北海道大学 研究シーズ集

English
Environment

低酸素水耕システムや過湿ポット栽培を利用した作物耐湿性の簡易サーベイ法

短期間、幼植物を特別な環境で育てることで、耐湿性に優れた優良な育種母本や品種を探します

一般的に湿害は作物収量や商品価値を著しく損なわせ、特に耐湿性の弱い品目を水はけの悪い畑で栽培するとその被害は甚大となります。本研究では簡易な栽培装置を用いて、短期間で作物の耐湿性サーベイが可能な手法を考案しました。

研究の内容

作物苗をポット栽培し、生育途中の5-10日間に、根域過湿条件になるようビニルで細工し、作物のバイオマス変化を追います。これにより、湿害が起き得る過湿期間や、湿害が起きやすい生育段階の割り出し、同品目内の耐湿性の品種間差をサーベイできます。
ブロッコリーや加工用トマトで有効な手法でした。
また、幼植物体を短期間、水耕溶液中に窒素をローディングして酸素分圧が低い状態とした水耕栽培システムで育成し、溶存酸素量が豊富な対照区と比べて根系のデザイン(長さ・太さ・分岐数など)やバイオマス量がどのように変化しているのかを調査します。これにより、根域低酸素耐性を有する品種を簡易にサーベイする試みです。ダイズの場合、従来言われている「耐湿性」とこの「根域低酸素耐性」には密接な関係性が示唆されます。

社会実装への可能性

  • 1.民間種苗会社や農業試験場などの新系統・品種の作物を育成している現場での、環境ストレス耐性系統の探索
  • (水田転換畑で減収が甚だしいダイズ・コムギ・ソバなどの収量性向上や、耐湿性の弱い野菜品目の品種選定)
  • 2.DFT(湛水型水耕栽培システム)へ適応する野菜品種を見いだすために。

産業界や自治体等へのアピールポイント

今後も日本は、短期集中型降雨が多発する傾向が続くと言われています。暗渠やFOEAS施工による排水対策とともに、農作物側の耐湿性対策を進めることで、より安定的・持続的な農業生産が実現します。是非、本技術による植物の環境ストレス評価法を使用して、湿気に強い作物の作出を試みてみましょう。

関連情報

農学研究院・ 基礎研究部門・園芸学研究室 http://lab.agr.hokudai.ac.jp/engei/Jitsuyama/Welcome.html

研究キーワード

2024/9/20公開