Nanotechnology / Materials
均一系パラジウムナノ粒子触媒による水素化反応
大熊 毅
教授
Takeshi Ohkuma
理学博士
シスアルケンとアミン類の選択的合成
医薬、農薬、化成品の原料等として有用なシスアルケンやアミン類をアルキン、有機ニトロ化合物やアジド類の水素化により効率的に合成できる。独自に開発した均一系パラジウムナノ粒子は、溶液として1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。
研究の内容
酢酸パラジウムをアルキン存在下でカリウムtert-ブトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムで処理することで、均一系のパラジウムナノ粒子が得られることを見いだした(図1)。このナノ粒子は、溶液で1年以上保存可能で、大気中で容易に取り扱うことができる。水素化触媒として優れた性能を示し、アルキン(1)、有機アジド化合物(3)、芳香族ニトロ化合物(5)からシスアルケン(2)、アミン類(4、6)をそれぞれ効率的に合成できる。シスアルケン選択性や官能基許容性(ケトン、アルデヒド、ベンジル位ヒドロキシ基等を損わない)に優れている。触媒活性も極めて高く、基質(原料)の1,000分の1から50,000分の1当量のパラジウムを用いるだけで反応はすみやかに進行する。経済性や利便性に優れており、企業と共同で事業化検討も行っている。
社会実装への可能性
- ・医薬や農薬をはじめ、種々の化成品原料の合成に用いることができる。アルキンのシスアルケンへの水素化では、有害な鉛の添加を必要としない。ナノ粒子触媒の供給も可能である。
産業界や自治体等へのアピールポイント
本反応は、化成品原料として有用なシスアルケンやアミン化合物を水素化により簡便かつクリーンに合成できる。触媒は大気中で扱うことができ、一般に用いられるPd/Cよりも高活性である。企業と共同で事業化検討も行っており、ファインからバルクに至る合成に対応できるので、ご相談いただきたい。
2018/4/3公開