北海道大学 研究シーズ集

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た行の研究者:35件

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  • ペプチドのN-末をキャッピングする新奇酵素の発見と応用

    新規ペプチドリガーゼ

    ・種々のペプチドのアミノ末端に非タンパク性のアミノ酸をペプチド結合する新規酵素を発見。
    ・有用生理活性ペプチドの保護や新規抗結核薬の開発に期待。

    • キャッピングに用いた化合物(左)、キャッピングできたペプチド

    • 本酵素が触媒する反応機構

    研究の内容

    医薬品としてペプチドを使用する場合の欠点の1つは,ペプチド分解酵素による分解があげられる。ヒトではペプチド末端に作用するエキソ型のペプチダーゼが主要な分解を担っていることから,ペプチド末端を非天然型アミノ酸に置き換えて分解酵素から保護することは医薬品開発の観点から価値がある。今回,ペプチド系抗生物質,フェガノマイシンの生合成研究を行った結果,2~18アミノ酸からなる多様なペプチドのアミノ末端を非天然型アミノ酸であるフェニルグリシン誘導体でキャッピングする酵素を見出した。この幅広い基質特異性を理解するため,酵素の結晶構造を解いた結果,本酵素は他には見られない大きな基質結合部位を有し,これにより多様な基質を受入れ可能であることが明らかとなった。Nat. Chem. Biol., 11, 71 (2015).

  • ARコミュニケーションシステム

    端末の位置・姿勢情報の共有によるアバタベースの
    拡張現実グループコミュニケーション

    アバタを仲介とすることで時空の制約を越えたコミュニケーションが可能である。本システムでは、グループコミュニケーションの参加者の位置・姿勢情報を共有し、各参加者の端末から見えるアバタの振る舞いに反映させるARコミュニケーションを実現した。

    • アバタベースのARコミュニケーション

    • ARターゲット上に現れたアバタが参加者端末に追従してポーズを変える様子を、同じ場に参加する別の端末から見た様子

    研究の内容

    従来のアバタベースのコミュニケーションシステムは1対1の通信を基本としているため、仮想と現実が混在する3人以上のコミュニケーション場において、その場に参加する物理的な人の位置や姿勢情報を個々に認識し、それに応じたアバタの振る舞いを、場全体の整合性を保持したまま、個別に制御することは困難であった。
    本研究では, コミュニケーション場に参加する物理的な人々(スマートフォン端末等)の位置・姿勢情報を共通ARターゲットの認識と端末間のネットワーク連携で共有し、これを各端末から見えるアバタの振る舞いに反映させるARコミュニケーションシステムを開発した。アバタはコミュニケーション場の参加者の誰が何処にいるかを把握し、ある参加者端末の動きに追従してポーズを変えるアバタの様子を、別の参加者がそれぞれの視点から見ることができる。

  • 位相差測定によるガン細胞の非侵襲的識別

    培養中の非接触光学測定による
    ガン細胞と正常細胞の高精度識別

    培養器底面に接着培養中の培養細胞に照射・透過したレーザー光には、細胞の屈折率と細胞の厚さに応じて位相差が発生する。本研究では、細胞内の各点の位相差を定量することにより正常細胞と培養中にガン化した細胞を高精度に識別できることを示した。

    • 位相シフトレーザー顕微鏡による細胞各部分の位相差値測定

    • 正常細胞とガン細胞の位相差の比較

    研究の内容

    再生医療において移植される培養細胞の品質管理に資すべく、培養中にガン化した細胞の有無を非侵襲的かつ高精度に判定する方法の確立を目指した。細胞集団中のガン化細胞の有無判定の従来法として特殊なマウスへの移植法があるが、破壊的(侵襲的)で、数週間以上の長時間を要するとの欠点があった。これに対して本技術では、培養中の細胞にレーザー光を透過するだけで非侵襲的に定量できる位相差値の演算により、1視野あたり10秒、100 mmディッシュ1枚の全細胞でも約10時間という短時間で培養しながら識別できる。重要な品質管理項目であるガン細胞の有無を非侵襲的に判定する方法は他になく標準化を目指している。

    高木 睦 教授 Mutsumi Takagi
    工学博士
  • スポーツコンテンツの次世代可視化技術

    知識共有を加速させる情報提示技術の創世

    スポーツの観戦や教育等を助けるデータを提示する次世代可視化技術を構築します。利用者やその周辺環境から得られる多様なデータから、「分析データ」と「利用環境に適応した提示方式」を定める理論を導出し、知識共有を加速させる情報提示を可能とします。

    • サッカー競技におけるパス可能な領域の可視化の例

    • フォーメーションを分析する様子の例

    • 優勢な度合いの分析・可視化の例

    研究の内容

    スポーツを取り巻く現状として、様々な映像配信が普及し、映像と共に関連するデータをスマートフォン等のモバイル端末によって閲覧する新しい観戦の環境が構築されつつありますが、サッカーにおいては、フリーキックの成功率や走行距離等の基本的なデータを閲覧可能としていることに留まっています。本研究は、利用者やその周辺環境から得られる多様なデータを分析し、利用者の理解を助け、知識や経験が必須な場合においても、その知識共有を加速させる可視化を可能とします。例として、パスコースや優勢な度合い等が挙げられます。本研究の可視化技術は、利用者を取り巻く様々なデータを取得し、多様な情報を利用環境に適応して提示可能とするものであることから、IoTやAIの分野への応用可能性が高く、これら分野における新技術の創世への貢献が期待できます。

    高橋 翔 准教授 Sho Takahashi
    博士(情報科学)
  • 地熱資源モニタリングと誘発地震のリスク評価

    地球物理観測による地熱資源モニタリングとリスク評価

    重力探査や震源精密決定による地熱資源開発に必要な地下構造の評価。精密重力測定や地殻変動観測による地熱貯留層資源のモニタリング。地熱井開発に伴う誘発地震のリスク評価や地震活動予測の研究。

    研究の内容

    ○近年開発が盛んな地熱資源開発では、基盤構造調査から地熱貯留層の検討が行われる。重力探査と精密な震源分布、地震波速度構造解析などから、基盤構造に関する調査を実施している。
    ○地熱発電では、蒸気を生産するとともに熱水を地下へ還元するが、資源を持続的に利用するためには、地熱貯留層の収支をモニタリングすることが必要である。精密重力測定および地殻変動観測を利用して、地下流体の状態を物理的に評価し、適正な資源利用量を検討する。
    ○地熱井への高圧流体の注入などにより、有感地震が誘発され問題となることがある。地熱開発地域の地殻応力状態や、周辺の断層、地震活動特性、流体注入量などのパラメータから、誘発地震のリスク評価を行う手法を開発することで、適正かつ持続的な資源開発の指針を与える。

    高橋 浩晃 教授 地震火山研究観測センター長 Hiroaki Takahashi
    博士(理学)
  • 電子顕微鏡内での電気特性と構造変化の同時観察

    電気的特性と構造変化の関連を評価でき、信頼性確立に有効

    電子顕微鏡内に電子デバイス片を配置し、これに可動プローブ電極を当て、電気特性を評価しながら、電子顕微鏡による観察を可能に。サンプル側電極にMOSFETを搭載し、過剰電流を抑制可能に。電気特性と構造変化の相関を評価し、故障原因究明などに有効。

    • 図1 評価用サンプルホルダー

    • 図2 電子顕微鏡内でのデバイス評価イメージ

    研究の内容

    本研究による電子顕微鏡その場観察システムは、可動プローブ2本とサンプル固定部を電極とした3端子のデバイス測定が可能です。サンプルホルダーには、浮遊容量による過剰電流が流制限するためのMOSトランジスタを挿入してあります。
    実用化に近い、微細電子デバイスには、相変化メモリや抵抗変化メモリなど、抵抗変化に伴っての構造変化が予測されているデバイスがあります。微細デバイスは、動作速度が速い上に、構造がナノスケールであるため、抵抗変化が引き起こされるメカニズムの確認が困難です。本システムは、この評価を可能にするとともに、信頼性確保のための不良動作原因などの調査に有効です。加えて、今後期待されるナノ構造機能デバイス、例えばナノマシンやナノ構造2次電池などの動作機能の確認や不良原因の評価などを効果的に行うことを可能にします。

  • ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産

    バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
      ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する

    我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。

    • NFBCおよびNFCにおける偏光顕微鏡像、TEM観察像 偏光顕微鏡像(a,b)、TEM観察像(c,d) NFBC(a,c)、NFC(b,d)

    • 200L容大型ジャーファーメンターを用いた通気攪拌培養における培養経過の一例

    研究の内容

    バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。

    田島 健次 准教授 Kenji Tajima
    博士(工学)
  • 文化遺産保存活用と観光に関する研究

    東南アジアにおける文化遺産国際協力プロジェクト立案・実施

    文化遺産のなかでも、特に遺跡に焦点を当て、東南アジアにおける文化遺産保存活用と観光の関係について研究をおこなっています。研究成果をもとに、他機関と協働し、文化遺産国際協力を実施しています。

    • アンコール・ワット

    • ピマーイ遺跡(タイ)

    • 現地行政とのまちづくり協議の様子(パダン)

    • 修復中の遺跡と観光客(ジャワ)

    研究の内容

    東南アジアには、アンコール遺跡群(カンボジア)、ボロブドゥール(インドネシア)など、多くの遺跡があります。政治的な混乱に加え、スマトラ沖地震・津波(2004年)などの自然災害による危機に直面しながら、各国は、それら遺跡の保存と活用に取り組んできました。観光は、遺跡に悪影響を与えると危険視されていましたが、1999年に国際文化観光憲章が採択されて以降は、文化遺産保存に不可欠なものとして捉えられるようになっています。例えば、年間約200万人以上の観光客を集客するアンコール遺跡群では、観光産業は国家レベルでの重要な外貨獲得手段となっており、広大な遺跡の保存事業も、観光客からの収益金があてられています。一方で、増え続ける観光客と遺跡保存のバランスは、地域の環境、貧困問題などが絡んで、より複雑なものとなっています。

  • 無機固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池

    液相からの硫化物固体電解質の作製

    高いリチウムイオン伝導性を示す硫化物系ガラスを有機溶媒に溶解させ、これを乾燥させるという単純なプロセスで、硫化物系固体電解質を析出させることに成功した。また、電極活物質へのコーティングに適用可能であることも見出した。

    研究の内容

    リチウムイオン伝導性固体電解質を電解質として用いる全固体リチウム二次電池において、良好な電極-電解質間界面の構築が電池の高エネルギー密度化に非常に重要である。本研究では、液相から硫化物系固体電解質を作製することにより、良好な電極-電解質界面の構築を目指した。Li2S-P2S5系固体電解質をN-メチルホルムアミド(NMF)に溶解させて均質な溶液を作製し、その溶液からNMFを除去することでLi2S-P2S5系固体電解質を再析出させることに成功した。この溶液と正極材料であるLiCoO2を混合し、NMFを除去することによってLiCoO2上に固体電解質をコーティングした。これを用いて電極複合体を作製し、得られた電極複合体、硫化物系無機固体電解質を用いて全固体リチウム電池を作製したところ、安定に動作することを確認した。

  • シベリア先住民と野生動物の共生策を探る

    “利用しつつ守る”順応的鳥獣管理システムの実践研究

    地域社会と野生動物の軋轢(農業被害や外来種問題など)を軽減するため、住民参加・住民主体の調査・対策を企画・実施し、ボトムアップ型の政策支援を行っています。近年はシベリア先住民の暮らしを守る野生動物保護区の設定にも携わっています。

    • 調査対象の野生ツンドラトナカイ(サハ共和国にて)

    • 先住民との軋轢が増加するホッキョクグマ(同上、IBPC提供)

    • 調査データを地元の子供たちの環境学習に活用(同上)

    研究の内容

    ◇野生トナカイなどの実態調査と保護区の設定
     ”日本に最も近い北極”である、ロシア連邦サハ共和国の北極域において、先住民が利用する野生動物(トナカイ、ジャコウウシ、オオカミなど)に衛星発信機を装着し、温暖化の影響や季節移動の実態を明らかにしてきました。またその情報を元に、先住民団体、地方行政府、狩猟団体などと協働し、伝統的生活に資する保護区や猟区を設定して評価を行っています。
    ◇渡り鳥の生息実態調査と国際保護区の評価
    シベリアは、日本をはじめ北極域・北方圏を利用する渡り鳥の重要な繁殖地ですが、やはり温暖化により生息環境が変化しつつあります。そこでこれまで個別に行われていた各国の調査をネットワークし、温暖化の影響と生息地保護区の評価を総合的に行うための調査・研究・実践を行っています。

  • レーザ計測点群の認識・モデル化技術

    人が活動する環境や構造物の分析・維持管理・計画の高度化を目指して

    3次元レーザ計測点群から、室内や道路、柱状物(電柱や街灯)、街路樹、建物といった、人が活動する環境に存在する物体や構造物を自動で認識し、3次元モデル化するための点群処理の理論とアルゴリズムを開発しています。

    • 部屋のモデル化

    • 柱状物体検出とパーツ認識

    • 建物LODモデリング

    • 街路樹メッシュモデリング

    研究の内容

    地上設置型や車載型の3次元レーザ計測システムで得られる『点群』から、屋内外の環境における物体や構造物を自動で認識しモデル化する技術ならびに基礎的な点群データ処理手法の研究を行っています。認識とモデル化の対象は、任意形状の物体、部屋、電柱や街灯等の柱状物、樹木、道路面、建物など、幅広く扱っています。点群からのメッシュモデルやポリゴンモデル、CADモデル生成技術に加え、その基礎となる点群の位置合せ(レジストレーション)、領域分割(セグメンテーション)、形状特徴抽出、機械学習や手続きに基づく物体認識に関する研究も行っています。本技術により、現況を忠実に反映した3次元モデルを用いた、環境や構造物の詳細な認識と分析、維持管理、各種シミュレーションや改善計画が可能となります。

  • 情報科学・工学のための数理解析技術

    システム同定・設計と逆問題

    システム同定・設計や未知対象の推定などに関連する情報科学・工学分野の問題を解決するための方法論の探求、及び、応用技術の開発。

    • 色彩復元ソフトウエアの実行例

    • 画像からの不要物体の除去例

    研究の内容

    情報科学や工学の分野においては、所望の結果を与える数理的なシステムの設計問題や、所与の入出力を与える数理モデルの特定問題、システムと観測から未知入力を推定する逆問題などが多く現れます。これらの問題を扱う際に、個々の問題特有の条件と個々の問題とは独立した数理モデルに分けて解析を行うことで、性能や限界を理論的に見極めることが可能となり、また、類似した数理モデルで記述できる問題への水平展開も可能となります。これまで、この独自のスタンスで、画像や色彩の復元や、音響信号に含まれる個々の音の分離、パターン認識や標本化理論を含む機械学習問題において様々な方法論の構成や応用技術を開発してきました。今日の発展著しい多様な計測技術に我々の方法論を適用することで、理論に裏打ちされた様々な応用技術の開発が期待できます。

  • 合成高分子ゲルを用いた癌幹細胞標的
    プレシジョンメディシンの確立

    ハイドロゲルによる癌幹細胞への初期化方法の開発

    癌の根治には癌幹細胞の根絶が重要です。本法では、北大オリジナルバイオマテリアル(合成高分子ハイドロゲル)を用いて癌幹細胞へのリプログラミング(初期化)を迅速且つ効率的に誘導、癌幹細胞の性状や再発時の治療反応性を予測することを可能としました。

    • ハイドロゲルによる癌幹細胞誘導。ハイドロゲル(A)上での脳腫瘍細胞のスフィア形成(B)と癌幹細胞マーカーSox2の発現誘導(C)。

    • 北大オリジナル開発のハイドロゲルを用いたがん幹細胞診断モデル。ハイドロゲル上でがん幹細胞を誘導し、その性質を解析することで、個々のがん患者さんに適切な治療薬を決定できると期待されます。

    研究の内容

    がんの根治には治療抵抗性を示すがん幹細胞の根絶が必須ですが、その数は少なく、従来法では癌幹細胞の分離や性状解析は困難でありました。本研究は、北大オリジナル開発合成高分子ハイドロゲル(Science 344, 161-162, 2014)を用いて、迅速・簡便・低コスト・効率的に癌幹細胞のリプログラミング (初期化)を誘導、癌幹細胞の性状解析や治療反応性の評価、再発時の癌細胞の性状予測を可能にしました。本技術を用いることによって、癌幹細胞を標的とした薬剤スクリーニングを実施でき、将来的に発生の可能性がある再発腫瘍の性質を予測し、予防的治療薬を投与することで、癌患者に適確な癌幹細胞標的プレシジョンメディシン(予防先制医療)を提供できるようになることが期待されます。

  • リポソーマル生物発光イムノアッセイ

    ルシフェラーゼを内封したリポソームの作成と
    イムノアッセイの超高感度標識体としての応用

    生物発光反応の触媒である酵素ルシフェラーゼを脂質二分子膜小胞のリポソームに封入し、イムノアッセイの超高感度標識体として応用した。モデル物質として炎症マーカーであるC反応性タンパク質のイムノアッセイを行ったところ、その定量が可能あった。

    研究の内容

    臨床検査や環境分析において必須の技術であるイムノアッセイでは、分析対象物質の多様化や微量化に伴い、簡便、高感度、ハイスループットなど高性能化が求められている。我々は、生物発光酵素Lucを、リポソームと呼ばれる脂質二分子膜小胞に多数内封させ、これをイムノアッセイの標識体として利用する超高感度なイムノアッセイ系の構築を目指している。リポソームに内封することで多数のLucを安定な状態で抗体に標識することが可能になる。しかし、リポソーム内部に酵素を内封する方法は既に知られているものの、Lucについてはこれまで検討された例がない。本研究では、熱安定化組換えLucをリポソーム内へ封入し、封入量や安定性を評価した。さらにLuc内封リポソームを標識体として用いるC反応性タンパク質のイムノアッセイ系を構築した。

  • 耐氷点下起動性に優れた固体高分子形燃料電池の開発

    電池内マイクロナノ凍結現象の解明

    普通では観察することのできない燃料電池内の反応層近傍凍結現象を、超低温型電子顕微鏡を用いて可視化しています。さらに電気化学測定を組み合わせ、寒冷地利用で問題となる生成水凍結現象の解明と耐氷点下起動性に優れた電池の開発を行っています。

    研究の内容

    高効率でクリーンなエネルギー変換機器である固体高分子形燃料電池において、反応による生成水は下の左図のように数十nmの径の触媒層空隙を通り、数μm径の空隙を有する多孔膜であるマイクロポーラスレイヤー(MPL)を介して、ガス拡散層・ガス供給チャネルへと排出される。寒冷地での氷点下環境起動では、生成水が凍結し、発電停止、劣化を引き起こす問題が生じるが、現象がマイクロナノスケールであるため計測が難しく、現象解明は未だ不十分の状況である。本研究では、水がどの部位で凍結し、どのような機構で性能停止および経年劣化に繋がるかを微視的観察、電気化学測定、触媒層モデル解析により解明し、耐起動性の向上や長寿命化を達成することを目指している。下の中図は触媒層が氷で埋められている様子、右図は解析でモデル化している触媒層の構造模式図である

  • 組織の内部コミュニケーションに関する研究

    リスクと戦略系におけるコミュニケーション

    経営組織の内部で形成されるリスクコミュニケーションに関心があります。「リスク」は「純粋リスク」と「動態的リスク」に大別されますが、これらの要素がどのように組織内でコミュニケーションを形成し、個人や集団の行動を規定するのかを検討しています。

    • 図 ウクライナ・キエフ市内での抗議デモ(2014年1月, 筆者撮影)
      EU経済圏へ加入することを望む人々がヤヌコーヴィチ大統領の判断(EU加盟を見送り)へ抗議するデモ。

    研究の内容

    私の研究目的は、まずは組織の内部で形成される固有のコミュニケーション現象を突き止めることにあります。「純粋リスク」では、特に製品事故における対内的/対外的な組織広報のあり方や、危険物取扱組織における対内的リスクコミュニケーションのあり方を模索しましたが、ここ暫くは、「動態的リスク」を重点的に扱ってきました。組織の中で創出/攪乱・拡散/構造化するコミュニケーションを観察し、そのひとつひとつに、組織にとっての、何らかの、「意味/価値のまとまり」を見つけることが、斬新な組織戦略を導くと考えており、研究の独自性や特徴はそこにあると考えております。この点について、最近は社会的組織(例:写真)がどのような意図を持って組織化されていくのかも検討しております。

  • 動画像リアルタイム処理技術

    アルゴリズム開発とそのハードウェア実装

    本研究室では、近年大容量(高解像度・高フレームレート)化が著しい動画像を対象として、画像平滑化(スムージング)や明るさ補正を中心とした、各種画像処理アルゴリズムならびにそのリアルタイム実装に関する研究開発を推進しています。

    • (a)入力画像 (b)推定照明光 (c)明るさ補正結果
      図1 Retinex理論に基づく動画像適応的明るさ補正

    • (a)入力画像(b)画像平滑化結果(c)実装で用いるFPGAボードの例
      図2 コスト最適化に基づく画像平滑化

    研究の内容

    画像処理では一般に取り扱うデータ量が膨大であるため、ハードウェア/ソフトウェアを組み合わせたシステム全体としての最適化が必要不可欠です。本研究室では、画像処理のアリゴリズムおよびその実装に関する検討を相補的に行うことにより、画像処理システムの構成手法に関する研究を行っています。その成果の1つであるRetinex理論に基づく動画像リアルタイム適応的明るさ補正(図1)では、逆光などの照明変化が大きい状況下で撮影された映像の明るさを、適応的かつリアルタイムで補正することが可能です。また、コスト最適化に基づく高品位な画像平滑化(スムージング) (図2)に関する研究も進めており、これは写真のイラスト化といった画像加工処理や、各種画像処理の前処理、明るさ補正、細部強調などへの応用が期待されます。

  • 銀系化合物を用いる水素の活性化と接触合成反応

    高活性水素イオンの生成触媒の開発とCO2メタネーション反応への利用

    Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)は、当研究室が発見した銀系化合物から生成する高活性水素イオンで、一部を低温燃焼させることで熱を供給し、余剰GDRは例えばCH4合成に利用することで、反応が効率化できる。

    • 図1 GDR*生成触媒のイメージ図
      *GDR, Gin De Ride(銀-Derived Hydride)

    • 図2 GDR生成触媒を混合したニッケルアルミナ触媒の二酸化炭素メタネーション活性の例(上は反応器出口ガス濃度、下は熱電対温度)

    研究の内容

     水素の自然発火温度は525℃前後と高く、低温で燃焼させるためには、高活性水素を製造可能な触媒の利用が不可欠である。これまでパラジウムや白金系触媒が用いられているが、供給面や価格面などの不安を抱えている。
     当研究室では、従来の触媒に比べ供給面や価格面で有利な触媒の研究に取り組み、その結果、高活性な水素イオンを生成可能な銀系化合物を発見した。本触媒は、水素を供給すると高い活性を持つ水素イオン“Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)”を与えるため、まず低温で水素と酸素を同時供給することにより生成GDRを燃焼させ、次いで発生熱と余剰GDRを利用すれば各種合成反応を効率的に行うことが出来る。
     現在、CO2メタネーション用の触媒との複合化により、低温で反応が進行することを見出している。

  • リンの高効率かつ高選択的な分離回収技術

    リン鉱石の輸入依存脱却が可能な二次リン資源からのリンの分離回収

    「炭素化(もしくは炭素添加)」と「塩素化」を共通工程とした二次リン資源(製鋼スラグ、鶏糞、下水処理後のHAP・MAP、下水汚泥、下水汚泥焼却灰など)中のリンの非常にシンプルな高効率・高選択的分離回収技術を開発した。

    • 図1 製鋼スラグでの再資源化の例

    • 図2 下水汚泥焼却灰での再資源化の例

    研究の内容

    リンは生命体の必須元素で、さらに、化学肥料や工業製品などの原料として広く使われているが、近年、リン鉱石の低品位化と枯渇が現実味を帯び始め、資源の確保が焦眉の課題となっている。一方、日本のリンのマテリアルフローに従うと、輸入リン鉱石の3.4倍、全持込リン量の半分以上が鉄鋼スラグ、家畜糞、下水汚泥中に移行する。そのため、これらの二次リン資源の再資源化技術の開発は重要である。そこで当研究室では、鶏糞や下水汚泥の炭化物の塩素処理によりリン回収を阻害する鉄を分離し、次いで、元々存在する炭素による還元反応でリンのみを選択的に回収する非常にシンプルな再資源化プロセスを開発した。本技術は炭素添加した製鋼スラグ、HAP・MAP、下水汚泥焼却灰などにも適用できるため、我が国のリン資源対応力強化に繋がると期待できる。

  • 農水産業のDXを支える中心温度測定用食肉模擬装置

    実肉を使用しない食肉中心温度測定用デバイス

    食用動物の食肉を対象に、その中心温度を把握するための温度測定装置を開発した。本装置のプローブ周囲には、魚・牛・豚・鶏等の食用動物の食肉を模擬した比熱及び形状を有する材料を配置しており、実際の食肉に近い中心温度変化をリアルタイムで取得できる。

    • 図1 開発中の中心温度測定用食肉模擬装置の構成図

    • 図2 開発中の中心温度測定用食肉模擬装置と鮮度評価システムの関係

    研究の内容

    一般的に食肉の貯蔵温度管理は、食材が貯蔵されている貯蔵庫内の温度を計測し、温度管理を行っている。しかし、食肉を高鮮度状態に保つためには、その中心温度を計測し温度管理をすることが重要であるが、現状のサーモグラフィーカメラや温度センサーでは、その表面温度しか測定ができない。
    そこで、当研究室では、食用動物の食肉を模擬した比熱及び形状を有するプローブを作製することにより、食肉の中心温度変化を模擬できる装置を開発した。これにより、食肉を傷つけることなく、測定したい食肉の中心温度を取得することが可能となり、その温度変化を基に、理想的な温度管理が可能となる。また、食用動物の鮮度と食べ頃の可視化装置『MIRASAL(見らさる)』と本模擬装置を連携することで、実際の食肉を使用することなく、鮮度評価を行うことが可能となる。

  • 鮮度保持用液状氷の質と量の同時最適化装置

    食品の長期鮮度保持のための液状氷最適化装置

    単純な熱容量計算で食品用液状氷〔スラリーアイス(塩分含有水氷)又は無塩分水氷〕の必要最小量や、保管用容器の総括伝熱係数(容器放熱量パラメータ)を用いスラリーアイス温度を決定する塩分濃度・水/氷混合比及び貯蔵可能時間を算出する装置を開発した。

    • 図 スラリーアイスの温度の実測値と計算値の比較(左上図:キビナゴ、左下図:ハタハタ)とスラリーアイス中の氷量の実測値と計算値の比較(右上図:キビナゴ、右下図:ハタハタ(計算値のみ))

    研究の内容

    これまで、水産動物の鮮度保持に有用なスラリーアイスの製造量は、貯蔵時間を考慮した計算法が無かったため、多くの場合、過剰な量が製造され使用されてきた。そこで当研究室では、先に記載したように、保管用容器の総括伝熱係数を用いて、その場で迅速に、スラリーアイスの質(塩分濃度や水/氷混合比)と量(貯蔵可能時間)を同時に最適化する装置を開発した。本法は、真水由来の塩分を含まない液状氷の製造にも適用可能なため、水産動物以外の食品(野菜・果物・畜産動物)にも利用でき、現在その発明内容の権利化などに取り組んでいる。

  • 食用動物の鮮度と食べ頃の可視化装置『MIRASAL(見らさる)』

    安全・安心を実現する食用動物の鮮度と食べ頃の評価装置

    我々は、産業技術総合研究所と共同で、致死後の食用動物(水産動物や畜産動物)の任意部位における分解成分の濃度の経時変化をシミュレーション法により求め、鮮度と食べ頃を評価するための可視化装置『MIRASAL』を開発した。

    • 図1 開発中の鮮度評価装置の入力画面と計算結果の例

    • 図2 開発中のMIRASALウェブサイト

    研究の内容

    魚介類の産地および消費地における卸売市場では、鮮度が取引価格を決定する1つの重要な基準となっており、その評価指標としてK値が提唱されている。しかし、その値は死後の水産動物の任意の部位をサンプリングし、種々の前処理後に成分分析を行い算出するため、流通現場でのリアルタイム評価(把握)は出来ない。当研究室では、妥当なシミュレーション法による課題解決を考え、上記したような手法を用い、魚介類の種類や大きさ、死後の経過時間や保存温度などの各種情報から、鮮度と食べ頃を評価できる装置を開発し、現在その発明内容の権利化や携帯性の向上(スマートフォン等での利用)などを進めている。本装置『MIRASAL』は、牛肉・鶏肉・豚肉といった畜産動物にも適用可能である。

  • ナノ微粒子を用いる炭素資源由来の窒素の無害化除去

    Fuel窒素の事前除去と高温ガス精製へのナノ微粒子の利用

    地球環境に調和した炭素資源の高度利用法の原理確立は、次世代に向けて最重要な研究テーマの一つである。本研究では、ナノスケールの金属・金属酸化物微粒子を用い、炭素資源をクリーンエネルギーに効率よく変換できる触媒プロセスの開発を目指している。

    • 図 500˚Cでのピリジン分解に
      対する褐鉄鉱の触媒性能

    研究の内容

    炭素資源中の窒素(Fuel-N)は燃焼時にNOxやN2Oとして排出され、また、高温ガス化では主にNH3に変化し後段のガス燃焼時のNOxソースとなる。本研究では、燃焼やガス化の前段の熱分解過程においてFuel-Nを無害なN2に変換する方法の開発に取り組み、イオン交換法で担持したCaイオンは熱分解時にCaOナノ粒子に変化し、N2生成に触媒作用を示すことを見出した。
    また、褐炭中に元々含まれるFeイオンや褐鉄鉱中に多く存在するFeOOHは加熱過程で容易に金属鉄ナノ粒子となり、この触媒上でNH3、ピリジン、ピロールの分解反応を行うと、N2が選択的に生成することを見出した。このような含N種は石炭ガス化で生成する粗ガス中に含まれるので、これらの化合物の除去を目的とした新しい高温ガス精製法の開発への展開を図っている。

  • 撹乱地の生態系復元

    自然・人為により撹乱を受けた生態系をファシリテーションすることでエコフレンドリーな復元を図る

    ファシリテーションとは、ある植物の定着が他種の侵入定着を促進する現象を指す。噴火・火災・津波・採掘等の大撹乱により壊滅的被害を被った生態系において、そのようなファシリテータを検出し導入することで迅速かつエコフレンドリーな生態系復元を図る。

    • 図. 1920年に大規模噴火があった渡島駒ヶ岳においてミネヤナギパッチ内に定着したエゾチドリ。
      ミネヤナギは、多くの種の定着を促進するため生態系の多様性を高めることができる。

    • 図. 札幌市のスキー場斜面におけるファシリテータであるススキの被度と木本植物密度本数との関係(プロットサイズは4 m2 )。
      木本植物本数は、ススキの定着により増加し、ススキ草地を創出することが植林によらない天然林の誘導には有効である。

    研究の内容

    大規模撹乱後の生態系復元は急務であることが多いが、撹乱後の劣悪な環境では、なかなか目的とする植物の定着が進まないことが多かった。ファシリテータとは、その種が定着することで他種の定着を促進する効果のある植物種のことを指す。各撹乱地において、ファシリテータを検出し、それらの種を導入することで目的とする種の侵入定着が促進できれば、生態系復元は安価かつ迅速化でき、人為も軽微となるため、エコフレンドリーな生態系復元技術となる。
    これまで、サロベツ湿原泥炭採掘跡地ではミカヅキグサが、渡島駒ヶ岳ではミネヤナギが、ファシリテータとして機能していることを明らかとしており、さらに、ファシリテータ導入手法として、微地形改変が有効であることを明らかとしている。

  • 大規模火災後の生態系復元機構の解明と応用

    地球温暖化の緩和に向けて

    北アメリカ北極域では地球温暖化に伴う火災の大規模化が起きている。そのため火災後の生態系回復様式も変化し、新たな切り口での生態系復元機構の解明が急務である。更に、本研究で得た知見を応用し様々な大規模撹乱後の生態系復元手法の開発も必要である。

    • 2004年にアラスカで発生したクロトウヒ林大規模火災後の景観(2005年撮影)。従来の火災では、全焼は稀であったが、本火災では有機物層までが焼き尽くされた。そのため、生態系回復様式が変化し、早急な遷移機構の解明と保全・復元手法の開発が課題となる。

    • 森林火災がおよぼす主要な生態系機能の変化。短期的には、火災時の直接CO2放出、長期的には光合成低下に伴うCO2吸収の減少と永久凍土層の融解に伴うメタン放出という、地球温暖化への正のフィードバック効果がある。

    研究の内容

    アラスカのタイガ・ツンドラ帯は、落雷に伴う火災多発地域であるため、火災に順応した生態系回復が見られる。これまでは、強度が低く泥炭を含めた有機物層の全焼には至らない林冠火災が主であった。特に、北向き斜面ではクロトウヒが優占し、林冠火災直後からクロトウヒの散布種子による速やかな森林再生ができた。
    しかし、気候変動に伴い火災は強度・頻度ともに増加傾向にある。2004年のアラスカ森林火災は、総焼失面積が四国を上回り、有機物層も焼き尽くされた。そのため、大規模火災後の生態系回復は、林冠火災後とは大きく異なる。特に、種子発芽・成長に有機物層の存在は不可欠であり、有機物蓄積には、母材となるミズゴケの定着促進手法開発が肝要であることが明らかとなった。加えて、ツンドラ帯での火災が生態系に与える影響についても研究を行った。

  • 先端研究基盤共用促進事業NMR共用プラットフォーム

    先端NMRファシリティの共用促進プログラム

    先端NMRファシリティは北海道地域で最大のNMR施設です。地域産業のみならず、全国の産業界、学術・研究機関などからもご利用いただけます。

    研究の内容

    北海道大学先端NMRファシリティの運営組織は、大学院先端生命科学研究院・理学研究院がコアとなり、 産学・地域協働推進機構、 創成研究機構グローバルファシリティセンターとも連携して産業界を中心とした新規利用の促進を目指しております。 800MHz溶液NMR・600MHz固体NMRなどの装置群のスペック、利用枠申込等の詳細についてはホームページをご覧いただき、 ぜひとも北海道大学の先端NMRファシリティの共用促進事業をご利用いただけますようよろしくお願い申し上げます。

  • 燃焼反応流体シミュレーションの新たな展開

    詳細反応機構の適用を可能にする高効率解析手法の提案

    数百化学種、数千化学反応オーダーから成る炭化水素系燃料のような大規模詳細反応機構を効率的に熱流体シミュレーションに組込む数値解析技術を提案しています。

    • 詳細反応機構/流体解析によるヒドラジン同軸噴流火炎解析例

    研究の内容

    これまでの熱流体(CFD)解析における化学反応現象は、計算負荷や解析技術の欠如から、数個の化学種や反応式から成る総括反応モデルや無限に速い反応を仮定することにより、簡素にモデル化されてきました。一方で、化学反応と流体現象の相互作用が重要となる場合、例えば、自動車エンジンにおける着火タイミングをはじめとした非定常現象予測や超希薄燃焼など極限的な条件では、簡素モデルの適用は困難となります。我々の研究グループでは、CFD解析における詳細反応機構適用の問題点を解決してきました。提案手法は、化学反応方程式の計算時間を大幅に短縮可能な時間積分法(ERENA)と類似化学種をまとめる化学種バンドル法から構成されます。条件に依りますが、従来から使用されてきた手法に対して、精度を維持しつつ、2桁から3桁の高速化を可能にしています。

  • アルミノ珪酸塩によるセシウムの捕捉・難溶性態化

    除染廃棄物等に含まれるセシウムの
    アルミノ珪酸塩(アルカリ長石)による捕捉

    焼却底灰中の難溶性態セシウムは、特定の鉱物表面の非晶質相に濃集しており、この鉱物はアルカリ長石であった。この捕捉現象を除染に伴って発生する除去土壌や廃棄物等に利用し、長期の保管においてもセシウムの溶出を抑制する技術の開発を行っている。

    研究の内容

    焼却底灰中のセシウム(以降Cs)が難溶性であるのは、Csがアルカリ長石の一つである微斜長石表面に形成される非晶質相に強固に捕捉されるためである。純粋な微斜長石に炭酸Csならびに塩化Cs等のCs塩を添加し加熱すると、極めて高い割合でCsが捕捉され、難溶性態化する(図1)。本過程で捕捉されたCsはフッ酸でなければ抽出できない程に強固に固定される。微斜長石を合成するの試薬を用いても同様のCs捕捉が起こる(図2)。そこで本研究では、この微斜長石等(アルミノ珪酸塩)によるCsの捕捉現象を、除去土壌や除染廃棄物の減容化熱処理に伴って生ずるCs濃縮物(Cs高濃度飛灰等)に適用し、最終処分される廃棄体でのCsの移動性を極力低下させる技術を確立することを目指している(図3)。

    東條 安匡 准教授 Yasumasa Tojo
    工学博士
  • ラゲールガウス光の時空間制御

    光の空間位相を用いた情報多重化

    本研究では特徴的な空間位相を持つラゲールガウス(LG)光を用いた情報多重化の基盤技術を構築しました。従来の光情報処理では積極的に利用されてこなかった空間位相に着目することにより、情報容量を増大させることを目的としています。

    研究の内容

    光による情報処理や伝送・記録・再生はレーザー光の強度や偏光、空間的に均一な位相を用いて行われます。また異なる周波数を用いた多重化により、伝送容量を増大させることができます。これに対して光の空間特性は、これまで積極的に利用されることのなかった未開拓領域です。このような背景のもと、情報処理容量限界を打破するステップとして、ラゲールガウス(LG)光を使った情報多重化やLG光を特徴付ける軌道角運動量(トポロジカルチャージ)を用いた量子情報処理が注目されるようになってきました。本研究では、物質との相互作用を通して、LG光のモード制御や短パルス光を用いた軌道角運動量変換・保存、ファイバによる空間分割多重伝送を実現しました。

  • 相変化せずに蓄熱する固体蓄熱材

    結晶構造の変化により蓄熱する固体蓄熱材

    トランス-1,4-ポリブタジエンは、固体の結晶構造の変化により蓄熱する特徴があり、この蓄熱材を用いた蓄熱器には、蓄熱材を入れる容器が不要になります。トランス-1,4-ポリブタジエンを用いた蓄熱器の宇宙実証に世界で初めて成功しました。

    • 蓄熱量の測定(DSC 曲線)

    • 表1 蓄熱温度と蓄熱量

    研究の内容

    超小型衛星の熱設計をしやすくすることを最終目標に、超小型衛星の熱制御に適した熱制御材として、結晶構造の変化により蓄熱する蓄熱材の開発を行っています。
    多くの蓄熱材が固相-液相の相変化によって蓄熱しています。微小重力下での液相は、伝熱面との濡れ性が悪いと伝熱面に接触せず、熱伝達が著しく悪くなるという欠点があります。そこで、本研究では、固相-固相の結晶構造の変化により蓄熱するトランス-1,4-ポリブタジエンに注目しています。
    開発された蓄熱器は、2014年6月20日に打ち上げられた超小型衛星HODOYOSHI4号機に搭載され、宇宙での性能実証試験が行われてきました。HODOYOSHI4号機のデータを解析したところ、蓄熱器が宇宙空間でも所定の温度で蓄熱・放熱していることが確認されました。

    戸谷 剛 教授 Tsuyoshi Totani
    博士(工学)
    工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 宇宙航空システム
  • コンピュータ・グラフィクスによる映像表現

    計算機による知的創造的活動の支援

    3次元CGを用いた人間の創造活動の支援を目指しています。CGは飛躍的に発展しましたが、3次元情報の操作は簡単ではなく、創造活動の支援にはいたりません。3次元空間の情報を自由に操作し、簡単にCG映像を作成する仕組みを研究しています。

    • コンピュータグラフィックスだけでなく、画像処理、デジタルファブリケーション、音声処理、ユーザインタフェースなどさまざまな研究を通して、知的創造活動の計算機による支援を行っています。

    研究の内容

    CGによって映像製作を行うためには、形状・カメラ・照明・材質などに関する膨大なパラメータを人間が用意しなければなりません。そして、目的の結果を得るためには、それらのパラメータを試行錯誤的に調整しなければなりません。加えて、精密な映像を作成するためには、長い計算時間が必要です。これでは、CGを使って創造的な活動を行うことはできません。そこで、本研究は、これらの問題を解決する方法の開発を行っています。パラメータ調整に関しては、逆問題アプローチを導入し、計算時間に関しては、並列計算を導入した高速計算手法の開発を行っています。さらに、これらの考え方を3Dプリンタを用いたデジタルファブリケーションへと応用しています。さらに、ユーザの意図をより直感的に反映するための新しいユーザインタフェースの開発にも取り組んでいます。

  • タンパク質代謝低下による新しい老化モデル

    加齢により様々な代謝の変化が生じます。いわゆる「代謝が低下」した状態は老化や生活習慣病、老化関連疾患の発症リスクを高めます。タンパク質代謝の低下により老化を示すマウスモデルを開発しました。

    研究の内容

    細胞内タンパク質の分解に働くプロテアソームは種を越えて細胞に発現し、生体機能の維持に重要です。老齢個体ではプロテアソーム活性が低下し、加齢によるプロテアソームの機能低下が老化や老化関連疾患の発症に関与します。本研究ではプロテアソーム活性が低下し、老化をきたすマウスモデルを作製致しました。本モデルに高脂肪食を負荷すると脂肪肝が増悪し、タバコ煙を負荷すると肺疾患をきたします。本モデルを応用することで、様々なヒト疾患の原因となるタンパク質の異常、ターゲット分子が解明できます。

    外丸 詩野 准教授 Utano Tomaru
    医学博士
  • 低消費電力型トンネルトランジスタ

    新しい半導体界面で次世代省エネ素子実現へ

    本研究では、髪の毛の数千分の1の大きさの非常に小さなナノワイヤで形成される、新しい半導体固相界面をスイッチ素子に応用することで、これまでにない低消費電力型FET・トンネルFETを提案・実現しました。

    • III-V/Si固相界面による縦型トンネルHEMT素子の開発
      (a)選択成長技術によるシリコン基板上のIII-Vナノワイヤアレイ、(b)変調ドープ型コアマルチシェルナノワイヤの模式図と作製結果の断面TEM像、(c) Si/InGaAsナノワイヤ界面のTEM像、(d) 歪マッピング、(e) 縦型トンネルHEMT素子構造

    研究の内容

    スマートフォンやパソコンの頭脳となるマイクロプロセッサ・半導体集積回路は、基本素子となる電界効果トランジスタ(FET)を小さくし、現在では、およそ20-30億個のFETを敷き詰めることで、高性能化を実現しています。高性能化の一方で、このFETの消費電力の急増が深刻な問題となっています。これは、FETのスイッチング性能(サブスレッショルド係数)に物理的な限界(60 mV/桁)があるためです。今後、抜本的な省エネルギー化を実現するためには、FETの物理限界を突破できる新しいスイッチ素子とその実用化が必要です。本研究では、これまでにない低消費電力型トンネルFETを提案・実現しました。

  • 量子暗号鍵配付装置の安全性保証技術

    究極の暗号の安全性を実験的に保証する

    量子暗号鍵配付を用いることで将来いかに技術が進歩しても高度な秘匿性を保つ暗号鍵を光通信により共有できます。本研究は、量子暗号の実用化に向け、実際に作られた装置で安全性を実験的に保証するための技術を提供します。

    • (量子暗号鍵配付装置の構成と安全性保証のためのチェック項目)

    • (実際の量子暗号鍵配付装置)

    研究の内容

    量子暗号鍵配付は原理実証の段階をクリアし、実用化を意識した研究が進められています。究極の秘匿通信を実現する技術として、世界各地で実証実験を含む研究が進められています。当研究室では理論的な部分と実装に関わる部分を同時に研究しています。現実世界では理論通りにいかないことが多く、仮説と実験結果とのズレが生じることが多々ありますが、そのズレの影響を評価し、現実の装置で作られる暗号鍵の安全性を定量的に保証することを目指しています。そのため、理論的な研究と実際の装置開発を橋渡しする形で実証研究を行っています。この研究によって量子的な装置を測定、評価して現実化することが可能になり、将来の量子ネットワークの実現に寄与できるものと考えています。

  • EUVプラズマの診断や制御のための計測技術

    EUVプラズマの電子密度や電子温度をレーザーを用いて詳細に計測および制御する技術。

    • EUV光源のプラズマ構造を計測可能なシステム
      開発。EUV光出力を、プラズマの電子状態から初めて説明可能とした。密度の中空様構造の発見。

    • EUV光源のプラズマ構造を計測するためのシステム
      原理。光(レーザー)を用いた散乱計測である。

    • EUV光源からの光出力を、発光の根源である電子状態まで遡って説明可能とした。

    • 電子状態はプラズマ応用の基礎であるが、測定が困難であり、電子状態まで立ち返った現象理解や改良はなかなか行われない。EUV光源以外にも、電子計測に基づいた様々なプラズマ応用の研究を展開している。

    研究の内容

    EUVプラズマ及び軟X線プラズマは、容易に大光量を達成でき、半導体露光や材料診断に用いられている。一方でその最適化(波長選択性や高効率化)のためには、プラズマの電子状態(電子密度や電子温度)の制御が必要であるが、その計測は従来技術では達成されておらず、電子状態はなかばブラックボックスであった。本技術の特徴は、独自の分光システムを用いたレーザー散乱計測(トムソン散乱法)により、EUVプラズマの詳細な電子密度・温度の計測を可能とした点である。これにより、プラズマが光を発するメカニズムの根源である電子状態を把握した光源開発を可能としている。

    富田 健太郎 准教授 Kentaro Tomita
    博士(工学)