北海道大学 研究シーズ集

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Life Sciences

自発的に骨組織と強く結合する高強度ゲル

野々山 貴行 准教授 Takayuki Nonoyama
博士(工学)

~生物の骨治癒を利用した、これまで困難であったウェットな材料と骨との安全な高強度接着法の開発~

次世代人工軟骨や軟骨組織再生足場材料として期待される高強度ハイドロゲルを応用する上で課題であった生体内の固定について、骨組織を構成する無機物「ハイドロキシアパタイト」を用いた簡便・無毒・高強度な接着手法を開発した。

研究の内容

私たちのグループが以前開発した高強度・高靱性ダブルネットワークゲル(DN ゲル)は、生体関節内で軟骨に対する低摩耗性や軟骨組織の再生誘導性など優れた性能を有し、人工軟骨材料や軟骨再生誘導材料としての応用研究が進められている。一方で、生体関節内で固定・維持することが困難であり、本材料の実用化において大きな課題となっていた。今回DN ゲルの表面層に骨組織の無機主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)を複合化させることで、骨組織再生がゲルの内部へ自発的に進展し強固に接着する固定法を開発した。優れた力学物性・軟骨再生能に加えて、無毒で生体内の骨と接着の実現は、DN ゲルによる関節治療への実用化に向けて大きな前進となる。

  • 図1 DNゲルとHApコーティングDNゲル

  • 図2 ウサギの関節部への埋植とそのCT画像

社会実装への可能性

  • ・人工軟骨及び軟骨組織再生用ハイドロゲルの骨組織への高強度接着
  • ・結合組織(靭帯・腱)置換材料の骨組織への接着

産業界や自治体等へのアピールポイント

現行の人工関節と比べて、実際の軟骨組織と性質が近いハイドロゲルの応用研究が加速する中、長年望まれていた生体内におけるゲルの安全かつ簡便な固定法が開発された。「人生100年時代」を迎える今日において、関節症はすべての高齢者にとって避けることのできない疾病であり、この次世代軟骨治療法は今後多くの需要が見込めると考えられる。

2018/4/3公開