北海道大学 研究シーズ集

English

13. 気候変動に具体的な対策を:32件

1頁の掲載件数 20 50 改頁しない SDGs別アイコン凡例
  • 1. 貧困をなくそう
  • 2. 飢餓をゼロに
  • 3. すべての人に健康と福祉を
  • 4. 質の高い教育をみんなに
  • 5. ジェンダー平等を実現しよう
  • 6. 安全な水とトイレを世界中に
  • 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10. 人や国の不平等をなくそう
  • 11. 住み続けられるまちづくりを
  • 12. つくる責任、つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさも守ろう
  • 16. 平和と公正をすべての人に
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう
  • 台風強度及び豪雨の発達予測システム

    雷放電計測から数時間先の豪雨と数日先の台風発達を予測

    都市部でのゲリラ豪雨や大規模な台風は甚大な災害を引き起こす。災害を防ぐためには発達度をいち早く予測することが重要である。本研究は、局所発達する雷雲や台風勢力圏内で発生する雷放電活動から、数時間先の豪雨や1-2日先の台風強度を直前予測する。

    • V-POTEKA Network

    • 2019年台風13号の予測結果
      (黒線:雷数、赤線:風速、青線:気圧)

    研究の内容

    本研究は、雷放電から放射される1-50 kHz VLF帯電磁波動を複数拠点で同時観測し、都市部で発達する雷雲や、台風を構成する積乱雲における雷活動を準リアルタイムで監視することで、数時間先の豪雨や1-2日先の台風強度がどのように発達するかを簡便に直前予測する手法を提供する。豪雨や台風の規模予測に従来用いられている複雑で専門的な数値気象モデルとは一線を画し、雷放電数や放電規模といった雷活動の指標を用いることで、数時間から数日先までの強度発達を正確かつ簡易に予測可能とする。
    日本を含むアジア域の雷活動を監視するため、雷放電が放射する1-50 kHz VLF帯電磁波動の観測システム(V-POTEKA)を25拠点に設置している。そこで得たデータから雷発生時刻・位置・放電規模を準リアルタイムに推定している。

  • 持続可能な社会へ向けて北極域・雪氷圏の大気汚染(エアロゾル・PM2.5)・森林火災・雪氷・気候変動を繋ぎ、その関係性を解き明かす!

    森林火災・大気汚染・雪氷・気候変動を繋ぐ北極域・雪氷圏を中心に活躍する大気環境科学の研究者

    森林火災とその大気汚染(エアロゾル・PM2.5)、これらの発生要因分析と予測や、影響評価(気候、健康、経済など)に関する多角的な研究を観測からデータ解析・モデリングまで様々な研究手法で行っています。

    • Yasunari et al. (2018, Sci. Rep.)の図1b。NASAのMERRA-2再解析データを使って算出した2014年7月25日の日平均PM2.5濃度。白丸は、札幌市の場所。

    • Yasunari et al. (2022, J. Environ. Manage.)のプロトタイプからアップデートされた商用版の寒冷地仕様PM2.5測定装置。株式会社タナカ(http://kktanaka.co.jp/products)から誰でも購入可能(鉄箱+PM2.5センサー部分は別途入手が必要)。

    • Yasunari et al. (2021, Environ. Res. Lett.)で発見された西欧熱波とシベリア・亜寒帯北米(アラスカ・カナダ)の森林火災を同時に発生させうる気候(大気循環)パターン:高気圧性循環が北極の周りを取り囲むように配置するようなパターンであったことからcircum-Arctic wave(CAW)パターンと名付けられた。図は論文のFig. 9の日本語版(作製は、現・「理系漫画制作室株式会社」:https://www.sciencemanga.jp/)。

    • Yasunari et al. (2024, Atmos. Sci. Lett.)で、2022年夏に、PM2.5測定装置(商用版)を使って、北極域のグリーンランド北西部カナックで初めて現地の大気環境、および野外廃棄物焼却時のPM2.5濃度を測定(図は、論文のGraphical Abstract)。

    研究の内容

    森林火災のニュースを近年頻繁に聞くようになりました。大規模な森林火災は発生域だけでなく、その風下域まで大気汚染(PM2.5)を輸送し、住んでいる人々に影響を与える可能性があります。そのため、森林火災や発生する大気エアロゾル(大気汚染)の発生要因の特定、その後の多様な影響評価(気候・健康・社会・経済的影響など)が求められています。また、得た知見を元に、これらの予測を可能にすることが発生域から風下域に住んでいる人々への対策の観点から極めて重要です。上記の目的のため、寒冷地仕様の持ち運び可能なPM2.5測定装置の開発とPM2.5等の大気質の多地点観測、大規模全球データ(衛星、モデル、再解析データ等)の解析、機械学習予測など様々な手法を駆使して研究を進めています(NASAとの共同研究や、異分野融合研究もしています)。

    安成 哲平 特任准教授 Teppei J. Yasunari
    博士(環境科学)
  • ライフサイクルアセスメントによる陸上養殖施設の環境影響評価

    環境負荷(CO2等)排出量を評価して環境に配慮した持続可能な養殖業を目指す

    世界的に養殖生産量が急速に増加に伴い、養殖によって排出される環境負荷が懸念されている。環境負荷の排出量を評価する手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)を用いて、陸上養殖施設のシステム全体で排出される環境負荷を評価した。

    研究の内容

    ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment; LCA):ある製品、サービスにおいて、製造から消費に排出される環境負荷要因(CO2やNOxなど)を評価する手法
    初めて国内で陸上養殖施設を対象としてLCA分析を行い、排出される環境負荷を定量的に明らかにした。

    まとめ
    ・陸上養殖施設では、CO2排出は70%近くが電力由来
    ・一般的な給餌型の養殖よりも給餌量が少ないため、餌による環境負荷排出は非常に少ない給餌、給水等、各要素が環境に与える影響を明らかにした。各要素の改善によって、環境に配慮した持続可能な養殖業に寄与できる

  • 化学的手法による水域生態系の理解

    各種化学分析から海域,湖沼,河川の環境を評価します

    水域の生物生産性,漁業生産性は光合成生物(基礎生産者)に支えられています。基礎生産過程の理解には栄養塩類など水中の化学成分の分析と、その結果の適切な解釈が必要です。現地調査,化学分析からデータ解析までを一貫して実施します。

    研究の内容

    一例として【北海道サロマ湖のホタテガイ養殖を支援する環境調査】を紹介します
    ◆サロマ湖は日本を代表するホタテガイ養殖の場であり、湖内での年間約7千トンの生産に加え、外海へ放流する稚貝の生産場所として、オホーツク海での年間約7万トンの生産を支えています。
    ◆漁業資源を包括的に管理し、永続的に利用していくため、漁業者がホタテガイ養殖許容量を設定し、サロマ湖の漁場管理を行っています。
    ◆当研究室はサロマ湖養殖漁業協同組合と協力し、養殖許容量を算定するための環境モニタリングを実施しています。

  • 動・植物プランクトンの群集構造

    プランクトンを通して、海の状態・変化を知る

    海洋生態系において、プランクトンは、温暖化などの影響をいち早く受けるため、良い指標となります。極域や亜寒帯域を中心に、植物および動物プランクトンの種類や量を調べ、気候変動による影響の解明を目指しています。

    研究の内容

    ①北極海の動物プランクトン群集が近年変化していることを解明。
    ②太平洋の種が北極海内で産卵・孵化していることを初発見。
    北極海の入り口であるチャクチ海で、近年、太平洋産の動物プランクトンが多くなっていることを発見しました。さらに、輸送されている太平洋産種が、北極海の中で産卵・孵化していることを世界で初めて発見しました。
    ③海氷変動により、植物プランクトンブルーム時の種と規模が変わることを解明。
    北部ベーリング海で、海氷融解タイミングが変化すると、その後の植物ブルーム構成種と規模が大きく変わることを解明しました
    ④氷河融解水流入により、栄養塩が湧昇し、ナノ鞭毛藻類を介した生産が増加する。
    グリーンランドフィヨルドで、氷河融解水がマイクロプランクトン群集に影響を与えていることを解明しました

  • 環境ー植物ー土壌

    植物を通して環境と土壌を考える

    土壌からの養分(必須のみならず不要、有害元素も含めて)移動には植物and/or微生物の生物的な作用が重要です。また、環境変動は植物を通して土壌にも影響を与えています。この相互作用の解析を通して新たな栽培技術の創出を目指しています。

    研究の内容

     スライド1はルーピンというマメ科飼料作物の根が土壌に対してどのように働きかけを行っているのかを解析した内容です。ルーピンはクラスター根という特殊な根を発達させて、有機酸などの化合物を土壌に放出し、これらが土壌に作用して様々な元素の可溶化に貢献していると考えられています。そのメカニズムを植物の代謝応答、土壌鉱物の変化、そして介在している微生物機能の解析を通して複合的に明らかにすることを目指しています。
     スライド2は福島県内で取り組んでいる植物による放射性セシウム吸収制御の試験風景です。作物種によって土壌からの放射性セシウムの吸収能には違いがあることが知られてはいるものの、そのメカニズムは明確にはなっていません。これを明らかにすることで、対策技術に結びつけることを目指しています。

    信濃 卓郎 教授 Shinano Takuro
    農学研究院 基盤研究部門 生物機能化学分野
  • 発光性希土類錯体を用いた農林水産事業の支援

    波長変換フィルムで農作物成長を促進

    農作物成長促進に効果的な強発光性の希土類錯体(発光効率:世界トップ)を開発。その発光体を透明シートに塗った光波長変換フィルム(紫外光→可視光)の作製に成功。

    研究の内容

    紫外光を効率よく吸収し、赤色領域の強発光する希土類錯体を開発しました。この分子を塗り込んだ光波長変換フィルムは太陽光の赤色部分(600nm付近)を増強することができます。
    この希土類錯体は可視光領域は光吸収がなく、農作物の光合成の鍵となるクロロフィル分子(赤色光を吸収)へ光を効果的に当てることができます。
    ● 太陽光の可視光領域をさえぎることがないため、農作物育成に応用した場合、日照時間を増やす効果があります。(特に冬期は効果的)
    ● 光変換の波長は赤色光の他に、「緑色光」「白色(波長混合)」「近赤外光」 に変換も可能です。  紫外線カットによる遮熱効果も期待できます。
    ● 発光色が温度によって変化するフィルムも作ることができます。LEDと組み合わせることもできます。

    長谷川 靖哉 教授 Yasuchika Hasegawa
    北海道大学大学院工学研究院 応用化学部門・先端材料化学研究室 
  • 雪シミュレーションを用いた積雪寒冷都市デザイン

    北海道・北方圏の気候風土に適した建築・都市・地域のデザイン

    風雪環境を改善することにより除雪エネルギーを最小化し、屋内建築エネルギーと一体化した都市空間像である「北方型スマートシティ」の形成に向けて、CFDを用いた積雪シミュレーションによる都市デザイン手法の研究を行っています。

    研究の内容

    研究では、冬季の積雪が深刻な札幌都心部を対象に、街区内の屋外空間や周辺環境に与える風雪の影響について、粉体風洞実験による積雪シミュレーションにより明らかにし、屋外空間における除雪エネルギーを低減する街区空間モデル「北方型スマート街区」の計画手法を構築しました。
    現在は、より簡便かつ広範囲を対象にできる雪CFDシミュレーションを用いて、北方型スマートシティの都市デザイン手法や積雪を考慮した地域デザインについて研究しています。

  • 稲わら等農業未利用残渣のエネルギーサプライチェーン

    稲わらなどの農業未利用残渣を利用形態に応じた燃料に変換し供給するシステム構築

    燃料利用するのが困難であった稲わらなどの農業残渣を、保管・運搬・エネルギー利用に適した形態へ変換する“半炭化技術”の開発を行いました。燃焼時のクリンカ軽減およびPMの排出抑制に寄与します。

    研究の内容

    ・稲わらペレット製造技術(木質と稲わら混合ペレット含む)
    ・半炭化(トレファクション)による燃料品質の向上と利用用途拡大(発熱量UP、微粉化可能、火力発電所及び木質バイオマス発電所での混焼)
    ・サプライチェーン設計とコスト最適化

    石井 一英 教授 Kazuei Ishii
    博士(工学)
  • 環境DNAを用いた海洋生物多様性の把握

    環境DNAから,魚類などの海洋生物の生息を把握し,生物多様性情報を得る

    • 生物から分泌物などの形で放出され,水中や土壌に存在しているDNAを環境DNAと呼ぶ。環境DNAを調べることで,そこに生息している生物の種類や量などが分かる。水域における環境DNA調査は,生物を直接捕獲することがなく非侵略的なので,特に希少種や絶滅危惧種の調査に有効である。

    • 河川下流域におけるニホンウナギの環境DNA濃度

      三陸以南の太平洋側に多く,能登半島以北の日本海側と北海道ではほとんど検出されない。全国のニホンウナギの分布が環境DNA分析から明らかになった。

    研究の内容

    水や底泥中に含まれる環境DNAを調べることで,そこに生息する生物を把握することができる。河川,沿岸域から外洋に至る様々な環境でDNAを取得し,生物の分布や量を推定する。それにより生物多様性情報を得ることができる。得られた情報は,COP15で採択された30by30による海洋保護区の選定に用いたり,OECMの認定に役立てたりすることができる。

  • 撹乱地の生態系復元

    自然・人為により撹乱を受けた生態系をファシリテーションすることでエコフレンドリーな復元を図る

    ファシリテーションとは、ある植物の定着が他種の侵入定着を促進する現象を指す。噴火・火災・津波・採掘等の大撹乱により壊滅的被害を被った生態系において、そのようなファシリテータを検出し導入することで迅速かつエコフレンドリーな生態系復元を図る。

    • 図. 1920年に大規模噴火があった渡島駒ヶ岳においてミネヤナギパッチ内に定着したエゾチドリ。
      ミネヤナギは、多くの種の定着を促進するため生態系の多様性を高めることができる。

    • 図. 札幌市のスキー場斜面におけるファシリテータであるススキの被度と木本植物密度本数との関係(プロットサイズは4 m2 )。
      木本植物本数は、ススキの定着により増加し、ススキ草地を創出することが植林によらない天然林の誘導には有効である。

    研究の内容

    大規模撹乱後の生態系復元は急務であることが多いが、撹乱後の劣悪な環境では、なかなか目的とする植物の定着が進まないことが多かった。ファシリテータとは、その種が定着することで他種の定着を促進する効果のある植物種のことを指す。各撹乱地において、ファシリテータを検出し、それらの種を導入することで目的とする種の侵入定着が促進できれば、生態系復元は安価かつ迅速化でき、人為も軽微となるため、エコフレンドリーな生態系復元技術となる。
    これまで、サロベツ湿原泥炭採掘跡地ではミカヅキグサが、渡島駒ヶ岳ではミネヤナギが、ファシリテータとして機能していることを明らかとしており、さらに、ファシリテータ導入手法として、微地形改変が有効であることを明らかとしている。

  • 大規模火災後の生態系復元機構の解明と応用

    地球温暖化の緩和に向けて

    北アメリカ北極域では地球温暖化に伴う火災の大規模化が起きている。そのため火災後の生態系回復様式も変化し、新たな切り口での生態系復元機構の解明が急務である。更に、本研究で得た知見を応用し様々な大規模撹乱後の生態系復元手法の開発も必要である。

    • 2004年にアラスカで発生したクロトウヒ林大規模火災後の景観(2005年撮影)。従来の火災では、全焼は稀であったが、本火災では有機物層までが焼き尽くされた。そのため、生態系回復様式が変化し、早急な遷移機構の解明と保全・復元手法の開発が課題となる。

    • 森林火災がおよぼす主要な生態系機能の変化。短期的には、火災時の直接CO2放出、長期的には光合成低下に伴うCO2吸収の減少と永久凍土層の融解に伴うメタン放出という、地球温暖化への正のフィードバック効果がある。

    研究の内容

    アラスカのタイガ・ツンドラ帯は、落雷に伴う火災多発地域であるため、火災に順応した生態系回復が見られる。これまでは、強度が低く泥炭を含めた有機物層の全焼には至らない林冠火災が主であった。特に、北向き斜面ではクロトウヒが優占し、林冠火災直後からクロトウヒの散布種子による速やかな森林再生ができた。
    しかし、気候変動に伴い火災は強度・頻度ともに増加傾向にある。2004年のアラスカ森林火災は、総焼失面積が四国を上回り、有機物層も焼き尽くされた。そのため、大規模火災後の生態系回復は、林冠火災後とは大きく異なる。特に、種子発芽・成長に有機物層の存在は不可欠であり、有機物蓄積には、母材となるミズゴケの定着促進手法開発が肝要であることが明らかとなった。加えて、ツンドラ帯での火災が生態系に与える影響についても研究を行った。

  • ナノ微粒子を用いる炭素資源由来の窒素の無害化除去

    Fuel窒素の事前除去と高温ガス精製へのナノ微粒子の利用

    地球環境に調和した炭素資源の高度利用法の原理確立は、次世代に向けて最重要な研究テーマの一つである。本研究では、ナノスケールの金属・金属酸化物微粒子を用い、炭素資源をクリーンエネルギーに効率よく変換できる触媒プロセスの開発を目指している。

    • 図 500˚Cでのピリジン分解に
      対する褐鉄鉱の触媒性能

    研究の内容

    炭素資源中の窒素(Fuel-N)は燃焼時にNOxやN2Oとして排出され、また、高温ガス化では主にNH3に変化し後段のガス燃焼時のNOxソースとなる。本研究では、燃焼やガス化の前段の熱分解過程においてFuel-Nを無害なN2に変換する方法の開発に取り組み、イオン交換法で担持したCaイオンは熱分解時にCaOナノ粒子に変化し、N2生成に触媒作用を示すことを見出した。
    また、褐炭中に元々含まれるFeイオンや褐鉄鉱中に多く存在するFeOOHは加熱過程で容易に金属鉄ナノ粒子となり、この触媒上でNH3、ピリジン、ピロールの分解反応を行うと、N2が選択的に生成することを見出した。このような含N種は石炭ガス化で生成する粗ガス中に含まれるので、これらの化合物の除去を目的とした新しい高温ガス精製法の開発への展開を図っている。

  • 光触媒結晶性酸化チタン薄膜の超高速成膜

    高温熱処理不要な超高速電解成膜技術

    結晶性酸化チタンは光触媒として実用的に重要な酸化物です。一般に高温での熱処理を必要とする結晶性二酸化チタン薄膜を,水溶液中の電解成膜法を用いてわずか数秒以内に各種金属基板上に製膜する技術を開発しました。

    • 成膜した酸化チタン膜の断面TEM写真とUV照射による超親水化を示す写真

    研究の内容

    Al,Zn,Fe,Cuなどの実用金属基板上にTiF62-を含む水溶液からわずか数秒の電解により酸化チタン薄膜を得ることに成功しました。得られた酸化チタン薄膜はアナターゼ結晶性であり,熱処理することなく,光触媒活性を示します。表面の有機物をUV照射で分解し,超親水化するなどの優れた特性を確認しています。この酸化チタン膜には基板元素がドープされることから可視光応答性などの新たな機能発現も期待できます。透明導電膜などへの成膜も可能です。

  • 燃焼機器で生じる音響振動解析

    燃焼装置や燃焼ガス排気系統でしばしば音響振動が生じ、騒音の発生や燃焼措置の寿命低下を引き起こす。これは、燃焼装置や排気系統で生じる発熱変動と音響圧力変動が連動することより生じる。本研究は、この物理過程の解析とその抑制技術の検討を行っている。

    研究の内容

    燃焼装置や燃焼ガス排気系統でしばしば音響振動が生じ、騒音の発生や燃焼措置の寿命を低下につながる。これは、燃焼装置や排気系統で生じる発熱変動と音響圧力変動が連動することより生じるが、これが生じる物理過程の解析と抑制技術の検討を行っている。研究の手法としては、単一の円管内に可燃性ガスを封入しその一端に着火させ火炎が管内を伝播する際に生じる音響振動現象を用いる。この伝播現象に種々の境界条件(開放端条件・伝播方向・混合ガス組成・伝播管直径と長さ・火炎面の構造等)を与え、音響振動現象を引き起こした上で、その要因を燃焼の不安定性解析手法により理解する。ここで再現された振動現象は単純化された系で観察されるものであるが一般性のある現象であり、実際の燃焼機器や排気系統で生じる音響振動現象の理解に直接つながるものである。

  • リチウムイオン電池の火災安全性向上技術

    リチウムイオン電池はそのエネルギー密度の高さから利用が急激に拡大している。一方で電池内部に有機溶媒を使用していることから火災安全性の確保が重要である。本研究は有機溶媒の燃焼現象に焦点をあててその燃焼抑制技術に関する研究を行っている。

    研究の内容

    リチウムイオン電池はそのエネルギー密度の高さから利用が急激に拡大している。一方で電池内部の電解液に有機溶媒を使用していることから火災安全性の確保が重要である。本研究は有機溶媒の燃焼抑制を目指して燃焼抑制剤添加効果の定量化手法の開発や燃焼抑制に効果のある添加剤の探索、さらには、電解液に含まれるリチウム塩自体の有機溶媒の燃焼性に及ぼす効果などを研究している。また、電解液の燃焼素反応機構を考慮した火災現象のモデル化および数値解析を実施している。

  • 微小重力場を利用した燃焼現象解明

    燃焼現象は局所的な温度上昇を伴うことから周辺に常に自然対流が生じる。このことが現象を複雑化し、その基本的理解を難しくしている。本研究では微小重力環境を活用することで、自然対流を取り除き燃焼現象を基本的立場から理解しようとするものである。

    研究の内容

    燃焼現象は局所的な温度上昇を伴うことから周辺に自然対流が常に生じる。このことが現象を複雑化し、その基本的理解を難しくしている。本研究では微小重力環境を活用することで、自然対流を取り除き燃焼現象に含まれる基礎的過程(拡散・熱伝導・すす生成・着火・火炎伝播等)を理解し、このような現象が介在する燃焼装置や燃焼現象の数値予測やモデリングに役立てていこうとするものである。北海道大学には常時利用可能な40m級の大型落下塔があり、微小重力実験を容易に実施可能な環境にある。また、国際共同研究による航空機を用いた微小重力実験や国際宇宙ステーションによる実験も進めており、微小重力場を利用した燃焼研究を行う上で恵まれた環境にある。

  • 高純度ナトリウムの製造

    電解精製でナトリウム資源の循環を

    大型の二次電池で主に産業用として用いられているナトリウムー硫黄二次電池があります。本研究ではこの電池の使用済みの状態のものから、電池内部に含まれる金属ナトリウムを回収して、これを電解精製し高純度ナトリウムを製造するプロセスを開発しています。

    • 図1 ナトリウム電解精製槽の模型

    • 図2 電極上に析出する粒上の液体ナトリウム

    研究の内容

    本研究は、不純物を含む金属ナトリウムを電解精製によって高純度化するプロセスの開発です。原料となる金属ナトリウムは、使用済みナトリウムー硫黄電池の中から回収したものになります。これを図1の電解槽模型の左上(陽極)に設置し、電流を流す事でナトリウムイオンが電解液に溶解し、ナトリウムのみが右上の高純度ナトリウム(陰極)側に順次析出します。このプロセスは200℃以下で操業が可能になります。この電解で得られた高純度ナトリウムは電池の原料や他の用途としても使うことができる純度です。ナトリウム資源を海外に依存している本邦であるからこそ、この技術が今後広く応用できると考えています。  

  • 氷結晶表面の分子レベル光学直接観察

    高さ方向には原子分解能を有する光学顕微鏡の開発とそれを用いた氷結晶表面のその場観察

    株式会社オリンパスエンジニアリングと共同で、高さ方向には原子分解能を有する光学顕微鏡を開発した。現在それを用いて、氷結晶が成長・昇華・融解する機構を、分子レベルで明らかにしようとしている。

    • 過飽和水蒸気から成長する氷結晶(雪と同じ).結晶上の丸い島は,水1分子高さのステップを示す.

    研究の内容

    平らな面で囲まれた結晶は、材料の種類によらず層状に成長する。そのため、結晶が成長するメカニズムやカイネティクスを明らかにするためには、その成長端(一般に「単位ステップ」と呼ばれる) がどのような挙動を示すのかを直接観察する必要がある。しかし、氷結晶の場合には、原子間力顕微鏡や電子顕微鏡等、通常固体表面を分子レベルで観察する際に用いられる顕微鏡を適用することができない。この困難を克服するべく、平らな結晶表面上の原子・分子高さのステップを、非接触・非破壊で直接観察できる光学顕微鏡を開発した。現在これを用いて、氷結晶の成長機構や、ゼロ度以下で氷結晶表面が融ける現象(表面融解と呼ばれる)を、分子レベルで明らかにする研究に取り組んでいる。氷結晶以外にも、結晶表面上を原子・分子高さレベルで調べる研究を広く展開している。

    佐﨑 元 教授 Gen Sazaki
    博士(工学)
  • ポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子による
    高活性触媒の創製

    高分子担体を反応場とする金属錯体触媒の設計と効率的合成プロセスの開発

    高分子担持金属触媒の創製に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子を開発しました。高分子トポロジーの効果により、金属錯体の不均化や金属凝集による触媒の不活性化を抑制することができます。第一遷移系列金属触媒の配位子として特に有効です。

    研究の内容

    不均一系(不溶性)金属触媒は、反応混合物からの分離が容易で再利用性に優れた環境負荷の少ない有機合成手法ですが、対応する均一系(可溶性)触媒と比較して、触媒活性が低下することが問題です。私たちは、高分子鎖のトポロジー制御に基づき、高活性なモノキレート型単核遷移金属錯体の発生に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzを開発しました。塩化アリールのアミノ化カップリングやエステル-アゾールカップリング等のNi触媒反応などの効率を著しく向上させ、既存触媒では適用困難であった基質に対しても有効です。本触媒は、ろ過による分離や再利用も可能なことから、産業利用が期待されます。

  • 耐高温材料の微細加工による赤外メタマテリアル

    中~遠赤外線を操る材料・デバイスの開発

    中~遠赤外線の波長以下のパターンを持つヒーターや回折格子を作るとこれら電磁波を制御するデバイスを作れることが期待されます。我々は金属炭化物や酸化物の薄膜・積層・微細構造の作製法の開発と素子特性を研究しています。

    • 耐熱材料合成用高周波加熱炉
      (常用2700℃、短時間3000℃)

    • 耐熱材料の微細加工の例

    研究の内容

    電磁波の波長以下のスケールで微細加工された物質は電磁波の反射・透過を制御する働きがあります(メタマテリアルと呼ばれる)。3μm~1000μmの波長をもつ中~遠赤外線は熱の輻射にかかわる電磁波であるとともに、分子振動を励起させることができるため、分子の検出に使うことができます。熱にかかわる材料なので、耐熱性を持たせることにより他では実現できない応用が可能になります。我々は金属炭化物や酸化物などの様々な物性を持つ耐熱性材料に対するプロセス技術を研究するとともに、これら材料の赤外域での基礎物性を測定し、メタマテリアル設計につなげます。中~遠赤外線に対するメタマテリアルの作製により、分子検出用の狭線幅の中赤外発光素子や、輻射熱を制御する材料の作製を目指しています。

  • ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産

    バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
      ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する

    我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。

    • NFBCおよびNFCにおける偏光顕微鏡像、TEM観察像 偏光顕微鏡像(a,b)、TEM観察像(c,d) NFBC(a,c)、NFC(b,d)

    • 200L容大型ジャーファーメンターを用いた通気攪拌培養における培養経過の一例

    研究の内容

    バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。

    田島 健次 准教授 Kenji Tajima
    博士(工学)
  • 非破壊CT-XRD連成法の開発とその応用

    セメント硬化体微細組織の可視化

    コンクリート内部の微細組織に対して、数ミクロンの精度でその幾何学的空間情報を取得できるCT法、および関心領域の水和物や変質を調べる回折法を連成させる新しい測定手法「非破壊CT-XRD連成法」を開発して、革新的セメント系硬化体材料を開発する。

    • 「非破壊CT-XRD連成法」の概念図

    • ひび割れCT画像(左)と観察座標における劣化前後の回折図の比較(右)

    研究の内容

    コンクリートは、セメントと水との水和反応によって岩(骨材)を結合することで、構造用硬化体になります。一方、構造材料としての宿命である荷重や気象/環境作用によって、ひび割れが発生、進展したり、強酸作用、大気や海水、地下水などの浸食や物質侵入に伴う化学反応で劣化することがあります。社会インフラを長期間安定して利用するために、「虫の目」でコンクリート内部組織を観察して、そこで生じる異変を見つけることが大切です。
    先駆的「非破壊CT-XRD連成法」は、放射光が提供する高輝度な白色X線を試料に照射して、選択的に25keVの透過単色X線から3次元構造体を可視化します。また、複数のスリット操作から特定の関心領域のエネルギー分散型X線回折を実行して、ポルトランダイトやカルサイトなどの水和物やその変質、骨材鉱物を特定します。

  • 再生可能エネルギー発電の出力把握と出力変動対策

    太陽光発電や風力発電の出力変動をリアルタイムに把握しその変動を抑制

    負荷電力(A)と再生可能エネルギー発電出力(B)とが混ざった電力潮流情報から,(A)と(B)を抽出する手法を開発しました。また(B)は天候に依存して大きく変動しますが,蓄電池を使って変動を抑制する制御手法と蓄電池容量評価手法を開発しました。

    • 図1  PV出力推定の一例

    • 図2 蓄電池を用いた出力変動抑制

    研究の内容

    本研究室では,独立成分分析(ICA)と呼ばれる信号解析技術を応用し,配電線を流れる電力潮流情報に隠れている「再生可能エネルギー発電(RE電源)の出力」をリアルタイムに抽出する手法を開発しました。系統内のPV設置容量などの予備情報を使用することなく,高精度な出力推定が可能です(図1)。
    また,蓄電池を用いてRE電源出力変動を補償するための制御手法も開発しています(図2)。また,個別のウインドファーム・メガソーラなどの出力変動抑制に必要な蓄電池容量を推計するシミュレーション技術も開発しました。

  • 耐氷点下起動性に優れた固体高分子形燃料電池の開発

    電池内マイクロナノ凍結現象の解明

    普通では観察することのできない燃料電池内の反応層近傍凍結現象を、超低温型電子顕微鏡を用いて可視化しています。さらに電気化学測定を組み合わせ、寒冷地利用で問題となる生成水凍結現象の解明と耐氷点下起動性に優れた電池の開発を行っています。

    研究の内容

    高効率でクリーンなエネルギー変換機器である固体高分子形燃料電池において、反応による生成水は下の左図のように数十nmの径の触媒層空隙を通り、数μm径の空隙を有する多孔膜であるマイクロポーラスレイヤー(MPL)を介して、ガス拡散層・ガス供給チャネルへと排出される。寒冷地での氷点下環境起動では、生成水が凍結し、発電停止、劣化を引き起こす問題が生じるが、現象がマイクロナノスケールであるため計測が難しく、現象解明は未だ不十分の状況である。本研究では、水がどの部位で凍結し、どのような機構で性能停止および経年劣化に繋がるかを微視的観察、電気化学測定、触媒層モデル解析により解明し、耐起動性の向上や長寿命化を達成することを目指している。下の中図は触媒層が氷で埋められている様子、右図は解析でモデル化している触媒層の構造模式図である

  • 社会技術システムとしてのバイオマス利活用に関する研究

    地域循環によるバイオエネルギー普及を目指して

    循環計画システム研究室では、生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材や稲わら等のバイオマスを地域内で利用し、地域分散型のバイオエネルギーを創り出すための、技術と社会の仕組み作り(社会技術システム)に関する研究をしています。

    • 左図の説明
      <バイオマス利活用システム構築で考慮すべき要素>
      健全なバイオマスの利活用システムを構築するためには、事業の目的を明確にした上で、(1)バイオマスを収集・運搬するインプット、(2)エネルギー利用や残渣の処理といったアウトプット、(3)インプットの性状に応じた変換技術の選択、(4)事業採算性(事業主体)、そして(5)地域特性のすべてを一体として考える必要があります。

    研究の内容

    本研究室では、バイオマス(生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿、林地残材、稲わらなど)から燃焼やメタン発酵によって回収されたエネルギーを、地域内に存在するエネルギー需要者(公共施設や介護・福祉施設、ビニールハウス等の農業施設、食品工場等)と結びつけることにより、環境と地域振興(経済)の両方に貢献できるシステム提案(実験やフィールド調査に基づく計画、モデリング、評価)を行っています。さらに、民間企業の協力を得て、寄附分野循環・エネルギー技術システム分野(古市徹客員教授、藤山淳史特任助教、http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/mces/)とも連携し、エコで安全なエネルギーに関する研究を行っています。

    石井 一英 教授 Kazuei Ishii
    博士(工学)
  • 成長のツボを押す新しい植物生育促進技術

    排水を活用する次世代バイオマス生産と植物工場への共生細菌の利用可能性

    北海道大学植物園のウキクサ亜科植物から全く新しい成長促進細菌P23を発見した。P23は植物の表面スイッチを押すことでその生育を促進する。ウキクサは排水を肥料として生育する高付加価値バイオマスであり、P23との共生によってその生産速度が約2倍

    研究の内容

    水生植物ウキクサは排水中の窒素やリンを吸収して生育することが可能かつ、リグニンやセルロースをほとんど含まないソフトバイオマスである。そのタンパク質含量は大豆に匹敵する約30%であり、生育環境によってデンプン蓄積量も50%に達する。前者の特徴は家畜飼料としてそのまま利用可能であり、後者はバイオ燃料生産および化成品前駆体HMFを生産するための原料として有用である。このような、次世代バイオマスの生産収率を向上するために、私たちは表層細菌の共生作用による植物生育促進技術開発を行っている。その適用範囲は、ウキクサの栽培以外に野菜・穀類の水耕栽培(植物工場)が想定される。これは遺伝子組換えを伴わない、自然の摂理に従った古くて新しいバイオ技術である。

  • 気候変動下における北極海洋システムの回復力と適応力

    環北極海全域の海洋生態系の統合的理解

    日本、米国、ノルウェーで進行中の環北極海域(北極海および隣接する周辺の亜寒帯海域)の既存研究課題の個別研究成果を発表する国際ワークショップを開催し、共通点や差異を整理しながら各海域における成果の統合的な理解を目指している。

    • 植物プランクトンの大型サイズの占有率分布。赤いところほど珪藻などの大型の植物プランクトンが占める。(a)2006年8月 (b)2007年8月

    研究の内容

    本研究では、環北極海域(北極海および隣接する周辺の亜寒帯海域)における共通点や差異を整理しながら太平洋−北極海−大西洋における環境変化と海洋生態系の応答について統合的に理解することを目的とする。国際共同研究プログラムIMBeR(海洋生物圏統合研究)の地域研究プログラムESSAS (Ecosystem Studies of Sub-Arctic and Arctic Seas:亜寒帯域および極海における海洋生態系研究)を母体にそこに参画している日本、米国、ノルウェーの科学運営委員を中心に研究を推進する。具体的には、2015年から2018年の間に、各国で進行している既存の研究成果を発表する国際ワークショップを3回開催し、環北極海全域の海洋生態系の統合的理解を図る。

    平田 貴文 特任准教授 Takafumi Hirata
    Ph.D.
  • グリーンランドにおける氷河氷床・海洋相互作用

    温暖化するグリーンランドの沿岸環境

    北極域に位置するグリーンランドでは、氷河氷床の質量が近年急速に減少しています。わたしたちは、氷河氷床と海洋が接するグリーンランド沿岸の環境変化に着目して、現地調査や人工衛星データを用いた研究を行っています。

    • 氷に覆われた北極域の島グリーンランド

    • 氷河上での観測風景

    • 年々後退する氷河の末端部

    研究の内容

    グリーンランドは日本国土の約6倍の面積を持ち、その80%が氷河氷床で覆われています。このグリーンランドの氷が、地球温暖化の影響を受けて急速に減少しています。特に氷床から海洋へ流れ込む氷河で顕著な変化が起きており、温暖化する海洋の影響を示唆しています。また融け水が海に流入して海水準が上昇する他、海洋循環や生態系の変化が予想されますが、その詳細は明らかになっていません。このような背景を受けて、氷河氷床と海洋の相互作用、その結果生じるグリーンランド沿岸環境の変化解明に取り組んでいます。特に北西部のカナック地域に焦点をあて、現地観測や人工衛星データ解析を実施しています。最終的には、環境変化が漁業や交通に与える影響を明らかにして、地元住民に成果をフィードバックすることを目指します。

  • シベリア先住民と野生動物の共生策を探る

    “利用しつつ守る”順応的鳥獣管理システムの実践研究

    地域社会と野生動物の軋轢(農業被害や外来種問題など)を軽減するため、住民参加・住民主体の調査・対策を企画・実施し、ボトムアップ型の政策支援を行っています。近年はシベリア先住民の暮らしを守る野生動物保護区の設定にも携わっています。

    • 調査対象の野生ツンドラトナカイ(サハ共和国にて)

    • 先住民との軋轢が増加するホッキョクグマ(同上、IBPC提供)

    • 調査データを地元の子供たちの環境学習に活用(同上)

    研究の内容

    ◇野生トナカイなどの実態調査と保護区の設定
     ”日本に最も近い北極”である、ロシア連邦サハ共和国の北極域において、先住民が利用する野生動物(トナカイ、ジャコウウシ、オオカミなど)に衛星発信機を装着し、温暖化の影響や季節移動の実態を明らかにしてきました。またその情報を元に、先住民団体、地方行政府、狩猟団体などと協働し、伝統的生活に資する保護区や猟区を設定して評価を行っています。
    ◇渡り鳥の生息実態調査と国際保護区の評価
    シベリアは、日本をはじめ北極域・北方圏を利用する渡り鳥の重要な繁殖地ですが、やはり温暖化により生息環境が変化しつつあります。そこでこれまで個別に行われていた各国の調査をネットワークし、温暖化の影響と生息地保護区の評価を総合的に行うための調査・研究・実践を行っています。

    立澤 史郎 特任助教 Shirow Tatsuzawa
    博士(理学)
  • 北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング

    永久凍土融解に伴う地表沈降の検出

    人工衛星「だいち」に搭載の合成開口レーダー(SAR)で得られるデータから、地表変形の画像を検出できる。従来は地震や火山活動に伴う地表の変位が主なターゲットだったが、地震火山とは無縁の北極圏の永久凍土地帯でも局所的な地盤変動が検出され始めた。

    • (左)対象地域のGoogle Earth画像。(右)2008年7月16日と2009年7月19日の「だいち」データに基づくInSAR画像。白丸で囲まれた領域の中で紫色に見えるところが、衛星から遠ざかる方向に変形している。この間に起きたと地盤変動と考えられる。

    研究の内容

    地震や火山活動の研究では、地表のわずかな動きを捉えて、地球内部を推定することがあります。この「動き」は地殻変動とよばれ、いまでもその高精度・高品質化にむけた努力が続いています。近年は衛星SARの位相データを使うInterferometric SAR(SAR干渉法)によって、遠隔地や海外の地殻変動も検出できるようになりました。北極圏では、いわゆる地殻変動は皆無ですが、下の図が示すように西シベリアでも明らかな「地盤変動」が検出されています。これは北極圏に多く見られる「サーモカルスト」とよばれる地形の周囲に見られることから、永久凍土の融解に伴う地表の沈降を捉えているものと考えられます。従来ほとんど手付かずだったサーモカルスト地形の形成過程の研究が緒に就いたところで、温暖化の影響の評価は今後の重要な課題です。

  • 光るプランクトン

    カイアシ類のGFPとルシフェラーゼ

    海洋生物の中には生物発光をする様々な生き物が居ます。プランクトンの中で最優占するカイアシ類から、蛍光タンパク質(green fluorescent protein: GFP)と分泌型ルシフェラーゼ(発光酵素)を同定しました。

    • 北極海では近年の海氷衰退により、もともと北極海にあった群集(左図の群集B)が、太平洋産種を含む亜寒帯性の群集(群集A)に代わりつつある様子が、1991/92年と2007/08年の比較で分かります。動物プランクトン相に優占するカイアシ類には、生物発光能力を持つ種も多く、右の写真はGFP(右上図)とルシフェラーゼ(右中図)を持つ種です(右下図はカイアシ類の明視野写真)。

    研究の内容

    動物プランクトンは、海洋生態系において基礎生産を高次生物に受け渡す、エネルギー転送者としての役割を持っています。北極海に優占する動物プランクトンはカイアシ類で、大半の種が1年以内の世代時間を持ち、かつホルマリン固定にて、半永久的な試料保存が可能なため、該当海域における生物生産の経年変動を評価するのに適した分類群です。またカイアシ類のうち、いくつかの種は生物発光能力があります。これは、暗い海の中で、捕食されそうになった時に発光し、捕食者への目くらましに使用すると考えられています。カイアシ類から、蛍光タンパク質(GFP)とルシフェラーゼ(発光酵素)を同定しました。