北海道大学 研究シーズ集

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Manufacturing Technology

リンの高効率かつ高選択的な分離回収技術

リン鉱石の輸入依存脱却が可能な二次リン資源からのリンの分離回収

「炭素化(もしくは炭素添加)」と「塩素化」を共通工程とした二次リン資源(製鋼スラグ、鶏糞、下水処理後のHAP・MAP、下水汚泥、下水汚泥焼却灰など)中のリンの非常にシンプルな高効率・高選択的分離回収技術を開発した。

研究の内容

リンは生命体の必須元素で、さらに、化学肥料や工業製品などの原料として広く使われているが、近年、リン鉱石の低品位化と枯渇が現実味を帯び始め、資源の確保が焦眉の課題となっている。一方、日本のリンのマテリアルフローに従うと、輸入リン鉱石の3.4倍、全持込リン量の半分以上が鉄鋼スラグ、家畜糞、下水汚泥中に移行する。そのため、これらの二次リン資源の再資源化技術の開発は重要である。そこで当研究室では、鶏糞や下水汚泥の炭化物の塩素処理によりリン回収を阻害する鉄を分離し、次いで、元々存在する炭素による還元反応でリンのみを選択的に回収する非常にシンプルな再資源化プロセスを開発した。本技術は炭素添加した製鋼スラグ、HAP・MAP、下水汚泥焼却灰などにも適用できるため、我が国のリン資源対応力強化に繋がると期待できる。

  • 図1 製鋼スラグでの再資源化の例

  • 図2 下水汚泥焼却灰での再資源化の例

社会実装への可能性

  • ・鉄鋼メーカでの実装
  • ・地方自治体等での実装
  • ・リン化合物製造会社での実装

産業界や自治体等へのアピールポイント

本手法は、リン鉱石の輸入依存脱却が可能な希少資源確保技術に直結するため、資源量の乏しい我が国にとって、その社会的意義は極めて大きい。さらに、リンは、プラネタリー・バウンダリーで最もリスクの高い元素の一つであるため、本技術は地球規模での環境保全にも貢献できる。

本研究に関連する知的財産

特願2023-005999 「リンを回収する方法、及び鉄原子を除去する方法」
2023/11/10更新, 2022/4/14公開