北海道大学 研究シーズ集

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12. つくる責任、つかう責任:22件

1頁の掲載件数 20 50 改頁しない SDGs別アイコン凡例
  • 1. 貧困をなくそう
  • 2. 飢餓をゼロに
  • 3. すべての人に健康と福祉を
  • 4. 質の高い教育をみんなに
  • 5. ジェンダー平等を実現しよう
  • 6. 安全な水とトイレを世界中に
  • 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10. 人や国の不平等をなくそう
  • 11. 住み続けられるまちづくりを
  • 12. つくる責任、つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさも守ろう
  • 16. 平和と公正をすべての人に
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう
  • リンの高効率かつ高選択的な分離回収技術

    リン鉱石の輸入依存脱却が可能な二次リン資源からのリンの分離回収

    「炭素化(もしくは炭素添加)」と「塩素化」を共通工程とした二次リン資源(製鋼スラグ、鶏糞、下水処理後のHAP・MAP、下水汚泥、下水汚泥焼却灰など)中のリンの非常にシンプルな高効率・高選択的分離回収技術を開発した。

    • 図1 製鋼スラグでの再資源化の例

    • 図2 下水汚泥焼却灰での再資源化の例

    研究の内容

    リンは生命体の必須元素で、さらに、化学肥料や工業製品などの原料として広く使われているが、近年、リン鉱石の低品位化と枯渇が現実味を帯び始め、資源の確保が焦眉の課題となっている。一方、日本のリンのマテリアルフローに従うと、輸入リン鉱石の3.4倍、全持込リン量の半分以上が鉄鋼スラグ、家畜糞、下水汚泥中に移行する。そのため、これらの二次リン資源の再資源化技術の開発は重要である。そこで当研究室では、鶏糞や下水汚泥の炭化物の塩素処理によりリン回収を阻害する鉄を分離し、次いで、元々存在する炭素による還元反応でリンのみを選択的に回収する非常にシンプルな再資源化プロセスを開発した。本技術は炭素添加した製鋼スラグ、HAP・MAP、下水汚泥焼却灰などにも適用できるため、我が国のリン資源対応力強化に繋がると期待できる。

  • 生体骨を模倣した3Dプリント可能で力学的高機能な多孔質構造体

    生体骨の持つ構造的な特徴と力学的な特性を基に、3Dプリント可能で力学的高機能な新しい多孔質構造体を開発。破壊の進展が抑制可能で、高い吸収エネルギ性が可能。等方的な力学特性も実現可能。樹脂や金属を用いて3Dプリンタにより製造可能。

    研究の内容

    規則的な構造の繰り返しを有する一般的な多孔質構造体には、内部構造に起因した特定方向の強度低下や一度破壊が生じると容易に破壊が進展するという力学的課題がある。本シーズでは、生体内環境に最適化された多孔質材料である生体骨(海綿骨)に着目し、海綿骨の構造的な特徴と力学的な特性に基づいて確率的に構築したネットワーク構造を骨格とする新しい多孔質構造体「海綿骨模倣構造」を開発した。樹脂や金属を用いて3Dプリンタにより製造可能であることを確認した。圧縮破壊試験の結果、特定方向の強度低下が抑制でき、初期破壊後の破壊進展が抑制され吸収エネルギが高いことを確認した。本シーズにより、設計自由度が高く力学的に高機能な多孔質構造が設計・製造できる。

    山田 悟史 助教 Satoshi Yamada
    博士(工学)
    工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 人間機械システム
  • 小型電子加速器中性子源を用いた
    通信機器のソフトエラー試験

    宇宙線に起因する通信機器の誤動作を未然に防ぐ

    通信ネットワークを支える機器の半導体デバイスの高集積化が進展してきており、宇宙線中性子によるソフトエラーの確率が高まることが懸念されている。その対策のため、北大の小型加速器中性子源を利用して、通信機器のソフトエラー試験を実施している。

    • 中性子ソフトエラー試験の概念図(NTT提供)。3台の装置に同時にビームを照射することができる。

    研究の内容

    通信機器の大容量化・高機能化に伴い、半導体デバイスの高集積化が進んでいる。しかし、宇宙線中性子によって、ビット情報が反転し動作が混乱するソフトエラーの増加が懸念されている。そこでNTTと共同で、小型電子加速器駆動中性子源によりソフトエラーを再現させ、トラブルに対して事前に対策技術を開発できる場を提供できるようにした。これにより、故障発生率を事前に予測できるようになると共に、エラー検出や運用対処の確認が可能となり、機器の信頼性の向上につなげられる。
    本技術の特徴は「小型加速器中性子源」の活用である。従来は大規模加速器中性子源が必要とされてきたため、試験時間や実験スペースの十分な確保は困難であった。しかし本学における研究により、中性子強度が自然界の約数百万倍の施設でも、十分な試験が可能であることを実証した。

  • 革新的なアルマイトの創製と機能発現

    表面が変われば、全てが変わる

    アルミニウムの耐食性不働態皮膜として極めて有名な「アルマイト」を革新し、アルミニウムに優れた特性や新しい機能を発現する研究をご紹介します。

    研究の内容

    「アルマイト」とはアルミニウム表面に形成された人工的な不働態皮膜のことであり、およそ100年前に日本で開発されました。私たちの身の回りにはたくさんのアルマイト製品がありますが、私たちの研究グループではアルミニウム表面にアルマイトを形成するための化学物質や形成手法(陽極酸化)を一から見直し、優れた特性や革新的な機能を発現する新しいアルマイト形成法の開発に挑んでいます。具体的には、とても規則的なナノ構造をもつアルマイト、ビッカース硬度Hv = 600以上の硬いアルマイト、酸・塩基性環境や塩化物環境においても高い耐食性をもつアルマイト、ルミネッセンスや構造色を生じて美しく光るアルマイトなどです。

  • リチウムイオン電池の火災安全性向上技術

    リチウムイオン電池はそのエネルギー密度の高さから利用が急激に拡大している。一方で電池内部に有機溶媒を使用していることから火災安全性の確保が重要である。本研究は有機溶媒の燃焼現象に焦点をあててその燃焼抑制技術に関する研究を行っている。

    研究の内容

    リチウムイオン電池はそのエネルギー密度の高さから利用が急激に拡大している。一方で電池内部の電解液に有機溶媒を使用していることから火災安全性の確保が重要である。本研究は有機溶媒の燃焼抑制を目指して燃焼抑制剤添加効果の定量化手法の開発や燃焼抑制に効果のある添加剤の探索、さらには、電解液に含まれるリチウム塩自体の有機溶媒の燃焼性に及ぼす効果などを研究している。また、電解液の燃焼素反応機構を考慮した火災現象のモデル化および数値解析を実施している。

  • 組織の内部コミュニケーションに関する研究

    リスクと戦略系におけるコミュニケーション

    経営組織の内部で形成されるリスクコミュニケーションに関心があります。「リスク」は「純粋リスク」と「動態的リスク」に大別されますが、これらの要素がどのように組織内でコミュニケーションを形成し、個人や集団の行動を規定するのかを検討しています。

    • 図 ウクライナ・キエフ市内での抗議デモ(2014年1月, 筆者撮影)
      EU経済圏へ加入することを望む人々がヤヌコーヴィチ大統領の判断(EU加盟を見送り)へ抗議するデモ。

    研究の内容

    私の研究目的は、まずは組織の内部で形成される固有のコミュニケーション現象を突き止めることにあります。「純粋リスク」では、特に製品事故における対内的/対外的な組織広報のあり方や、危険物取扱組織における対内的リスクコミュニケーションのあり方を模索しましたが、ここ暫くは、「動態的リスク」を重点的に扱ってきました。組織の中で創出/攪乱・拡散/構造化するコミュニケーションを観察し、そのひとつひとつに、組織にとっての、何らかの、「意味/価値のまとまり」を見つけることが、斬新な組織戦略を導くと考えており、研究の独自性や特徴はそこにあると考えております。この点について、最近は社会的組織(例:写真)がどのような意図を持って組織化されていくのかも検討しております。

  • 電子顕微鏡内での電気特性と構造変化の同時観察

    電気的特性と構造変化の関連を評価でき、信頼性確立に有効

    電子顕微鏡内に電子デバイス片を配置し、これに可動プローブ電極を当て、電気特性を評価しながら、電子顕微鏡による観察を可能に。サンプル側電極にMOSFETを搭載し、過剰電流を抑制可能に。電気特性と構造変化の相関を評価し、故障原因究明などに有効。

    • 図1 評価用サンプルホルダー

    • 図2 電子顕微鏡内でのデバイス評価イメージ

    研究の内容

    本研究による電子顕微鏡その場観察システムは、可動プローブ2本とサンプル固定部を電極とした3端子のデバイス測定が可能です。サンプルホルダーには、浮遊容量による過剰電流が流制限するためのMOSトランジスタを挿入してあります。
    実用化に近い、微細電子デバイスには、相変化メモリや抵抗変化メモリなど、抵抗変化に伴っての構造変化が予測されているデバイスがあります。微細デバイスは、動作速度が速い上に、構造がナノスケールであるため、抵抗変化が引き起こされるメカニズムの確認が困難です。本システムは、この評価を可能にするとともに、信頼性確保のための不良動作原因などの調査に有効です。加えて、今後期待されるナノ構造機能デバイス、例えばナノマシンやナノ構造2次電池などの動作機能の確認や不良原因の評価などを効果的に行うことを可能にします。

  • 大規模電磁界解析による乗り物内
    無線接続サービスの電波伝搬特性評価手法

    ワイヤレス環境の最適設計を目指して

    航空機や旅客鉄道車輛内などの複雑で特殊な伝搬環境評価,電波の人体侵入,さらに体内埋込み型医療機器の電磁干渉評価とメカニズム推定,電気自動車無線給電装置の漏洩電磁界評価など,様々な電波利用分野での研究実績を上げてきている。

    研究の内容

    乗り物内の無線伝搬環境は,周囲が金属であることによる多重反射,加えて内部に什器や乗客の存在により,従来の伝搬モデルとは異なる特殊な環境になる。そのため,実運用状況の無線接続品質を見積もるには,乗客人体等による電波の吸収・散乱の効果を含めた電波伝搬特性の評価が必要となるが,実測や簡便な数値解析(レイトレース等)にてこれらを評価することは困難である。本研究は,従来困難であった乗り物内の伝搬環境モデリングに取り組み,超大規模解析空間におけるシミュレーション手法をスーパーコンピュータの利用により実現するものである。

  • 均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応

    シスアルケンとアミン類の選択的合成

    医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。

    研究の内容

    酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。

  • 金属材料の組織予測シミュレーション技術の開発

    凝固から固相変態まで

    構造材料や機能材料の製造プロセスでは、凝固、熱処理、塑性加工において様々な材料組織が形成し、その材料組織の特徴が材料の特性を決めています。凝固から固相変態までの一連の材料組織変化を予測するシミュレーション法の開発を行っています。

    研究の内容

    金属材料の凝固、結晶粒成長、拡散固相変態など、製造プロセスで生じる一連の相変態における材料組織の時間変化を予測する手法の開発と応用を行っています。特に、組織形成シミュレーション手法であるフェーズフィールド・モデルの開発に従事し、拡散相変態を世界最高精度で計算するモデルの開発に成功しています。また、実験的アプローチ、分子動力学法による原子論的アプローチ、さらにはデータ同化、機械学習といった情報科学のアプローチを組み合わせて、種々の合金系における材料組織制御に取り組んでいます。超大規模計算によって組織形成の新しい学理を開拓し、実プロセスの最適化につながる成果を得ています。

  • ポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子による
    高活性触媒の創製

    高分子担体を反応場とする金属錯体触媒の設計と効率的合成プロセスの開発

    高分子担持金属触媒の創製に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子を開発しました。高分子トポロジーの効果により、金属錯体の不均化や金属凝集による触媒の不活性化を抑制することができます。第一遷移系列金属触媒の配位子として特に有効です。

    研究の内容

    不均一系(不溶性)金属触媒は、反応混合物からの分離が容易で再利用性に優れた環境負荷の少ない有機合成手法ですが、対応する均一系(可溶性)触媒と比較して、触媒活性が低下することが問題です。私たちは、高分子鎖のトポロジー制御に基づき、高活性なモノキレート型単核遷移金属錯体の発生に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzを開発しました。塩化アリールのアミノ化カップリングやエステル-アゾールカップリング等のNi触媒反応などの効率を著しく向上させ、既存触媒では適用困難であった基質に対しても有効です。本触媒は、ろ過による分離や再利用も可能なことから、産業利用が期待されます。

  • ナトリウムアミドを用いた低温窒化法

    アンモニアガスボンベを使用しない窒化物・酸窒化物合成

    ナトリウムアミド融液を用いることで、高濃度・高活性な窒素源との反応を引き起こし、酸化物などを低温(300℃以下)で窒化物・酸窒化物に変換する手法。毒ガスであるアンモニアガスボンベを準備することなく窒化物・酸窒化物を合成可能です。

    研究の内容

    300℃以下の低温で酸化物を窒化する新規手法です。従来の窒化手法では、毒ガスであるアンモニアガスボンベやアンモニアガスの回収設備の設置等が必要であり、またアンモニアガスの使用率も低いためアンモニアを大量に使用します。本手法では、ナトリウムアミドをフラックスとして用いることで、毒性のあるアンモニアの使用量を最小限に抑えられ、低温で酸窒化物及び窒化物のナノ結晶が得られます。また、ナトリウムアミドは固体窒素源であり、アンモニア液体ボンベの設置が不要です。また、塩化物とナトリウムアミドを混合することで、瞬間的な昇温反応によって酸窒化物を合成する手法を発見しています。

  • ポータブルな液体クロマトグラフ

    電池で駆動する超軽量・超コンパクトな化学分析装置

    独自テクノロジーにより液体クロマトグラフの主要要素であるポンプ、カラム、および検出器を小型化し、B5サイズ・2 kgというコンパクトで軽量かつポータブルな液体クロマトグラフを実現。これにより分析結果をその場で迅速に得ることが可能になります。

    • ポータブル液体クロマトグラフ

    • カラムと検出器を集積したチップデバイス

    • 電気浸透流ポンプの動作原理

    • 生体アミンの分析例

    研究の内容

    我々が開発した液体クロマトグラフのポンプは電気浸透現象を原理とし、乾電池で長時間駆動します。機械的駆動部がないため極めて小型・軽量で脈流が発生しないという特徴があります。カラムと検出器(電気化学・UV)は微細加工技術を用いて名刺ほどの一枚の小さな基板上に搭載しています。カラムには従来の充填剤を使用しており、これまで使用してきた分析条件をそのまま適用できます。電気化学検出器は独自開発のくし形電極を採用しており、小型とはいえ従来機に匹敵する感度をもっています。現在、化学分析の主要な装置として使用されている液体クロマトグラフは大型で大重量であるため実験室の特定の場所での使用に限定されていましたが、我々が開発した装置はどこでも簡単に使用することができます。溶媒使用量も従来の1/100~1/1000に低減されます。

  • 中性子とX線を複合利用した超階層構造イメージング

    量子ビームを複合利用し、幅広いスケールに渡って不可知情報を非破壊的に可視化するイメージング

    パルス中性子透過分光イメージングは、他の顕微法では視えない情報を非破壊に可視化できる手法として注目を受けています。X線のような他の量子ビームと複合解析すれば画像だけではわからない情報も可視化することが可能になります。

    研究の内容

    小型加速器を利用する実験施設として半世紀近い歴史がある北大施設は、先導的な施設として世界的に注目されています。北大では主にパルス中性子ビームを作っており、それで得られる透過スペクトルから、結晶構造やミクロ組織、内部応力、温度等の情報を、試料全体にわたる分布として2次元の実像上にマッピングすることが可能です。一方、X線CTでは物体内部の3次元構造を測定できるので、両者の結果を複合的に解析し、相乗的に物体内部情報を理解する研究を行っています。図は中性子とX線による相乗イメージングとして、単独では得られない元素情報をX線CTによる内部構造にマッピングしたイメージを示しています。X線CTではAl円筒中のワイヤの存在がわかりますが、中性子の情報を加えるとそれぞれが異なる素材とわかります。

  • 先端複合材料の最適設計

    自由繊維形状による新機能複合材料

    先端複合材料(炭素繊維強化複合材)は広く構造材料として使用され始めているが、その異方性を効率的に利用できているとは言えない。当研究室では複合材の繊維配向(直線状・曲線状)を最適に設計する手法の開発を行っている。

    • 図1ファイバー縫付機による曲線繊維縫付け

    • 図2最適繊維形状

    • 図3ひずみ分布

    研究の内容

    比強度・比剛性の高さから構造材料として広く利用されている先端複合材料(炭素繊維複合材料、CFRP)は、その繊維配向技術の発展により繊維を直線状のみではなく、曲線状に配置することが可能となっている。直線状の繊維と比較して設計の自由度は大きく向上するため、部品形状や使用目的に特化したCFRP部材の作製が可能である。当研究室では刺繍機の技術を援用したファイバー縫付機(図1)を用いて曲線状繊維を有する複合材供試体を作製し、その力学特性評価を実施するとともに、独自の繊維形状最適化手法を開発している。例えば図2は複数の円孔を持つ翼モデルの孔周りのひずみ集中を軽減することを目的とした最適繊維形状であり、ひずみ分布は図3のようになる。これは直線繊維よりもひずみ集中を軽減できていることがわかっている。

  • 社会的意思決定のプロセス・デザイン

    合意形成の社会心理学的アプローチ

    国や自治体の計画づくりなど社会全体としての決定が必要な場面では、多様な意見を包括的に含めていく必要がある。また、その計画が多くの人に共有され、一人ひとりの行動に結びついてはじめて意味をなす。これらを実現するためのプロセス・デザインが鍵となる

    • プロセス・デザインのイメージ

    • 一部の熱心な人の取り組みだけではなく、多くの無関心者を取り込んだ決定プロセスを経ることが鍵

    研究の内容

    公共的意思決定が求められる場面(計画策定など)で、理念を描いただけでは“絵に描いた餅”になりかねない。一方、具体化しようとするほど、異なる価値感が対立することがある。これらの問題を乗り越えるために対話が必要であるが、その“場”の設計が肝要である。その鍵となるのが「共通目標の共有化」である。つまり、異なる価値を乗り越える新たな価値の創造と、それが抽象理念ではなくそこに関わる人びとが実現可能だと確信できる社会像を描き、実践していく必要がある。本研究室では、これら一連の営みをプロセス・デザインとして設計する。具体的には、合意形成のための市民参加の技法、計画を実行に移すための行動変容アプローチを用いることで、より実効性ある公共的意思決定の支援を行う。

    大沼 進 教授 社会科学実験研究センター長 Susumu Ohnuma
    博士(心理学)
  • 社会技術システムとしてのバイオマス利活用に関する研究

    地域循環によるバイオエネルギー普及を目指して

    循環計画システム研究室では、生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材や稲わら等のバイオマスを地域内で利用し、地域分散型のバイオエネルギーを創り出すための、技術と社会の仕組み作り(社会技術システム)に関する研究をしています。

    • 左図の説明
      <バイオマス利活用システム構築で考慮すべき要素>
      健全なバイオマスの利活用システムを構築するためには、事業の目的を明確にした上で、(1)バイオマスを収集・運搬するインプット、(2)エネルギー利用や残渣の処理といったアウトプット、(3)インプットの性状に応じた変換技術の選択、(4)事業採算性(事業主体)、そして(5)地域特性のすべてを一体として考える必要があります。

    研究の内容

    本研究室では、バイオマス(生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材、稲わらなど)から燃焼やメタン発酵によって回収されたエネルギーを、地域内に存在するエネルギー需要者(公共施設や介護・福祉施設、ビニールハウス等の農業施設、食品工場等)と結びつけることにより、環境と地域振興(経済)の両方に貢献できるシステム提案(実験やフィールド調査に基づく計画、モデリング、評価)を行っています。さらに、民間企業の協力を得て、寄附分野循環・エネルギー技術システム分野(古市徹客員教授、藤山淳史特任助教、http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/mces/)とも連携し、エコで安全なエネルギーに関する研究を行っています。

    石井 一英 教授 Kazuei Ishii
    博士(工学)
  • アルミノ珪酸塩によるセシウムの捕捉・難溶性態化

    除染廃棄物等に含まれるセシウムの
    アルミノ珪酸塩(アルカリ長石)による捕捉

    焼却底灰中の難溶性態セシウムは、特定の鉱物表面の非晶質相に濃集しており、この鉱物はアルカリ長石であった。この捕捉現象を除染に伴って発生する除去土壌や廃棄物等に利用し、長期の保管においてもセシウムの溶出を抑制する技術の開発を行っている。

    研究の内容

    焼却底灰中のセシウム(以降Cs)が難溶性であるのは、Csがアルカリ長石の一つである微斜長石表面に形成される非晶質相に強固に捕捉されるためである。純粋な微斜長石に炭酸Csならびに塩化Cs等のCs塩を添加し加熱すると、極めて高い割合でCsが捕捉され、難溶性態化する(図1)。本過程で捕捉されたCsはフッ酸でなければ抽出できない程に強固に固定される。微斜長石を合成するの試薬を用いても同様のCs捕捉が起こる(図2)。そこで本研究では、この微斜長石等(アルミノ珪酸塩)によるCsの捕捉現象を、除去土壌や除染廃棄物の減容化熱処理に伴って生ずるCs濃縮物(Cs高濃度飛灰等)に適用し、最終処分される廃棄体でのCsの移動性を極力低下させる技術を確立することを目指している(図3)。

    東條 安匡 准教授 Yasumasa Tojo
    工学博士
  • 成長のツボを押す新しい植物生育促進技術

    排水を活用する次世代バイオマス生産と植物工場への共生細菌の利用可能性

    北海道大学植物園のウキクサ亜科植物から全く新しい成長促進細菌P23を発見した。P23は植物の表面スイッチを押すことでその生育を促進する。ウキクサは排水を肥料として生育する高付加価値バイオマスであり、P23との共生によってその生産速度が約2倍

    研究の内容

    水生植物ウキクサは排水中の窒素やリンを吸収して生育することが可能かつ、リグニンやセルロースをほとんど含まないソフトバイオマスである。そのタンパク質含量は大豆に匹敵する約30%であり、生育環境によってデンプン蓄積量も50%に達する。前者の特徴は家畜飼料としてそのまま利用可能であり、後者はバイオ燃料生産および化成品前駆体HMFを生産するための原料として有用である。このような、次世代バイオマスの生産収率を向上するために、私たちは表層細菌の共生作用による植物生育促進技術開発を行っている。その適用範囲は、ウキクサの栽培以外に野菜・穀類の水耕栽培(植物工場)が想定される。これは遺伝子組換えを伴わない、自然の摂理に従った古くて新しいバイオ技術である。

  • コンテンツツーリズムの応用研究

    コンテンツツーリズムを通した文化の伝播・受容に関する国際比較研究とその応用としての観光まちづくり施策の立案

    コンテンツツーリズムをポップカルチャーの伝播と受容の側面から捉え直し、そうしたツーリズムが他者理解に果たす役割を明らかにすべく国際比較研究を展開しています。さらにそこで得られた知見を観光まちづくりの現場に具体的施策として還元しています。

    • 図:コンテンツツーリズム型観光まちづくりのための
      トライアングルモデル

    研究の内容

    本研究では、コンテンツツーリズム(「物語」や「作品」、それらを構成する諸要素によって意味が与えられた場所を、実際に訪れ、当該コンテンツを体感する行為)を対象として、以下の三点を目的とした国際共同研究を展開しています。
    第一に、コンテンツツーリズムをポップカルチャーの伝播と受容の側面から捉え直すことを通して、そうしたツーリズムが他者理解に果たす役割を明らかにすること。第二に、これを踏まえて、コンテンツを核とした交流型観光まちづくりのあり方をモデル化すること。そして第三に、我が国の置かれている地政学上とりわけ国際的な相互理解が求められている東アジア地域に着目し、日本のコンテンツをきっかけとしたコンテンツツーリズムが、我が国の文化的安全保障に向けてどのような可能性と課題を有しているのか考察を行うこと、です。

    山村 高淑 教授 Takayoshi Yamamura
    博士(工学)