北海道大学 研究シーズ集

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Life Sciences

ポリフェノールによる水の凍結抑制

荒川 圭太 准教授 Keita Arakawa
博士(農学)

ポリフェノールによる過冷却促進効果の応用を目指して

一部のポリフェノールが氷核物質と共存すると、氷核活性を抑制して結果的に過冷却状態を維持します。この凍結抑制効果(過冷却促進活性)のメカニズムの解明やいろいろな条件下での凍結防止を試みています。

研究の内容

ヨウ化銀や氷核細菌は、水の不均質核生成を促して水の凍結を促進します。このような氷核活性に対して抑制効果を示す化合物は、これまでにもいくつか報告されていますが、本研究で用いているポリフェノールは比較的低分子であり、共存する氷核物質の活性を数mMという低濃度で抑えて水溶液の凍結温度を数度低下させることが可能です。また、振動などの物理的刺激が加えられても過冷却を維持する効果もあります。このようなポリフェノール類は様々な植物にも含まれ、それらを産業利用するための条件検討を重ねています。例えば、動植物細胞や食品などの氷点下保存や農作物の凍霜害防止などは興味深いテーマです。凍結抑制効果はいろいろな要因の影響を受けるので、既存の凍結抑制物質の併用も含め、応用の可能性を検討し、氷核活性を阻害するメカニズムの解明も試みています。

社会実装への可能性

  • ・飲料水などの氷点下冷蔵
  • ・凍霜害防止のための散布剤
  • ・細胞の低温保存用添加物
  • など

産業界や自治体等へのアピールポイント

氷点下で水の凍結抑制が可能となれば、凍結や融解に要する熱エネルギーが節約できるほか、氷晶の成長による品質劣化を抑制することが期待されます。安定的に凍結抑制する技術がさらに進歩すれば、その適用範囲は農業・工業へと広がることが期待されます。現在、霜害防止のために植物への噴霧実験などをおこなっています。

2018/4/3公開