北海道大学 研究シーズ集

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膜ファウリングを引き起こす多糖・タンパク質の構造解析

木村 克輝 教授 Katsuki Kimura
博士(工学)

次世代の水処理技術として注目されている膜処理の普及を阻んでいるのが膜透過性能の劣化(膜ファウリング)である。本研究では、膜ファウリングの合理的制御に向けて膜ファウリングの主因となる多糖類やタンパク質の構造解析を世界に先駆けて行った。

研究の内容

膜ファウリング(膜透過性能の低下)は、微生物が生産する多糖類やタンパクが主因となって発生する。しかしどのような多糖類・タンパク質が重要であるのかという点は不明のままであり、効率的な膜ファウリング制御手法の開発が遅れている。本研究では、レクチンアフィニティクロマトグラフィーを用いてファウリング多糖を集積精製した後に部分加水分解を施し、MALDI-TOF/MS分析を行った。MALDI-TOF/MS分析で検出されたピークをデータベースと照合することで、多糖の構造およびその起源となる微生物を推定できた。タンパク質についても、膜ファウリング物質を精製した後に二次元電気泳動を行って分離し、切り出したスポットのアミノ酸配列を読めるようになっている。こちらも、データベースと照合してその構造と起源を推定することが可能である。

  • 膜ファウリングを引き起こす多糖のMALDI-TOF/MSスペクトル

  • MALDI-TOF/MSスペクトルから推定される多糖構造の一例

  • 膜ファウリング物質の2D-PAGE泳動図

  • アミノ酸配列解析結果

社会実装への可能性

  • ・・ファウリング多糖・タンパク質あるいはこれらを生産する微生物の選択的検出・追跡による新規膜ファウリング抑制手法の開発
  • ・・真に重要な多糖・タンパク質を用いた耐ファウリング膜の新規開発

産業界や自治体等へのアピールポイント

これまでの膜ファウリング抑制の試みは、膜ファウリング発生成分に関する情報が決定的に乏しい中で非合理的に行われてきたものであり、十分な効果があったとは言い難い。本研究で開発した方法により、用途毎に膜ファウリングを引き起こす成分を特定すれば、従前とは全く異なる革新的膜ファウリング抑制手法の開発に繋がる可能性がある。

2018/4/3公開