北海道大学 研究シーズ集

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3. すべての人に健康と福祉を:54件

1頁の掲載件数 20 50 改頁しない SDGs別アイコン凡例
  • 1. 貧困をなくそう
  • 2. 飢餓をゼロに
  • 3. すべての人に健康と福祉を
  • 4. 質の高い教育をみんなに
  • 5. ジェンダー平等を実現しよう
  • 6. 安全な水とトイレを世界中に
  • 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10. 人や国の不平等をなくそう
  • 11. 住み続けられるまちづくりを
  • 12. つくる責任、つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさも守ろう
  • 16. 平和と公正をすべての人に
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう
  • 加速度センサーによるつまずき場所の特定

    高齢者の転倒予防のために

    転倒による重篤な怪我を避けるために予兆である“つまずき”の多い場所を普段の生活者の行動から探すシステムを検討した。サンダルに埋め込んだ加速度センサーによりつまずいたことを、天井の赤外線センサーネットワークによってつまずいた場所を特定する。

    研究の内容

    高齢者の緊急搬送の約8割は転倒事故だそうである(2014年東京消防庁調べ)。衰えた身体能力に意識が追いつかず小さな段差や履物、衣服につまずく。転倒を検出する研究は多いが実際に転倒を起こしてからでは遅い。そこで、よくつまずく箇所を検出して転倒を誘引する原因を予め取り除くことを考えた。ウェラブル(身につける)な装置は物忘れや装着への心理的抵抗に関して、監視カメラなどのノンウェラブル装置では死角やプライバシィの保護に関して問題がある。本研究では、普段履きのサンダルなどに加速度センサーをとりつけて“つまずいた”ことを検出する一方、連動して働く天井に設置した赤外線センサーネットワークでその箇所を特定する。実験では転倒は容易に区別できたが、つまずきを通常歩行から区別する精度は現状1/4程度であるため今後精度向上が望まれる。

    工藤 峰一 教授 Mineichi Kudo
    工学博士
  • バイオ材料で作ったマイクロ・ナノパターン

    生体構造を模倣したバイオ系マイクロ・ナノパターンで
    細胞培養ツールや組織再生へ応用を目指す

    コラーゲンなどのバイオ材料や歯科材料を用いて、生体構造を模倣したマイクロ・ナノパターンを作製しています。パターン形状や材質の種類により細胞機能向上へと繋がります。新しい可能性を追求しながら細胞培養ツールや歯周組織再生への応用を目指します。

    研究の内容

    本研究ではナノインプリント法を利用し典型的なバイオマテリアルをパターン化しています。設計したマイクロ・ナノスケールの形状により細胞機能を制御し、新規細胞培養ツールや組織再生へと繋げたいと考えています。
    ●従来技術との比較: これまで例が少ないバイオ材料にて規則正しいパターンを作製することに特徴があり、新しい機能発現が期待されます。 (*従来:不規則・平面or工業的プラスチック)
    ●効果: 平面よりもパターン化により細胞付着数や伸展度合が大幅に向上します。溝形状では細胞を簡単に配列させることができます。それにより、細胞外マトリックス(ECM)の3D構築にも繋がります。
    ●今後: パターン化材料を平面だけでなく2.5次元、3次元へ展開し、さらに階層化することにより、生体に近い構造を持つ組織再生を目指します。

  • 光ファイバを利用した小型線量計の開発

    極微小シンチレータと光ファイバを組み合わせた
    超小型線量計を放射線治療・診断分野へ応用

    近年、X線透視による重篤な皮膚障害に対する被曝防護への関心が高まっている。本研究では、晩発性放射線障害予防を目的として、光ファイバの先端に極微小プラスチックシンチレータを取り付けた単純な構造をした、X線透視画像に写らない線量計を開発した。

    研究の内容

    X線透視を伴う血管内治療(IVR; Interventional Radiology)では、長時間にわたるX線透視を行われる。心筋梗塞などでは繰り返し手術を受ける可能性があるため、潰瘍などの重篤な皮膚障害が発生する可能性がある。従来の線量計は、透視に映るものや検出部分の体積が大きいなどの問題があった。特に、エネルギー依存性が測定の精度に影響を及ぼすため、小型でエネルギー依存性が少なく、かつ透視に映らない線量計は存在しなかったが、本研究にて開発を行ったSOF線量計は、センサー部分は生体と密度が近いためにX線透視下で全く映らないという特徴がある。また、現時点で60~150kVの範囲において感度変化5%以内を達成しているが、さらに感度変化を小さくするために、企業と共同でセンサー物質の改良を進めている。

    石川 正純 教授 Masayori Ishikawa
    博士(エネルギー科学)
  • 受容体結合プロレニン系を標的とした
    新規阻害薬の開発

    慢性炎症・血管新生などの病態形成に関与する
    (プロ)レニン受容体を阻害する医薬品の開発

    糖尿病網膜症をはじめとする網脈絡膜疾患の病態形成におけるレニン・アンジオテンシン系(RAS)の関与の解明や、さらにRASの上流にあたる(プロ)レニン受容体に対する阻害薬の開発から基礎研究に至るまで、広い視野に立った取り組みを行っています。

    • 網膜受容体結合プロレニン系(網膜RAPS)と硝子体レニン・アンジオテンシン系(硝子体RAS)

    研究の内容

    加齢黄斑変性や糖尿病網膜症は、主要な中途失明原因の網脈絡膜疾患であり、生活習慣病に合併した慢性炎症性疾患と位置づけられています。しかしながら、未だ根本的な治療法の開発・疾患発症機序の解明には至っていません。我々は、これまでに生活習慣病での臓器障害において受容体結合プロレニン系(RAPS)が炎症・血管新生病態の上流で疾患の分子病態を制御していることを報告してきました。そこで現在我々は、受容体結合プロレニン系の中心に位置する(プロ)レニン受容体を標的にして、網羅的な低分子化合物スクリーニングや医薬分子設計法などの技術を用いた創薬を視野に入れた基盤研究を展開しています。さらに疾患動物モデルを用い、(プロ)レニン受容体の機能解明、および生理的機能への影響を最小限にしながら病態への早期介入治療戦略の確立を試みています。

  • 一倍体性が動物個体発生に及ぼす影響の理解

    産業利用可能な一倍体制御技術の確立を目指して

    ゲノムを1セットしか持たない一倍体状態が動物個体発生に重篤な障害をもたらす仕組みを解明し、遺伝子工学や品種改良に利用可能な一倍体個体作成技術の確立を目指す。

    研究の内容

    動物細胞の体をつくる細胞は、母方父方2セットのゲノムを持つ「二倍体」です。一方、通常そのままでは増殖を行わない未受精卵を賦活化し、個体発生を誘導すると(単為発生)、母方のゲノムしか持たない「一倍体」胚となります。そこから一倍体個体が得られれば、遺伝子工学や純系作成に大変有用ですが、脊椎動物一般において一倍体胚は「半数性症候群」と呼ばれる初期発生異常により死滅するため、一倍体個体技術の利用は実現していません。私たちは、ヒト培養細胞およびマウス初期胚をモデルに、分子細胞生物学の技術を駆使して、一倍体状態が、発生過程に及ぼす影響を細胞レベルで明らかにすることを目指しています。その成果をもとに、「半数性症候群」を解消する細胞操作法を確立し、安定な形質を持ち生存が可能な一倍体個体の作成を可能にすることを目指しています。

  • 分子標的治療薬の感受性試験

    蛍光バイオイメージングを用いて個々の細胞における薬剤反応性を可視化する技術

    蛍光バイオイメージングはシングルセルレベルでの細胞の振る舞いを可視化する技術です。本法ではイメージング技術を応用し、薬剤に対する反応性と耐性の有無を可視化、将来の患者の薬剤応答性を予測することを実現しました。

    • BCR-ABL活性を測定する蛍光バイオセンサーPickles

    • Picklesによるシングルセルレベルでの薬効評価

    • 本技術による薬効評価判定例。青は本検査で感受性と判定された症例、赤は抵抗性と判定された症例の経過。太線はそれぞれの平均を示す。

    研究の内容

    本診断技術では、蛍光タンパク質とフェルスター共鳴エネルギー移動(Förster resonance energy transfer, FRET)の原理を用いた蛍光バイオセンサーを用います。このバイオセンサーによりシングルセルレベルでの薬剤反応性を可視化することで、極少数の薬剤耐性細胞が検出可能となりました。結果として、従来技術では成しえなかった投与後の臨床経過との高い一致率と将来の薬剤応答性の予測を達成しました。本技術は世界初の蛍光タンパク質の臨床応用例であるとともに、効果が約束された治療法選択による安全性担保、患者の経済的負担軽減、医療費抑制による医療経済的効果などにつながると期待されます。現在のところ慢性骨髄性白血病という血液のがんをモデルにプロジェクトを進めていますが、原理的には多くのがんに応用可能です。

  • 肝臓のストレスを抑えて、肝臓病を予防!

    肝臓の生活習慣病(脂肪肝、肝炎、肝硬変)にならないために

    肝臓を中心とした臓器ストレスの分子機構を解析し、生活習慣病の診断・予防・治療に向けた研究を進めています。我々独自の光イメージング技術を用いてダイナミックな解析を行い、新しい視点から機能性食品の探索・新薬の開発を目指しています。

    • 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、単純な肝の脂肪化をきっかけとして、様々なメカニズムが付加的にはたらくことで、脂肪性肝炎・肝硬変・肝癌に進展していくと考えられています。各プロセスにおける病態進行のキー分子を突き止め、それらを制御する食品・薬剤の探索を試みています。

    • 私達は、生体イメージング法をもちいて肝臓のストレスを実際に可視化することで、様々な要因による肝傷害・肝炎の促進を生体レベルでスクリーニングしています。

    研究の内容

    近年、脂肪肝・脂肪性肝炎等の生活習慣に関連する疾患は確実に増加してきています。これらの病態は進行が遅く自覚症状が少ないため一般に疾患意識が薄く、予防も困難です。しかしながら、これらは肝硬変・肝癌へ進行することが知られていて、予防、進行の抑制が重要です。
    私達は、様々なストレスによる肝の脂肪化、傷害、肝炎、肝線維化への進行の分子機構を研究しています。同時に、病態の進行抑制するために、機能性食品・治療薬の探索研究を行っています。さらに、光イメージング技術応用し、ユニークな病態解析、機能性食品・薬剤のin vitroスクリーニング系の構築を試みています。
    細胞・生体に対する様々なストレスは、肝臓以外の臓器の様々な病態にも影響していることが示されており、それらの予防法・治療法の開発への応用も期待されます。

    尾崎 倫孝 教授 Michitaka Ozaki
    医学博士
  • 粘着性ゲルの口腔内装置への応用

    粘着性ゲルにより口腔内装置の維持のイノベーション

    歯科で用いられる口腔内装置はクラスプなどの維持装置で歯に維持を求めている。本研究ではポリカーボネートフレームの皮膚や粘膜面側にPCDMEゲルなどの粘着性ゲルを接着させた口腔内床装置(口蓋閉鎖床など)を試作し、開発に取り組んでいる。

    • PCDMEゲルを接着したポリカーボネート板

    • 指に粘着したPCDMEゲルを接着したポリカーボネート板

    • シリコンの歯列模型に装着した口蓋閉鎖床

    • PCDMEゲルを接着したポリカーボネートの口蓋閉鎖床の口蓋粘膜面

    研究の内容

    本研究による口腔内装置を口蓋閉鎖床として用いる場合、粘着性を有するゲル組成物を口腔内粘膜に接触させて固定させることができるため、従来の口蓋閉鎖床(図1)とは異なり、クラスプを必要としない。このため、クラスプに起因する歯肉炎の発生を低減することができ、歯列の側方成長の妨げを回避でき、締め付け感、圧迫感等無しに快適に装着することができ、口蓋閉鎖床を着脱する際には口腔内を傷付けず安全に行うことができる。また、歯の未萌出時期にも装着でき、早期より言語トレーニングを行うことができる。さらに、薄いフレーム上に薄くゲル組成物を形成させることができ、均一な厚さとすることができる。このため、装着時の違和感が軽減されるとともに、口腔空間を広く確保することができ、舌の可動領域が広がることで言語トレーニングに有効である。
       

  • ソノポレーション:超音波と微小気泡を用いた新しい薬物送達手法の開発

    細胞レベルでの組織標的能を実現

    我々は,直径数ミクロンの微小気泡を細胞に付着させた状態でパルス超音波を照射することにより細胞膜の膜透過性を一時的に向上できることを世界に先駆けて明らかにし、生体への薬物・遺伝子送達の実現を目指した研究を推進している.

    • 超音波照射前                   照射後
          図1

    • 図2

    研究の内容

    ○微小気泡とパルス超音波を用いた音響穿孔法(ソノポレーション): 微小気泡が細胞膜に接触した状態でパルス超音波を照射すると、付着部位にのみ一時的穿孔を生じる(図1)。微小気泡に薬剤や遺伝子を付加し、光ピンセットで付着位置を制御することにより、目的とする細胞の任意の位置に薬剤や遺伝子を導入する手法を実現。
    ○治療部位の特定と薬物送達を微小気泡と超音波診断装置で実現: 治療対象の細胞にのみ付着する標的機能を有する気泡を静脈から注射する。気泡が集積した組織を超音波造影法により検出することで治療対象部位を特定する。続いて気泡を壊すパルス超音波を発生し、細胞に一時的な細胞膜穿孔を生じさせ、薬物等の送達を実現する(図2)。気泡に薬剤や遺伝子などを付加することで、ターゲット細胞にのみ高効率な薬物送達が実現できる。

  • 動物の難治性疾病に対する新規制御法の開発

    家畜・伴侶動物の慢性感染症や腫瘍に対する
    抗体医薬・タンパク質製剤による免疫療法の開発

    難治性疾病では、生体内で病原体や腫瘍の排除機序が妨げられています。これは種々の免疫抑制因子が、免疫細胞を疲弊化させるためだと考えられています。本研究は免疫回避機構を標的とした製剤を開発し、動物の疾病の新規治療法として応用するものです。

    研究の内容

     研究目的: PD-1をはじめとする免疫抑制因子を標的とする動物用抗体医薬やタンパク質製剤の作製と治療法への応用。従来技術との比較・優位性:本アプローチは特定の疾病を対象とするものではなく、免疫抑制機序によって抗病原体・抗腫瘍効果が失われている疾患を広く対象とします。リンパ球を標的とした免疫療法ですので多機能的な免疫増強効果が期待されます。研究の独自性:獣医畜産領域において本アプローチに関する論文や臨床応用例の報告は未だありません。特徴:各抗体を樹立し、キメラ抗体として改変することで大量生成を行います。効果:有効なワクチンや治療法がない家畜(ウシ・ブタなど)や伴侶動物(イヌ・ネコなど)の疾病に対する新規治療法の提供を目指します。

  • ペプチドのN-末をキャッピングする新奇酵素の発見と応用

    新規ペプチドリガーゼ

    ・種々のペプチドのアミノ末端に非タンパク性のアミノ酸をペプチド結合する新規酵素を発見。
    ・有用生理活性ペプチドの保護や新規抗結核薬の開発に期待。

    • キャッピングに用いた化合物(左)、キャッピングできたペプチド

    • 本酵素が触媒する反応機構

    研究の内容

    医薬品としてペプチドを使用する場合の欠点の1つは,ペプチド分解酵素による分解があげられる。ヒトではペプチド末端に作用するエキソ型のペプチダーゼが主要な分解を担っていることから,ペプチド末端を非天然型アミノ酸に置き換えて分解酵素から保護することは医薬品開発の観点から価値がある。今回,ペプチド系抗生物質,フェガノマイシンの生合成研究を行った結果,2~18アミノ酸からなる多様なペプチドのアミノ末端を非天然型アミノ酸であるフェニルグリシン誘導体でキャッピングする酵素を見出した。この幅広い基質特異性を理解するため,酵素の結晶構造を解いた結果,本酵素は他には見られない大きな基質結合部位を有し,これにより多様な基質を受入れ可能であることが明らかとなった。Nat. Chem. Biol., 11, 71 (2015).

  • リポソーマル生物発光イムノアッセイ

    ルシフェラーゼを内封したリポソームの作成と
    イムノアッセイの超高感度標識体としての応用

    生物発光反応の触媒である酵素ルシフェラーゼを脂質二分子膜小胞のリポソームに封入し、イムノアッセイの超高感度標識体として応用した。モデル物質として炎症マーカーであるC反応性タンパク質のイムノアッセイを行ったところ、その定量が可能あった。

    研究の内容

    臨床検査や環境分析において必須の技術であるイムノアッセイでは、分析対象物質の多様化や微量化に伴い、簡便、高感度、ハイスループットなど高性能化が求められている。我々は、生物発光酵素Lucを、リポソームと呼ばれる脂質二分子膜小胞に多数内封させ、これをイムノアッセイの標識体として利用する超高感度なイムノアッセイ系の構築を目指している。リポソームに内封することで多数のLucを安定な状態で抗体に標識することが可能になる。しかし、リポソーム内部に酵素を内封する方法は既に知られているものの、Lucについてはこれまで検討された例がない。本研究では、熱安定化組換えLucをリポソーム内へ封入し、封入量や安定性を評価した。さらにLuc内封リポソームを標識体として用いるC反応性タンパク質のイムノアッセイ系を構築した。

  • 腸内環境評価による食の新機能解明と応用

    食と医薬の新たな腸内環境評価系開発

    食素材・成分と、寄生体である腸内細菌、宿主のPaneth細胞αディフェンシンの三者が「腸内環境」を決定し、そのクロストークが健康維持と疾病に関与するという新しいパラダイムに基づく腸内環境評価系を構築して、食の機能性を解明し疾病予防に繋げる。

    研究の内容

    食素材・成分と、寄生体である腸内細菌、宿主のPaneth細胞αディフェンシンの三者が「腸内環境」を決定し、そのクロストークが健康維持と疾病に関与するという、われわれの提唱した独創的な「腸内環境」の定義は、食の機能性にパラダイムシフトを興している。本研究は、αディフェンシンの健康維持、疾病発症及び病態形成への関与を明らかにすると共に、食の新規機能性評価系を構築して腸内環境の国際的評価基準を確立することを目的とする。組織培養系とαディフェンシン定量系を組み合わせて腸内環境評価系を構築し、未だメカニズムが分かっていない多彩な腸機能と食品機能との関係を体系的に解析する基盤を築く。食素材・成分や医薬品による免疫賦活および老化物質制御等の機能性をはじめて解明し、新たな科学的指標を得て、食に高い付加価値を創生する。

  • 免疫細胞へsiRNAを高効率で導入する試薬の開発と
    がん免疫療法への応用

    次世代ドラッグデリバリーシステムの開発

    免疫細胞にsiRNAを高効率で導入するための試薬(YSK12-MEND)を開発しました。この試薬を用いてsiRNAを免疫細胞に導入すれば免疫抑制遺伝子の発現を高効率で減らせるため免疫機能を利用したがん免疫療法への応用が期待できます。

    研究の内容

    マウスやヒトの免疫細胞に、遺伝子発現抑制剤であるsiRNAを高効率で導入(トランスフェクション)できる試薬「YSK12-MEND」を開発しました。独自開発した新規脂質分子を用いることで、マウス樹状細胞へのsiRNA導入効率が市販品(Lipofectamine RNAiMAX)と比較して10倍以上向上しました。人間は元々がん細胞に対抗する免疫機能を持っていますが、がん患者では免疫細胞の機能ががん細胞によって抑制されていることが知られています。YSK12-MENDを用いてsiRNAを導入し、免疫細胞内の免疫抑制遺伝子の発現を高効率で抑えることができれば、人間が自らの免疫機能でがん細胞と戦うための環境を整えることができます。YSK12-MENDはその切り札の一つとして期待されます。

    中村 孝司 助教 Takashi Nakamura
    博士(生命科学)
  • 自発的に骨組織と強く結合する高強度ゲル

    ~生物の骨治癒を利用した、これまで困難であったウェットな材料と骨との安全な高強度接着法の開発~

    次世代人工軟骨や軟骨組織再生足場材料として期待される高強度ハイドロゲルを応用する上で課題であった生体内の固定について、骨組織を構成する無機物「ハイドロキシアパタイト」を用いた簡便・無毒・高強度な接着手法を開発した。

    • 図1 DNゲルとHApコーティングDNゲル

    • 図2 ウサギの関節部への埋植とそのCT画像

    研究の内容

    私たちのグループが以前開発した高強度・高靱性ダブルネットワークゲル(DN ゲル)は、生体関節内で軟骨に対する低摩耗性や軟骨組織の再生誘導性など優れた性能を有し、人工軟骨材料や軟骨再生誘導材料としての応用研究が進められている。一方で、生体関節内で固定・維持することが困難であり、本材料の実用化において大きな課題となっていた。今回DN ゲルの表面層に骨組織の無機主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)を複合化させることで、骨組織再生がゲルの内部へ自発的に進展し強固に接着する固定法を開発した。優れた力学物性・軟骨再生能に加えて、無毒で生体内の骨と接着の実現は、DN ゲルによる関節治療への実用化に向けて大きな前進となる。

    野々山 貴行 准教授 Takayuki Nonoyama
    博士(工学)
  • 非線形ラマン散乱内視鏡

    非線形ラマン散乱を用いた神経の無染色可視化による新しい内視鏡下手術支援ロボットの眼の開発

    ラマン散乱は、無染色に分子種・分子構造に関する知見が得られるが、非常に微弱なためにその利用は限られてきた。超短パルスレーザーを駆使した非線形ラマン散乱現象を利用して、リアルタイムにラマンイメージを観測可能な顕微鏡や内視鏡を開発している。

    • 非線形ラマン散乱硬性鏡

    • ラット坐骨神経の非線形ラマン散乱像(スケールバーは100μm)

    研究の内容

    ラマン散乱は、無染色に分子種・分子構造に関する知見が得られるために、化学分析、物理化学研究、半導体物性研究等に用いられ、 近年になって生体観測への応用が盛んに行われるようになってきた。しかしながら、ラマン散乱は非常に微弱であるために、そのイメ ージをリアルタイム観測することは困難であった。波長可変同期ピコ秒レーザーを開発し、これを光源とした多焦点非線形ラマン散乱顕微鏡によって100 frame/sという、ビデオレートよりも高速なイメージングを実現した。また、直径12mm、全長550 mmの硬性鏡下で、神経を無染色、高速に可視化できることを示した。神経温存内視鏡下外科手術の新しい眼として期待できる。

  • 腫瘍血管新生阻害剤スクリーニングシステム

    腫瘍血管新生阻害剤開発のためのcell based screening assay システム

    腫瘍血管内皮細胞を用いたcell-based screeningを実現する。現存の血管新生阻害剤における問題点 (副作用・コンパニオン診断薬がない)を克服し、次世代血管新生阻害療法開発につなげる。

    研究の内容

    分子標的治療薬の開発が進み、血管新生阻害剤が広く使用されるようになったが、治療効果を予測するコンパニオン診断薬が無いこと、正常血管への傷害による副作用といった問題もある。
    我々はヒト腫瘍血管内皮細胞の分離培養に成功しており、それらが発現する特異マーカーを同定している。これらマーカーを発現している腫瘍血管内皮細胞は新規薬剤や化合物のcell-based screeningに有用な貴重なマテリアルである。従来の腫瘍細胞株や臨床腫瘍組織片を用いた研究では発見されない新しい治療の標的や、薬剤を同定することを可能とする。 さらにコンパニオン診断薬としてこれらの腫瘍血管内皮細胞が発現するマーカーを利用する事が可能となる。血管新生阻害剤の投与時期、期間、適応症例などを選別したうえでの個別化治療実現つなぐことを可能とする。

  • ペプチド・糖ペプチド環化技術

    水素結合制御によりペプチド環化効率を飛躍的に向上

    溶媒の水素結合ネットワーク形成に着目した反応系を活用することによりペプチド環化反応の効率化と難溶性ペプチドの溶解度向上を高次元で両立することに成功した。創薬や分子ツール設計に応用可能である。

    • 環状糖ペプチドの合成例、C2対称型に糖鎖を配向制御した(左)
      D-アミノ酸導入等により配座の自由度が制御可能である(右)

    研究の内容

    創薬等の生理活性化合物探索やライフサイエンスにおける分子ツール設計ににおいて環状ペプチドは、その配座安定性や配向性、対称性の制御などが容易であるため、理想的な基本分子となりうる。しかし、ペプチド環化は希薄条件や複雑な保護基戦略などを要していた。本研究では水素結合制御型溶媒システムと無塩基縮合剤システムを組み合わせることにより、難溶性のペプチド等でも高濃度条件下で効率的に環化できることを見出した。特殊な保護基戦略を必要としないことから応用範囲が広く、これまで様々な生理活性ペプチドや糖ペプチドの効率的環化に成功している。本技術を活用することにより、環状ペプチドの設計自由度と量産が容易となり、創薬やライフサイエンス用ツール開発が加速されることが期待される。

    比能 洋 教授 次世代物質生命科学研究センター 副センター長 Hiroshi Hinou
    博士(工学)
  • 消化管での栄養素認識機構の解明

    食品ペプチドによる消化管内分泌系への作用を介した血糖制御

    化管で栄養素を感知する内分泌細胞から分泌されるホルモンは、食後即座に様々な生理応答を調節します。このメカニズムを研究する中で、食品ペプチドが消化管ホルモンGLP-1の分泌を促進し、血糖上昇を抑制できることを動物試験で明らかにしました。

    研究の内容

    消化管で栄養素を認識する消化管内分泌細胞より放出される各種消化管ホルモンは、食後の様々な生理応答を調節する重要な役割を有します。私たちは、抗糖尿病ホルモンとして知られる消化管ホルモンGLP-1に着目し、これの分泌を強く促進する食品ペプチド(トウモロコシ由来)を見いだしました。このペプチドをラットに経口投与することで、GLP-1分泌が促進され血糖上昇が抑制されることを明らかにしました。私たちの研究では、このペプチドがどのように消化管内分泌細胞に認識されるかを解明すること、様々な食品成分により消化管ホルモンの分泌をコントロールして、食後血糖や食欲を制御することを目指しています。

  • 超偏極13C MRI遺伝子変異イメージング

    代謝MRIにより腫瘍内の遺伝子変異を非侵襲的に可視化

    癌治療の成果は、癌細胞の持つ遺伝子変異の種類に大きく左右される。遺伝子変異がもたらす特徴的な代謝変化を指標に、最新の代謝MRIを用いて非侵襲的に変異遺伝子を特定する分子イメージング技術を開発している。

    • 図1 超偏極13C MRIによる遺伝子変異イメージングの概念 標的とする変異遺伝子産物による特徴的な代謝物の生成や、本来起こるべき代謝反応の欠損・低下により、変異遺伝子を特定する。

    研究の内容

    ・超偏極13C核磁気共鳴画像(MRI)は13C標識した任意の化合物のMRI信号を一時的に数万倍に増幅することで、その生体内における代謝反応をリアルタイムに可視化するMRIの最先端技術である。PET/CTのような放射線被曝を伴わず、光学イメージングでは困難な体深部からの信号の取得が可能な“夢の分子イメージング技術”として期待されている。
    ・細胞は遺伝子変異の蓄積により癌化し、変異の種類は癌治療への応答性を大きく左右する。癌化をもたらす遺伝子変異には特徴的な代謝変化を伴うものが多く、︎超偏極13C MRIにより特定の代謝変化を見ることで、非侵襲的に腫瘍内の変異遺伝子を推定することが可能となる。