北海道大学 研究シーズ集

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9. 産業と技術革新の基盤をつくろう:114件

1頁の掲載件数 20 50 改頁しない SDGs別アイコン凡例
  • 1. 貧困をなくそう
  • 2. 飢餓をゼロに
  • 3. すべての人に健康と福祉を
  • 4. 質の高い教育をみんなに
  • 5. ジェンダー平等を実現しよう
  • 6. 安全な水とトイレを世界中に
  • 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 8. 働きがいも経済成長も
  • 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 10. 人や国の不平等をなくそう
  • 11. 住み続けられるまちづくりを
  • 12. つくる責任、つかう責任
  • 13. 気候変動に具体的な対策を
  • 14. 海の豊かさを守ろう
  • 15. 陸の豊かさも守ろう
  • 16. 平和と公正をすべての人に
  • 17. パートナーシップで目標を達成しよう
  • 情報科学・工学のための数理解析技術

    システム同定・設計と逆問題

    システム同定・設計や未知対象の推定などに関連する情報科学・工学分野の問題を解決するための方法論の探求、及び、応用技術の開発。

    • 色彩復元ソフトウエアの実行例

    • 画像からの不要物体の除去例

    研究の内容

    情報科学や工学の分野においては、所望の結果を与える数理的なシステムの設計問題や、所与の入出力を与える数理モデルの特定問題、システムと観測から未知入力を推定する逆問題などが多く現れます。これらの問題を扱う際に、個々の問題特有の条件と個々の問題とは独立した数理モデルに分けて解析を行うことで、性能や限界を理論的に見極めることが可能となり、また、類似した数理モデルで記述できる問題への水平展開も可能となります。これまで、この独自のスタンスで、画像や色彩の復元や、音響信号に含まれる個々の音の分離、パターン認識や標本化理論を含む機械学習問題において様々な方法論の構成や応用技術を開発してきました。今日の発展著しい多様な計測技術に我々の方法論を適用することで、理論に裏打ちされた様々な応用技術の開発が期待できます。

  • 動画像リアルタイム処理技術

    アルゴリズム開発とそのハードウェア実装

    本研究室では、近年大容量(高解像度・高フレームレート)化が著しい動画像を対象として、画像平滑化(スムージング)や明るさ補正を中心とした、各種画像処理アルゴリズムならびにそのリアルタイム実装に関する研究開発を推進しています。

    • (a)入力画像 (b)推定照明光 (c)明るさ補正結果
      図1 Retinex理論に基づく動画像適応的明るさ補正

    • (a)入力画像(b)画像平滑化結果(c)実装で用いるFPGAボードの例
      図2 コスト最適化に基づく画像平滑化

    研究の内容

    画像処理では一般に取り扱うデータ量が膨大であるため、ハードウェア/ソフトウェアを組み合わせたシステム全体としての最適化が必要不可欠です。本研究室では、画像処理のアリゴリズムおよびその実装に関する検討を相補的に行うことにより、画像処理システムの構成手法に関する研究を行っています。その成果の1つであるRetinex理論に基づく動画像リアルタイム適応的明るさ補正(図1)では、逆光などの照明変化が大きい状況下で撮影された映像の明るさを、適応的かつリアルタイムで補正することが可能です。また、コスト最適化に基づく高品位な画像平滑化(スムージング) (図2)に関する研究も進めており、これは写真のイラスト化といった画像加工処理や、各種画像処理の前処理、明るさ補正、細部強調などへの応用が期待されます。

  • ラゲールガウス光の時空間制御

    光の空間位相を用いた情報多重化

    本研究では特徴的な空間位相を持つラゲールガウス(LG)光を用いた情報多重化の基盤技術を構築しました。従来の光情報処理では積極的に利用されてこなかった空間位相に着目することにより、情報容量を増大させることを目的としています。

    研究の内容

    光による情報処理や伝送・記録・再生はレーザー光の強度や偏光、空間的に均一な位相を用いて行われます。また異なる周波数を用いた多重化により、伝送容量を増大させることができます。これに対して光の空間特性は、これまで積極的に利用されることのなかった未開拓領域です。このような背景のもと、情報処理容量限界を打破するステップとして、ラゲールガウス(LG)光を使った情報多重化やLG光を特徴付ける軌道角運動量(トポロジカルチャージ)を用いた量子情報処理が注目されるようになってきました。本研究では、物質との相互作用を通して、LG光のモード制御や短パルス光を用いた軌道角運動量変換・保存、ファイバによる空間分割多重伝送を実現しました。

  • 量子暗号鍵配付装置の安全性保証技術

    究極の暗号の安全性を実験的に保証する

    量子暗号鍵配付を用いることで将来いかに技術が進歩しても高度な秘匿性を保つ暗号鍵を光通信により共有できます。本研究は、量子暗号の実用化に向け、実際に作られた装置で安全性を実験的に保証するための技術を提供します。

    • (量子暗号鍵配付装置の構成と安全性保証のためのチェック項目)

    • (実際の量子暗号鍵配付装置)

    研究の内容

    量子暗号鍵配付は原理実証の段階をクリアし、実用化を意識した研究が進められています。究極の秘匿通信を実現する技術として、世界各地で実証実験を含む研究が進められています。当研究室では理論的な部分と実装に関わる部分を同時に研究しています。現実世界では理論通りにいかないことが多く、仮説と実験結果とのズレが生じることが多々ありますが、そのズレの影響を評価し、現実の装置で作られる暗号鍵の安全性を定量的に保証することを目指しています。そのため、理論的な研究と実際の装置開発を橋渡しする形で実証研究を行っています。この研究によって量子的な装置を測定、評価して現実化することが可能になり、将来の量子ネットワークの実現に寄与できるものと考えています。

  • バンディット手法を用いた推薦技術

    知識を獲得しながら累積利得を最大化するオンライン学習技術

    ユーザが好むであろうアイテムのお勧め(知識の利用)のみでなく、ユーザの好み情報が多く得られるであろうアイテムのお勧め(知識の獲得)もバランスよく行い、ユーザの累積満足度を最大化するお勧め手法を研究しています。

    • 人工データによるシミュレーション実験結果。
      1000×1000(ユーザ,アイテム)ペアから毎ラウンド50ペア選んで
      リコメンデーションメールを送る設定。
      提案手法(UCBVB,UCBPMF)の方が100ラウンド後累積平均評価値が高い。

    研究の内容

    現在のインターネット社会において、リコメンデーション技術はうまく働けばサービスを提供する側・受ける側の双方に利益をもたらすものです。リコメンデーションサービスは1回きりのものではなく、毎回フィードバックを受けながら繰り返し行うものであり、しかもフィードバックはお勧めしたもののみに対して得られるものです。したがって、フィードバック履歴よりユーザが好むであろうアイテムをお勧め(知識の利用)するのみでなく、フィードバックからユーザの好み情報が多く得られるであろうアイテムもお勧め(知識の獲得)することがその後のお勧め精度を上げるためには重要です。この知識の利用と獲得のバランスをとってユーザ満足度の最大化を試みるのがバンディット手法です。 バンディット手法を用いたお勧め方式の開発を行っています。

  • 圧縮センシング法を用いた電波の状態推定

    高精度な位置推定・チャネル予測をめざして

    圧縮センシング法は、必要とする未知数の数よりも少ない観測データから、ある条件の下で解を求める手法である。この研究では、圧縮センシング法を用いて、電波の到来方向推定や、チャネル予測、散乱体検出を行っている。

    • 図1.電波の到来方向推定のイメージ図
      受信機の周囲を細かい角度に分割して,各角度において到来波があれば複素振幅を(到来波がなければ0を)ベクトルの要素とすることで、圧縮センシングのアルゴリズムを適用する。

    • 図2.到来素波を合成することによるチャネル予測
      端末に到来する電波を細かく分離し、それを再合成することで未来の通信状況(チャネル)を予測することができる。

    • 図3.散乱体検出の模式図
      送信アンテナから電波を送出し、散乱体からの反射波を複数の受信アンテナで受信する。送信信号と受信信号の変化、若しくは、受信信号間の差異を分析することで、散乱体の位置を検出することができる。

    研究の内容

    必要とする未知数の数よりも少ない観測データからは、一般にその未知数を一意に求めることはできない。ところが、未知数の大多数が0であるという条件があるとき、その解を正確に得ることができる場合がある。圧縮センシング法は、この性質を利用して、観測をできる限り少なくしつつ正確な解を得る方法である。当研究室では、図1に示すような電波の高精度な到来方向推定への応用や、それを利用して到来波を素波に分割してチャネル予測する方法(図2)、およびレーダシステムにおいて圧縮センシング法を利用した散乱体検出(図3)について検討を行っている。

  • 発想支援型マルチメディア検索システム

    画像や映像などのデータを有機的に連携することで、検索者に気づきを与え発想を支援する情報検索システム

    発想支援型マルチメディア検索システムは、画像、音楽、映像等の非構造化データを有機的に連携し、内在する類似性の抽出、およびその効果的な提示によって、検索者に気づきを与え、発想を支援する情報検索を実現します。

    • 画像検索システムImage Vortexは実用化され、Image Cruiserとして利用されています。(http://spir.ist.hokudai.ac.jp/shiga_photo.html)

    • ・連想型映像検索エンジン (Video Vortex)

    • ・トリガーレス情報推薦システム (Query is You! & COSMOS)

    研究の内容

    異なるメディア間での関連付けと類似性の導出、マルチメディア情報が持つ曖昧性を許容した連想型の検索スキーム(融合型検索)、ユーザネットワークによる個人の嗜好のモデル化、及びユーザインタフェースによる嗜好の類似性のビジュアライゼーション(個人適応型検索)を逸早く導入した新たな検索エンジン及びインタフェースを実現しています。これらを用いることによって、マルチメディアコンテンツ固有の多義性と曖昧性を効果的に利用した全く新しい検索が可能となっています。

  • 大規模電磁界解析による乗り物内
    無線接続サービスの電波伝搬特性評価手法

    ワイヤレス環境の最適設計を目指して

    航空機や旅客鉄道車輛内などの複雑で特殊な伝搬環境評価,電波の人体侵入,さらに体内埋込み型医療機器の電磁干渉評価とメカニズム推定,電気自動車無線給電装置の漏洩電磁界評価など,様々な電波利用分野での研究実績を上げてきている。

    研究の内容

    乗り物内の無線伝搬環境は,周囲が金属であることによる多重反射,加えて内部に什器や乗客の存在により,従来の伝搬モデルとは異なる特殊な環境になる。そのため,実運用状況の無線接続品質を見積もるには,乗客人体等による電波の吸収・散乱の効果を含めた電波伝搬特性の評価が必要となるが,実測や簡便な数値解析(レイトレース等)にてこれらを評価することは困難である。本研究は,従来困難であった乗り物内の伝搬環境モデリングに取り組み,超大規模解析空間におけるシミュレーション手法をスーパーコンピュータの利用により実現するものである。

  • バイオメディカル光イメージングのための数理アルゴリズム開発

    生体における光伝搬数理モデルの構築

    バイオメディカル光イメージングの発展には、高精度かつ計算効率に優れた光伝播モデルが必要です。本研究では、光伝播を高精度に記述する輻射輸送方程式の高速解法を構築することに成功しました。提案手法による光診断・治療の高度化に取り組んでいます。

    • 近赤外光
      近赤外光(700nm-900nmの波長領域の光)は生体深部まで伝播することが可能で、図のように成人男性の手の厚み程度であれば透過することができます。

    • 伝播モデルの構築:輻射輸送方程式の高速解法
      光拡散方程式(DE)が成立しない検出点位置において、輻射輸送方程式(RTE)と本研究提案の連結モデル(Hybrid)による積分光強度Φは良く一致しています。

    • ヒト頸部内における光伝播
      頸部前方(紙面上部)から光を照射した場合における積分光強度分布シミュレーションです。甲状腺の情報を有した光は検出可能であると考えられます。

    研究の内容

    本研究では、輻射輸送方程式に基づいたバイオメディカル光イメージングの数理アルゴリズム構築を行っています。従来の数理モデルに基づいたイメージングでは適用できなかった生体組織や生体部位にも適用でき、また画像解像度の優れたイメージング技術を目指しています。これまで、輻射輸送方程式の数値計算負荷は膨大であることから、小さいサイズの生体に適用が制限されていました。本研究では、輻射輸送方程式と光拡散方程式を連結することによって、高精度かつ計算効率に優れた光伝播モデルを開発することに成功しました。開発した光伝播モデルに基づいた光イメージングは、様々な生体組織・部位に適用可能です。現在は、ヒト頸部における甲状腺腫瘍の光診断や、生体組織における光学特性値のin-vivo評価への適用に向けて取り組んでいます。

  • 時間分解二次元表面音響波イメージング

    固定周期の光パルス列による任意周波数応答の励起・検出

    GHz周波数領域までの表面音響波の伝播の様子を時間分解二次元イメージとして可視化する技術です。従来の方法では周波数分解能が低いという問題がありましたが、本方法では任意周波数の音響波を励起・検出することができます。

    • フォノニック結晶中に設けられた導波路を伝播する322 MHz音響波の伝播イメージ。

    • 直径37.5 μmの銅円板構造の縁を周回する振動モード。励起周波数を自由に選ぶことにより狙った次数のモードを励起できる。

    • Au/クラウンガラス試料の表面波の分散関係の測定例。周波数分解能は従来法に比べて約4倍に改善。

    研究の内容

    音響波を用いた物性評価や機能性デバイスの設計・製作・評価において、音響波伝播の可視化は極めて有益です。このために、サブピコ秒時間幅の超短光パルス(ポンプ光)を試料に照射して表面音響波を励起し、その伝播の様子を遅延された光パルス(プローブ光)で観測します。遅延時間およびプローブ光の照射位置を走査することで音響波の時間分解二次元イメージを得ます。時間分解能はピコ秒、空間分解能は1μm、周波数帯域はGHz程度です。この方法では周期的な光パルス列を用いるために、従来はその繰り返しの整数倍周波数の音響波のみ励起・検出可能でしたが、開発した技術により、任意周波数の音響波の励起・検出が可能になりました。さらにこれを発展させて光パルスの繰り返し周波数とは全く非同期な振動のイメージングも可能となり、応用範囲が一層広くなりました。

  • アカデミックインタークラウド

    学術クラウド連携による研究開発を推進

    全国規模でクラウドシステムを連携させたアカデミックインタークラウドの実現に向けた研究を推進し、インタークラウド環境での資源割当最適化やスパコンとインタークラウドの連携等、クラウド関連技術の共同研究を実施。

    • 図1 分散クラウドシステムの実現

    • 図2 スパコンとインタークラウドの連携による多目的設計最適化

    研究の内容

    北海道大学情報基盤センターでは、国内最大規模の学術クラウド「北海道大学アカデミッククラウド」を構築し、全国の研究者に対して仮想・物理マシンおよびそれらのクラスタシステムとしての提供、高速大容量クラウドストレージ、機械学習・ビッグデータ処理システム等の研究開発向けクラウドサービスを提供している。さらに、全国規模でのクラウドシステム連携を実現するための基盤技術や、研究者を支援するためのシステム構築について研究を推進している。その具体例として、認証連携などのクラウド連携基盤技術の開発および試験システムの構築(図1)インタークラウド環境下での資源割当最適化、スパコンとインタークラウド基盤を連携させた全国規模での大規模な設計最適化フレームワークの実現(図2)等があげられ、全国の大学、研究所、企業との共同研究を行っている。

    棟朝 雅晴 教授 Masaharu Munetomo
    博士(工学)
  • ユーザの意図を読み取るインタフェースの開発

    ロボットやマウスを自由にコントロールする

    ユーザと機械が相互に学習することで、ユーザの意図通りに機械を操作することを可能とするインタフェースの開発を行っています。ロボットなどの操縦や、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスの入力も容易にします。

    研究の内容

    ユーザがヒューマノイドロボットなど多自由度のロボットを動作させるためには、コマンドがどの操作に対応しているかを覚える必要があり、コマンドの数が多くなるとユーザは負担が大きくなります。一般には、どんな人にも覚えやすく、使いやすいコマンド群を用意することは難しいため、作り上げたものが必ずしもユーザにとって使いやすいインタフェースとなる保証はありません。本研究では、ユーザと機械の相互作用の中からユーザの意図を読み取り、ユーザが直感的に操作可能なインタフェースの構築を行っています。その結果、各ユーザの特性にあった使いやすいインタフェースが開発できます。この技術を、マウスやトラックボールなどを操作する手の動きなどをセンシングすることでデバイスがなくても操作ができる、エアマウス、エアトラックの開発にも応用しています。

  • 超音波を用いたジェスチャ認識システム

    人体に伝播させた超音波の応答によって人体内部状態を
    含めたジェスチャ認識が可能なシステム

    スマートウォッチ等のマイク・スピーカを用いて超音波を人体に発信し、その応答を解析することで力の入れ具合のような人体内部状態を含めたジェスチャを認識する手法を実現する。

    • 提案手法のシステム構成

    • 実装したデバイス

    • 力の入れ具合と周波数変化の様子

    研究の内容

    本研究のジェスチャ認識システムは、音波を発信し、その応答を用いて対象の状態を解析する、アクティブ音響センシングと呼ばれる手法を用いる。この手法により、従来の加速度センサ等では認識が困難であった力の入れ具合のような人体内部状態を含めたジェスチャ認識が可能になる。本手法はウェアラブルコンピューティング環境で用いることを想定しており、多くのデバイスに搭載されているマイク・スピーカを用いて、外部的に視認できるようなジェスチャと内部的なジェスチャを同時に取得できる点に独自性がある。本手法の応用例として、ウェアラブル環境での両手が塞がっている時のジェスチャ操作、ストレス等の力の入り具合のライフログ等への適用を想定している。

  • 均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応

    シスアルケンとアミン類の選択的合成

    医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。

    研究の内容

    酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。

  • 金属材料の組織予測シミュレーション技術の開発

    凝固から固相変態まで

    構造材料や機能材料の製造プロセスでは、凝固、熱処理、塑性加工において様々な材料組織が形成し、その材料組織の特徴が材料の特性を決めています。凝固から固相変態までの一連の材料組織変化を予測するシミュレーション法の開発を行っています。

    研究の内容

    金属材料の凝固、結晶粒成長、拡散固相変態など、製造プロセスで生じる一連の相変態における材料組織の時間変化を予測する手法の開発と応用を行っています。特に、組織形成シミュレーション手法であるフェーズフィールド・モデルの開発に従事し、拡散相変態を世界最高精度で計算するモデルの開発に成功しています。また、実験的アプローチ、分子動力学法による原子論的アプローチ、さらにはデータ同化、機械学習といった情報科学のアプローチを組み合わせて、種々の合金系における材料組織制御に取り組んでいます。超大規模計算によって組織形成の新しい学理を開拓し、実プロセスの最適化につながる成果を得ています。

  • 電子スピン制御の物性定数を解明

    次世代電子デバイスの研究・開発を加速

    さまざまな半導体物性の中でこれまで未解明であった「スピン軌道相互作用」を、InGaAs半導体をベースにしたn型量子井戸構造に対して、ゲート電圧依存性を含めて定量的に明らかにしました。この成果は、次世代スピンデバイス開発のシーズとなります。

    • 図1 スピン回転の模式図。(a)スピンが回転していない、(b)ある向きにスピンが回転する状態、(c)(b)と反対向きにスピンが回転する状態を示している。

    • 図2 電界効果型トランジスタ

    • 図3 本研究に用いた希釈冷凍機

    • 図4 本研究で明らかにしたスピン軌道相互作用係数のゲート電圧依存性。
      (a)-(c)は図1のスピン回転の様子に対応している。

    研究の内容

    既存の半導体デバイスは、電子の「電荷」により動作します。一方で、電子は、「電荷」と共に「スピン」という小さな磁石としての性質を有しています。固体中電子のスピンは状況に応じて、ある向きに揃ったり(図1a)、特定の軸に対して回転したりします(図1bc)。次世代電子デバイスを実現するには、このような電子の「スピン」を半導体デバイス中で如何に制御するかが鍵となります。今回の研究では、インジウム、ガリウム、砒素をベースとした電界効果トランジスタ(図2)を利用し、希釈冷凍機(図3)を用いて実現する極低温(絶対温度20mK)環境で、電気的な測定を行うことにより、電子スピンの制御に必要な「スピン軌道相互作用係数」をはじめて厳密に決定しました(図4)。

  • 新規なスピントロニクス・デバイスの探索および低次元電子ガスのエネルギースペクトラムの理論研究

    省電力デバイスを目指して

    トポロジカル絶縁体やスカーミオンと呼ばれるトポロジーが現象を支配している物質や構造を物性理論を使って研究している。同時に、その過程でこれらのトポロジカル絶縁体やスカーミオンを利用した新規なスピンデバイスの提案と実現を目指して研究しています。

    • 図1:トポロジカル絶縁体のバンド構造

    • 図2: 図1の電子密度の等高線図

    • 図3:Neel-typeのスカーミオンの構造の計算結果

    研究の内容

    現在主流のCMOS素子を性能面と電力面で超えるスピンデバイスを提案し、その性能を物性理論で解析する研究をしています。この研究によって、CMOSデバイスを超える性能を持ちながら、省電力なデバイスを創生することが主な研究目的です。普段は、新規なスピンデバイスの性能を計算するために、場の量子論や相対論を用いてスピン伝導率などを計算しています。現在、研究している対象はトポロジカル絶縁体とスカーミオンですが、トポロジカル絶縁体はバルクでは絶縁体であるが、表面のみ自発的にスピン流が流れる物質であるので、上手くデバイスに応用できれば、トポロジカル絶縁体自体は無散逸なので超省電力のデバイスの作製が可能になります。またスカーミオンは磁性体に発生する特異な渦であり、これも電流駆動することでスイッチの役割を果たすことが期待されます。

    近藤 憲治 准教授 Kenji Kondo
    博士(工学)
  • ソノプラズマ発生装置

    音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法

    超音波によって水中に駆動される音響キャビテーションが崩壊するとき、気泡の内部は高温・高圧状態となり、プラズマ化する(ソノプラズマ)。音響キャビテーションを定位置に高効率で発生させる方法を見出し、プラズマ応用技術としての展開を図る。

    • 音響キャビテーションを光散乱で観察した様子。(a)の通常の場合では音響キャビテーションは観察されないが、(b)のようにパンチングメタル板を挿入すると定在化した音響キャビテーションが高確率に発生する。

    • 塩化金酸水溶液からの金ナノ粒子の生成をパンチングメタル板の挿入により高速化した例

    研究の内容

    液体中で生成されるプラズマは、ナノテクノロジー、環境工学、および医療工学の観点から高い関心を集めているが、プラズマの発生に高電圧を必要とすることが障害となる場合がある。一方、超音波工学の分野では、音響キャビテーションが崩壊する瞬間に気泡の内部がプラズマ化することが知られていた。我々は、超音波が印加された液中にパンチングメタル板を挿入するという極めて簡単な方法により、位置の固定が困難な音響キャビテーションを定在化させ、高効率に発生させることに成功した。高電圧を用いない液中プラズマ生成法としてユニークであるとの評価を受けている。現在は、本方式のメカニズムを解明し、大型装置を設計するための指針を得ることに注力しているが、今後は、新しいプラズマ応用技術としての様々な展開を図りたいと考えている。

  • ポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子による
    高活性触媒の創製

    高分子担体を反応場とする金属錯体触媒の設計と効率的合成プロセスの開発

    高分子担持金属触媒の創製に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子を開発しました。高分子トポロジーの効果により、金属錯体の不均化や金属凝集による触媒の不活性化を抑制することができます。第一遷移系列金属触媒の配位子として特に有効です。

    研究の内容

    不均一系(不溶性)金属触媒は、反応混合物からの分離が容易で再利用性に優れた環境負荷の少ない有機合成手法ですが、対応する均一系(可溶性)触媒と比較して、触媒活性が低下することが問題です。私たちは、高分子鎖のトポロジー制御に基づき、高活性なモノキレート型単核遷移金属錯体の発生に有効なポリスチレン架橋ビスホスフィン配位子PS-DPPBzを開発しました。塩化アリールのアミノ化カップリングやエステル-アゾールカップリング等のNi触媒反応などの効率を著しく向上させ、既存触媒では適用困難であった基質に対しても有効です。本触媒は、ろ過による分離や再利用も可能なことから、産業利用が期待されます。

  • 耐高温材料の微細加工による赤外メタマテリアル

    中~遠赤外線を操る材料・デバイスの開発

    中~遠赤外線の波長以下のパターンを持つヒーターや回折格子を作るとこれら電磁波を制御するデバイスを作れることが期待されます。我々は金属炭化物や酸化物の薄膜・積層・微細構造の作製法の開発と素子特性を研究しています。

    • 耐熱材料合成用高周波加熱炉
      (常用2700℃、短時間3000℃)

    • 耐熱材料の微細加工の例

    研究の内容

    電磁波の波長以下のスケールで微細加工された物質は電磁波の反射・透過を制御する働きがあります(メタマテリアルと呼ばれる)。3μm~1000μmの波長をもつ中~遠赤外線は熱の輻射にかかわる電磁波であるとともに、分子振動を励起させることができるため、分子の検出に使うことができます。熱にかかわる材料なので、耐熱性を持たせることにより他では実現できない応用が可能になります。我々は金属炭化物や酸化物などの様々な物性を持つ耐熱性材料に対するプロセス技術を研究するとともに、これら材料の赤外域での基礎物性を測定し、メタマテリアル設計につなげます。中~遠赤外線に対するメタマテリアルの作製により、分子検出用の狭線幅の中赤外発光素子や、輻射熱を制御する材料の作製を目指しています。