北海道大学 研究シーズ集

Arctic Research

北極圏の“地盤変動”をリモートセンシング

古屋 正人 教授 Masato Furuya
博士(理学)

永久凍土融解に伴う地表沈降の検出

人工衛星「だいち」に搭載の合成開口レーダー(SAR)で得られるデータから、地表変形の画像を検出できる。従来は地震や火山活動に伴う地表の変位が主なターゲットだったが、地震火山とは無縁の北極圏の永久凍土地帯でも局所的な地盤変動が検出され始めた。

研究の内容

地震や火山活動の研究では、地表のわずかな動きを捉えて、地球内部を推定することがあります。この「動き」は地殻変動とよばれ、いまでもその高精度・高品質化にむけた努力が続いています。近年は衛星SARの位相データを使うInterferometric SAR(SAR干渉法)によって、遠隔地や海外の地殻変動も検出できるようになりました。北極圏では、いわゆる地殻変動は皆無ですが、下の図が示すように西シベリアでも明らかな「地盤変動」が検出されています。これは北極圏に多く見られる「サーモカルスト」とよばれる地形の周囲に見られることから、永久凍土の融解に伴う地表の沈降を捉えているものと考えられます。従来ほとんど手付かずだったサーモカルスト地形の形成過程の研究が緒に就いたところで、温暖化の影響の評価は今後の重要な課題です。

  • (左)対象地域のGoogle Earth画像。(右)2008年7月16日と2009年7月19日の「だいち」データに基づくInSAR画像。白丸で囲まれた領域の中で紫色に見えるところが、衛星から遠ざかる方向に変形している。この間に起きたと地盤変動と考えられる。

社会実装への可能性

  • ・地すべり地域の監視
  • ・温暖化の北極圏への影響調査
  • ・地下流体の監視

産業界や自治体等へのアピールポイント

シベリア平原には永久凍土が広範囲に分布していますが、広すぎて詳細な動態調査を地上観測だけで行うのは困難です。有意義な陸上観測地点の選定のためにもInSARによってシベリア平原全域の「地盤変動マッピング」は重要です。そのためにも大量の衛星データが容易に入手できることを期待します。

2018/4/3公開