北海道大学 研究シーズ集

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Life Sciences

根で植物をコントロールする

綿引 雅昭 准教授 Masaaki Watahiki
博士(地球環境科学)

根の再生を制御する方法

多くの植物にとって根は必要不可欠な器官であり、根の傷害は速やかに回復します。これは根と地上部のバイオマス比も一定値を保つ仕組みが働くためです。本研究室では根の再生メカニズムを明らかにし、バイオマス比をコントロールできる技術の可能性を示した。

研究の内容

盆栽などの園芸や果樹栽培では広く根の剪定(根切り)が行われ、経験的に根をコントロールすることで地上部をコントロールしてきました。これは根と地上部のバイオマス比が一定値を保つことを経験的に利用した手法です。私たちが発見したYUCCA9は根切りにおける根の再生に必要な植物ホルモン、オーキシンを合成する遺伝子でした。研究の過程で薬理学的に根の再生を阻害する薬剤の組み合わせや、遺伝的な形質によって根の再生が起こりずらい植物も作出することができました。
根の再生は陸上植物で広く見られる現象であり、栽培品種についても本研究を応用することで地上部のバイオマスを増加、減少させることが可能になり、農業作物、園芸品種において高収率、労働集約、コストコントロール、高付加価値が期待できると思われます。

  • 図1 無処理のシロイヌナズナと生育途中で主根を切ったシロイヌナズナの様子(左図)、及び根切り後4日目の根系の総延長の比較(右図)。主根を切除しても4日で同レベルまで根が再生する。(左図は処理後4日目の写真。赤矢印は主根を切った位置)。

  • 図2 本研究で明らかになったメカニズム。根切りをすることでYUCCA9遺伝子が活性化、オーキシンの合成等を経て、側根が作られたり発達したりする。このメカニズムを人為的に制御することで、植物の生育を調節できる可能性がある。一方、根切りがどのようなシグナルを引き起こしてYUCCA9を活性化させているかはまだ同定できておらず、今後の研究が待たれる。

社会実装への可能性

  • ・植物根を遺伝的、または薬剤によってコントロールすることで、農業作物、園芸品種において高収率、労働集約、コストコントロール、高付加価値が期待できる。

産業界や自治体等へのアピールポイント

伝統的な技術である「根切り応答」の分子メカニズムが明らかになったことで、植物が持つ再生能力を人為的にコントロールすることが可能になりました。このメカニズムを薬理学的、遺伝的にコントロールすることで、必要な時に植物本来の能力を引き出せることが可能になり、栽培品種の特性を引き出す可能性があります。

研究キーワード

2018/4/3公開