研究紹介
Energy
耐氷点下起動性に優れた固体高分子形燃料電池の開発
田部 豊
教授
Yutaka Tabe
博士(工学)
電池内マイクロナノ凍結現象の解明
普通では観察することのできない燃料電池内の反応層近傍凍結現象を、超低温型電子顕微鏡を用いて可視化しています。さらに電気化学測定を組み合わせ、寒冷地利用で問題となる生成水凍結現象の解明と耐氷点下起動性に優れた電池の開発を行っています。
研究の内容
高効率でクリーンなエネルギー変換機器である固体高分子形燃料電池において、反応による生成水は下の左図のように数十nmの径の触媒層空隙を通り、数μm径の空隙を有する多孔膜であるマイクロポーラスレイヤー(MPL)を介して、ガス拡散層・ガス供給チャネルへと排出される。寒冷地での氷点下環境起動では、生成水が凍結し、発電停止、劣化を引き起こす問題が生じるが、現象がマイクロナノスケールであるため計測が難しく、現象解明は未だ不十分の状況である。本研究では、水がどの部位で凍結し、どのような機構で性能停止および経年劣化に繋がるかを微視的観察、電気化学測定、触媒層モデル解析により解明し、耐起動性の向上や長寿命化を達成することを目指している。下の中図は触媒層が氷で埋められている様子、右図は解析でモデル化している触媒層の構造模式図である
社会実装への可能性
- ・電池内の凝縮水分布の可視化
- 反応層への酸素供給を阻害する電池内凝縮水を凍結して固定化し、本手法により可視化することに成功しています。これにより、通常運転における高性能電池の開発も行っています。
産業界や自治体等へのアピールポイント
微視的観察,電気化学測定・解析を駆使する極めて独創的な本試みは、北海道のような寒冷地向けの電池開発に役立つものと考えています。また、本研究室は、エネルギー・地球温暖化問題の解決を目指し、持続可能なエネルギーシステム実現のために、高効率機器開発ならびに社会エネルギーシステム解析の両面から、広い視野での研究を行っています。
関連情報
2018/4/3公開