北海道大学 研究シーズ集

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簡易病原菌測定装置

佐藤 久 教授 Hisashi Satoh
博士(工学)

キットにサンプルを添加するだけで病原菌を測定可能

測定キットにサンプル(下水、廃水、食品抽出液、飲料水)を0.1mL添加し、装置に設置するだけで、早ければ1時間、遅くても12時間以内に大腸菌、大腸菌群、腸球菌の濃度を測定できる技術を開発しました。

研究の内容

現在病原菌の測定には、寒天培地を作る、多量のサンプルを何度も希釈する、24時間培養する、など、多大な時間と労力が必要です。我々は、液体サンプルや食品抽出液を0.1mL注入するだけで大腸菌、大腸菌群、腸球菌といった病原細菌(糞便汚染指標細菌)を測定できるキットを開発しました。現在の一般的な細菌測定技術と比べると、サンプルを溶液と混合するだけの極めて簡便な技術です。細菌濃度は蛍光色素を使って測定されます。蛍光色素は液体が濁っていても測定できるので、廃水や食品からの抽出液などの濁ったサンプルでもいかなる前処理もせずに直接各種細菌濃度を測定することができます。

  • 図1 キット(マイクロプレート)に大腸菌を含むサンプルを入れ、培養した後のブラックライト下の写真。大腸菌が含まれていたサンプルが添加された場所(穴、ウェル)だけに青色の蛍光が見られる。蛍光を発していないウェルは添加されたサンプルには大腸菌がいなかったことを意味する。

  • 図2 縦軸はキットを装置に設置し、蛍光強度を10分間隔で測定し、蛍光強度がある閾値を超えるまでに要した培養時間(陽性時間と称する)、横軸は市販のキットで測定した大腸菌濃度を示す。大腸菌濃度と本技術で求めた陽性時間に直線関係が見られた。この事から、本技術は市販のキット(1サンプルの測定コストは約1000円)の代わりとなる事が分かった。

社会実装への可能性

  • ・水中の細菌分析
  • ・食品中の細菌分析
  • ・病院での細菌分析(MRSAなど)
  • ・牛舎での細菌分析(黄色ブドウ球菌など)
  • ・など、あらゆる場所で細菌を簡易に分析する用途に使える。

産業界や自治体等へのアピールポイント

今のところ、大腸菌、大腸菌群、腸球菌のみがターゲットですが、他の細菌(黄色ブドウ球菌、薬剤耐性菌など)にも興味を持っています。細菌以外にも、金属、ウイルス、化学物質の簡易測定にチャレンジしています。私の専門である環境工学以外の分野の方からの新しいターゲットの分析依頼(研究ネタ)をお待ちしております。

関連情報

研究キーワード

2018/4/3公開