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複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡と材料研究
マルチ量子ビーム科学と工学応用
北海道大学超高圧電子顕微鏡研究室では、複合量子ビーム照射による微細組織変化のその場観察が原子スケールで可能な世界初となる光・イオン・電子の複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を開発しました。
研究の内容
【世界初の複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡:左図】2014年に複数のレーザーを利用できる光学系を増設し、イオンビーム、レーザー光、電子など複数の量子ビーム照射下で原子レベルでのその場観察が可能な複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を開発。現在、その場分光システム開発中。
【紫外線照射によるナノ結晶成長:右図】紫外線を水中プラズマ処理をしたZnに照射することによってZnOナノ結晶を成長させることに成功しました。現在、その成長メカニズムや応用について研究を推進しています。Scientific Report, 5, 11429(2015), AIP Advances, 7(2017) pp. 035220,
その他参考文献:Nano Letters, 17(2017) pp. 2088-2093柴山 環樹 教授 Tamaki Shibayama博士(工学) -
NEW ロバストCO2濃度測定器による光合成効率の最適化
コンパクトな赤外分光器を開発しています
新しいアルゴリズムに基づく赤外分光器を開発しています。完成すれば手のひらサイズで、大気中や固体表面の分子を定量することが可能になります。
研究の内容
空気中の二酸化炭素やエチレンなどの小分子の濃度は、植物の生育や果物の成熟に大きな影響を与えます。これらの分子は特徴的な赤外吸収スペクトルを示すため、定量には赤外分光法が有効です。これまでの装置は卓上型でしたが、私たちは新しいアルゴリズムを考案し、それに基づいた分光器を開発しています。
島田 敏宏 教授 Toshihiro Shimada博士(理学) -
耐高温材料の微細加工による赤外メタマテリアル
中~遠赤外線を操る材料・デバイスの開発
中~遠赤外線の波長以下のパターンを持つヒーターや回折格子を作るとこれら電磁波を制御するデバイスを作れることが期待されます。我々は金属炭化物や酸化物の薄膜・積層・微細構造の作製法の開発と素子特性を研究しています。
研究の内容
電磁波の波長以下のスケールで微細加工された物質は電磁波の反射・透過を制御する働きがあります(メタマテリアルと呼ばれる)。3μm~1000μmの波長をもつ中~遠赤外線は熱の輻射にかかわる電磁波であるとともに、分子振動を励起させることができるため、分子の検出に使うことができます。熱にかかわる材料なので、耐熱性を持たせることにより他では実現できない応用が可能になります。我々は金属炭化物や酸化物などの様々な物性を持つ耐熱性材料に対するプロセス技術を研究するとともに、これら材料の赤外域での基礎物性を測定し、メタマテリアル設計につなげます。中~遠赤外線に対するメタマテリアルの作製により、分子検出用の狭線幅の中赤外発光素子や、輻射熱を制御する材料の作製を目指しています。
島田 敏宏 教授 Toshihiro Shimada博士(理学) -
光干渉リソグラフィによる微細パターン創成
空間位相制御によるマスクレスでの自由微細パターン創成
光干渉リソグラフィに空間位相制御を導入して,マスクレスで自由パターンを転写創成する手法を開発。これまでに,従来の2ビーム干渉では実現困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しており,現在パターン転写およびその精度向上に取り組んでいます。
研究の内容
半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構において位置検出センサとして用いられるリニアスケールでは,マイクロメートル級のピッチを有する回折スケール格子が位置検出の「目盛り」として用いられています。また近年,微細パターンを有する機能性表面に対する需要が様々な分野で高まっています。
本研究では,空間位相変調したレーザ光の重畳で自在生成する干渉縞の転写で,マスクレス自由パターン創成を狙っています。これまでに,従来の2ビーム干渉では原理的に創成が困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しています。清水 裕樹 教授 Yuki Shimizu博士(工学) -
超精密光学式角度センサ
0.001 arc-second超の高分解能を実現し,回折スケール格子ピッチ評価に援用
超精密位置決めステージなど,精密移動体の微小角度変位を検出する光学式角度センサを開発しています。レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を達成しています。
研究の内容
半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構においては,ステージ移動中の微小回転運動誤差の影響が無視できません。
本研究では,これら精密移動体の微小角度変位を高い分解能で検出する,高精度光学式角度センサの開発に取り組んでいます。低ノイズ信号処理回路の開発および光学系の最適化設計により,レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を,帯域1 kHzレベルで達成しています。また,この角度センサ技術をもとに,回折スケール格子全長に渡り,位置検出の「目盛り」の揺らぎをピコメートル級分解能で校正する手法を開発中です。位置決め技術の更なる高精度化を狙います。清水 裕樹 教授 Yuki Shimizu博士(工学) -
NEW 建築物の構造性能評価と耐震性向上技術
建物の耐震性などの構造性能を評価できます
建物の構造性能を解析的・実験的に評価しています。例えば、 コンピュータシミュレーションによる地震時挙動評価や、振動台を用いた制振構造の制震効果検証実験などを行っています。
白井 和貴 准教授 Kazutaka Shirai -
北海道近現代経済史
道央を中心に
「北海道経済」という言葉は、今なお「後進性」とか「一次産業」のイメージを持たれています。しかし、近現代史の歩みを見るならば、都市形成が顕著に進み、とりわけ札幌および道央は日本経済史上に類を見ないほどの膨張と変容を遂げた、といえるでしょう。
研究の内容
「島国」である北海道は、築港が継続的に行われ、いくつもの港湾都市が発達し、中心港湾は時代とともに移り変わりました。函館、小樽が北海道の商圏を二分していたといわれる明治期、その後、戦時期にかけて室蘭や釧路が急成長していきました。戦後は苫小牧が開港、1982年には石狩湾新港が開港します。いずれも戦時中に計画されたものが戦後実現したケースです。札幌の一極集中にともない、港湾も苫小牧一極集中となりました。観光都市小樽は健在ですが、港湾としては石狩湾新港が小樽を上回ります。このような主要港湾の変遷の背景には、北海道産業の変容があります。「島国」である北海道を流通や産業の視点から、とりわけ現代につながる経済史を研究しています。
白木沢 旭児 教授 Asahiko Shirakizawa博士(経済学) -
カルニチンを用いた胸部外科術後の心房細動予防法の開発
心臓弁膜症においては周術期のカルニチン内服が術後心房細動 (POAF) を抑制しうるかどうかを無作為割り付け多施設共同研究により明らかにする。肺癌および食道癌においては類似の先行研究がないため、単群介入試験を行う。
研究の内容
胸部外科術後の心房細動(POAF)の頻度は高く、脳梗塞・心不全・感染症の増加につながり、入院期間の延長をもたらす点で問題となっている。唯一β遮断薬が有効とされるがその有効率は50%未満であり、副作用の点から使用できない場合も多い。脂肪酸代謝改善薬であるカルニチン製剤は近年、その抗炎症作用や脂肪酸代謝改善効果などから心筋梗塞後や冠動脈バイパス術後の不整脈抑制効果が報告されている。本プロジェクトでは、心臓弁膜症においては周術期のカルニチン内服がPOAFを抑制しうるかどうかを無作為割り付け多施設共同研究により明らかにする。肺癌および食道癌においては、単群介入試験により安全性とPOAF減少率の検討を行い、今後の無作為割り付け試験の検討に役立てる。
新宮 康栄 講師 Yasushige Shingu博士(医学) -
高精度音響位置認識、時刻同期、選択的フリッカレス可視光通信
サブミリオーダー位置計測とその展開
従来手法より2桁高精度な測距技術および照明を用いた独自の時刻同期技術とを統合し、携帯端末やロボットの3次元位置ならびに速度を高速かつ正確に推定する。さらに、特定の移動体に対する選択的フリッカレス可視光通信や位置依存の情報配信を実現する。
研究の内容
室内でのユーザや移動物体の位置をリアルタイムで正確に取得するため、位相一致法と呼ばれる高精度時刻基準点設定法を独自に提案した(測距誤差0.03 mm)。この技術を基にスマートフォンユーザのジェスチャ認識、ロボットトラッキングシステム等を開発した。さらに、カメラ機能搭載の携帯端末とLED照明を用いた独自のアルゴリズムにより、マイクロ秒オーダーの時刻同期を実現した。LED変調と端末位置の位置情報を統合することにより位置依存の情報配信や室内照明によるフリッカレス可視光通信が可能になる。
杉本 雅則 教授 Masanori Sugimoto博士(工学) -
グリーンランドにおける氷河氷床・海洋相互作用
温暖化するグリーンランドの沿岸環境
北極域に位置するグリーンランドでは、氷河氷床の質量が近年急速に減少しています。わたしたちは、氷河氷床と海洋が接するグリーンランド沿岸の環境変化に着目して、現地調査や人工衛星データを用いた研究を行っています。
研究の内容
グリーンランドは日本国土の約6倍の面積を持ち、その80%が氷河氷床で覆われています。このグリーンランドの氷が、地球温暖化の影響を受けて急速に減少しています。特に氷床から海洋へ流れ込む氷河で顕著な変化が起きており、温暖化する海洋の影響を示唆しています。また融け水が海に流入して海水準が上昇する他、海洋循環や生態系の変化が予想されますが、その詳細は明らかになっていません。このような背景を受けて、氷河氷床と海洋の相互作用、その結果生じるグリーンランド沿岸環境の変化解明に取り組んでいます。特に北西部のカナック地域に焦点をあて、現地観測や人工衛星データ解析を実施しています。最終的には、環境変化が漁業や交通に与える影響を明らかにして、地元住民に成果をフィードバックすることを目指します。
杉山 慎 教授 Shin Sugiyama博士(地球環境科学) -
非破壊CT-XRD連成法の開発とその応用
セメント硬化体微細組織の可視化
コンクリート内部の微細組織に対して、数ミクロンの精度でその幾何学的空間情報を取得できるCT法、および関心領域の水和物や変質を調べる回折法を連成させる新しい測定手法「非破壊CT-XRD連成法」を開発して、革新的セメント系硬化体材料を開発する。
研究の内容
コンクリートは、セメントと水との水和反応によって岩(骨材)を結合することで、構造用硬化体になります。一方、構造材料としての宿命である荷重や気象/環境作用によって、ひび割れが発生、進展したり、強酸作用、大気や海水、地下水などの浸食や物質侵入に伴う化学反応で劣化することがあります。社会インフラを長期間安定して利用するために、「虫の目」でコンクリート内部組織を観察して、そこで生じる異変を見つけることが大切です。
先駆的「非破壊CT-XRD連成法」は、放射光が提供する高輝度な白色X線を試料に照射して、選択的に25keVの透過単色X線から3次元構造体を可視化します。また、複数のスリット操作から特定の関心領域のエネルギー分散型X線回折を実行して、ポルトランダイトやカルサイトなどの水和物やその変質、骨材鉱物を特定します。杉山 隆文 教授 Takafumi SugiyamaPh.D. -
電気化学応答性有機色素
エレクトロクロミズムから多重応答へ(蛍光、旋光性)
色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本として、蛍光、旋光性(円二色性)などの多重応答が可能な物質群を提供します。本技術では還元種の分解過程が抑制される工夫が施され、また酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性を持ちます。
研究の内容
エレクトロクロミズム系は、外部からの電位の変化に対応して色調が変化する化合物の総称です。発色・消色の可逆的な表示が可能な材料として、スマートウインドウなどの調光材料や電子ペーパーなどでの表示機能という観点からも注目されています。色調以外に、蛍光、旋光性(円二色性)なども変化する物質では、用途に応じたテーラーメードな応答が可能となります。
本技術では、色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本とした、多重応答が可能な物質群を提供します。カチオン性色素の還元種は一般に反応活性で、応答の繰返性は低くなりますが、本技術ではカチオン部位を2つ組み込むことで、還元種の分解過程が抑制されています。また、酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性は、高密度記録材料への応用を可能とするものです。鈴木 孝紀 教授 Takanori Suzuki理学博士 -
食用乾燥コンブのヨウ素低減
競争吸着法による乾燥コンブのヨウ素低減技術
単糖とカルシウムを含む抽出溶媒を、乾燥コンブと吸着剤を充填したカラムに循環流通するだけで、コンブのヨウ素を約90%除去できる技術を開発しました。
研究の内容
ヨウ素はヒトの必須元素ですが摂取過剰によっても甲状腺機能に障害をもたらします。厚生労働省が定めたヨウ素の耐容上限量は2.2 mg/日ですが、ヨウ素含有量が高いコンブの場合、わずか1 g(図1)で耐容上限量に達します。海藻からヨウ素を回収する技術は古くからありますが、海藻を食べるためにヨウ素を除去する技術の開発研究は、まったく行われていません。図2は、乾燥コンブ(5 kg)と吸着剤(1.5 kg)を充填したカラムに、単糖とカルシウムを含む抽出溶媒(100 L)を20分間循環流通した後の、コンブのヨウ素除去率(○)と質量損失率(●)です。コスト削減のために抽出溶媒を4回繰り返し使用しましたが、90%以上のヨウ素除去率を維持できました。
関 秀司 特任教授 Hideshi Seki水産学博士 -
集約型コンパクトシティ計画
人口減少時代の都市集約化の方法論
本研究室は、人口減少時代の都市において最先端の課題である、集約型コンパクトシティをわが国で初めて提案し実践している。人口が激減する夕張市において、市や住民と協働し、集約型コンパクトシティの構想を提案し、実際に市街地集約化の事業を進めている。
研究の内容
夕張市において集約型コンパクトシティをわが国で初めて実践し、コンパクト化による適切な市街地形態への再編や、地域コミュニティ形成のための移転集住の仕組みづくり、都市基盤施設に係る維持管理費用の削減を進めている。集約型コンパクトシティへのプロセスとして、はじめの10年間は市街地内で集約化を進めて地域コミュニティを維持し、その後の10年間で都市軸となる中心拠点への集約化を推進する。これにより、都市をコンパクト化しながら住民は夕張市内に安心して住み続けることができる。すでに、夕張市と共同して、夕張市真谷地地区の地区内集約化事業を行い、住民の移転集約が完了している。
研究室の取り組みは研究論文やマスコミで公表され、同様の課題を抱える都市から多くの反響がある。瀬戸口 剛 教授 Tsuyoshi Setoguchi博士(工学) -
高速ロボティクス
"高速性"をキーワードとして,高速化に必要なアーキテクチャから,高速化に付随して生じる課題解決技術まで,理論・アルゴリズム・デバイス・システム・アプリケーションといった総合的な観点でロボット開発をおこなっています.
研究の内容
主に以下の3つのカテゴリーから構成される高速ロボティクスを研究しています.
I. スポーツスキル:従来のロボットが不得意としていたダイナミックな運動を実現する研究.特に,スポーツ時に観測されるような投打走捕に関する技能の創出を目指します.
II. 動的操り:多指ハンドを利用して特定作業の自動化・高速化を実現する研究.特に,組立から検査までを対象とした多種多様なタスク/工程の遂行を目指します.
III. 衝撃完全制御:高速接触時に生じる撃力を抑制して,高速性と柔軟性を両立する研究.特に,バックドライバビリティに着目した新たな衝撃緩和技術の確立を目指します.妹尾 拓 准教授 Taku SENOO博士(情報理工学) -
含フッ素芳香族カルボン酸類の合成
二酸化炭素から電気を用いて有用カルボン酸を作る
有機電解法により、数個のフッ素原子を有する容易に入手可能な芳香族化合物と二酸化炭素から、新規含フッ素ビルディングブロックとして有望な種々の含フッ素芳香族カルボン酸を位置選択的に収率よく合成することに成功した。
研究の内容
有機化合物へのフッ素原子の導入は医農薬や機能性材料等の分野において非常に重要である。含フッ素有機化合物の合成法として、含フッ素ビルディングブロックを用いる方法があるが、ビルディングブロックとして用いることが可能な含フッ素有機化合物はまだまだ高価でかつ限られており、その開発研究のニーズは高い。今回本研究では、容易に入手可能な含フッ素芳香族化合物と二酸化炭素から有機電解法を用いて種々の官能基を有する含フッ素芳香族カルボン酸を収率よく合成することに成功した。今回合成した含フッ素芳香族カルボン酸類には従来法では合成が困難な新規化合物も種々含まれており、有望な新規含フッ素ビルディングブロックとして医農薬や高機能性物質合成に利用されることが期待できる。
仙北 久典 准教授 Hisanori Senboku博士(工学)