偏光光学素子によって、空間補完誤差を生ずることなく1回の計測で光位相分布の精確な検出を可能にします。3D画像計測、3D断層計測、デジタル位相共役、3D光メモリ、空間モード光通信など多岐にわたる応用が期待されます。

    • ◆ホログラフィックダイバーシティ干渉計の構成

    • ◆位相計測例(リング状の構造を有する光学素子)

    • ◆複素振幅虚部の計測例(ファイバから出射した空間モード)

    研究の内容

    ホログラフィックダイバーシティ干渉法では、複数のイメージセンサを偏光光学素子と組み合わせて配置することで、空間補完誤差を生ずることなく1回の計測で精確な光位相分布の検出を可能にします。これまでに、2台のイメージセンサによる干渉光学系の開発と計測アルゴリズムの大幅な改良を行い、高精度な位相計測を実現すると共に、計測された位相分布データを用いた3D情報処理を可能にしました。この技術は、3D光情報の取得やデジタル位相共役による光断層撮影、ならびに、3D光メモリに直接応用することができます。また、本研究では、信号光に空間フィルタリングを施した光を信号光と再干渉させる参照光不要型位相検出装置の開発にも成功しました。これにより、空間モードを用いた次世代超高速光通信システムやリモートセンシング分野への応用が期待されます。

  • 社会実装に到達するマルチメディア人工知能技術

    産学連携研究を通してAI技術の実用化に迫る!

    本研究では、画像・映像・音楽・音声を中心とするマルチメディアデータを対象とした人工知能技術の開発を行っています。特に、産学連携研究を中心として、医用画像、社会インフラデータ、材料科学等に関わるデータを研究対象として扱っています。

    • 本研究において構築されている最先端のAI研究群

    • 本研究が加速する異分野連携と社会実装への挑戦

    研究の内容

    我々は、世界最先端の人工知能研究だけでなく、融合領域研究を推進し、実社会の課題解決に挑戦しています。具体的に、医用画像研究では国内の多数の医療機関と連携し、人間の診断精度を超えるAI技術を構築しました。また、医療・土木の研究では、AI研究の課題でもある少量データ学習を可能にするだけでなく、判定結果を説明可能にするExplainable AI (XAI)を構築し、実際の現場で利用可能な技術の実現を行っています。また、近年では、人間の脳活動データや視線データ等、人間の興味や関心に強く関連する情報をAIの学習過程に導入することで、人間のように判断可能なヒューマンセントリックAI技術の構築を行っています。

  • オプトジェティクスによる新規医療技術の開発

    光の特性を利用した深部癌治療法、創傷治癒・組織再生促進療法の開発

    様々な波長の光を利用して、生体内表面から深部にいたる病変(癌、損傷)を治療する技術を開発する。光による遺伝子発現の制御技術(オプトジェティクス)を基本技術として、さらに波長の異なる光を組み合わせることで体表から深部病変の治療法を開発する。

    • 様々な波長の光を利用した生体深部癌の治療法

    • 様々な波長の光を利用した生体組織の修復・再生促進療法

    研究の内容

    光照射においてはオン・オフをコントロールすることは容易であり、優れた時間分解能で操作することが可能である。また、狙った細胞に限定して光を照射することも可能であることから、空間分解能という意味でも優位性がある。一方、光の送達深度には限界がある。例えば、多くの光遺伝学的手法で頻用される青色光(400-500nm)は、生体透過性が低く深部組織への光照射は困難である。しかしながら、生体透過性が優れている近赤外光を利用することで、深部組織も治療ターゲットになり得ると期待される。
    我々は、生体透過性が高く組織深部へ到達可能なX線領域あるいは近赤外領域の光による直接的あるいは間接的な遺伝子発現制御システムを研究しており、それにより癌細胞死を誘導あるいは傷害組織を再生する遺伝子・蛋白質を細胞内に発現させることを試みている。

  • 肝臓のストレスを抑えて、肝臓病を予防!

    肝臓の生活習慣病(脂肪肝、肝炎、肝硬変)にならないために

    肝臓を中心とした臓器ストレスの分子機構を解析し、生活習慣病の診断・予防・治療に向けた研究を進めています。我々独自の光イメージング技術を用いてダイナミックな解析を行い、新しい視点から機能性食品の探索・新薬の開発を目指しています。

    • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、単純な肝の脂肪化をきっかけとして、様々なメカニズムが付加的にはたらくことで、脂肪性肝炎・肝硬変・肝癌に進展していくと考えられています。各プロセスにおける病態進行のキー分子を突き止め、それらを制御する食品・薬剤の探索を試みています。

    • 私達は、生体イメージング法をもちいて肝臓のストレスを実際に可視化することで、様々な要因による肝傷害・肝炎の促進を生体レベルでスクリーニングしています。

    研究の内容

    近年、脂肪肝・脂肪性肝炎等の生活習慣に関連する疾患は確実に増加してきています。これらの病態は進行が遅く自覚症状が少ないため一般に疾患意識が薄く、予防も困難です。しかしながら、これらは肝硬変・肝癌へ進行することが知られていて、予防、進行の抑制が重要です。
    私達は、様々なストレスによる肝の脂肪化、傷害、肝炎、肝線維化への進行の分子機構を研究しています。同時に、病態の進行抑制するために、機能性食品・治療薬の探索研究を行っています。さらに、光イメージング技術応用し、ユニークな病態解析、機能性食品・薬剤のin vitroスクリーニング系の構築を試みています。
    細胞・生体に対する様々なストレスは、肝臓以外の臓器の様々な病態にも影響していることが示されており、それらの予防法・治療法の開発への応用も期待されます。

  • コミュニケーションロボットシステム

    対話の活性度を用いた社会空間認識システムおよび複数ロボットによる注意誘導システム

    人同士の対話の活性度を計算することにより、ロボットはその対話空間の「強度」を認識することができ、文脈に適応した行動をとることができる。さらに、このメカニズムを複数ロボットの動作に応用することにより、ユーザの注意誘導が可能となる。

    • 図1 携帯端末を用いた2者間の対話活性度の計算と対話空間の可視化

    • 図2 対話活性度を利用した、ロボットによる対話の割り込み動作

    • 図3 複数ロボットの共同注視による視線誘導

    研究の内容

    本研究の対話活性度計算システムでは、対話者間の距離、音声データ、身体動作などの情報を用いて、リアルタイムで活性度を計算する。この活性度を用いることにより、ロボットは対話空間に侵入してよいのか、対話を中断してよいのかを判断することができ、文脈適応的な行動をとることができる。さらに、複数のロボット同士の行動に対して、対話活性度を高めるような動作をさせることにより、ユーザの注意(視線など)を容易に誘導することができるようになる。このような対話活性度を用いたロボットの動作生成システムは、従来の社会的ロボットの研究にはなかったものであり、受付窓口のロボットや、家庭向けホームロボットにも応用可能である。

  • クラウドソーシングにおける品質管理

    人間の確信度判断を利用した高精度な意思決定

    インターネットを通して多数の人に仕事を依頼できるクラウドソーシングにおいて、作業結果の品質を保証する研究を行っています。作業結果に対する作業者の確信度判断を用いることで、高品質な作業結果を導きます。

    • クラウドソーシングサービスの概念図。インターネットを通して多数の人に容易に仕事を依頼できます。

    • 確信度と実際の正解率の関係。自信過剰な作業者や自信過小な作業者がいるため、品質管理においては作業者の確信度判断の正確さの違いを考慮することが必要です。

    研究の内容

    近年クラウドソーシングサービスの出現により、インターネットを通して多数の人に容易に仕事(タスク)を依頼できるようになり、画像認識、自然言語処理、情報検索、データベースなど情報科学の様々な分野で活用が進んでいます。クラウドソーシングにおいては、必ずしもすべての作業者がタスクに取り組むのに必要な能力や真面目さを備えているとは限らないため、作業結果の品質管理が重要となります。我々は作業者に自分の作業結果に対する自信(確信度)を申告してもらうことで、作業結果の品質を担保する方法を提案しました。作業者の申告した確信度をそのまま信用するのではなく、自信過剰な作業者や自信過小な作業者の存在を考慮した統計的な品質管理を行う点が技術的な特徴です。