北海道大学 研究シーズ集

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Nanotechnology / Materials

太陽光をレーザー光へ変換する新しい結晶材料

樋口 幹雄 特任准教授 Mikio Higuchi
博士(工学)

高効率太陽光励起レーザーの実現を目指した
新規Cr,Nd共ドープ結晶

開発したCr,Nd:CaYAlO4結晶は、可視域で幅広い吸収帯域を示すとともに、大きい吸収断面積を有する。クロムにより吸収されたエネルギーはネオジムに移動することから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

研究の内容

クロム(Cr)とネオジム(Nd)を添加したCaYAlO4単結晶を、浮遊帯溶融法と呼ばれる手法を用いて作製した。作製条件を適切に制御することにより、良質な赤色透明の結晶が得られた(図1)。この結晶は、紫外領域から可視領域にわたる非常に幅広い吸収域をもち、太陽光のエネルギーが最大となる波長でも十分な吸収を示す(図2)。また、従来材料であるCr、Nd:YAGと比較すると70倍以上の大きい値を示すことが明らかとなった。このような特性は既存の材料にはない、今回開発した結晶に特有のものである。さらに、クロムの吸収帯での励起によりネオジムが発光することが、その蛍光特性から実証された(図3)ことから、太陽光エネルギーを高効率でレーザー光に変換できるものと期待される。

  • 図1 Cr,Nd:CaYAlO4単結晶

  • 図2 Cr,Nd:CaYAlO4の吸収スペクトル

  • 図3 Cr,Nd:CaYAlO4の蛍光スペクトル

社会実装への可能性

  • ・金属マグネシウムの精錬
  • ・人工光合成のための光源
  • ・バイオマスの高効率利用

産業界や自治体等へのアピールポイント

浮遊帯溶融法は材料探索の手法としては優れているが、大型結晶を安定して作製する方法としては、引き上げ法の採用が必須であると考えている。単結晶育成技術(とくに引き上げ法)をもつ企業との連携を期待している。また、レーザー装置を開発中の企業、光技術分野への展開を考えている企業との連携も本技術の実用化には必要と考えている。

関連情報

2018/4/3公開