Life Sciences
一倍体性が動物個体発生に及ぼす影響の理解
上原 亮太
准教授
Ryota Uehara
博士(学術)
産業利用可能な一倍体制御技術の確立を目指して
ゲノムを1セットしか持たない一倍体状態が動物個体発生に重篤な障害をもたらす仕組みを解明し、遺伝子工学や品種改良に利用可能な一倍体個体作成技術の確立を目指す。
研究の内容
動物細胞の体をつくる細胞は、母方父方2セットのゲノムを持つ「二倍体」です。一方、通常そのままでは増殖を行わない未受精卵を賦活化し、個体発生を誘導すると(単為発生)、母方のゲノムしか持たない「一倍体」胚となります。そこから一倍体個体が得られれば、遺伝子工学や純系作成に大変有用ですが、脊椎動物一般において一倍体胚は「半数性症候群」と呼ばれる初期発生異常により死滅するため、一倍体個体技術の利用は実現していません。私たちは、ヒト培養細胞およびマウス初期胚をモデルに、分子細胞生物学の技術を駆使して、一倍体状態が、発生過程に及ぼす影響を細胞レベルで明らかにすることを目指しています。その成果をもとに、「半数性症候群」を解消する細胞操作法を確立し、安定な形質を持ち生存が可能な一倍体個体の作成を可能にすることを目指しています。
社会実装への可能性
- ・遺伝子改変細胞作成の効率化
- ・水産・家畜資源の品種改良
産業界や自治体等へのアピールポイント
ゲノム編集技術の革新的進歩に伴い、高効率な遺伝子操作や純系作成を可能にする一倍体個体制御技術の重要性および産業的価値が高まっております。細胞・個体実験モデルを用いた一倍体の生理的影響に関する基礎研究で得られる知見を、積極的に産業界と共有することにより産業的価値の高い水産・家畜資源の開発研究に貢献することを目指します。
2018/4/3公開