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1. 貧困をなくそう
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2. 飢餓をゼロに
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3. すべての人に健康と福祉を
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4. 質の高い教育をみんなに
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5. ジェンダー平等を実現しよう
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6. 安全な水とトイレを世界中に
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7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
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8. 働きがいも経済成長も
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9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
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10. 人や国の不平等をなくそう
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11. 住み続けられるまちづくりを
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12. つくる責任、つかう責任
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13. 気候変動に具体的な対策を
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14. 海の豊かさを守ろう
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15. 陸の豊かさも守ろう
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16. 平和と公正をすべての人に
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17. パートナーシップで目標を達成しよう
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう:131件
1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
10. 人や国の不平等をなくそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任、つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう
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最新技術が映す酪農・肉牛生産の未来:牛伝染性リンパ腫早期診断技術を活用したハイリスク牛摘発と優先淘汰による畜産被害軽減と生産性向上
牛伝染性リンパ腫発症を予測するがん検診技術
日本における牛伝染性リンパ腫の発生は急増しており、発症牛は全て廃棄となるため、その対策は急務です。北海道大学は最新技術を駆使して牛伝染性リンパ腫による畜産被害軽減と生産性向上を農場に提案しています。
研究の内容
牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)は、牛のリンパ腫を引き起こすウイルスです。日本における牛伝染性リンパ腫の発生は急増しており、発症牛は全て廃棄となるため、生産現場で被害を与え続けています。現在BLVの感染は日本国内の農場に広く蔓延しており、その対策は急務です。本研究室では、年間数千頭のBLV感染診断を実施しています。診断結果は農場における新規導入牛の決定、着地検査、感染牛の分離飼育、優先淘汰および感染牛産子の早期感染診断などに活用されています。さらには、複数のモデル農場および農業共済組合や開業獣医師と協力して、BLVの清浄化に向けた対策法を検証しています。また最新技術を駆使して牛伝染性リンパ腫による畜産被害軽減と生産性向上を農場に提案しています。
今内 覚 教授 Satoru Konnai獣医学博士 -
古くて新しいプロバイオティクス 薬剤耐性菌問題の克服も目指した新たな動物疾病制御法の実践研究
古くて新しいプロバイオティクス
子牛の感染症(下痢症や肺炎など)は成長に悪影響を及ぼし、時には死に至らしめることから生産性を低下させる重要な課題となっています。北海道大学は、「子牛の下痢を予防したりワクチン効果を向上させるプロバイオティクス」の開発に成功しました。
研究の内容
・粉ミルク(代用乳)を原料した発酵代用乳を作製したところ、発酵品質が安定して、雑菌の混入がなく、「高品質で安全なプロバイオティクス」であることがわかりました。
・ロタウイルス感染による子牛下痢症モデルを用いた実験および下痢発生農場の子牛を用いた大規模な実証試験を実施し、発酵代用乳が子牛の下痢症の臨床症状を軽減し、腸炎による死亡を減少させることを証明しました。
・子牛へのプロバイオティクス(酪酸菌)の給与により、ワクチンに対する免疫応答が増強されることも 育成牧場での大規模実証試験で証明しました。
今内 覚 教授 Satoru Konnai獣医学博士 -
「すごそうな英語」 よりも 「伝わる英語」 の習得と教育のために
様々な言語の話者が英語でコミュニケーションを行っている現代において重要なのは「母語話者のような英語」よりも実際に相手に「伝わる英語」だと言われています。私は音声言語を中心に英語の「伝わりやすさ」に影響を与える特性について研究しています。
研究の内容
近年の英語習得研究においては特に音声言語において「母語話者らしさ(nativelikeness)」と「伝わりやすさ(intelligibility)」が区別され、それぞれが異なる要素の影響を受けていると言われています。恐らく言語一般的に母語話者らしさに影響を与えるのは当該言語の方言差が生じる部分で、英語の発音では母音の違い(route: 英/ru:t/ 米/raʊt/)、日本語の発音ではピッチアクセントの違い (牡蠣 vs 柿)) がこれに相当します。一方で国際コミュニケーションのためには 「伝わりやすさ」 の向上が重要であることは学界の共通認識であるものの、その要因となる特性については更なる研究が必要な状況です。本研究では様々な母語の話者による日本人英語音声の評価とその音声特性との相関を分析しました。
小西 隆之 准教授 Takayuki KONISHI博士 (国際コミュニケーション) -
魚類加工残渣中のコラーゲン・コンドロイチンの有効活用
水産廃棄物に含まれるコラーゲン・コンドロイチンの生物活性評価と産業応用
魚の加工残渣に多量に含まれるコラーゲン・コンドロイチンの生物活性を、おもに細胞培養法で解明してその成果をもとに機能性食品や機能性化粧品、組織工学用細胞足場材料、細胞培養基材等を開発し、社会実装する。
研究の内容
① 魚類コラーゲンを用いた組織工学用細胞足場材料、細胞培養基材の開発
チョウザメ浮袋コラーゲン等を材料として、細胞足場材料を開発する。これまでに、コラーゲン原線維を細胞培養プレートにコーティングする技術を開発した。通常のプレートと比べて、本コート上に播種された細胞は形態を変化させ、細胞高が大きくなった。
② コラーゲン、ゼラチン、およびペプチドの皮膚線維芽細胞活性化効果
皮および頭から酵素を用いてペプチドを生産し、その抗酸化能と線維芽細胞活性化能を検定したところ、抗酸化能は頭部をまるごと酵素消化したペプチドが最も高かった。一方で、線維芽細胞活性化能はコラーゲン含量が高い試料が高かった。現在、チョウザメ皮由来高純度ゼラチンからペプチドを生産する技術を開発中。都木 靖彰 教授 Takagi Yasuaki -
クロロフィル分解を抑制し緑色を維持する植物の開発
緑色が退色しない植物の可能性を探る
クロロフィルを分解できない植物は退色せずに緑色のままです。この性質を野菜の緑色の維持などへ応用することを目指します。
研究の内容
植物は光合成色素のクロロフィルを持っているため緑色をしています。クロロフィルは環状構造の分子で、中心にマグネシウムを持っています。このマグネシウムがクロロフィル分解酵素(マグネシウム脱離酵素)によって外されることによりクロロフィルの分解が始まります。そのため、クロロフィル分解酵素を持たない変異体は枯れる時期になってもクロロフィルを分解せず緑色を維持しています。
伊藤 寿 助教 Ito Hisashi -
シードル加工用の種子無しリンゴの育種基盤の構築
植物遺伝資源の多様な特性を理解し、植物育種への応用を考える
植物の三倍体は一般的に不稔になると考えられている。しかし、予備試験においてリンゴの三倍体が種子を形成していることがわかった。本課題ではリンゴの三倍体品種に形成される種子を利用し、その後代の獲得を試みる。
研究の内容
果樹生産は栽培・管理に多大な労力と時間を要する。これまでは果実の高品質化を目指してきたが、担い手不足が顕在化していることから、作業の効率化と収益性向上が望まれている。近年、シードル生産に注目が集まっている。リンゴの搾汁の際に種子の混入がシードルの品質低下を招くが、種子無しリンゴの育成は困難である。その要因がリンゴゲノムの頑強性にあると考え、異数体作出による完全種子無しリンゴの育種基盤を構築する。
星野 洋一郎 教授 Hoshino Yoichiro -
育種技術研究と遺伝資源保存技術の開発
交雑や染色体操作技術による倍数体やクローン作出技術、凍結保存技術の研究開発
養殖において遺伝的に同一なクローン集団を用いることで、均一な魚の生産が期待されます。天然に分布するクローン魚類における配偶子形成の仕組みを解明することで、養殖対象魚への応用を目指しています。
研究の内容
①遺伝的に同じクローン誕生のメカニズム
自然に分布するドジョウやギンブナではクローンの存在が知られており、これらのクローンも交雑によって誕生したと考えられています。自然で生じるクローン誕生メカニズムの応用や人為的な染色体操作技術を利用することで、遺伝的に均一な養殖集団の作出が可能となるため生産性の向上が期待されます。
②遺伝資源保存技術の開発
個体の再生が可能な生殖細胞や配偶子を用いた遺伝資源保存はリスク分散に必須の技術です。精子は凍結保存から人工授精における利用が最も容易であるため、魚類でも広く用いられてきましたが、個体再生には卵が必要です。これらの細胞から配偶子を誘導するためには、宿主個体に移植する必要がありますが、移植個体からは保存(移植)された細胞に由来する精子や卵の生産が可能です。藤本 貴史 教授 Fujimoto Takafumi -
乳牛の飼養方法と生産される乳の品質
日本全国、乳牛は様々な方法で飼養されていますが、牛乳の品質(成分的、衛生的、官能的)との関連は、明確ではありません。
実際の酪農現場で生産された乳を解析し、乳牛の飼養方法と生産される乳の品質との関連を明らかにしています。研究の内容
「乳牛の飼養方法と生乳の成分的品質との関連」
乳牛の飼養方法は日本各地で異なり、特に北海道では気候条件などの違いにより明確に異なります。
北海道の各地域における飼養タイプの違い(畑作型、草地型、都市近郊型)と各酪農家で生産された生乳の成分、特に乳製品の品質と関連が強い脂肪酸組成やビタミン、カロテノイドとの関連を検討しています。
「乳牛の飼養方法と牛乳の官能的品質との関連」
乳牛の飼養方法の違いと生乳の成分的品質との間には関連性が強いことが分かってきました。
しかし、ヒトが実際に飲んで感じるおいしさ(味、香り、食感)との関連は明確でありません。
そこで、乳牛の飼養方法、生乳の成分的品質、牛乳の官能的品質、これら3者間の関連を検討しています。三谷 朋弘 准教授 Mitani Tomohiro -
糖質代謝関連酵素の機能・構造・応用
酵素を使った効率的糖質合成技術を開発し、健康的で豊かな食生活を支えたい
糖質には機能性食品素材としての利用が期待されています。酵素を利用し、自然界や農産物から入手しやすい糖質を希少糖質へと効率的に変換する技術基盤を整備することで新しい機能性糖質の発見につなげたい。
研究の内容
セロビオース2-エピメラーゼは、β1-4二糖の還元末端グルコース残基をマンノース残基にエピメリ化する酵素です。
私たちは、本酵素が乳糖に作用することで生成する希少オリゴ糖のエピラクトースに注目して研究してきました。本酵素を固定化したバイオリアクターの開発や、工業的なスケールでも実施可能なエピラクトースの高純度化技術をこれまでに開発しました。
セロビオース2-エピメラーゼを利用することにより合成したエピラクトースを用いて動物実験により生理機能性を明らかにしました。
エピラクトースは高い消化酵素耐性を持つ難消化性オリゴ糖であり、ラットを用いた実験では腸内でのビフィズス菌や乳酸菌を増やすプレバイオティクス効果が確認されました。佐分利 亘 准教授 Saburi Wataru -
ケミカルバイオロジーを利用した有用物質生産
有機化学、生化学的手法を駆使した生理活性物質の単離・構造決定、量産法、機能解析
・農産物の機能成分の効率的単離、生理活性を指標とした分子レベル解析
・農産物機能成分の薬効成分としての利用
・農薬成分の効果持続性を目指した構造活性相関研究研究の内容
農産物から有用成分を単離し、機能性解明により高付加価値化を達成し、最終的には医食同源によるQOL改善を目指す。
有色ビートから
(左)色素成分を単離し、構造決定後、機能性解明のため構造活性相関を誘導体化などにより検討する事で活性増強を図る
(右)食物繊維を単離し、その高分子ゲル化能等の特徴的な物性を解析する。
その物性を増強するための加工等を施すことにより高付加価値化を図る。橋本 誠 教授 Hashimoto Makoto -
群飼育下の乳用雌哺育牛から体調不良個体を早期検出するリアルタイムモニタリング技術の開発
生涯生産性を高める哺育・育成からのスマート酪農を目指す
わが国の生乳生産の安定化のためには、哺育牛の損耗低減が必要である。本研究は、哺育牛群の体温、行動、容姿の常時全頭モニタリングによって体調不良個体を早期検出する技術を開発する。
研究の内容
①群飼育哺育牛の健康状態指標の全頭同時リアルタイムモニタリング技術の開発
哺育牛の行動型、体温、容姿を牛房内の哺育牛全頭について同時に常時モニタリングする機器技術および解析技術を開発する
②群飼育哺育牛の中から体調不良個体を早期検出する技術の開発
哺育牛の行動型、体温および容姿の全頭同時モニタリングデータから人工知能によって体調不良個体を検出する技術を開発する上田 宏一郎 教授 Ueda Koichiro -
漁具の水中形状・動態可視化技術(NaLA)
漁具の水中動態をPCで可視化
漁具の設計図と海況条件をPCに入力することで,様々な漁具の水中での形状やその動き,各部材に作用する力を数値シミュレーション技術により可視化することができます。
(企業との共同研究により研究開発が行われています)研究の内容
漁具の水中形状や動態をPCで数値シミュレーションにより予測し、可視化することにより、
・新しい漁具や施設を開発するため実機製作前に評価できる
・操業中の漁具の状態をモニタリングし漁労作業を支援する
・設置海域での施設の耐流性・耐波性を評価する
など、漁業生産施設の操業や設計の最適化を実現します。髙木 力 教授 Takagi Tsutomu -
ポータブルな液体クロマトグラフ(化学分析装置)
検査室から持ち出せる化学分析装置
液体クロマトグラフはサイズおよび重量が大きいため、実験室での使用に限定され、試料の採取場所での分析や小規模な実験室での分析は困難でした。そこで、構成要素を根本から小型化することに取り組み、超小型・超軽量装置の開発に成功しました。
研究の内容
・液体クロマトグラフ法(HPLC)
各成分は、カラム内で充填剤との相互作用の程度の違いで分離されます。分離するため、成分どうしの干渉なしに分析できます。溶出時間で成分が特定でき、検出信号の強さから濃度を決定できます。
・ハンディーポータブルタイプ
使用のつど収納でき、限られたスペースを有効活用
低溶媒使用量で低コスト 現場での取扱いも容易
シンプルな構造でセッティングとメンテナンスが容易
極微量の試料導入量により希少サンプルの分析に最適
入手容易な乾電池が使用可能
従来スペースに複数台設置して分析効率を向上
・コンパクトオールインワンタイプ
カラム(チップ)と検出器(ブロック)をモジュール化。各種検出法に対応し、交換可能。石田 晃彦 助教 Akihiko Ishida博士(工学) -
植物性色素の生理機能とその応用
植物色素の力で植物もヒトもストレスに強くなる!?
植物色素の一種であるベタレインの、植物細胞内における生理機能として、ストレス負荷により蓄積する活性酸素(ROS), 活性窒素(RNS)消去能及び機構解明をおこなう。植物の環境ストレスに強い植物開発への応用を目指している。
研究の内容
寒冷地作物ビーツに含まれる赤や黄色のベタレイン色素は抗酸化や血圧降下作用など多機能性が示唆されるが、ベタレインは非常に不安定なため精製度の高いベタレインを用いた検証は非常に少なくベタレイン色素自身の機能詳細は不明である。
そこで、ビーツに含まれ得るベタレイン色素(ベタシアニン・ベタキサンチン)の高純度精製法を確立した。得られた純度の高いベタレイン色素を用いて、活性酸素や活性窒素の消去能を in vitro または in vivoで測定することにより、種々のストレスに対する細胞保護機能を評価し、機能性食品開発や環境ストレスに強い作物の作出を目指している。崎浜 靖子 教授 Sakihama Yasuko -
食品ナノ構造の非破壊スローオペランド解析
大型施設でしかできないと思われていたこと。実は北大でできます
食品はいくつもの相が混合した「混ざりもの」です。その「混ざり方」は食感を左右する重要な要素です。製造プロセスや保存プロセスで起きる「混ざり方」の変化を非破壊・連続的に観測します。
研究の内容
ほとんどの食品は水を含む複数の相(同一の結晶構造・分子構造を持つ領域)が混合した「混ざりもの(複相組織)」です。「混ざりもの」の食感はそれぞれの相の性質だけではなく、構成する相がどのような大きさ(スケール)でどのくらいの個数が存在しているかという「混ざり方」も大きな影響を及ぼしています。構成している相は原料を決めるとある程度決まってきます。例えばモッツアレラチーズといえば、どの製品にも共通する味や食感があります。一方で、味や食感は製造者によって明確な違いがあります。中でも食感については、その違いを決定する最重要な要素が「混ざり方」であり、製造プロセスにより大きな影響を受けます。
大沼 正人 教授 Onuma Masato -
超低価格のオンサイト検査システムの開発
どこでも誰でも検査が可能な検査チップ
どこでも誰でも検査が可能な検査チップの開発を行っています。紙を基材にすることで、材料コストだけでなく、廃棄コストも低減することができます。検出器にスマートフォンを利用することで、超低価格のオンサイト検査システムが実現できます。
研究の内容
・検査チップとアプリを開発中
紙製検査チップとスマートフォンで簡便ながら精度良い分析が可能
・紙製検査チップ(ペーパーマイクロチップ)
軽量・薄型の検査チップ
スマホが測定器だから導入費はゼロ
熟練がいらない簡単な操作
スマホアプリが高精度で検査
検査後の処分も簡単渡慶次 学 教授 Tokeshi Manabu -
ブロック型生分解性ポリエステルの微生物合成
微生物を利用してバイオマスから合成される新規生分解性プラスチック
グリコール酸ユニットなどの非天然ユニットを含むポリマーの合成系を独自に開発しました。加えて、これまで不可能であったモノマー配列が制御されたブロック共重合体を合成することにも成功しています。
研究の内容
ある種の微生物は再生可能なバイオマスを原料として、細胞内にポリエステルを合成蓄積します。このポリエステルは生分解性プラスチックとして利用可能ですが、これまで物性の制御が難しいのが難点でした。我々は、人工的に改変したポリマー合成系を用いて、様々な非天然ポリマーの生合成に成功しています。これらのポリマーは、天然型ポリマーでは実現不可能な物性も発揮できます。生分解性の評価はまだ完了していませんが、典型的には、土中で3か月程度で分解されます。生分解性に加えて、生体吸収性の発揮も期待できます。
松本 謙一郎 教授 Matsumoto Kenichiro -
無機-バイオ界面に着目した新規材料作製
シリカ合成酵素、バイオミネラル、無機-有機複合材料、自己修復材料
我々は生物が創り出す鉱物(バイオミネラル)に着目し、それを人工的に模倣した無機材料作製技術を開発しています。また、無機物とバイオ分子の界面に形成される親和力を利用した新たな金属分離技術および吸着・接着技術についても取り組んでいます。
研究の内容
1.シリカ合成酵素を用いた新規ハイブリッド材料作製
シリカは酵素によって合成されており、シリカ合成酵素はシリカテインと呼ばれています。シリカテインを用いることで、常温・中性pHという温和な条件下でシリカの重合を行うことが可能なため、バイオハイブリッド材料の作製ツールとして利用できると思われます。我々は、タンパク質融合技術により、シリカテインを可溶化した状態で長期間安定に存在させることに成功し、様々な複合材料の作製のツールとして用いています。
2.バイオ界面に着目した新たな金属分離技術と固体吸着技術の開発
生物は様々な力(相互作用)を用いて、固体表面に接着しています。我々はその力をうまく利用することで、紙(セルロース)を用いた金属イオン捕集技術や、特定の金属だけに吸着・接着する技術の開発を行っています。中島 一紀 教授 Nakashima Kazunori -
発光性希土類錯体を用いた農林水産事業の支援
波長変換フィルムで農作物成長を促進
農作物成長促進に効果的な強発光性の希土類錯体(発光効率:世界トップ)を開発。その発光体を透明シートに塗った光波長変換フィルム(紫外光→可視光)の作製に成功。
研究の内容
紫外光を効率よく吸収し、赤色領域の強発光する希土類錯体を開発しました。この分子を塗り込んだ光波長変換フィルムは太陽光の赤色部分(600nm付近)を増強することができます。
この希土類錯体は可視光領域は光吸収がなく、農作物の光合成の鍵となるクロロフィル分子(赤色光を吸収)へ光を効果的に当てることができます。
● 太陽光の可視光領域をさえぎることがないため、農作物育成に応用した場合、日照時間を増やす効果があります。(特に冬期は効果的)
● 光変換の波長は赤色光の他に、「緑色光」「白色(波長混合)」「近赤外光」 に変換も可能です。 紫外線カットによる遮熱効果も期待できます。
● 発光色が温度によって変化するフィルムも作ることができます。LEDと組み合わせることもできます。長谷川 靖哉 教授 Yasuchika Hasegawa北海道大学大学院工学研究院 応用化学部門・先端材料化学研究室 -
寒冷地農業施設の最適な維持管理のための腐食と防食技術
積雪寒冷地に着目した、構造物や機器の腐食・防食の研究
北海道の特徴は、積雪寒冷地であることです。寒さと雪に着目した大型施設や機器の腐食状況の把握、基礎研究からの腐食状況解析などを行っています。
研究の内容
・積雪寒冷地の金属材料の腐食
雪が降る低温においても金属材料が激しく腐食する理由として、雪が溶けることによりできる塩分を含む水膜があげられます。
そこで、水膜の厚さや塩分濃度を変えて腐食試験を行っています。右図は、水膜が薄くなると、氷点下でも金属材料表面に多くの酸素が供給されることを示してます。このことは、氷点下でも日光で雪がとけると激しく腐食することを意味しています。
・積雪寒冷地の曝露試験
北海道内数カ所で曝露試験を行い、雪の影響でどの程度金属材料が腐食するのかを調査しています。
海からの飛来海塩量の測定も実施しており、札幌近郊では、冬季に飛来海塩量は夏の数倍に増えていることが分かりました。大型鋼製構造物に温度センサーを設置して測定した結果、気温が氷点下でも日光があたると十度以上になることがわかりました。坂入 正敏 准教授 Sakairi Masatoshi工学研究院 材料科学部門 マテリアル設計分野 -
植物の繊維構造・特異な形態が生み出す構造・材料力学的機能評価とプラントミメティック構造材の創製
「植物の智恵」から学ぶ新しいデザインとものづくり
竹を始めとする維管束植物や、様々な植物の構造形態の力学的合理性をサイエンスの視点で実証するとともに、その構造形態を模倣することにより、既存の材料性能を凌駕する新しい構造材のデザインを目指しています。
研究の内容
◆構造・材料力学理論と有限要素解析により、理論的なアプローチで植物の形態を捉えます。
◆例えば、以下の写真に示す竹は節と断面内維管束分布が特徴的ですが、これらには自身の体を最小材料で効率的に支える秘密があることが本研究室の研究で明らかとされています。このことは、繊維量を減らし機能を高めるCFRP材料の設計に応用できる「竹が教えてくれる智恵」であるといえます。※本研究により、文部科学省より「科学技術への顕著な貢献2019(ナイスステップな研究者)」に選定されています。
◆さらに、断面形状が非円形の植物など、特徴的な形状には力学的な利点が潜んでいます。
このような進化の過程で植物が生存戦略の一環として獲得してきた形状の合理性を暴き、付加価値を有するものづくりに生かすデザイン研究を行っています。佐藤 太裕 教授 Satou Motohiro -
H2Oの相変化制御と応用
水を制御して、生命を制御する
トレハロースなどの二糖類を使った細胞の凍結保存実験を行い、氷晶形成の制御という観点からそのメカニズムを解明し、より多くの細胞の凍結保存技術の開発に資する。
研究の内容
凍結過程を上手に制御すると、細胞を生きたまま凍結することができる。つまり、「生命の時を止める」ことができるのだ。この「凍結保存」技術は、すでに畜産業や水産業で導入されているが、そのメカニズムは科学的に解明できているわけではなく、需要は高いが凍結保存できない細胞種は数多く存在する。私たちはこの「細胞の凍結保存メカニズム」を、その主要成分である水の相変化を制御するという視点から解明を試みている。
内田 努 准教授 Uchida Tsutomu -
食品付加価値を高める超音波ドップラー検査技術
医療用の超音波エコーや超音波ドップラーによる画像診断機器を身近な対象物に使えるようにポータブル化しました。スーツケース1個で持ち運び、現場ですぐに使えます。農作物の非破壊診断、連続食品加工におけるライン上での品質管理を可能にします。
研究の内容
・農学部と工学部の共同開発で、トマト、キウイなどの果物や野菜の表皮硬度・内部熟度を3秒で可視化する方法を完成させました。
・カレー、ゼリー、ヨーグルト、チョコレートなど環境や温度で変化する様々な食品の粘度を、円筒に入れて回すだけですぐに計測できる技術を作りました。
・大きめの固体粒子が分散するゼリー状の粘弾性液体がせん断を受けるときの粘性応力と弾性応力を計測、複雑レオロジー混相流体にも適用可能に。
・市販のトルク式レオメータでは計測できない変形履歴応力をもつ物質(メモリー効果物質、チクソトロピ物質)の内部流動の特異性を抽出することに成功。村井 祐一 教授 Murai Yuichi工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 熱流体システム -
プラズマ処理によるカビ様臭原因物質トリクロロアニソール除去技術の開発
カビ様臭原因物質をプラズマで効果的に除去可能
低圧アルゴン(以下Ar)プラズマおよび大気プラズマを用いて天然コルク中のカビ様臭の原因物質であるトリクロロアニソール(以下TCA)の除去を試みた。前者では最大40分の1程度まで効果的に減少させられることが分かった。
研究の内容
I. 低圧Arプラズマ照射による天然コルク中TCAの除去
・天然コルクにTCAを含侵させた試料(Control)に低圧Arプラズマを放電圧力などを変化させ照射
・Control試料の最大40分の1程度まで減少(特に低放電圧力で効果的)
II. 大気プラズマ照射による天然コルク中TCAの除去
・TCA含侵天然コルク試料(Control)に大気プラズマを放電電圧などを変化させ照射
・条件によっては3分の2程度まで除去山内 有二 准教授 Yamauchi Yuji -
超音波流速分布計測による新しいレオメータ
様々な分野にブレークスルーをもたらす流動物性の新たな基盤計測技術
超音波流速分布計測と運動方程式の逆解析を用いた新しいレオメータです。食品など混相体の流動物性を瞬時に評価可能です。検査において従来法の死角を補うだけでは無く、生産ラインの状態・品質管理まで応用可能な技術です。
研究の内容
液体に与えられた変形は、粘性や粘弾性など、局所の運動物性を反映して伝播します。新たに開発したレオメータでは、理想的な状態で与えられた変形を、超音波による速度分布計測から求め、それを液体の運動を記述する方程式で逆解析することで、瞬時・局所の物性を評価します。対象の液体が固体や他の液体、気体の分散相を含む場合にも適用可能であり、また瞬時の粘度曲線を計測可能であることから、化学反応や温度による状態変化などによる物性の経時変化を計測できます。円管内流れへの応用では、管内を流れる液体の流動物性を、試料を取り出すこと無くインラインかつ非侵襲でリアルタイムに評価できます。
田坂裕司 教授 Yuji Tasaka博士(工学) -
銀系化合物を用いる水素の活性化と接触合成反応
高活性水素イオンの生成触媒の開発とCO2メタネーション反応への利用
Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)は、当研究室が発見した銀系化合物から生成する高活性水素イオンで、一部を低温燃焼させることで熱を供給し、余剰GDRは例えばCH4合成に利用することで、反応が効率化できる。
研究の内容
水素の自然発火温度は525℃前後と高く、低温で燃焼させるためには、高活性水素を製造可能な触媒の利用が不可欠である。これまでパラジウムや白金系触媒が用いられているが、供給面や価格面などの不安を抱えている。
当研究室では、従来の触媒に比べ供給面や価格面で有利な触媒の研究に取り組み、その結果、高活性な水素イオンを生成可能な銀系化合物を発見した。本触媒は、水素を供給すると高い活性を持つ水素イオン“Gin De Ride(銀-Derived Hydride, GDR)”を与えるため、まず低温で水素と酸素を同時供給することにより生成GDRを燃焼させ、次いで発生熱と余剰GDRを利用すれば各種合成反応を効率的に行うことが出来る。
現在、CO2メタネーション用の触媒との複合化により、低温で反応が進行することを見出している。坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
光干渉リソグラフィによる微細パターン創成
空間位相制御によるマスクレスでの自由微細パターン創成
光干渉リソグラフィに空間位相制御を導入して,マスクレスで自由パターンを転写創成する手法を開発。これまでに,従来の2ビーム干渉では実現困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しており,現在パターン転写およびその精度向上に取り組んでいます。
研究の内容
半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構において位置検出センサとして用いられるリニアスケールでは,マイクロメートル級のピッチを有する回折スケール格子が位置検出の「目盛り」として用いられています。また近年,微細パターンを有する機能性表面に対する需要が様々な分野で高まっています。
本研究では,空間位相変調したレーザ光の重畳で自在生成する干渉縞の転写で,マスクレス自由パターン創成を狙っています。これまでに,従来の2ビーム干渉では原理的に創成が困難であった2次元干渉パターンの生成に成功しています。清水 裕樹 教授 Yuki Shimizu博士(工学) -
超精密光学式角度センサ
0.001 arc-second超の高分解能を実現し,回折スケール格子ピッチ評価に援用
超精密位置決めステージなど,精密移動体の微小角度変位を検出する光学式角度センサを開発しています。レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を達成しています。
研究の内容
半導体露光装置,超精密工作機械や精密計測機に用いられる超精密位置決め機構においては,ステージ移動中の微小回転運動誤差の影響が無視できません。
本研究では,これら精密移動体の微小角度変位を高い分解能で検出する,高精度光学式角度センサの開発に取り組んでいます。低ノイズ信号処理回路の開発および光学系の最適化設計により,レーザオートコリメーション法ベースの角度センサとして世界最高レベル(0.001 arc-second超)の分解能を,帯域1 kHzレベルで達成しています。また,この角度センサ技術をもとに,回折スケール格子全長に渡り,位置検出の「目盛り」の揺らぎをピコメートル級分解能で校正する手法を開発中です。位置決め技術の更なる高精度化を狙います。清水 裕樹 教授 Yuki Shimizu博士(工学) -
リンの高効率かつ高選択的な分離回収技術
リン鉱石の輸入依存脱却が可能な二次リン資源からのリンの分離回収
「炭素化(もしくは炭素添加)」と「塩素化」を共通工程とした二次リン資源(製鋼スラグ、鶏糞、下水処理後のHAP・MAP、下水汚泥、下水汚泥焼却灰など)中のリンの非常にシンプルな高効率・高選択的分離回収技術を開発した。
研究の内容
リンは生命体の必須元素で、さらに、化学肥料や工業製品などの原料として広く使われているが、近年、リン鉱石の低品位化と枯渇が現実味を帯び始め、資源の確保が焦眉の課題となっている。一方、日本のリンのマテリアルフローに従うと、輸入リン鉱石の3.4倍、全持込リン量の半分以上が鉄鋼スラグ、家畜糞、下水汚泥中に移行する。そのため、これらの二次リン資源の再資源化技術の開発は重要である。そこで当研究室では、鶏糞や下水汚泥の炭化物の塩素処理によりリン回収を阻害する鉄を分離し、次いで、元々存在する炭素による還元反応でリンのみを選択的に回収する非常にシンプルな再資源化プロセスを開発した。本技術は炭素添加した製鋼スラグ、HAP・MAP、下水汚泥焼却灰などにも適用できるため、我が国のリン資源対応力強化に繋がると期待できる。
坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
1粒子解析技術に基づいたセンサー
エクソソームのスペクトル計測によるがんの識別方法
・長さが5 μm以下の微粒子(例えばエクソソームなど)の1粒子解析方法、または、微粒子を利用したセンサーのためのスペクトルデータの生産方法を提供する
・微粒子を高感度にスペクトル計測できる基板および計測装置を提供する研究の内容
本研究では、長さが5μm以下の生体微粒子などの測定が可能となる特徴を持ち、エクソソームの他、微粒子状の小さな細菌やウイルスなどが測定対象となります。また微粒子を利用したセンサーのためのスペクトルデータの生産方法を提供することが可能となります。
例えばエクソソームを測定することで、がんの検出や識別などに活用することが期待されます。
エクソソームとは細胞から分泌される体液(尿、唾液、血液など)に存在している微粒子で、近年は疾患のバイオマーカーとして注目されています。エクソソームの特徴として以下の特徴があります。
・表面分子組成が親細胞に依存している
・正常細胞はがん細胞から出てきたエクソソームを取り込むことでがん化する
・表面のタンパク質などの違いで、どこの細胞に入るか(がんの転移先)が決まる龍崎 奏 准教授 Sou Ryuzaki -
農水産業のDXを支える中心温度測定用食肉模擬装置
実肉を使用しない食肉中心温度測定用デバイス
食用動物の食肉を対象に、その中心温度を把握するための温度測定装置を開発した。本装置のプローブ周囲には、魚・牛・豚・鶏等の食用動物の食肉を模擬した比熱及び形状を有する材料を配置しており、実際の食肉に近い中心温度変化をリアルタイムで取得できる。
研究の内容
一般的に食肉の貯蔵温度管理は、食材が貯蔵されている貯蔵庫内の温度を計測し、温度管理を行っている。しかし、食肉を高鮮度状態に保つためには、その中心温度を計測し温度管理をすることが重要であるが、現状のサーモグラフィーカメラや温度センサーでは、その表面温度しか測定ができない。
そこで、当研究室では、食用動物の食肉を模擬した比熱及び形状を有するプローブを作製することにより、食肉の中心温度変化を模擬できる装置を開発した。これにより、食肉を傷つけることなく、測定したい食肉の中心温度を取得することが可能となり、その温度変化を基に、理想的な温度管理が可能となる。また、食用動物の鮮度と食べ頃の可視化装置『MIRASAL(見らさる)』と本模擬装置を連携することで、実際の食肉を使用することなく、鮮度評価を行うことが可能となる。坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
鮮度保持用液状氷の質と量の同時最適化装置
食品の長期鮮度保持のための液状氷最適化装置
単純な熱容量計算で食品用液状氷〔スラリーアイス(塩分含有水氷)又は無塩分水氷〕の必要最小量や、保管用容器の総括伝熱係数(容器放熱量パラメータ)を用いスラリーアイス温度を決定する塩分濃度・水/氷混合比及び貯蔵可能時間を算出する装置を開発した。
研究の内容
これまで、水産動物の鮮度保持に有用なスラリーアイスの製造量は、貯蔵時間を考慮した計算法が無かったため、多くの場合、過剰な量が製造され使用されてきた。そこで当研究室では、先に記載したように、保管用容器の総括伝熱係数を用いて、その場で迅速に、スラリーアイスの質(塩分濃度や水/氷混合比)と量(貯蔵可能時間)を同時に最適化する装置を開発した。本法は、真水由来の塩分を含まない液状氷の製造にも適用可能なため、水産動物以外の食品(野菜・果物・畜産動物)にも利用でき、現在その発明内容の権利化などに取り組んでいる。
坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
食用動物の鮮度と食べ頃の可視化装置『MIRASAL(見らさる)』
安全・安心を実現する食用動物の鮮度と食べ頃の評価装置
我々は、産業技術総合研究所と共同で、致死後の食用動物(水産動物や畜産動物)の任意部位における分解成分の濃度の経時変化をシミュレーション法により求め、鮮度と食べ頃を評価するための可視化装置『MIRASAL』を開発した。
研究の内容
魚介類の産地および消費地における卸売市場では、鮮度が取引価格を決定する1つの重要な基準となっており、その評価指標としてK値が提唱されている。しかし、その値は死後の水産動物の任意の部位をサンプリングし、種々の前処理後に成分分析を行い算出するため、流通現場でのリアルタイム評価(把握)は出来ない。当研究室では、妥当なシミュレーション法による課題解決を考え、上記したような手法を用い、魚介類の種類や大きさ、死後の経過時間や保存温度などの各種情報から、鮮度と食べ頃を評価できる装置を開発し、現在その発明内容の権利化や携帯性の向上(スマートフォン等での利用)などを進めている。本装置『MIRASAL』は、牛肉・鶏肉・豚肉といった畜産動物にも適用可能である。
坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
魚類の細胞を生殖細胞化させる研究
養殖魚の借腹生産や品種改良の効率化を目指して
動物の初期胚の細胞の多くは身体を構成する体細胞へ分化し、一部の細胞のみが精子と卵の起源となる生殖細胞へ分化します。当研究室では、魚類初期胚のほぼ全ての細胞を「生殖細胞化」できる技術を開発し、水産業への応用研究を進めています。
研究の内容
近年、マグロのように産業的な価値は高いが、飼育が難しい魚の配偶子(精子と卵)を、飼育が容易な魚に作らせる「借腹生産」技術の開発が進められています。効率的な借腹生産を実現する為には、ドナー魚種の生殖細胞を標識・選別・濃縮して、ホストとなる魚に移植する必要があります。しかし、生殖細胞は個体発生の初期にごく一部の細胞集団として出現するため、生殖細胞の選別には高度な技術が必要でした。
当研究室では、魚類初期胚の全ての細胞、もしくは、特定の細胞を「生殖細胞化」できる技術を開発しました。生殖細胞化した細胞は、選別なしにホストに移植できるため、効率的な借腹生産技術につながります。また、ゲノム編集や染色体操作技術を組み合わせることで、生殖細胞のみの遺伝的改変が可能となり、効率的に目的とする実験魚や品種の作出が可能となります。西村 俊哉 助教 Toshiya Nishimura理学博士 -
高速ロボティクス
"高速性"をキーワードとして,高速化に必要なアーキテクチャから,高速化に付随して生じる課題解決技術まで,理論・アルゴリズム・デバイス・システム・アプリケーションといった総合的な観点でロボット開発をおこなっています.
研究の内容
主に以下の3つのカテゴリーから構成される高速ロボティクスを研究しています.
I. スポーツスキル:従来のロボットが不得意としていたダイナミックな運動を実現する研究.特に,スポーツ時に観測されるような投打走捕に関する技能の創出を目指します.
II. 動的操り:多指ハンドを利用して特定作業の自動化・高速化を実現する研究.特に,組立から検査までを対象とした多種多様なタスク/工程の遂行を目指します.
III. 衝撃完全制御:高速接触時に生じる撃力を抑制して,高速性と柔軟性を両立する研究.特に,バックドライバビリティに着目した新たな衝撃緩和技術の確立を目指します.妹尾 拓 准教授 Taku SENOO博士(情報理工学) -
生体骨を模倣した3Dプリント可能で力学的高機能な多孔質構造体
生体骨の持つ構造的な特徴と力学的な特性を基に、3Dプリント可能で力学的高機能な新しい多孔質構造体を開発。破壊の進展が抑制可能で、高い吸収エネルギ性が可能。等方的な力学特性も実現可能。樹脂や金属を用いて3Dプリンタにより製造可能。
研究の内容
規則的な構造の繰り返しを有する一般的な多孔質構造体には、内部構造に起因した特定方向の強度低下や一度破壊が生じると容易に破壊が進展するという力学的課題がある。本シーズでは、生体内環境に最適化された多孔質材料である生体骨(海綿骨)に着目し、海綿骨の構造的な特徴と力学的な特性に基づいて確率的に構築したネットワーク構造を骨格とする新しい多孔質構造体「海綿骨模倣構造」を開発した。樹脂や金属を用いて3Dプリンタにより製造可能であることを確認した。圧縮破壊試験の結果、特定方向の強度低下が抑制でき、初期破壊後の破壊進展が抑制され吸収エネルギが高いことを確認した。本シーズにより、設計自由度が高く力学的に高機能な多孔質構造が設計・製造できる。
山田 悟史 准教授 Satoshi Yamada博士(工学) -
相変化せずに蓄熱する固体蓄熱材
結晶構造の変化により蓄熱する固体蓄熱材
トランス-1,4-ポリブタジエンは、固体の結晶構造の変化により蓄熱する特徴があり、この蓄熱材を用いた蓄熱器には、蓄熱材を入れる容器が不要になります。トランス-1,4-ポリブタジエンを用いた蓄熱器の宇宙実証に世界で初めて成功しました。
研究の内容
超小型衛星の熱設計をしやすくすることを最終目標に、超小型衛星の熱制御に適した熱制御材として、結晶構造の変化により蓄熱する蓄熱材の開発を行っています。
多くの蓄熱材が固相-液相の相変化によって蓄熱しています。微小重力下での液相は、伝熱面との濡れ性が悪いと伝熱面に接触せず、熱伝達が著しく悪くなるという欠点があります。そこで、本研究では、固相-固相の結晶構造の変化により蓄熱するトランス-1,4-ポリブタジエンに注目しています。
開発された蓄熱器は、2014年6月20日に打ち上げられた超小型衛星HODOYOSHI4号機に搭載され、宇宙での性能実証試験が行われてきました。HODOYOSHI4号機のデータを解析したところ、蓄熱器が宇宙空間でも所定の温度で蓄熱・放熱していることが確認されました。戸谷 剛 教授 Tsuyoshi Totani博士(工学)工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 宇宙航空システム -
耐水性が高く透明な酸化グラフェン/抗菌・抗ウイルスコーティング
ナノカーボン材料の酸化グラフェンと,抗菌・抗ウイルス剤を複合化した,新しいコーティング法を開発しました。耐水性が高く,透明で基材の色に影響を与えないことから,水周り衛生に向けた新しいアプローチとして期待できます。
研究の内容
微生物は水の存在する湿潤環境を好むことから,手洗い設備等の抗菌・抗ウイルス性が強く求められています。しかし,これまで水周り環境に,簡便かつ長期的に安定して抗菌・抗ウイルス効果を得ることは出来ませんでした。酸化グラフェンは,厚さ約1nmのシート構造を持つナノカーボン材料で,多数の酸素官能基を有することから様々な分子やポリマーと強く相互作用します。この性質を利用して,基材の表面に酸化グラフェン超薄膜を強固に付着させ,さらに抗菌・抗ウイルス剤を結合させる新しいコーティング技術を開発しました。酸化グラフェン膜は透明で基材の色味を損なうことも無く,基材との結合も強いことから水で洗っても脱落しません。また水中で1か月間保管した場合でも,酸化グラフェン膜は剥離脱落することなく基材の表面に残存していることを確認しました。
宮治 裕史 教授 Hirofumi Miyaji博士(歯学) -
高温・空気中で安定した性能を示す実用的な熱電変換材料
再現性良く実用レベルの高性能を示す酸化物熱電材料
Ba1/3CoO2が、空気中・600℃においてZT ~0.55を示すことを発見しました。高温・空気中で再現性良く高性能を示す実用的な熱電変換材料がついに実現したと言えます。
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Ba1/3CoO2の結晶構造(左)と熱電変換性能指数ZTの温度依存性(右)
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層状コバルト酸化物AxCoO2(Ax = Na3/4、 Ca1/3、 Sr1/3、 Ba1/3)の熱安定性。(左)作製直後のAxCoO2薄膜の室温における電気抵抗率。Ba1/3CoO2の抵抗率は、約0.85 mΩ cm。(右)空気中・室温から650℃まで、50℃刻みで昇温し、各温度で30分間加熱した後、室温で計測したAxCoO2薄膜の電気抵抗率の加熱温度依存性。Ba1/3CoO2薄膜の室温における電気抵抗率は空気中・600℃加熱後も変化しなかった。
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層状コバルト酸化物AxCoO2(Ax = Na3/4、 Ca1/3、 Sr1/3、 Ba1/3)の空気中における熱電特性の温度依存性。Ba1/3CoO2薄膜の出力因子は温度上昇に対して増加し、600℃では約1.2 mW m−1K−2であった。一方、熱伝導率は温度上昇に対して減少し、600℃では約1.9 W m−1 K−1であった。その結果、性能指数ZTは温度上昇に対して増加し、600℃では約0.55に達した。
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Ba1/3CoO2薄膜の空気中、600℃における熱電能。(上)環境温度、(下)熱電能。Ba1/3CoO2薄膜の熱電能は、約2日間経過後においても130~140 μV K−1で安定している。
研究の内容
【背景】熱電変換は、廃熱を再資源化する技術として注目されています。いくつかの酸化物が実用材料PbTeの性能指数ZTを超える熱電材料になると提案されましたが、再現性がなく、実用化されることはありませんでした。当研究グループは、Ba1/3CoO2が室温においてZT ~0.11を示すことを発見しましたが、その高温特性は未解明のままでした。
【アプローチ】Ba1/3CoO2エピタキシャル薄膜を作製し、安定な加熱温度範囲を調べ、その温度範囲内における熱電特性を計測しました。
【結果】
・Ba1/3CoO2が空気中・600℃においてZT = 0.55を示すことを発見。
・実用化された非酸化物熱電変換材料の性能に匹敵する高いZT。
・高温・空気中で再現性良く安定した高性能を発揮。太田 裕道 教授 電子科学研究所 副所長 Hiromichi Ohta博士(工学) -
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生体成分の代謝と未病
生体成分の代謝を考慮した非感染性病態発症機構の解明:食品の機能性評価系としての応用
生体成分(胆汁酸やミネラルなど)の代謝解析を基盤として、各種疾患の発症機構解明と実験動物を用いた未病モデルの確立に関する研究を行っています。食を介する疾患発症予防の作用点解明を目指しています。
研究の内容
加齢と摂取ネルギー過多により肝臓で合成される胆汁酸の内訳は変動し、その状態での胆汁酸の組成・濃度は概ね特定されます。したがって、特定の胆汁酸を実験動物にごく少量与えることで、この状況での胆汁酸環境を模倣した状態を構築することができます。その結果、脂肪肝や関連病態が生じることを見つけました。また、亜鉛の軽度欠乏が潰瘍性大腸炎の未病モデルとなることを見出しました。これらのことは、食生活の偏り(過剰・不足)により継続的に生ずる軽微な代謝変化が感染性・非感染性疾患の発症に関与すること、食事成分の制御で当該状況を模倣した実験系自体が「未病」のモデルとなり得ることを示しています。現在、各種未病モデルの構築を行うとともに、それらの発症メカニズム解析を実施しています。さらに、これらの系を用いて食品の機能性評価を行なっています。
石塚 敏 教授 Satoshi Ishizuka博士(農学) -
撹乱地の生態系復元
自然・人為により撹乱を受けた生態系をファシリテーションすることでエコフレンドリーな復元を図る
ファシリテーションとは、ある植物の定着が他種の侵入定着を促進する現象を指す。噴火・火災・津波・採掘等の大撹乱により壊滅的被害を被った生態系において、そのようなファシリテータを検出し導入することで迅速かつエコフレンドリーな生態系復元を図る。
研究の内容
大規模撹乱後の生態系復元は急務であることが多いが、撹乱後の劣悪な環境では、なかなか目的とする植物の定着が進まないことが多かった。ファシリテータとは、その種が定着することで他種の定着を促進する効果のある植物種のことを指す。各撹乱地において、ファシリテータを検出し、それらの種を導入することで目的とする種の侵入定着が促進できれば、生態系復元は安価かつ迅速化でき、人為も軽微となるため、エコフレンドリーな生態系復元技術となる。
これまで、サロベツ湿原泥炭採掘跡地ではミカヅキグサが、渡島駒ヶ岳ではミネヤナギが、ファシリテータとして機能していることを明らかとしており、さらに、ファシリテータ導入手法として、微地形改変が有効であることを明らかとしている。露﨑 史朗 名誉教授 Shiro Tsuyuzaki理学博士 -
ナノ知識探索プロジェクト
ナノ結晶デバイスの実験記録からの知識発見
本研究では、ナノ結晶デバイスの研究開発の過程で作成される実験記録やその成果を取りまとめた論文などから、デバイス開発に有用な情報を抽出し、整理する知識マネージメントの研究を行っています。
研究の内容
本発表では、実際のナノ結晶デバイス開発の研究者からのインタビューに基づいた、実験記録管理システムを提案しています。本システムでは、これまで別々に保存記録されていた実験に用いていたパラメータの記録と、その結果である実験記録を統合的に管理する方法を提案しています。また、最終的な実験のまとめである論文からの情報抽出を行うことにより、研究者によって行われる一連の実験の目的や特徴などを詳細に分析し、様々な事例間の類似性などを議論するための基盤として活用する方法を提案しています。本手法では、少数の手作業で作成した情報抽出のためのコーパスに、機械学習の方法を用いることにより、未知の論文に対し、有用な情報抽出を行うための方法を提案しています。
吉岡 真治 教授 Masaharu Yoshioka博士(工学) -
独創的糖鎖誘導体ライブラリの作成技術 × どこでも使用可能なマイクロアレイ解析システム
糖鎖自動合成技術を活用した独創的ライブラリ × オンサイト医療や研究を支えるマイクロアレイ技術
糖鎖関連相互作用は感染症やがん診断等において重要な標的である。糖鎖自動合成技術開発の過程で構築・蓄積した糖鎖、複合糖質、糖質関連阻害剤、およびその誘導体ライブラリの活用法としてどこでも利用可能なマイクロアレイ装置の開発を行った。
研究の内容
マイクロアレイ技術は構造や配列が明確な多数の化合物ライブラリと検体成分との相互作用を一斉比較解析可能な技術です。また、我々は糖鎖自動合成技術を核とした独自糖質化合物ライブラリをマイクロアレイ解析用分子として設計・制作するための最先端技術を有しています。糖質が有する相互作用情報は、血液型やO157等の血清型、がん診断マーカー(CA○○○)など、体外診断用バイオマーカーとして幅広く使用されています。さらに、感染症の変異に伴う感染パターン解析やワクチン効果の詳細な解析など、検体収取とマイクロアレイ解析をスマートホンを端末としてその場で行い、オンライン診断に使用可能な独立電源型モバイル解析装置の開発に成功しました。
比能 洋 教授 次世代物質生命科学研究センター 副センター長 Hiroshi Hinou博士(工学) -
糖タンパク質から直接糖鎖パターンを解析する技術
~【世界初】前処理不要の糖鎖選択的イオン化技術~ (北大単独出願、単独発明者技術です)
糖タンパク質や体液のような複雑な高分子や混合物中の糖鎖成分をMALDI法により選択的にイオン化する世界初の質量分析技術を発見しました。この技術は卵白や体液のような複雑な混合物中の糖鎖成分の直接解析にも利用可能であることも実証しました。
研究の内容
糖タンパク質上の糖鎖パターンはそのタンパク質の体内動態を決定する因子であり、重要なバイオマーカーです。これまで糖鎖パターン解析には糖鎖の切り出し、化学修飾、精製等の煩雑な操作が必要でした。質量分析は微量の生体分子を直接イオン化可能な超高感度高分解能分析技術です。しかし、糖タンパク質のような複合糖質や体液のような複雑な高分子や混合物中の糖鎖成分を選択的にイオン化する方法が存在していなかったため、先述の煩雑な前処理を必要としていました。我々は世界初の複合糖質糖鎖成分の選択的開裂と選択的イオン化を同時に達成し、糖タンパク質上の糖鎖パターンの直接解析に成功しました。また、この技術により卵白など複雑な混合物中の糖鎖パターンも直接解析可能となることを実証しました。
比能 洋 教授 次世代物質生命科学研究センター 副センター長 Hiroshi Hinou博士(工学) -
ナノ微粒子を用いる炭素資源由来の窒素の無害化除去
Fuel窒素の事前除去と高温ガス精製へのナノ微粒子の利用
地球環境に調和した炭素資源の高度利用法の原理確立は、次世代に向けて最重要な研究テーマの一つである。本研究では、ナノスケールの金属・金属酸化物微粒子を用い、炭素資源をクリーンエネルギーに効率よく変換できる触媒プロセスの開発を目指している。
研究の内容
炭素資源中の窒素(Fuel-N)は燃焼時にNOxやN2Oとして排出され、また、高温ガス化では主にNH3に変化し後段のガス燃焼時のNOxソースとなる。本研究では、燃焼やガス化の前段の熱分解過程においてFuel-Nを無害なN2に変換する方法の開発に取り組み、イオン交換法で担持したCaイオンは熱分解時にCaOナノ粒子に変化し、N2生成に触媒作用を示すことを見出した。
また、褐炭中に元々含まれるFeイオンや褐鉄鉱中に多く存在するFeOOHは加熱過程で容易に金属鉄ナノ粒子となり、この触媒上でNH3、ピリジン、ピロールの分解反応を行うと、N2が選択的に生成することを見出した。このような含N種は石炭ガス化で生成する粗ガス中に含まれるので、これらの化合物の除去を目的とした新しい高温ガス精製法の開発への展開を図っている。坪内 直人 准教授 Naoto Tsubouchi博士(工学) -
社会実装に到達するマルチメディア人工知能技術
産学連携研究を通してAI技術の実用化に迫る!
本研究では、画像・映像・音楽・音声を中心とするマルチメディアデータを対象とした人工知能技術の開発を行っています。特に、産学連携研究を中心として、医用画像、社会インフラデータ、材料科学等に関わるデータを研究対象として扱っています。
研究の内容
我々は、世界最先端の人工知能研究だけでなく、融合領域研究を推進し、実社会の課題解決に挑戦しています。具体的に、医用画像研究では国内の多数の医療機関と連携し、人間の診断精度を超えるAI技術を構築しました。また、医療・土木の研究では、AI研究の課題でもある少量データ学習を可能にするだけでなく、判定結果を説明可能にするExplainable AI (XAI)を構築し、実際の現場で利用可能な技術の実現を行っています。また、近年では、人間の脳活動データや視線データ等、人間の興味や関心に強く関連する情報をAIの学習過程に導入することで、人間のように判断可能なヒューマンセントリックAI技術の構築を行っています。
小川 貴弘 教授 Takahiro Ogawa博士(情報科学) -
高速超親水および滑落性制御型超撥水・超撥油表面の構築
水が油が、よく濡れる、すぐ滑り落ちる、よくくっつく
高速で水が濡れ広がる超親水や、水・油をとてもよく弾くけれども表面に吸着していたり、簡単に滑り落ちたりと、滑落性を簡単に制御できる超撥水・超撥油表面を創り出す方法についてご紹介します。
研究の内容
アノード酸化(陽極酸化)は、金属の表面にさまざまなナノ構造をもつ酸化物を形成する手法です。新規な電解質化学種を用いたアノード酸化により、sub-10 nm(10 nm以下)の直径をもつナノファイバー酸化物を大量に形成する手法を開発しました。ナノファイバーの生成密度は、1 cm2あたり1010本(100億本)オーダーと極めて高密度です。このような高密度ナノファイバーを形成した金属表面が、1秒以下の高速の超親水性や滑落性制御型の超撥水性・超撥油性を発現することを見いだしました。微細パターニング技術を用いて濡れ性の異なる表面を混在させることもできます。
菊地 竜也 教授 Tatsuya Kikuchi博士(工学) -
独自の機能性脂質の開発を基盤としたin vivo核酸送達システム
世界トップクラスの核酸導入能と安全性の両立
siRNAの安全かつ効率的なin vivo送達を実現する独自の機能性脂質群を開発した。本脂質を含む脂質ナノ粒子は優れたエンドソーム脱出能力に起因する肝細胞への世界トップクラスのsiRNA導入効率および生分解性に起因する高い安全性を示した。
研究の内容
siRNAの実用化には優れた送達技術の開発がカギであるが、その送達効率には大きな伸びしろが残されている。また、実用性の観点では広い安全治療域を確保することも重要となる。さらに、特定の用途に限定されず、目的に応じた適切な製剤を提供可能なプラットフォーム技術の開発が強く望まれる。それらの実現のため、独自のpH感受性カチオン性脂質群を開発した。脂質ナノ粒子の体内動態に重要な因子である酸乖離定数の調節を実現し、標的に応じた分子設計を可能とした。また、新規脂質CL4H6を含む脂質ナノ粒子は肝細胞において世界トップクラスの効率で遺伝子発現抑制を誘導した。また、50%抑制投与量の約3,000倍もの投与量においても顕著な肝毒性は認められず、高い安全性が確認された。CL4H6はsiRNA送達後に速やかに分解除去された。
佐藤 悠介 准教授 Yusuke Sato博士(生命科学) -
光触媒結晶性酸化チタン薄膜の超高速成膜
高温熱処理不要な超高速電解成膜技術
結晶性酸化チタンは光触媒として実用的に重要な酸化物です。一般に高温での熱処理を必要とする結晶性二酸化チタン薄膜を,水溶液中の電解成膜法を用いてわずか数秒以内に各種金属基板上に製膜する技術を開発しました。
研究の内容
Al,Zn,Fe,Cuなどの実用金属基板上にTiF62-を含む水溶液からわずか数秒の電解により酸化チタン薄膜を得ることに成功しました。得られた酸化チタン薄膜はアナターゼ結晶性であり,熱処理することなく,光触媒活性を示します。表面の有機物をUV照射で分解し,超親水化するなどの優れた特性を確認しています。この酸化チタン膜には基板元素がドープされることから可視光応答性などの新たな機能発現も期待できます。透明導電膜などへの成膜も可能です。
幅﨑 浩樹 教授 Hiroki Habazaki理学博士 -
先端研究基盤共用促進事業(先端研究設備プラットフォームプログラム)
顕微イメージングソリューション プラットフォーム
共用機器管理センターに設置している”同位体顕微鏡システム”を産学官共用に推進拡大する
研究の内容
”同位体顕微鏡システム”の特質である「安定同位元素イメージング技術」を有効活用する利用課題を募集、選定、実施することにより産業イノベーションへの展開を図ります。
同位元素というと、すぐに年代測定が思い浮かびます。事実、これまで同位体顕微鏡システムは主に鉱物など宇宙科学の分野で、同位体比の分析に使われてきました。これは、入手した試料の断面の「ありのまま」を観察して得られる成果です。その測定手法の発想を変えることで、同位体顕微鏡システムを産業応用に展開できます。すなわち、「ありのまま」を観るのではなく、積極的に同位体元素を調べたい試料に「ドープ」することで、今まで見ることができなかった目的のイメージングを測定することが可能になります。しかも、放射性同位体ではなく、安定性同位体を使って安全に作業することができます。圦本 尚義 教授 Hisayoshi Yurimoto理学博士 -
ガバナンスの理論と実践を踏まえた
行政システムの設計・構築官民協働による安全・安心な地域・社会づくり
安全・環境規制や科学技術政策、地方創生などの事例研究を踏まえ、様々な「技術」の社会導入・普及に係る政策問題の解決に資する行政システムを利害関係者の「協働」により構築していく手法について、ガバナンスの理論と実践の観点から研究しています。
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2016年5月刊行の私の規制研究の成果です(ISBN: 9784000611213)。規制基準の国際調和化、技術情報の分散化、官民関係の多元化が進む中、規制行政機関はどのようにして自らの裁量を確保しようとしているか。国内外に広がる「規制空間」の構造は、それによりどのように変容しているか。木造建築、軽自動車、電気用品の安全に関する技術基準の設定、規制の実施過程を素材に分析しました。
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2016年4月刊行のこの論文集(ISBN: 9784832968257)には、2001年の中央省庁等改革における科学技術の省庁再編の研究成果が掲載されました。旧科学技術庁は、その一部が内閣府に引き継がれ、一部が旧文部省と統合されて文部科学省となりましたが、科学技術・イノベーション政策の「司令塔機能強化」が実現するかどうかは、今後の運用次第です。
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2018年7月刊行の地方創生に関する共同研究の成果です(ISBN: 9784000238953)。私はまず、北海道と四国の政策担当者への聞き取り調査の結果から、地方創生に地方分権と中央集権の両側面があったことを論じました。その上で、戦後日本の国土政策(東京一極集中の是正)と内閣主導の地方創生の推進体制などを比較することにより、今後の地方創生のあり方を検討しました。
研究の内容
「技術」は、地域・社会に大きな便益をもたらす反面、様々なリスクを孕んでもいます。したがって、そうした「技術」を社会に導入し普及させていく際には、そのリスクを軽減する行政システムを設計して、その社会的便益を最大化できる公共政策のあり方を考えていく必要があります。
そうした公共政策について抱くイメージは、例えば自動車の事例でもメーカー、規制当局、そして我々ユーザーといった利害関係者で異なっていることが多く、また、規制は国際基準によって規定されていたりもします。
そうした中で、「技術」の社会導入・普及の政策問題を丁寧に抽出してその全体像を俯瞰し、利害関係者が折り合える点を模索し、合意形成を図っていくとともに、官・民が手を携えて行政システムを構築し運営していく手法を考えます。村上 裕一 教授 Yuichi Murakami博士(法学) -
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小型電子加速器中性子源を用いた
通信機器のソフトエラー試験宇宙線に起因する通信機器の誤動作を未然に防ぐ
通信ネットワークを支える機器の半導体デバイスの高集積化が進展してきており、宇宙線中性子によるソフトエラーの確率が高まることが懸念されている。その対策のため、北大の小型加速器中性子源を利用して、通信機器のソフトエラー試験を実施している。
研究の内容
通信機器の大容量化・高機能化に伴い、半導体デバイスの高集積化が進んでいる。しかし、宇宙線中性子によって、ビット情報が反転し動作が混乱するソフトエラーの増加が懸念されている。そこでNTTと共同で、小型電子加速器駆動中性子源によりソフトエラーを再現させ、トラブルに対して事前に対策技術を開発できる場を提供できるようにした。これにより、故障発生率を事前に予測できるようになると共に、エラー検出や運用対処の確認が可能となり、機器の信頼性の向上につなげられる。
本技術の特徴は「小型加速器中性子源」の活用である。従来は大規模加速器中性子源が必要とされてきたため、試験時間や実験スペースの十分な確保は困難であった。しかし本学における研究により、中性子強度が自然界の約数百万倍の施設でも、十分な試験が可能であることを実証した。佐藤 博隆 准教授 Hirotaka Sato博士(工学) -
革新的なアルマイトの創製と機能発現
表面が変われば、全てが変わる
アルミニウムの耐食性不働態皮膜として極めて有名な「アルマイト」を革新し、アルミニウムに優れた特性や新しい機能を発現する研究をご紹介します。
研究の内容
「アルマイト」とはアルミニウム表面に形成された人工的な不働態皮膜のことであり、およそ100年前に日本で開発されました。私たちの身の回りにはたくさんのアルマイト製品がありますが、私たちの研究グループではアルミニウム表面にアルマイトを形成するための化学物質や形成手法(陽極酸化)を一から見直し、優れた特性や革新的な機能を発現する新しいアルマイト形成法の開発に挑んでいます。具体的には、とても規則的なナノ構造をもつアルマイト、ビッカース硬度Hv = 600以上の硬いアルマイト、酸・塩基性環境や塩化物環境においても高い耐食性をもつアルマイト、ルミネッセンスや構造色を生じて美しく光るアルマイトなどです。
菊地 竜也 教授 Tatsuya Kikuchi博士(工学) -
燃焼機器で生じる音響振動解析
燃焼装置や燃焼ガス排気系統でしばしば音響振動が生じ、騒音の発生や燃焼措置の寿命低下を引き起こす。これは、燃焼装置や排気系統で生じる発熱変動と音響圧力変動が連動することより生じる。本研究は、この物理過程の解析とその抑制技術の検討を行っている。
研究の内容
燃焼装置や燃焼ガス排気系統でしばしば音響振動が生じ、騒音の発生や燃焼措置の寿命を低下につながる。これは、燃焼装置や排気系統で生じる発熱変動と音響圧力変動が連動することより生じるが、これが生じる物理過程の解析と抑制技術の検討を行っている。研究の手法としては、単一の円管内に可燃性ガスを封入しその一端に着火させ火炎が管内を伝播する際に生じる音響振動現象を用いる。この伝播現象に種々の境界条件(開放端条件・伝播方向・混合ガス組成・伝播管直径と長さ・火炎面の構造等)を与え、音響振動現象を引き起こした上で、その要因を燃焼の不安定性解析手法により理解する。ここで再現された振動現象は単純化された系で観察されるものであるが一般性のある現象であり、実際の燃焼機器や排気系統で生じる音響振動現象の理解に直接つながるものである。
藤田 修 特任教授 Osamu Fujita工学博士 -
微小重力場を利用した燃焼現象解明
燃焼現象は局所的な温度上昇を伴うことから周辺に常に自然対流が生じる。このことが現象を複雑化し、その基本的理解を難しくしている。本研究では微小重力環境を活用することで、自然対流を取り除き燃焼現象を基本的立場から理解しようとするものである。
研究の内容
燃焼現象は局所的な温度上昇を伴うことから周辺に自然対流が常に生じる。このことが現象を複雑化し、その基本的理解を難しくしている。本研究では微小重力環境を活用することで、自然対流を取り除き燃焼現象に含まれる基礎的過程(拡散・熱伝導・すす生成・着火・火炎伝播等)を理解し、このような現象が介在する燃焼装置や燃焼現象の数値予測やモデリングに役立てていこうとするものである。北海道大学には常時利用可能な40m級の大型落下塔があり、微小重力実験を容易に実施可能な環境にある。また、国際共同研究による航空機を用いた微小重力実験や国際宇宙ステーションによる実験も進めており、微小重力場を利用した燃焼研究を行う上で恵まれた環境にある。
藤田 修 特任教授 Osamu Fujita工学博士 -
ストレスによる病気の治療薬とバイオマーカーの開発
「病は気から」の分子機構に迫る分子心理免疫学
過労、不眠による突然死など社会的に広く問題となっている慢性的なストレスが、特定の神経回路の活性化を介して臓器障害と突然死をマウスに誘導する分子機構を明らかにしました。この系を利用して、ストレスに起因する病気の治療標的を探索できます。
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慢性ストレス負荷により室傍核(PVN)での交感神経が活性化(①)し,第3脳室,視床,海馬の境界部にある特定血管においてケモカインというタンパク質が産生され,血液内に存在する中枢神経系抗原を認識する自己反応性免疫細胞が血液脳関門を超えてこの特定血管周囲に集まり、微小炎症が誘導される。これが契機となり、新たな神経回路(②から⑤)が活性化し、胃・十二指腸を含む上部消化管での炎症が誘導されることで、心臓の機能不全により突然死が起こる。今回の研究による新たなブレークスルーは、「脳の特定血管での微小炎症が、新たな神経回路の活性化を誘導することで末梢臓器の機能障害が誘導されること」が明らかとなった点であり、ストレスゲートウェイ反射と呼んでいる。すでに様々な薬剤がこの実験系でテストされていて、消化管出血と突然死を防止する薬剤とその作用部位の例を示す。
ストレスにて脳内特定血管で発現上昇する遺伝子群をすでに同定しており、その中で6つの遺伝子(C2CD4D、VSTM2L、VSTM2A、TMEM5、LY6G6C、ADRA2C)は、抗体を使った抑制によってストレス後の突然死が抑制された。
研究の内容
私たちは、ストレスと病気の関連を研究しています。最近、慢性ストレスを加えたマウスに中枢神経抗原に対する自己反応性T細胞を移入すると、マウスが突然死しました。死因は、ヒトと同様に胃・十二指腸の出血による心不全が原因でした。ストレス特異的な神経回路活性化にて脳内の特定血管に移入T細胞などが集まり微小炎症が誘導され、これを起点に活性化する新たな神経回路がこの胃腸障害・心不全を引き起こしました。これまで、分子機構が解明されているストレスの動物モデルは無く、本モデルは、ストレスに起因する病気の新たな薬剤のスクリーニングに有用です。さらに、この系を用いて、ストレス時に脳内特定血管で発現上昇する分子群を同定し、それら分子に対する抗体が突然死を抑制しました。また、現在、ヒトでも自己反応性T細胞のマーカー候補を同定しています。
村上 正晃 教授 Masaaki Murakami医学博士 -
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組織の内部コミュニケーションに関する研究
リスクと戦略系におけるコミュニケーション
経営組織の内部で形成されるリスクコミュニケーションに関心があります。「リスク」は「純粋リスク」と「動態的リスク」に大別されますが、これらの要素がどのように組織内でコミュニケーションを形成し、個人や集団の行動を規定するのかを検討しています。
研究の内容
私の研究目的は、まずは組織の内部で形成される固有のコミュニケーション現象を突き止めることにあります。「純粋リスク」では、特に製品事故における対内的/対外的な組織広報のあり方や、危険物取扱組織における対内的リスクコミュニケーションのあり方を模索しましたが、ここ暫くは、「動態的リスク」を重点的に扱ってきました。組織の中で創出/攪乱・拡散/構造化するコミュニケーションを観察し、そのひとつひとつに、組織にとっての、何らかの、「意味/価値のまとまり」を見つけることが、斬新な組織戦略を導くと考えており、研究の独自性や特徴はそこにあると考えております。この点について、最近は社会的組織(例:写真)がどのような意図を持って組織化されていくのかも検討しております。
辻本 篤 教授 Atsushi Tsujimoto社会学修士 -
未修飾シアリル化糖鎖および複合糖質の高感度・高分解能構造解析を実現するMALDIマトリックス
シアル酸のカルボン酸部位を修飾することなく、シアリル化糖鎖及び複合糖質をイオン化し、シアル酸残基が脱離することなく高感度かつ高分解能(リフレクターモード)で解析可能なマトリックスを開発した
研究の内容
糖鎖および複合糖質のシアリル化(シアル酸の付加)は発生、分化、疾患、感染、免疫等の様々な生命現象に関与する重要なバイオマーカーである。MALDI(マトリクス支援レーザー脱離イオン化)法は簡便かつ高感度なソフトイオン化法であるが、未修飾のシアル酸を有する糖鎖はイオン化効率が低く、さらにシアル酸の開裂等によりスペクトルが複雑化するという問題が存在する。本技術では、従来のマトリックスに対する添加系を改良することにより、一切の修飾工程を経ることなくシアリル化糖鎖及び複合糖質を、シアル酸の脱離を抑制した状態で高感度・高分解能測定に成功した。開裂パターン変化と高感度化に伴い、TOF/TOF解析や疑似MS3解析等も超微量サンプルで実施可能となった。本法は化学修飾と分離工程が不要であり、反応追跡や迅速検体解析が可能となる。
比能 洋 教授 次世代物質生命科学研究センター 副センター長 Hiroshi Hinou博士(工学) -
バイオマス由来の環境にやさしい海洋生物付着防止化合物
フジツボなどに対する有害な海洋生物付着阻害剤が海洋環境汚染の原因となっており、安全な代替品開発が求められている。私たちは、バイオマス由来の化合物を合成することで強力かつ低毒性化合物の創出に成功している。更なる最適化も可能である。
研究の内容
人類の海洋利用(船舶や発電所の冷却管など)は不可欠であるが、フジツボなどの付着生物によって船舶の燃費悪化や詰まりなどの機能低下を引き起こされる。機能低下を防止するために、有機スズ化合物が使用されてきたが毒性のため使用が禁止され、代替品の開発が望まれている。私たちは、ウミウシなどの海洋生物が他の生物の付着から防御するために用いる化合物に着目している。化合物の合成の結果、付着防止に重要な官能基(付着防止ユニット)を見出した。この官能基を安価な海洋生物由来のバイオマスに短工程で導入し、合成品の付着阻害試験(タテジマフジツボのキプリス幼生)を行ったところ、非常に強い付着阻害活性と極めて弱い毒性を併せ持つことを見出した。現在、類似化合物の合成や更なる機能を付与する研究を展開している。
梅澤 大樹 准教授 Taiki Umezawa博士(理学) -
クラウド版地中熱ヒートポンプ設計・性能予測プログラム
”Web Ground Club”と日本全国3次元グリッド地層データベース複層地盤や地下水流れ効果、冷却塔の付帯も計算できる
10 年程前に地中熱ヒートポンプシステム(GSHP)設計・性能予測ツールGround Club(GC)を開発し,約150 本頒布.現在,クラウド対応の進化版ツールGCCを試用公開.日本全国 3 次元地層物性データベースを構築,GCCに搭載.
長野 克則 教授 Katsunori Nagano博士(工学) -
バイオ材料で作ったマイクロ・ナノパターン
生体構造を模倣したバイオ系マイクロ・ナノパターンで
細胞培養ツールや組織再生へ応用を目指すコラーゲンなどのバイオ材料や歯科材料を用いて、生体構造を模倣したマイクロ・ナノパターンを作製しています。パターン形状や材質の種類により細胞機能向上へと繋がります。新しい可能性を追求しながら細胞培養ツールや歯周組織再生への応用を目指します。
研究の内容
本研究ではナノインプリント法を利用し典型的なバイオマテリアルをパターン化しています。設計したマイクロ・ナノスケールの形状により細胞機能を制御し、新規細胞培養ツールや組織再生へと繋げたいと考えています。
●従来技術との比較: これまで例が少ないバイオ材料にて規則正しいパターンを作製することに特徴があり、新しい機能発現が期待されます。 (*従来:不規則・平面or工業的プラスチック)
●効果: 平面よりもパターン化により細胞付着数や伸展度合が大幅に向上します。溝形状では細胞を簡単に配列させることができます。それにより、細胞外マトリックス(ECM)の3D構築にも繋がります。
●今後: パターン化材料を平面だけでなく2.5次元、3次元へ展開し、さらに階層化することにより、生体に近い構造を持つ組織再生を目指します。赤坂 司 准教授 Tsukasa Akasaka工学博士 -
遺伝子情報の機械学習による分類
細胞の受容体と化合物の結合予測
細胞の表面の様々な受容体は恒常性の維持や環境応答に重要な役割を果たしていますが、結合しうる化合物を明らかにするのは難しいとされています。機械学習によって結合化合物の候補を絞る方法を提案しています。
研究の内容
ヒトゲノムが解読され、遺伝子の多くが解明されつつありますが、恒常性維持や環境応答に重要な役割を果たす受容体は、多くが膜タンパク質であり発現量も少ないことなどから、構造や機能の解明がなかなか進んでいません。一方、受容体の多くはその機能的な側面から、これからの創薬の主要ターゲットと期待されており、個人差を生み出す要因であると考えられます。受容体に結合しうる化合物を効率よく絞り込むため、機械学習技術を応用しています。
遠藤 俊徳 教授 Toshinori Endo博士(理学) -
ソノポレーション:超音波と微小気泡を用いた新しい薬物送達手法の開発
細胞レベルでの組織標的能を実現
我々は,直径数ミクロンの微小気泡を細胞に付着させた状態でパルス超音波を照射することにより細胞膜の膜透過性を一時的に向上できることを世界に先駆けて明らかにし、生体への薬物・遺伝子送達の実現を目指した研究を推進している.
研究の内容
○微小気泡とパルス超音波を用いた音響穿孔法(ソノポレーション): 微小気泡が細胞膜に接触した状態でパルス超音波を照射すると、付着部位にのみ一時的穿孔を生じる(図1)。微小気泡に薬剤や遺伝子を付加し、光ピンセットで付着位置を制御することにより、目的とする細胞の任意の位置に薬剤や遺伝子を導入する手法を実現。
○治療部位の特定と薬物送達を微小気泡と超音波診断装置で実現: 治療対象の細胞にのみ付着する標的機能を有する気泡を静脈から注射する。気泡が集積した組織を超音波造影法により検出することで治療対象部位を特定する。続いて気泡を壊すパルス超音波を発生し、細胞に一時的な細胞膜穿孔を生じさせ、薬物等の送達を実現する(図2)。気泡に薬剤や遺伝子などを付加することで、ターゲット細胞にのみ高効率な薬物送達が実現できる。工藤 信樹 学術研究員 Nobuki Kudo工学博士 -
柔軟かつ強靱なゲル
福祉時代の新素材
人間生活の質の向上が求められる時代において、材料はどうあるべきか。その回答がダブルネットワークゲルをはじめとする強靭なゲルである。強靭ゲルは医療機器・生体組織代替物・生体模倣物の“質”を大きく変革する。
研究の内容
従来、軟材料といえばエラストマーが広く用いられてきているが、生体との接点あるいは代替として利用する場面では含水性が決定的に重要な要素となる。含水材料は水の物性を強く反映するため、熱の伝わり方が生き物らしい・電磁波の吸収特性が生体に近い・表面の摩擦が非常に低いなど、生体組織にとてもよく似た物性を示す。含水性軟材料といえばゲルであるが、従来のゲルは機械的強度が低く応用が制限されていた。我々は含水率が90%でありながらトラックが乗っても壊れない高強靭性ダブルネットワーク(DN)ゲルの開発に成功し、ゲルの応用の可能性を大きく広げた。また、DNゲルの強靭性を解明していく中で、「犠牲結合原理」を見出し、様々な材料を強靭化するコンセプトに到達することができた。近年DNゲル以外の様々なタイプの強靭ゲルを開発している。
グン 剣萍 教授 Jian Ping Gong理学博士・工学博士 -
動物の難治性疾病に対する新規制御法の開発
家畜・伴侶動物の慢性感染症や腫瘍に対する
抗体医薬・タンパク質製剤による免疫療法の開発難治性疾病では、生体内で病原体や腫瘍の排除機序が妨げられています。これは種々の免疫抑制因子が、免疫細胞を疲弊化させるためだと考えられています。本研究は免疫回避機構を標的とした製剤を開発し、動物の疾病の新規治療法として応用するものです。
研究の内容
研究目的: PD-1をはじめとする免疫抑制因子を標的とする動物用抗体医薬やタンパク質製剤の作製と治療法への応用。従来技術との比較・優位性:本アプローチは特定の疾病を対象とするものではなく、免疫抑制機序によって抗病原体・抗腫瘍効果が失われている疾患を広く対象とします。リンパ球を標的とした免疫療法ですので多機能的な免疫増強効果が期待されます。研究の独自性:獣医畜産領域において本アプローチに関する論文や臨床応用例の報告は未だありません。特徴:各抗体を樹立し、キメラ抗体として改変することで大量生成を行います。効果:有効なワクチンや治療法がない家畜(ウシ・ブタなど)や伴侶動物(イヌ・ネコなど)の疾病に対する新規治療法の提供を目指します。
今内 覚 教授 Satoru Konnai獣医学博士 -
合成高分子ゲルを用いた癌幹細胞標的
プレシジョンメディシンの確立ハイドロゲルによる癌幹細胞への初期化方法の開発
癌の根治には癌幹細胞の根絶が重要です。本法では、北大オリジナルバイオマテリアル(合成高分子ハイドロゲル)を用いて癌幹細胞へのリプログラミング(初期化)を迅速且つ効率的に誘導、癌幹細胞の性状や再発時の治療反応性を予測することを可能としました。
研究の内容
がんの根治には治療抵抗性を示すがん幹細胞の根絶が必須ですが、その数は少なく、従来法では癌幹細胞の分離や性状解析は困難でありました。本研究は、北大オリジナル開発合成高分子ハイドロゲル(Science 344, 161-162, 2014)を用いて、迅速・簡便・低コスト・効率的に癌幹細胞のリプログラミング (初期化)を誘導、癌幹細胞の性状解析や治療反応性の評価、再発時の癌細胞の性状予測を可能にしました。本技術を用いることによって、癌幹細胞を標的とした薬剤スクリーニングを実施でき、将来的に発生の可能性がある再発腫瘍の性質を予測し、予防的治療薬を投与することで、癌患者に適確な癌幹細胞標的プレシジョンメディシン(予防先制医療)を提供できるようになることが期待されます。
田中 伸哉 教授 Shinya Tanaka医学博士 -
腸内環境評価による食の新機能解明と応用
食と医薬の新たな腸内環境評価系開発
食素材・成分と、寄生体である腸内細菌、宿主のPaneth細胞αディフェンシンの三者が「腸内環境」を決定し、そのクロストークが健康維持と疾病に関与するという新しいパラダイムに基づく腸内環境評価系を構築して、食の機能性を解明し疾病予防に繋げる。
研究の内容
食素材・成分と、寄生体である腸内細菌、宿主のPaneth細胞αディフェンシンの三者が「腸内環境」を決定し、そのクロストークが健康維持と疾病に関与するという、われわれの提唱した独創的な「腸内環境」の定義は、食の機能性にパラダイムシフトを興している。本研究は、αディフェンシンの健康維持、疾病発症及び病態形成への関与を明らかにすると共に、食の新規機能性評価系を構築して腸内環境の国際的評価基準を確立することを目的とする。組織培養系とαディフェンシン定量系を組み合わせて腸内環境評価系を構築し、未だメカニズムが分かっていない多彩な腸機能と食品機能との関係を体系的に解析する基盤を築く。食素材・成分や医薬品による免疫賦活および老化物質制御等の機能性をはじめて解明し、新たな科学的指標を得て、食に高い付加価値を創生する。
中村 公則 教授 Kiminori Nakamura歯学博士 -
非線形ラマン散乱内視鏡
非線形ラマン散乱を用いた神経の無染色可視化による新しい内視鏡下手術支援ロボットの眼の開発
ラマン散乱は、無染色に分子種・分子構造に関する知見が得られるが、非常に微弱なためにその利用は限られてきた。超短パルスレーザーを駆使した非線形ラマン散乱現象を利用して、リアルタイムにラマンイメージを観測可能な顕微鏡や内視鏡を開発している。
研究の内容
ラマン散乱は、無染色に分子種・分子構造に関する知見が得られるために、化学分析、物理化学研究、半導体物性研究等に用いられ、 近年になって生体観測への応用が盛んに行われるようになってきた。しかしながら、ラマン散乱は非常に微弱であるために、そのイメ ージをリアルタイム観測することは困難であった。波長可変同期ピコ秒レーザーを開発し、これを光源とした多焦点非線形ラマン散乱顕微鏡によって100 frame/sという、ビデオレートよりも高速なイメージングを実現した。また、直径12mm、全長550 mmの硬性鏡下で、神経を無染色、高速に可視化できることを示した。神経温存内視鏡下外科手術の新しい眼として期待できる。
橋本 守 教授 Mamoru Hashimoto博士(学術) -
腫瘍血管新生阻害剤スクリーニングシステム
腫瘍血管新生阻害剤開発のためのcell based screening assay システム
腫瘍血管内皮細胞を用いたcell-based screeningを実現する。現存の血管新生阻害剤における問題点 (副作用・コンパニオン診断薬がない)を克服し、次世代血管新生阻害療法開発につなげる。
研究の内容
分子標的治療薬の開発が進み、血管新生阻害剤が広く使用されるようになったが、治療効果を予測するコンパニオン診断薬が無いこと、正常血管への傷害による副作用といった問題もある。
我々はヒト腫瘍血管内皮細胞の分離培養に成功しており、それらが発現する特異マーカーを同定している。これらマーカーを発現している腫瘍血管内皮細胞は新規薬剤や化合物のcell-based screeningに有用な貴重なマテリアルである。従来の腫瘍細胞株や臨床腫瘍組織片を用いた研究では発見されない新しい治療の標的や、薬剤を同定することを可能とする。 さらにコンパニオン診断薬としてこれらの腫瘍血管内皮細胞が発現するマーカーを利用する事が可能となる。血管新生阻害剤の投与時期、期間、適応症例などを選別したうえでの個別化治療実現つなぐことを可能とする。樋田 京子 教授 Kyoko Hida歯学博士 -
ペプチド・糖ペプチド環化技術
水素結合制御によりペプチド環化効率を飛躍的に向上
溶媒の水素結合ネットワーク形成に着目した反応系を活用することによりペプチド環化反応の効率化と難溶性ペプチドの溶解度向上を高次元で両立することに成功した。創薬や分子ツール設計に応用可能である。
研究の内容
創薬等の生理活性化合物探索やライフサイエンスにおける分子ツール設計ににおいて環状ペプチドは、その配座安定性や配向性、対称性の制御などが容易であるため、理想的な基本分子となりうる。しかし、ペプチド環化は希薄条件や複雑な保護基戦略などを要していた。本研究では水素結合制御型溶媒システムと無塩基縮合剤システムを組み合わせることにより、難溶性のペプチド等でも高濃度条件下で効率的に環化できることを見出した。特殊な保護基戦略を必要としないことから応用範囲が広く、これまで様々な生理活性ペプチドや糖ペプチドの効率的環化に成功している。本技術を活用することにより、環状ペプチドの設計自由度と量産が容易となり、創薬やライフサイエンス用ツール開発が加速されることが期待される。
比能 洋 教授 次世代物質生命科学研究センター 副センター長 Hiroshi Hinou博士(工学) -
超偏極13C MRI遺伝子変異イメージング
代謝MRIにより腫瘍内の遺伝子変異を非侵襲的に可視化
癌治療の成果は、癌細胞の持つ遺伝子変異の種類に大きく左右される。遺伝子変異がもたらす特徴的な代謝変化を指標に、最新の代謝MRIを用いて非侵襲的に変異遺伝子を特定する分子イメージング技術を開発している。
研究の内容
・超偏極13C核磁気共鳴画像(MRI)は13C標識した任意の化合物のMRI信号を一時的に数万倍に増幅することで、その生体内における代謝反応をリアルタイムに可視化するMRIの最先端技術である。PET/CTのような放射線被曝を伴わず、光学イメージングでは困難な体深部からの信号の取得が可能な“夢の分子イメージング技術”として期待されている。
・細胞は遺伝子変異の蓄積により癌化し、変異の種類は癌治療への応答性を大きく左右する。癌化をもたらす遺伝子変異には特徴的な代謝変化を伴うものが多く、︎超偏極13C MRIにより特定の代謝変化を見ることで、非侵襲的に腫瘍内の変異遺伝子を推定することが可能となる。松元 慎吾 教授 Shingo Matsumoto薬学博士 -
ミトコンドリア標的型ナノカプセル (MITO-Porter)
ミトコンドリアに薬物・タンパク質・核酸を導入する技術
ミトコンドリアは疾患治療、美容・健康維持、ライフサイエンスの発展に貢献するオルガネラとして注目されています。私たちはミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)の開発に成功しており、本ナノカプセルの実用化を目指しています。
研究の内容
本研究のミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)は、細胞膜およびミトコンドリア膜を通過し目的分子をミトコンドリア内部に届ける事が可能です。機能素子を用いた従来技術では送達分子の大きさや種類を著しく制限しましたが、目的分子を封入するMITO-Porterを用いた戦略では分子種によらないミトコンドリア送達を実現します。
GFP(緑色)を内封したMITO-Porterを調製し、細胞内を蛍光顕微鏡観察したところ、ミトコンドリア(赤色)と重なり合った黄色のシグナルが多数観察される、ミトコンドリアへの効率的な分子送達を確認できました。また、既存の核酸導入試薬(核・細胞質を標的)では不可能であったミトコンドリアへの遺伝子・核酸導入にも成功しています。さらに、生体に適応可能なナノカプセルの開発も行っています。山田 勇磨 教授 Yuma Yamada博士(薬学) -
光複素振幅計測技術
光の空間位相情報を検出可能にする「見えないものを見るための技術」
本技術は、2台のセンサと偏光光学素子によって、空間補完誤差を生ずることなく1回の計測で光位相分布の精確な検出を可能にします。3D画像計測、3D断層計測、デジタル位相共役、3D光メモリ、空間モード光通信など多岐にわたる応用が期待されます。
研究の内容
ホログラフィックダイバーシティ干渉法では、複数のイメージセンサを偏光光学素子と組み合わせて配置することで、空間補完誤差を生ずることなく1回の計測で精確な光位相分布の検出を可能にします。これまでに、2台のイメージセンサによる干渉光学系の開発と計測アルゴリズムの大幅な改良を行い、高精度な位相計測を実現すると共に、計測された位相分布データを用いた3D情報処理を可能にしました。この技術は、3D光情報の取得やデジタル位相共役による光断層撮影、ならびに、3D光メモリに直接応用することができます。また、本研究では、信号光に空間フィルタリングを施した光を信号光と再干渉させる参照光不要型位相検出装置の開発にも成功しました。これにより、空間モードを用いた次世代超高速光通信システムやリモートセンシング分野への応用が期待されます。
岡本 淳 特任准教授 Atsushi Okamoto工学博士 -
コミュニケーションロボットシステム
対話の活性度を用いた社会空間認識システムおよび複数ロボットによる注意誘導システム
人同士の対話の活性度を計算することにより、ロボットはその対話空間の「強度」を認識することができ、文脈に適応した行動をとることができる。さらに、このメカニズムを複数ロボットの動作に応用することにより、ユーザの注意誘導が可能となる。
研究の内容
本研究の対話活性度計算システムでは、対話者間の距離、音声データ、身体動作などの情報を用いて、リアルタイムで活性度を計算する。この活性度を用いることにより、ロボットは対話空間に侵入してよいのか、対話を中断してよいのかを判断することができ、文脈適応的な行動をとることができる。さらに、複数のロボット同士の行動に対して、対話活性度を高めるような動作をさせることにより、ユーザの注意(視線など)を容易に誘導することができるようになる。このような対話活性度を用いたロボットの動作生成システムは、従来の社会的ロボットの研究にはなかったものであり、受付窓口のロボットや、家庭向けホームロボットにも応用可能である。
小野 哲雄 特任教授 Tetsuo Ono博士(情報科学) -
イベント情報推薦システム
イベント数週間前から開催日までにデータを収集して
適切にイベント情報を推薦するシステムイベントに関する情報は情報としての有効期間が短く、従来の情報推薦技術では扱いにくいものでしたが、ユーザの興味や地理的特性など複数の要因を組み合わせることで柔軟に推薦を行う手法を開発しました。
研究の内容
ユーザの過去の情報閲覧履歴から、どのようなジャンルや情報源を好むのかを推定し、また興味の似通ったユーザの閲覧傾向を参考にしながら、対象ユーザが興味を持つイベント情報を推定します。さらに、ユーザの地理的特性を考慮して、最終的にユーザへ情報提示を行います。システム全体のパフォーマンスが上がるよう、情報配信のタイミングを全体で調整しています。
川村 秀憲 教授 Hidenori Kawamura博士(工学) -
次世代超高速通信網の核となる高度光通信技術
情報通信ネットワークの飛躍的な高度化を目指して
今後20年間に1,000倍の大容量化が必須とされる情報通信ネットワークの飛躍的な高度化のため、次世代超高速通信網の核となるフォトニック基盤技術を実現することを目指しています。
研究の内容
既存の光ファイバの限界を打ち破る新構造光ファイバの研究、安心と安全を確実にするための光ファイバ応用技術の研究、光化に対応するための超小型光回路の研究、光ファイバや光回路の設計を支援するための光シミュレータの研究を行っています。
齊藤 晋聖 教授 Kunimasa Saitoh博士(工学) -
ARコミュニケーションシステム
端末の位置・姿勢情報の共有によるアバタベースの
拡張現実グループコミュニケーションアバタを仲介とすることで時空の制約を越えたコミュニケーションが可能である。本システムでは、グループコミュニケーションの参加者の位置・姿勢情報を共有し、各参加者の端末から見えるアバタの振る舞いに反映させるARコミュニケーションを実現した。
研究の内容
従来のアバタベースのコミュニケーションシステムは1対1の通信を基本としているため、仮想と現実が混在する3人以上のコミュニケーション場において、その場に参加する物理的な人の位置や姿勢情報を個々に認識し、それに応じたアバタの振る舞いを、場全体の整合性を保持したまま、個別に制御することは困難であった。
本研究では, コミュニケーション場に参加する物理的な人々(スマートフォン端末等)の位置・姿勢情報を共通ARターゲットの認識と端末間のネットワーク連携で共有し、これを各端末から見えるアバタの振る舞いに反映させるARコミュニケーションシステムを開発した。アバタはコミュニケーション場の参加者の誰が何処にいるかを把握し、ある参加者端末の動きに追従してポーズを変えるアバタの様子を、別の参加者がそれぞれの視点から見ることができる。髙井 昌彰 特任教授 Yoshiaki Takai工学博士 -
高精度音響位置認識、時刻同期、選択的フリッカレス可視光通信
サブミリオーダー位置計測とその展開
従来手法より2桁高精度な測距技術および照明を用いた独自の時刻同期技術とを統合し、携帯端末やロボットの3次元位置ならびに速度を高速かつ正確に推定する。さらに、特定の移動体に対する選択的フリッカレス可視光通信や位置依存の情報配信を実現する。
研究の内容
室内でのユーザや移動物体の位置をリアルタイムで正確に取得するため、位相一致法と呼ばれる高精度時刻基準点設定法を独自に提案した(測距誤差0.03 mm)。この技術を基にスマートフォンユーザのジェスチャ認識、ロボットトラッキングシステム等を開発した。さらに、カメラ機能搭載の携帯端末とLED照明を用いた独自のアルゴリズムにより、マイクロ秒オーダーの時刻同期を実現した。LED変調と端末位置の位置情報を統合することにより位置依存の情報配信や室内照明によるフリッカレス可視光通信が可能になる。
杉本 雅則 教授 Masanori Sugimoto博士(工学) -
スポーツコンテンツの次世代可視化技術
知識共有を加速させる情報提示技術の創世
スポーツの観戦や教育等を助けるデータを提示する次世代可視化技術を構築します。利用者やその周辺環境から得られる多様なデータから、「分析データ」と「利用環境に適応した提示方式」を定める理論を導出し、知識共有を加速させる情報提示を可能とします。
研究の内容
スポーツを取り巻く現状として、様々な映像配信が普及し、映像と共に関連するデータをスマートフォン等のモバイル端末によって閲覧する新しい観戦の環境が構築されつつありますが、サッカーにおいては、フリーキックの成功率や走行距離等の基本的なデータを閲覧可能としていることに留まっています。本研究は、利用者やその周辺環境から得られる多様なデータを分析し、利用者の理解を助け、知識や経験が必須な場合においても、その知識共有を加速させる可視化を可能とします。例として、パスコースや優勢な度合い等が挙げられます。本研究の可視化技術は、利用者を取り巻く様々なデータを取得し、多様な情報を利用環境に適応して提示可能とするものであることから、IoTやAIの分野への応用可能性が高く、これら分野における新技術の創世への貢献が期待できます。
高橋 翔 准教授 Sho Takahashi博士(情報科学) -
レーザ計測点群の認識・モデル化技術
人が活動する環境や構造物の分析・維持管理・計画の高度化を目指して
3次元レーザ計測点群から、室内や道路、柱状物(電柱や街灯)、街路樹、建物といった、人が活動する環境に存在する物体や構造物を自動で認識し、3次元モデル化するための点群処理の理論とアルゴリズムを開発しています。
研究の内容
地上設置型や車載型の3次元レーザ計測システムで得られる『点群』から、屋内外の環境における物体や構造物を自動で認識しモデル化する技術ならびに基礎的な点群データ処理手法の研究を行っています。認識とモデル化の対象は、任意形状の物体、部屋、電柱や街灯等の柱状物、樹木、道路面、建物など、幅広く扱っています。点群からのメッシュモデルやポリゴンモデル、CADモデル生成技術に加え、その基礎となる点群の位置合せ(レジストレーション)、領域分割(セグメンテーション)、形状特徴抽出、機械学習や手続きに基づく物体認識に関する研究も行っています。本技術により、現況を忠実に反映した3次元モデルを用いた、環境や構造物の詳細な認識と分析、維持管理、各種シミュレーションや改善計画が可能となります。
伊達 宏昭 教授 Hiroaki Date博士(工学) -
情報科学・工学のための数理解析技術
システム同定・設計と逆問題
システム同定・設計や未知対象の推定などに関連する情報科学・工学分野の問題を解決するための方法論の探求、及び、応用技術の開発。
研究の内容
情報科学や工学の分野においては、所望の結果を与える数理的なシステムの設計問題や、所与の入出力を与える数理モデルの特定問題、システムと観測から未知入力を推定する逆問題などが多く現れます。これらの問題を扱う際に、個々の問題特有の条件と個々の問題とは独立した数理モデルに分けて解析を行うことで、性能や限界を理論的に見極めることが可能となり、また、類似した数理モデルで記述できる問題への水平展開も可能となります。これまで、この独自のスタンスで、画像や色彩の復元や、音響信号に含まれる個々の音の分離、パターン認識や標本化理論を含む機械学習問題において様々な方法論の構成や応用技術を開発してきました。今日の発展著しい多様な計測技術に我々の方法論を適用することで、理論に裏打ちされた様々な応用技術の開発が期待できます。
田中 章 教授 Akira Tanaka博士(工学) -
動画像リアルタイム処理技術
アルゴリズム開発とそのハードウェア実装
本研究室では、近年大容量(高解像度・高フレームレート)化が著しい動画像を対象として、画像平滑化(スムージング)や明るさ補正を中心とした、各種画像処理アルゴリズムならびにそのリアルタイム実装に関する研究開発を推進しています。
研究の内容
画像処理では一般に取り扱うデータ量が膨大であるため、ハードウェア/ソフトウェアを組み合わせたシステム全体としての最適化が必要不可欠です。本研究室では、画像処理のアリゴリズムおよびその実装に関する検討を相補的に行うことにより、画像処理システムの構成手法に関する研究を行っています。その成果の1つであるRetinex理論に基づく動画像リアルタイム適応的明るさ補正(図1)では、逆光などの照明変化が大きい状況下で撮影された映像の明るさを、適応的かつリアルタイムで補正することが可能です。また、コスト最適化に基づく高品位な画像平滑化(スムージング) (図2)に関する研究も進めており、これは写真のイラスト化といった画像加工処理や、各種画像処理の前処理、明るさ補正、細部強調などへの応用が期待されます。
筒井 弘 准教授 Hiroshi Tsutsui博士(情報学) -
ラゲールガウス光の時空間制御
光の空間位相を用いた情報多重化
本研究では特徴的な空間位相を持つラゲールガウス(LG)光を用いた情報多重化の基盤技術を構築しました。従来の光情報処理では積極的に利用されてこなかった空間位相に着目することにより、情報容量を増大させることを目的としています。
研究の内容
光による情報処理や伝送・記録・再生はレーザー光の強度や偏光、空間的に均一な位相を用いて行われます。また異なる周波数を用いた多重化により、伝送容量を増大させることができます。これに対して光の空間特性は、これまで積極的に利用されることのなかった未開拓領域です。このような背景のもと、情報処理容量限界を打破するステップとして、ラゲールガウス(LG)光を使った情報多重化やLG光を特徴付ける軌道角運動量(トポロジカルチャージ)を用いた量子情報処理が注目されるようになってきました。本研究では、物質との相互作用を通して、LG光のモード制御や短パルス光を用いた軌道角運動量変換・保存、ファイバによる空間分割多重伝送を実現しました。
戸田 泰則 教授 Yasunori Toda工学博士 -
量子暗号鍵配付装置の安全性保証技術
究極の暗号の安全性を実験的に保証する
量子暗号鍵配付を用いることで将来いかに技術が進歩しても高度な秘匿性を保つ暗号鍵を光通信により共有できます。本研究は、量子暗号の実用化に向け、実際に作られた装置で安全性を実験的に保証するための技術を提供します。
研究の内容
量子暗号鍵配付は原理実証の段階をクリアし、実用化を意識した研究が進められています。究極の秘匿通信を実現する技術として、世界各地で実証実験を含む研究が進められています。当研究室では理論的な部分と実装に関わる部分を同時に研究しています。現実世界では理論通りにいかないことが多く、仮説と実験結果とのズレが生じることが多々ありますが、そのズレの影響を評価し、現実の装置で作られる暗号鍵の安全性を定量的に保証することを目指しています。そのため、理論的な研究と実際の装置開発を橋渡しする形で実証研究を行っています。この研究によって量子的な装置を測定、評価して現実化することが可能になり、将来の量子ネットワークの実現に寄与できるものと考えています。
富田 章久 名誉教授 Akihisa Tomita博士(工学) -
バンディット手法を用いた推薦技術
知識を獲得しながら累積利得を最大化するオンライン学習技術
ユーザが好むであろうアイテムのお勧め(知識の利用)のみでなく、ユーザの好み情報が多く得られるであろうアイテムのお勧め(知識の獲得)もバランスよく行い、ユーザの累積満足度を最大化するお勧め手法を研究しています。
研究の内容
現在のインターネット社会において、リコメンデーション技術はうまく働けばサービスを提供する側・受ける側の双方に利益をもたらすものです。リコメンデーションサービスは1回きりのものではなく、毎回フィードバックを受けながら繰り返し行うものであり、しかもフィードバックはお勧めしたもののみに対して得られるものです。したがって、フィードバック履歴よりユーザが好むであろうアイテムをお勧め(知識の利用)するのみでなく、フィードバックからユーザの好み情報が多く得られるであろうアイテムもお勧め(知識の獲得)することがその後のお勧め精度を上げるためには重要です。この知識の利用と獲得のバランスをとってユーザ満足度の最大化を試みるのがバンディット手法です。 バンディット手法を用いたお勧め方式の開発を行っています。
中村 篤祥 教授 Atsuyoshi Nakamura博士(理学) -
圧縮センシング法を用いた電波の状態推定
高精度な位置推定・チャネル予測をめざして
圧縮センシング法は、必要とする未知数の数よりも少ない観測データから、ある条件の下で解を求める手法である。この研究では、圧縮センシング法を用いて、電波の到来方向推定や、チャネル予測、散乱体検出を行っている。
研究の内容
必要とする未知数の数よりも少ない観測データからは、一般にその未知数を一意に求めることはできない。ところが、未知数の大多数が0であるという条件があるとき、その解を正確に得ることができる場合がある。圧縮センシング法は、この性質を利用して、観測をできる限り少なくしつつ正確な解を得る方法である。当研究室では、図1に示すような電波の高精度な到来方向推定への応用や、それを利用して到来波を素波に分割してチャネル予測する方法(図2)、およびレーダシステムにおいて圧縮センシング法を利用した散乱体検出(図3)について検討を行っている。
西村 寿彦 教授 Toshihiko Nishimura博士(工学) -
発想支援型マルチメディア検索システム
画像や映像などのデータを有機的に連携することで、検索者に気づきを与え発想を支援する情報検索システム
発想支援型マルチメディア検索システムは、画像、音楽、映像等の非構造化データを有機的に連携し、内在する類似性の抽出、およびその効果的な提示によって、検索者に気づきを与え、発想を支援する情報検索を実現します。
研究の内容
異なるメディア間での関連付けと類似性の導出、マルチメディア情報が持つ曖昧性を許容した連想型の検索スキーム(融合型検索)、ユーザネットワークによる個人の嗜好のモデル化、及びユーザインタフェースによる嗜好の類似性のビジュアライゼーション(個人適応型検索)を逸早く導入した新たな検索エンジン及びインタフェースを実現しています。これらを用いることによって、マルチメディアコンテンツ固有の多義性と曖昧性を効果的に利用した全く新しい検索が可能となっています。
長谷山 美紀 教授 Miki Haseyama工学博士 -
大規模電磁界解析による乗り物内
無線接続サービスの電波伝搬特性評価手法ワイヤレス環境の最適設計を目指して
航空機や旅客鉄道車輛内などの複雑で特殊な伝搬環境評価,電波の人体侵入,さらに体内埋込み型医療機器の電磁干渉評価とメカニズム推定,電気自動車無線給電装置の漏洩電磁界評価など,様々な電波利用分野での研究実績を上げてきている。
研究の内容
乗り物内の無線伝搬環境は,周囲が金属であることによる多重反射,加えて内部に什器や乗客の存在により,従来の伝搬モデルとは異なる特殊な環境になる。そのため,実運用状況の無線接続品質を見積もるには,乗客人体等による電波の吸収・散乱の効果を含めた電波伝搬特性の評価が必要となるが,実測や簡便な数値解析(レイトレース等)にてこれらを評価することは困難である。本研究は,従来困難であった乗り物内の伝搬環境モデリングに取り組み,超大規模解析空間におけるシミュレーション手法をスーパーコンピュータの利用により実現するものである。
日景 隆 准教授 Takashi Hikage博士(工学) -
バイオメディカル光イメージングのための数理アルゴリズム開発
生体における光伝搬数理モデルの構築
バイオメディカル光イメージングの発展には、高精度かつ計算効率に優れた光伝播モデルが必要です。本研究では、光伝播を高精度に記述する輻射輸送方程式の高速解法を構築することに成功しました。提案手法による光診断・治療の高度化に取り組んでいます。
研究の内容
本研究では、輻射輸送方程式に基づいたバイオメディカル光イメージングの数理アルゴリズム構築を行っています。従来の数理モデルに基づいたイメージングでは適用できなかった生体組織や生体部位にも適用でき、また画像解像度の優れたイメージング技術を目指しています。これまで、輻射輸送方程式の数値計算負荷は膨大であることから、小さいサイズの生体に適用が制限されていました。本研究では、輻射輸送方程式と光拡散方程式を連結することによって、高精度かつ計算効率に優れた光伝播モデルを開発することに成功しました。開発した光伝播モデルに基づいた光イメージングは、様々な生体組織・部位に適用可能です。現在は、ヒト頸部における甲状腺腫瘍の光診断や、生体組織における光学特性値のin-vivo評価への適用に向けて取り組んでいます。
藤井 宏之 准教授 Hiroyuki Hujii博士(工学) -
時間分解二次元表面音響波イメージング
固定周期の光パルス列による任意周波数応答の励起・検出
GHz周波数領域までの表面音響波の伝播の様子を時間分解二次元イメージとして可視化する技術です。従来の方法では周波数分解能が低いという問題がありましたが、本方法では任意周波数の音響波を励起・検出することができます。
研究の内容
音響波を用いた物性評価や機能性デバイスの設計・製作・評価において、音響波伝播の可視化は極めて有益です。このために、サブピコ秒時間幅の超短光パルス(ポンプ光)を試料に照射して表面音響波を励起し、その伝播の様子を遅延された光パルス(プローブ光)で観測します。遅延時間およびプローブ光の照射位置を走査することで音響波の時間分解二次元イメージを得ます。時間分解能はピコ秒、空間分解能は1μm、周波数帯域はGHz程度です。この方法では周期的な光パルス列を用いるために、従来はその繰り返しの整数倍周波数の音響波のみ励起・検出可能でしたが、開発した技術により、任意周波数の音響波の励起・検出が可能になりました。さらにこれを発展させて光パルスの繰り返し周波数とは全く非同期な振動のイメージングも可能となり、応用範囲が一層広くなりました。
松田 理 教授 Osamu Matsuda理学博士 -
アカデミックインタークラウド
学術クラウド連携による研究開発を推進
全国規模でクラウドシステムを連携させたアカデミックインタークラウドの実現に向けた研究を推進し、インタークラウド環境での資源割当最適化やスパコンとインタークラウドの連携等、クラウド関連技術の共同研究を実施。
研究の内容
北海道大学情報基盤センターでは、国内最大規模の学術クラウド「北海道大学アカデミッククラウド」を構築し、全国の研究者に対して仮想・物理マシンおよびそれらのクラスタシステムとしての提供、高速大容量クラウドストレージ、機械学習・ビッグデータ処理システム等の研究開発向けクラウドサービスを提供している。さらに、全国規模でのクラウドシステム連携を実現するための基盤技術や、研究者を支援するためのシステム構築について研究を推進している。その具体例として、認証連携などのクラウド連携基盤技術の開発および試験システムの構築(図1)インタークラウド環境下での資源割当最適化、スパコンとインタークラウド基盤を連携させた全国規模での大規模な設計最適化フレームワークの実現(図2)等があげられ、全国の大学、研究所、企業との共同研究を行っている。
棟朝 雅晴 教授 Masaharu Munetomo博士(工学) -
ユーザの意図を読み取るインタフェースの開発
ロボットやマウスを自由にコントロールする
ユーザと機械が相互に学習することで、ユーザの意図通りに機械を操作することを可能とするインタフェースの開発を行っています。ロボットなどの操縦や、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスの入力も容易にします。
研究の内容
ユーザがヒューマノイドロボットなど多自由度のロボットを動作させるためには、コマンドがどの操作に対応しているかを覚える必要があり、コマンドの数が多くなるとユーザは負担が大きくなります。一般には、どんな人にも覚えやすく、使いやすいコマンド群を用意することは難しいため、作り上げたものが必ずしもユーザにとって使いやすいインタフェースとなる保証はありません。本研究では、ユーザと機械の相互作用の中からユーザの意図を読み取り、ユーザが直感的に操作可能なインタフェースの構築を行っています。その結果、各ユーザの特性にあった使いやすいインタフェースが開発できます。この技術を、マウスやトラックボールなどを操作する手の動きなどをセンシングすることでデバイスがなくても操作ができる、エアマウス、エアトラックの開発にも応用しています。
山本 雅人 教授 Masahito Yamamoto博士(工学) -
均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応
シスアルケンとアミン類の選択的合成
医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。
研究の内容
酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。
大熊 毅 特任教授 Takeshi Ohkuma理学博士 -
金属材料の組織予測シミュレーション技術の開発
凝固から固相変態まで
構造材料や機能材料の製造プロセスでは、凝固、熱処理、塑性加工において様々な材料組織が形成し、その材料組織の特徴が材料の特性を決めています。凝固から固相変態までの一連の材料組織変化を予測するシミュレーション法の開発を行っています。
研究の内容
金属材料の凝固、結晶粒成長、拡散固相変態など、製造プロセスで生じる一連の相変態における材料組織の時間変化を予測する手法の開発と応用を行っています。特に、組織形成シミュレーション手法であるフェーズフィールド・モデルの開発に従事し、拡散相変態を世界最高精度で計算するモデルの開発に成功しています。また、実験的アプローチ、分子動力学法による原子論的アプローチ、さらにはデータ同化、機械学習といった情報科学のアプローチを組み合わせて、種々の合金系における材料組織制御に取り組んでいます。超大規模計算によって組織形成の新しい学理を開拓し、実プロセスの最適化につながる成果を得ています。
大野 宗一 教授 Munekazu Ohno博士(工学) -
電子スピン制御の物性定数を解明
次世代電子デバイスの研究・開発を加速
さまざまな半導体物性の中でこれまで未解明であった「スピン軌道相互作用」を、InGaAs半導体をベースにしたn型量子井戸構造に対して、ゲート電圧依存性を含めて定量的に明らかにしました。この成果は、次世代スピンデバイス開発のシーズとなります。
研究の内容
既存の半導体デバイスは、電子の「電荷」により動作します。一方で、電子は、「電荷」と共に「スピン」という小さな磁石としての性質を有しています。固体中電子のスピンは状況に応じて、ある向きに揃ったり(図1a)、特定の軸に対して回転したりします(図1bc)。次世代電子デバイスを実現するには、このような電子の「スピン」を半導体デバイス中で如何に制御するかが鍵となります。今回の研究では、インジウム、ガリウム、砒素をベースとした電界効果トランジスタ(図2)を利用し、希釈冷凍機(図3)を用いて実現する極低温(絶対温度20mK)環境で、電気的な測定を行うことにより、電子スピンの制御に必要な「スピン軌道相互作用係数」をはじめて厳密に決定しました(図4)。
古賀 貴亮 准教授 Takaaki KogaPh.D.(工学) -
新規なスピントロニクス・デバイスの探索および低次元電子ガスのエネルギースペクトラムの理論研究
省電力デバイスを目指して
トポロジカル絶縁体やスカーミオンと呼ばれるトポロジーが現象を支配している物質や構造を物性理論を使って研究している。同時に、その過程でこれらのトポロジカル絶縁体やスカーミオンを利用した新規なスピンデバイスの提案と実現を目指して研究しています。
研究の内容
現在主流のCMOS素子を性能面と電力面で超えるスピンデバイスを提案し、その性能を物性理論で解析する研究をしています。この研究によって、CMOSデバイスを超える性能を持ちながら、省電力なデバイスを創生することが主な研究目的です。普段は、新規なスピンデバイスの性能を計算するために、場の量子論や相対論を用いてスピン伝導率などを計算しています。現在、研究している対象はトポロジカル絶縁体とスカーミオンですが、トポロジカル絶縁体はバルクでは絶縁体であるが、表面のみ自発的にスピン流が流れる物質であるので、上手くデバイスに応用できれば、トポロジカル絶縁体自体は無散逸なので超省電力のデバイスの作製が可能になります。またスカーミオンは磁性体に発生する特異な渦であり、これも電流駆動することでスイッチの役割を果たすことが期待されます。
近藤 憲治 准教授 Kenji Kondo博士(工学) -
ソノプラズマ発生装置
音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法
超音波によって水中に駆動される音響キャビテーションが崩壊するとき、気泡の内部は高温・高圧状態となり、プラズマ化する(ソノプラズマ)。音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法を見出し、プラズマ応用技術としての展開を図る。
研究の内容
液体中で生成されるプラズマは、ナノテクノロジー、環境工学、および医療工学の観点から高い関心を集めているが、プラズマの発生に高電圧を必要とすることが障害となる場合がある。一方、超音波工学の分野では、音響キャビテーションが崩壊する瞬間に気泡の内部がプラズマ化することが知られていた。我々は、超音波が印加された液中にパンチングメタル板を挿入するという極めて簡単な方法により、位置の固定が困難な音響キャビテーションを定在化させ、高効率に発生させることに成功した。高電圧を用いない液中プラズマ生成法としてユニークであるとの評価を受けている。現在は、本方式のメカニズムを解明し、大型装置を設計するための指針を得ることに注力しているが、今後は、新しいプラズマ応用技術としての様々な展開を図りたいと考えている。
佐々木 浩一 教授 Koichi Sasaki工学博士 -
ポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子による
高活性触媒の創製高分子担体を反応場とする金属錯体触媒の設計と効率的合成プロセスの開発
高分子担持金属触媒の創製に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子を開発しました。高分子トポロジーの効果により、金属錯体の不均化や金属凝集による触媒の不活性化を抑制することができます。第一遷移系列金属触媒の配位子として特に有効です。
研究の内容
不均一系(不溶性)金属触媒は、反応混合物からの分離が容易で再利用性に優れた環境負荷の少ない有機合成手法ですが、対応する均一系(可溶性)触媒と比較して、触媒活性が低下することが問題です。私たちは、高分子鎖のトポロジー制御に基づき、高活性なモノキレート型単核遷移金属錯体の発生に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzを開発しました。塩化アリールのアミノ化カップリングやエステル-アゾールカップリング等のNi触媒反応などの効率を著しく向上させ、既存触媒では適用困難であった基質に対しても有効です。本触媒は、ろ過による分離や再利用も可能なことから、産業利用が期待されます。
澤村 正也 教授 Masaya Sawamura工学博士 -
耐高温材料の微細加工による赤外メタマテリアル
中~遠赤外線を操る材料・デバイスの開発
中~遠赤外線の波長以下のパターンを持つヒーターや回折格子を作るとこれら電磁波を制御するデバイスを作れることが期待されます。我々は金属炭化物や酸化物の薄膜・積層・微細構造の作製法の開発と素子特性を研究しています。
研究の内容
電磁波の波長以下のスケールで微細加工された物質は電磁波の反射・透過を制御する働きがあります(メタマテリアルと呼ばれる)。3μm~1000μmの波長をもつ中~遠赤外線は熱の輻射にかかわる電磁波であるとともに、分子振動を励起させることができるため、分子の検出に使うことができます。熱にかかわる材料なので、耐熱性を持たせることにより他では実現できない応用が可能になります。我々は金属炭化物や酸化物などの様々な物性を持つ耐熱性材料に対するプロセス技術を研究するとともに、これら材料の赤外域での基礎物性を測定し、メタマテリアル設計につなげます。中~遠赤外線に対するメタマテリアルの作製により、分子検出用の狭線幅の中赤外発光素子や、輻射熱を制御する材料の作製を目指しています。
島田 敏宏 教授 Toshihiro Shimada博士(理学) -
電気化学応答性有機色素
エレクトロクロミズムから多重応答へ(蛍光、旋光性)
色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本として、蛍光、旋光性(円二色性)などの多重応答が可能な物質群を提供します。本技術では還元種の分解過程が抑制される工夫が施され、また酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性を持ちます。
研究の内容
エレクトロクロミズム系は、外部からの電位の変化に対応して色調が変化する化合物の総称です。発色・消色の可逆的な表示が可能な材料として、スマートウインドウなどの調光材料や電子ペーパーなどでの表示機能という観点からも注目されています。色調以外に、蛍光、旋光性(円二色性)なども変化する物質では、用途に応じたテーラーメードな応答が可能となります。
本技術では、色調の制御が容易なカチオン性有機色素を基本とした、多重応答が可能な物質群を提供します。カチオン性色素の還元種は一般に反応活性で、応答の繰返性は低くなりますが、本技術ではカチオン部位を2つ組み込むことで、還元種の分解過程が抑制されています。また、酸化種と還元種を混合しても交換が起こらないという双安定性は、高密度記録材料への応用を可能とするものです。鈴木 孝紀 教授 Takanori Suzuki理学博士 -
含フッ素芳香族カルボン酸類の合成
二酸化炭素から電気を用いて有用カルボン酸を作る
有機電解法により、数個のフッ素原子を有する容易に入手可能な芳香族化合物と二酸化炭素から、新規含フッ素ビルディングブロックとして有望な種々の含フッ素芳香族カルボン酸を位置選択的に収率よく合成することに成功した。
研究の内容
有機化合物へのフッ素原子の導入は医農薬や機能性材料等の分野において非常に重要である。含フッ素有機化合物の合成法として、含フッ素ビルディングブロックを用いる方法があるが、ビルディングブロックとして用いることが可能な含フッ素有機化合物はまだまだ高価でかつ限られており、その開発研究のニーズは高い。今回本研究では、容易に入手可能な含フッ素芳香族化合物と二酸化炭素から有機電解法を用いて種々の官能基を有する含フッ素芳香族カルボン酸を収率よく合成することに成功した。今回合成した含フッ素芳香族カルボン酸類には従来法では合成が困難な新規化合物も種々含まれており、有望な新規含フッ素ビルディングブロックとして医農薬や高機能性物質合成に利用されることが期待できる。
仙北 久典 准教授 Hisanori Senboku博士(工学) -
ナノフィブリル化バクテリアセルロースの大量生産
バクテリアを用いることにより低分子バイオマスから
ボトムアップでナノフィブリル化セルロースを生産する我々は、新奇なセルロース合成酢酸菌を取得し、糖蜜を原料としたナノフィブリル化バクテリアセルロース(NFBC: Fibnano®)の大量生産に成功しました。NFBCは流動性、混和性、成型性に優れており、幅広い分野での利用が可能です。
研究の内容
バクテリアによって合成されるセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれており、高い保水性、高強度、生分解性、生体適合性などのユニークな性質を有しています。また近年、ナノサイズのセルロース素材(ナノフィブリル化セルロース(NFC))が注目を浴びています。一般に、NFCはパルプを原料として、物理的・化学的処理によってトップダウン的に調製され、得られたNFCは水中に高分散しています。対照的に、セルロース合成菌の培養条件を最適化することにより、低分子バイオマスからボトムアップ的にナノフィブリル化BC(NFBC: Fibnano®)を調製することが可能です。我々は、道内企業との共同研究により、砂糖製造時の副生成物である糖蜜を原料としたNFBC(Fibnano®)の大量生産に成功しました。
田島 健次 准教授 Kenji Tajima博士(工学) -
超撥水・超撥油アルミニウム
ウェットプロセスによる簡便な防汚表面の作製
アルミニウム板やメッシュを化学エッチング/陽極酸化することによりマイクロ/ナノ階層ポーラス構造を構築し,さらにフルオロアルキル単分子膜で表面をコーティングすることにより,油を始めとするほぼあらゆる液体に対して濡れない表面を得ることに成功した
研究の内容
水や油に濡れない超撥水・超撥油表面は,防汚性,セルフクリーニング性を示す表面として期待されている。本研究は,実用金属材料であるアルミニウムに対して,簡便なウェットプロセスの組み合わせにより,水のみならずオクタンなどの表面張力が20 mN m-1と低い液体をもはじく超撥油表面を実現した。アルミニウム箔への適用も可能であり,様々な場所に防汚表面として利用することもできる。
さらに,アルミニウムメッシュを用いてその濡れ性を制御することで,油と水を分離するフィルターとしても利用可能である。幅﨑 浩樹 教授 Hiroki Habazaki理学博士 -
太陽光をレーザー光へ変換する新しい結晶材料
高効率太陽光励起レーザーの実現を目指した
新規Cr,Nd共ドープ結晶開発したCr,Nd:CaYAlO4結晶は、可視域で幅広い吸収帯域を示すとともに、大きい吸収断面積を有する。クロムにより吸収されたエネルギーはネオジムに移動することから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。
研究の内容
クロム(Cr)とネオジム(Nd)を添加したCaYAlO4単結晶を、浮遊帯溶融法と呼ばれる手法を用いて作製した。作製条件を適切に制御することにより、良質な赤色透明の結晶が得られた(図1)。この結晶は、紫外領域から可視領域にわたる非常に幅広い吸収域をもち、太陽光のエネルギーが最大となる波長でも十分な吸収を示す(図2)。また、従来材料であるCr、Nd:YAGと比較すると70倍以上の大きい値を示すことが明らかとなった。このような特性は既存の材料にはない、今回開発した結晶に特有のものである。さらに、クロムの吸収帯での励起によりネオジムが発光することが、その蛍光特性から実証された(図3)ことから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。
樋口 幹雄 学術研究員 Mikio Higuchi博士(工学) -
顕微インデンテーション
微少領域の硬さ/変形の「見える」化
押し込み硬さ試験中の圧痕形状変化および周辺の表面変化を「その場(In-situ)」観察できます。動画撮影による高い時間分解能の情報と硬さ試験を組み合わせた高度データの“ハイスループット”収集によって、材料開発や事故原因解明に貢献できます。
研究の内容
硬さ試験は局所的な負荷によって生じた変形から物質・材料の強度を明らかにする手法であり、高い簡便性・再現性から広く用いられています。この手法の簡便性を生かしつつ高度な応力応答情報の取得を目指して、硬さ試験のIn-situ試験化(顕微インデンテーション)を行いました。
押し込み試験中に透明圧子を通して圧痕内部並びに周辺の試料表面を観察するには光学的条件の最適化が必要ですが、透明圧子の屈折率に近い屈折率を有する液体を圧子周辺に導入することで広範囲の表面観察を可能としました。三浦 誠司 教授 Seiji Miura博士(工学) -
環状ポリエチレングリコールを用いたナノ粒子安定化
高分子の「かたち」に依存した新奇安定化法
本研究は環状ポリエチレングリコールを用いた金属ナノ粒子の新奇分散安定化手法の開発です。これまでに当研究グループは、環状高分子から成る分子集合体が優れた安定性を有することを見出しました。この現象を応用してナノ粒子の高分散安定化を行うものです。
研究の内容
現在、多数のナノ粒子系医薬品の研究が行われていますが、ドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアも含めそれらの多くは、生体適合性を有するポリエチレングリコール(PEG)で表面を覆われたナノ粒子になります。これに関して、私たちは環状PEGで修飾した金ナノ粒子(AuNPs)が高塩濃度に対して高い分散安定性を示すことを見出しました。すなわち、分子量4000の環状PEGで修飾されたAuNPは、生理条件よりも高濃度である180 mMのNaCl溶液で1週間以上分散安定性を保持したのに対し、同分子量の直鎖状PEGを用いた場合、僅か45 mMのNaClで3時間内に凝集・沈殿しました。この環状PEGを用いた新奇手法は、造影剤や磁性ナノ粒子を含む種々のナノ粒子系医薬品に応用可能です。
山本 拓矢 准教授 Takuya YamamotoPh.D. -
センサレスで実装可能な非線形補償器
PID制御系に容易に追加可能な非線形補償器
現在、産業界ではPID制御が主力の制御手法として用いられていますが、PID制御則には摩擦や重力項といった非線形項の影響により制御精度が劣化するという問題があります。我々は、PID制御器に対し容易に追加できる非線形補償器を提案しています。
研究の内容
ディジタル加速度制御(DAC)はモデル化困難な非線形項やモデリング誤差が存在する系に対してロバストな制御則です。DACは非常に効果的な制御器ですが、加速度目標値に対して制御を行うため単体では位置制御ができません。そこで、一般的なPID制御系と組み合わせたPID-DAC併合制御系によりロバストな位置・加速度制御が実現できます。さらにPID制御器などに「センサレス」で「容易」に追加することができる新しい非線形補償器として、制御対象の加速度目標値を0とした「PID-DA0制御系」、加加速度目標値を0とした「PID-DJ0制御系」という2つの制御器を提案しています。双方とも既存のPID制御器に簡単に追加でき、さらには追加のセンサも必要ないことからセンサレスでシステムの性能を向上できるという大きなメリットを持ちます。
江丸 貴紀 准教授 Takanori Emaru博士(工学) -
非接触レーザー加振システムによる振動計測技術
高周波振動計測/高感度異常検知技術の開発
高出力パルスレーザーの照射により構造表面で生じるレーザーアブレーションを利用し、理想的なインパルス加振入力を作用させる技術を開発した。本技術により、今まで不可能であった非接触かつ高周波数帯域まで高精度な振動測定を可能にした。
研究の内容
図1にレーザーによる加振力の生成原理を示す。レーザーによる加振力は、レーザーアブレーションによって引き起こされる。本技術を応用した例として、膜構造の真空環境振動計測システムを図2に示すが、本システムはYAGパルスレーザー、誘多膜ミラー、集光レンズ、膜構造、LDVおよび真空チャンバから成る。膜構造が固定されているのは真空チャンバの内部であり、大気環境から真空環境まで真空チャンバ内の空気圧を調整しながら実験を行うことができる。計測された膜の周波数応答を図3に示す。真空度を上げることにより、膜の共振周波数が高くなり、同時に共振の応答レベルも向上していることがわかる。このように、膜表面の空気による質量効果および減衰効果の影響を抽出することができ、宇宙環境を想定した真空チャンバ内での実験における本技術の有効性を検証した。
梶原 逸朗 教授 Itsuro Kajiwara博士(工学) -
中性子とX線を複合利用した超階層構造イメージング
量子ビームを複合利用し、幅広いスケールに渡って不可知情報を非破壊的に可視化するイメージング
パルス中性子透過分光イメージングは、他の顕微法では視えない情報を非破壊に可視化できる手法として注目を受けています。X線のような他の量子ビームと複合解析すれば画像だけではわからない情報も可視化することが可能になります。
研究の内容
小型加速器を利用する実験施設として半世紀近い歴史がある北大施設は、先導的な施設として世界的に注目されています。北大では主にパルス中性子ビームを作っており、それで得られる透過スペクトルから、結晶構造やミクロ組織、内部応力、温度等の情報を、試料全体にわたる分布として2次元の実像上にマッピングすることが可能です。一方、X線CTでは物体内部の3次元構造を測定できるので、両者の結果を複合的に解析し、相乗的に物体内部情報を理解する研究を行っています。図は中性子とX線による相乗イメージングとして、単独では得られない元素情報をX線CTによる内部構造にマッピングしたイメージを示しています。X線CTではAl円筒中のワイヤの存在がわかりますが、中性子の情報を加えるとそれぞれが異なる素材とわかります。
加美山 隆 教授 Takashi Kamiyama博士(工学) -
鉄より丈夫なゲル
柔靱な複合材料
ガラス繊維と自己修復ゲルを複合化することによって、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)よりも丈夫なゲルを実現した。ゲルを母材とするため、曲げに対してはゴムのようにしなやかであるが、引裂きに対してはCFRPよりも靱性が高く、壊れにくい。
研究の内容
我々が開発したガラス繊維複合ゲルは割れない、引裂けない、ちぎれにくいといった性質を示す。一般に、複合材料と言えばCFRPやガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などが広く用いられている。これらの繊維強化プラスチック同様、繊維強化ゲルは繊維の特性により、引張に対しては硬く・強い性質を示す、一方で曲げに対してはゲルの特性を生かして柔らかく・しなやかにふるまう。また、母材に用いる自己修復性ポリアンフォライト(PA)ゲルは、変形に対して大きくエネルギーを散逸する機能を有しているため、単体でも丈夫である。さらにゲルが柔軟であるため、繊維と複合することによって、局部的な歪を繊維を介して遠くの母材まで伝えることができるため、結果として材料全体で大きくエネルギーを散逸する。つまり、著しく丈夫である。
黒川 孝幸 教授 Takayuki Kurokawa博士(理学) -
超音波と微細気泡を用いた液体微粒化技術
液体微粒化量のアクティブ制御を目指して
超音波を液体中から液面に向かい照射することで、液面で液体の微粒化が起こります。近年、この現象に液面近傍に存在する微細気泡が関係していることが明らかとなってきました。我々は超音波による液体微粒化量を制御することを目指しています。
研究の内容
超音波を液体中から液面に向かい照射することで、液体の微粒化が起こります。微粒化された液体は、直径が数マイクロメートル程度の小さな液滴となります。この液体微粒化技術は、省エネルギーで均一な微細液滴を生成することができ,現在も私たちの身の回りで広く利用されています。液体微粒化のメカニズムは未だ完全には解明されていませんが,我々のこれまでの研究から、液面近傍に存在する微細気泡(マイクロバブル)が微粒化を促進することが明らかとなってきました。本研究では液体中の微細気泡数に注目し、超音波による液体微粒化量を制御することを目指しています。気泡数を適切に調節することで、これまで超音波で微細化することができなかった液体の微粒化や、液体微粒化量のさらなる促進を目指しています。
小林 一道 准教授 Kazumichi Kobayashi博士(工学) -
半導体精密加工技術
電気化学反応を利用した
低損傷かつ制御性のよい半導体エッチング技術電気化学反応を利用した半導体エッチング技術により、従来法と比べて加工ダメージの抑制と深さ方向に対する精密な加工制御を達成した。AlGaN/GaNへテロ構造トランジスタのゲートリセス加工へ適用し、トランジスタのノーマリーオフ化を実現した。
研究の内容
半導体表面のエッチング加工は、トランジスタなど半導体素子の作製に欠かせない工程の1つです。本研究室では、半導体表面の電気化学的酸化・溶解反応を利用し、従来のドライエッチング法と比べて、深さ制御およびダメージ抑制の両面において優れたエッチング手法を開発しました。パワートランジスタ材料として有望視されているAlGaN/GaNヘテロ構造に適用した結果、電気化学条件の最適化により、所望の加工深さでエッチングが自己停止することを明らかにしました。これにより、先行技術で必須となるエッチングストップ層が不要で、より簡便な方法でトランジスタのしきい値を精密に制御することが可能となりました。また、本手法によるエッチング表面は、ドライエッチング表面と比べて加工損傷が少なく、トランジスタの性能向上に有望な手法として期待されます。
佐藤 威友 准教授 Taketomo Sato博士(工学) -
非破壊CT-XRD連成法の開発とその応用
セメント硬化体微細組織の可視化
コンクリート内部の微細組織に対して、数ミクロンの精度でその幾何学的空間情報を取得できるCT法、および関心領域の水和物や変質を調べる回折法を連成させる新しい測定手法「非破壊CT-XRD連成法」を開発して、革新的セメント系硬化体材料を開発する。
研究の内容
コンクリートは、セメントと水との水和反応によって岩(骨材)を結合することで、構造用硬化体になります。一方、構造材料としての宿命である荷重や気象/環境作用によって、ひび割れが発生、進展したり、強酸作用、大気や海水、地下水などの浸食や物質侵入に伴う化学反応で劣化することがあります。社会インフラを長期間安定して利用するために、「虫の目」でコンクリート内部組織を観察して、そこで生じる異変を見つけることが大切です。
先駆的「非破壊CT-XRD連成法」は、放射光が提供する高輝度な白色X線を試料に照射して、選択的に25keVの透過単色X線から3次元構造体を可視化します。また、複数のスリット操作から特定の関心領域のエネルギー分散型X線回折を実行して、ポルトランダイトやカルサイトなどの水和物やその変質、骨材鉱物を特定します。杉山 隆文 教授 Takafumi SugiyamaPh.D. -
燃焼反応流体シミュレーションの新たな展開
詳細反応機構の適用を可能にする高効率解析手法の提案
数百化学種、数千化学反応オーダーから成る炭化水素系燃料のような大規模詳細反応機構を効率的に熱流体シミュレーションに組込む数値解析技術を提案しています。
研究の内容
これまでの熱流体(CFD)解析における化学反応現象は、計算負荷や解析技術の欠如から、数個の化学種や反応式から成る総括反応モデルや無限に速い反応を仮定することにより、簡素にモデル化されてきました。一方で、化学反応と流体現象の相互作用が重要となる場合、例えば、自動車エンジンにおける着火タイミングをはじめとした非定常現象予測や超希薄燃焼など極限的な条件では、簡素モデルの適用は困難となります。我々の研究グループでは、CFD解析における詳細反応機構適用の問題点を解決してきました。提案手法は、化学反応方程式の計算時間を大幅に短縮可能な時間積分法(ERENA)と類似化学種をまとめる化学種バンドル法から構成されます。条件に依りますが、従来から使用されてきた手法に対して、精度を維持しつつ、2桁から3桁の高速化を可能にしています。
寺島 洋史 准教授 Hiroshi Terashima博士(工学) -
先端複合材料の最適設計
自由繊維形状による新機能複合材料
先端複合材料(炭素繊維強化複合材)は広く構造材料として使用され始めているが、その異方性を効率的に利用できているとは言えない。当研究室では複合材の繊維配向(直線状・曲線状)を最適に設計する手法の開発を行っている。
研究の内容
比強度・比剛性の高さから構造材料として広く利用されている先端複合材料(炭素繊維複合材料、CFRP)は、その繊維配向技術の発展により繊維を直線状のみではなく、曲線状に配置することが可能となっている。直線状の繊維と比較して設計の自由度は大きく向上するため、部品形状や使用目的に特化したCFRP部材の作製が可能である。当研究室では刺繍機の技術を援用したファイバー縫付機(図1)を用いて曲線状繊維を有する複合材供試体を作製し、その力学特性評価を実施するとともに、独自の繊維形状最適化手法を開発している。例えば図2は複数の円孔を持つ翼モデルの孔周りのひずみ集中を軽減することを目的とした最適繊維形状であり、ひずみ分布は図3のようになる。これは直線繊維よりもひずみ集中を軽減できていることがわかっている。
本田 真也 准教授 Shinya Honda博士(工学) -
水蒸気・水混合噴霧による超低環境負荷洗浄法
『水蒸気+水』の物理作用を利用した、
薬液を使用しない超精密安心洗浄法水と水蒸気を混合しノズルから高速噴霧する全く新しい水蒸気・水混相噴霧を用いた革新的洗浄法を開発しました。薬品を使用しない超低環境負荷であることに最大の特徴があり,半導体製造プロセス等の超精密洗浄で所定の性能を発揮することを確認しました。
研究の内容
私達は、これまでの研究成果により、凝縮性気体中を液滴が固体表面に衝突する場合には、空気の場合とは異なり、「飛沫(スプラッシュ)が抑制され薄い液膜(ラメラ)が高速で固体表面を伸展する」現象を発見しており、高速ラメラにより強力な流体せん断力が発生すると考え「水蒸気と水の混合噴流を用いた低環境負荷洗浄」が可能であると考えました。
これまでの研究成果により、水と水蒸気だけを用いる事により、半導体、LED、 太陽電池などの製造プロセスで要求される超精密洗浄に対する所定の洗浄性能を、本洗浄法は発揮することを確認しました。また、本洗浄法は水と水蒸気のみを用いるために、人体に有害となる洗剤等の化学薬品を全く用いないため、人体および環境にとって安全である超低環境負荷特性を有しています。渡部 正夫 教授 Masao WatanabePhD -
GISと地理空間情報の活用法開発
高度情報化社会に向けての人文地理学的アプローチ
GIS(地理情報システム)とは、地理空間情報(位置情報付きのデータ)を分析・検索・表示するためのシステムです。本研究室では、地域計画や防災計画の支援などを目的として、地理空間情報に関するGISの分析方法や可視化方法の開発を行っています。
研究の内容
本研究室ではGISを用いて、地理院地図や国土数値情報など国が整備している地理空間情報の他に、自治体などが整備しているオープンデータや、GPSで取得した移動履歴などのビッグデータの活用について研究を進めています。例えば、この成果は「積雪寒冷地の津波避難に関する計画策定支援」などで活かされています。積雪寒冷地の冬季環境(路面凍結、雪による道路幅減少など)は、臨海地域における津波避難を著しく困難にしています。本研究室は、この状況における避難困難地域の画定、避難困難人口の推定、避難場所の収容能力評価など計画策定に必要な多くの情報を生成し、その技術や成果を公表しています。この様に、地理学的な視点をもって社会的有用性の高い情報を容易で迅速に創造する技術を開発し、高度情報化社会の基盤形成に資する研究を続けています。
橋本 雄一 教授 Yuichi Hashimoto博士(理学) -
コミュニティ型ワークスペースにおける協同と価値創出
コワーキングの展開過程
近年、組織や地域社会において、職種や所属等が必ずしも同一でない個人が交流し状況に応じて協同する働き方、およびその際に共有する仕事場が注目を集めています。本研究は、このような場における協同と価値創出の過程を明らかにしようとしています。
研究の内容
本研究の目的は、コミュニティ型ワークスペースにおける協同とそれにもとづく価値創出の過程を解明することです。コミュニティ型ワークスペースとは、「個人がコミュニケーションを通じて他者と情報や知恵を共有し、状況に応じて協同しながら価値を創出していくための開放的なワークスペース」を意味します。このような場の代表例として「コワーキングスペース(coworking space)」が挙げられ、近年、欧米をはじめ世界中で浸透しつつあります。背景には、組織や地域社会で依然として支配的な「閉鎖的な場における画一性の高いメンバー間の交流・協同」を問い直し、個の自律と連帯の両立を図る動きがあります。本研究により、未だほとんど明らかにされていない当該ワークスペースの設計や運営、組織的・社会的活用に資する知見の提示を期待できます。
宇田 忠司 准教授 Tadashi Uda博士(経営学)大学院経済学研究院 現代経済経営部門 経営分析分野 -
Gd₂Si₂O₇系高性能シンチレータの開発とその応用
放射線検出器用大発光量シンチレータの開発
シンチレータは放射線により発光する物質で医療診断装置、石油探査などで使用されます。Gd2Si2O7 (GPS)シンチレータは、高発光量、高エネルギー分解能、非潮解性等の優れた特長をもち、単結晶とセラミクスプレート・粉体が作れます。
研究の内容
Gd2Si2O7:Ce(GPS)単結晶シンチレータは、NaI:Tlの1.4倍程度の大発光量、高エネルギー分解能、非潮解性、自己放射能無しといった優れた特長を持ち、250℃以上の高温環境でも使用可能な事から、石油探査の大深度化への貢献が期待されます。(株)オキサイドへの技術移転が完了し、SPECT等に応用していただける状態になりました。また5cm角GPS焼結体プレートの安定製造技術を確立しました。位置検出型光電子増倍管組み合わせることにより、福島第一原子力発電所事故で放出されたα線を放出する核燃料物質を高感度で検出可能になりました。試作装置では従来装置では考えられなかった核燃料起因α線放出核種:自然放射能(ラドン子孫核種) = 1: 200の環境下で核燃料起因α線放出核種の検出に成功しました。
金子 純一 准教授 Junichi H. Kaneko博士(工学)・経営管理修士(専門職) -
再生可能エネルギー発電の出力把握と出力変動対策
太陽光発電や風力発電の出力変動をリアルタイムに把握しその変動を抑制
負荷電力(A)と再生可能エネルギー発電出力(B)とが混ざった電力潮流情報から,(A)と(B)を抽出する手法を開発しました。また(B)は天候に依存して大きく変動しますが,蓄電池を使って変動を抑制する制御手法と蓄電池容量評価手法を開発しました。
研究の内容
本研究室では,独立成分分析(ICA)と呼ばれる信号解析技術を応用し,配電線を流れる電力潮流情報に隠れている「再生可能エネルギー発電(RE電源)の出力」をリアルタイムに抽出する手法を開発しました。系統内のPV設置容量などの予備情報を使用することなく,高精度な出力推定が可能です(図1)。
また,蓄電池を用いてRE電源出力変動を補償するための制御手法も開発しています(図2)。また,個別のウインドファーム・メガソーラなどの出力変動抑制に必要な蓄電池容量を推計するシミュレーション技術も開発しました。北 裕幸 教授 Hiroyuki Kita博士(工学) -
流れと伝熱の数値シミュレーション
界面活性剤による乱流抵抗低減流れのモデル化とシミュレーション
界面活性剤添加による乱流抵抗低減流れのモデル化とシミュレーションを行い,抵抗低減メカニズムを明らかにする.また,同時に伝熱解析を行って流動特性と伝熱特性を詳細に調べる.
研究の内容
水に微量の長鎖状高分子あるいは棒状ミセルを形成する界面活性剤を添加すると,乱流域での抵抗が著しく低減することはToms効果として知られている.微小なダンベル状要素で高分子を模擬したモデルを構築し,本モデルを用いて二次元チャネル内乱流のDNS(直接数値シミュレーション)を行い,Toms効果を再現した.また,この離散要素が縦渦減衰による抵抗低減機構と壁面近傍の付加応力による抵抗増加機構の2つの機構を内在していることを示した.さらに要素に強い力が加わった場合に,要素が切断される効果を加えることにより,抵抗低減が特定のレイノルズ数範囲で生じるという特徴を再現することができた.
黒田 明慈 准教授 Akiyoshi Kuroda工学博士 -
地熱資源モニタリングと誘発地震のリスク評価
地球物理観測による地熱資源モニタリングとリスク評価
重力探査や震源精密決定による地熱資源開発に必要な地下構造の評価。精密重力測定や地殻変動観測による地熱貯留層資源のモニタリング。地熱井開発に伴う誘発地震のリスク評価や地震活動予測の研究。
研究の内容
○近年開発が盛んな地熱資源開発では、基盤構造調査から地熱貯留層の検討が行われる。重力探査と精密な震源分布、地震波速度構造解析などから、基盤構造に関する調査を実施している。
○地熱発電では、蒸気を生産するとともに熱水を地下へ還元するが、資源を持続的に利用するためには、地熱貯留層の収支をモニタリングすることが必要である。精密重力測定および地殻変動観測を利用して、地下流体の状態を物理的に評価し、適正な資源利用量を検討する。
○地熱井への高圧流体の注入などにより、有感地震が誘発され問題となることがある。地熱開発地域の地殻応力状態や、周辺の断層、地震活動特性、流体注入量などのパラメータから、誘発地震のリスク評価を行う手法を開発することで、適正かつ持続的な資源開発の指針を与える。髙橋 浩晃 教授 地震火山研究観測センター長 Hiroaki Takahashi博士(理学) -
耐氷点下起動性に優れた固体高分子形燃料電池の開発
電池内マイクロナノ凍結現象の解明
普通では観察することのできない燃料電池内の反応層近傍凍結現象を、超低温型電子顕微鏡を用いて可視化しています。さらに電気化学測定を組み合わせ、寒冷地利用で問題となる生成水凍結現象の解明と耐氷点下起動性に優れた電池の開発を行っています。
研究の内容
高効率でクリーンなエネルギー変換機器である固体高分子形燃料電池において、反応による生成水は下の左図のように数十nmの径の触媒層空隙を通り、数μm径の空隙を有する多孔膜であるマイクロポーラスレイヤー(MPL)を介して、ガス拡散層・ガス供給チャネルへと排出される。寒冷地での氷点下環境起動では、生成水が凍結し、発電停止、劣化を引き起こす問題が生じるが、現象がマイクロナノスケールであるため計測が難しく、現象解明は未だ不十分の状況である。本研究では、水がどの部位で凍結し、どのような機構で性能停止および経年劣化に繋がるかを微視的観察、電気化学測定、触媒層モデル解析により解明し、耐起動性の向上や長寿命化を達成することを目指している。下の中図は触媒層が氷で埋められている様子、右図は解析でモデル化している触媒層の構造模式図である
田部 豊 教授 Yutaka Tabe博士(工学) -
高温潜熱蓄熱マイクロカプセル
500˚C超の高温域で高密度蓄熱が可能な、コア(合金潜熱 蓄熱材)–シェル(Al2O3)型の潜熱蓄熱マイクロカプセル
固液相変化時の潜熱を利用する潜熱蓄熱法は高密度蓄熱可能な点で魅力的です。潜熱蓄熱材のマイクロカプセル化により蓄熱のみならず、熱輸送、熱制御用途への展開が可能となります。500 ºC超の高温域で利用可能な潜熱蓄熱マイクロカプセルを開発しました
研究の内容
500 ˚C超に融点を持つAl基合金を新たに潜熱蓄熱材として見出し、この合金のマイクロ粒子(約20μm~)へ化成/酸化処理を巧みに施すことで、コア(Al基合金)–シェル(Al2O3)型潜熱蓄熱マイクロカプセルの開発に成功しました(図1)。このマイクロカプセルは固体顕熱蓄熱材と比べて約5倍以上の高蓄熱容量を持ち、機械的特性に優れます。また、シェルがAl2O3であるため「セラミックス粒子」として扱えます。即ち、現行セラミックス顕熱蓄熱技術の利用形態を継承したまま性能をグレードアップできる画期的な蓄熱材料です。
能村 貴宏 教授 Takahiro Nomura博士(工学) -
核融合炉・高エネルギー炉用構造材料の開発
高熱伝導性を有する鉄系複合材料
鉄系構造材料中に高熱伝導性物質を適切に配置し、構造材料全体の熱伝導性を飛躍的に向上させる。エネルギー生産の高効率化及び放射性廃棄物の低減が見込まれ、これまで解がなかった核融合炉・高エネルギー炉ダイバータ用鉄系構造材料の開発に目途がつく。
研究の内容
核融合実証炉(DEMO炉)稼働中のプラズマに直面する熱交換機器の開発を念頭に、実際に使用が見込まれる鉄系材料の低熱伝導性に焦点を当て、成功の鍵を握ると考えられる熱伝導性の大幅な改善を目的とする。DEMO炉用ダイバータの冷却管付近で生ずる500℃の温度勾配はこれまでの工学機器において未経験の巨大熱負荷を与えるが、当該機器構造体全体の熱負荷を軽減できれば、これまで解がなかったDEMO炉用構造材料開発の最重要課題をクリアするだけでなく、高熱伝導性を有する鉄鋼複合材料として工学的にも大きな付加価値を持たせることになる。各種鉄系材料(純鉄,低放射化フェライト・マルテンサイト鋼,酸化物分散強化フェライト鋼)に高熱伝導性材料のCuおよびW細線を適切に配置し、ヒートシンクとしての役割をもたせながら構造材料としての強度も担保する
橋本 直幸 教授 Naoyuki Hashimoto博士(工学) -
複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡と材料研究
マルチ量子ビーム科学と工学応用
北海道大学超高圧電子顕微鏡研究室では、複合量子ビーム照射による微細組織変化のその場観察が原子スケールで可能な世界初となる光・イオン・電子の複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を開発しました。
研究の内容
【世界初の複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡:左図】2014年に複数のレーザーを利用できる光学系を増設し、イオンビーム、レーザー光、電子など複数の量子ビーム照射下で原子レベルでのその場観察が可能な複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡を開発。現在、その場分光システム開発中。
【紫外線照射によるナノ結晶成長:右図】紫外線を水中プラズマ処理をしたZnに照射することによってZnOナノ結晶を成長させることに成功しました。現在、その成長メカニズムや応用について研究を推進しています。Scientific Report, 5, 11429(2015), AIP Advances, 7(2017) pp. 035220,
その他参考文献:Nano Letters, 17(2017) pp. 2088-2093柴山 環樹 教授 Tamaki Shibayama博士(工学) -
液中微粒子の集団性を利用した沈降・拡散挙動の制御
粒子の沈降挙動を自由自在にコントロールする
懸濁液中に濃度差が存在することによって現れる粒子の集団性を上手く利用して、沈降速度を促進させたり、複雑流路中における粒子の分散挙動をコントロールするような技術を紹介します。
研究の内容
濃度差によって生じる液中微粒子の集団性を上手く利用して、沈降速度や分散挙動を能動的に制御する技術を提案します。不均一に分散した粒子の沈降形態は、懸濁条件を変えることによって集団的な挙動が見られるようになります。この集団的挙動に密接に関連する濃度界面近傍の粒子の挙動を理解するとともに、それを積極的に利用することによって、各種工学プロセスにおいて重要となる沈降促進、分散制御、輸送効率の向上などを目指しています。
原田 周作 准教授 Shusaku Harada博士(工学) -
北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング
永久凍土融解に伴う地表沈降の検出
人工衛星「だいち」に搭載の合成開口レーダー(SAR)で得られるデータから、地表変形の画像を検出できる。従来は地震や火山活動に伴う地表の変位が主なターゲットだったが、地震火山とは無縁の北極圏の永久凍土地帯でも局所的な地盤変動が検出され始めた。
研究の内容
地震や火山活動の研究では、地表のわずかな動きを捉えて、地球内部を推定することがあります。この「動き」は地殻変動とよばれ、いまでもその高精度・高品質化にむけた努力が続いています。近年は衛星SARの位相データを使うInterferometric SAR(SAR干渉法)によって、遠隔地や海外の地殻変動も検出できるようになりました。北極圏では、いわゆる地殻変動は皆無ですが、下の図が示すように西シベリアでも明らかな「地盤変動」が検出されています。これは北極圏に多く見られる「サーモカルスト」とよばれる地形の周囲に見られることから、永久凍土の融解に伴う地表の沈降を捉えているものと考えられます。従来ほとんど手付かずだったサーモカルスト地形の形成過程の研究が緒に就いたところで、温暖化の影響の評価は今後の重要な課題です。
古屋 正人 教授 Masato Furuya博士(理学) -
リン酸カルシウムを用いた新しい地盤注入材
自然界の生物の歯や骨の主な成分であるリン酸カルシウム化合物で地盤を固める画期的な低環境負荷型注入材
地盤注入材(グラウト)の新たなセメント物質としてリン酸カルシウム化合物(以下CPC)に着目し、CPCの析出とCPCによる砂の固化に関する最適条件を検討した結果、ケミカルグラウトとバイオグラウトという2種類の新しい利用可能性が明らかになった。
研究の内容
環境負荷が小さい新たなグラウトを開発するために、自然界の生物によって生成される鉱物(バイオミネラル)の中でも歯や骨の主な成分であるCPCに着目し、CPCが析出する最適条件の検討およびCPCで固化させた砂供試体の一軸圧縮試験を実施した。その結果、CPC析出試験ではpHが弱酸性から中性付近に上昇することに伴い、析出体積の増加傾向が認められた。また、CPCで固化させた砂供試体の一軸圧縮強さは約90 kPaまで達し、砂質地盤が液状化しない一軸圧縮強さの目安である50~100 kPaを満足した。供試体片の電子顕微鏡観察からは、ウィスカー状のCPC結晶が確認された(図-1)。以上より、自己硬化性を利用したケミカルグラウトと析出体積のpH依存性を利用したバイオグラウトという、2つの新しいグラウトとしての利用可能性が示された。
川﨑 了 教授 Satoru Kawasaki博士(工学) -
免震構造の極限挙動解析
巨大地震への備えとして
当研究室では免震構造の高度な解析技術を開発しており、巨大地震に対する免震建物の極限挙動の予測、および巨大地震に備える各種対策を提案することができます。
研究の内容
免震建物では、地震時に免震装置が柔らかく変形することにより上部建物に発生する応答加速度を大きく低減し、耐震安全性を向上させることができます。一方で、南海トラフ巨大地震などによる設計想定を超えた地震動に対しては、建物の擁壁への衝突や免震装置の座屈・破断などの極限事象が生じる恐れがあります。免震建物の極限挙動を精緻に予測する解析技術を用いることにより、極限事象の発生を予見したり、その発生を抑えるための対策を検討したりすることが可能となります。
菊地 優 特任教授 Masaru Kikuchi博士(工学) -
セメント硬化体の物質移動予測モデル
Prediction of transport properties of cement-based materials
コンクリートは、広くインフラとして使用されており長寿命化はサステイナブル社会構築のため必須である。それを実現するためには適切な性能予測技術が不可欠である。そこで本研究ではコンクリートを構成している硬化セメントペーストの物質移動予測を行った。
研究の内容
コンクリートなどの多孔体の物質移動性能は含まれる空隙量に依存しているが、空隙量のみだけでなく各相の空間配置も影響を及ぼしている。そこでコンクリートの物質移動性能を予測するために、その構成材料である硬化セメントペースト(HCP)の物質移動性能の予測を行った。HCPの断面を反射電子像で観察した結果を図1に示す。各相が分散している様子がわかる。これより各相を抽出し自己相関関数を計算を行い、これに基づき各相を3次元空間に配置を行い、図2に示す3次元イメージモデルを構築した。このモデルにより拡散係数を有限差分法によって算出した結果と実測値の比較を図3に示す。推定値と実測値は異なる試料においてもよく一致していることから、本モデルによる拡散係数推定手法によりセメント硬化体の拡散係数は予測可能であることが示された。
胡桃澤 清文 准教授 Kiyofumi Kurumisawa博士(工学)

























































































































































































































































